魔法戦士リリカルSEED Strikers 作:ぬらりひょん
高町なのはと八神はやては、第97管理外世界にある惑星、地球の出身だ。
だから、キラがいた世界に地球という惑星があると知り、にわかには信じられなかった。
「それは……本当に、地球なの」
「ホンマに間違い無いん? 記憶違いの可能性とか… 」
「いえ、僕の知識に間違えがなければ、確かに地球です」
問い詰められたキラは、少し自信無さげに答える。
そんなキラの答えに、なのはとはやては思わず顔を見合わせた。
明らかにおかしい二人の様子に、キラの不安が高まる。
「あの、何か……おかしいこと言いましたか、僕」
「んっと、おかしい…というか」
問い返すキラに対し、それ以上に困惑した様子のなのは。
はやても難しい表情を浮かべて何やら考え込んでいる。
そのままキラに目線を合わせないまま、はやてはおもむろに口を開いた。
「なぁ、キラ君。まだ話とらんかったんやけどな、私となのはちゃんも地球の出身なんよ」
「えっ、そうなんですか? それじゃあ」
「ちょい待ち。それを知ってもらった上で聞いてほしいんやけど、キラ君の世界の地球と、私やなのはちゃんがいた地球とでは、歴史や文化が全く違うんや」
「は…い? それって、どういうことですか? 」
はやての言葉の意味を察し、キラの不安がピークに達する。
「つまり……キラ君が知ってる地球と、私達が知ってる地球は、全く違う世界の別物ってことや」
キラを追い詰めるかのようなその事実に、一瞬キラの表情が凍る。
だが、それに抗うかのようにキラははやてに聞き返す。
「そ、そんなことってあるんですね。地球と同じ名前の別の星が、違う世界にあるだなんて」
「そうじゃないんよキラ君。管理局がその存在を確認している管理外世界の中に、地球という惑星があるんは第97管理外世界だけや」
「は、はやてちゃん!」
容赦なく現実を突きつけるはやてをたしなめるようになのはが声を上げる。
「なのはちゃん。今話さなくても、遅かれ早かれ知ることになるんや。それやったら今話してしまった方がえぇ。違う? 」
「ッ……それはっ」
はやての返答に、なのはは言葉を詰まらせる。
つまり、なのはもはやてと考えは同じなのだ。
「……つまり……どういうことなんですか? 」
恐る恐る、と言った様子でたずねるキラ。
そんなキラに、はやては告げる。
「……落ち着いて聞いてな、キラ君」
今のキラにとって、あまりにも残酷な現実を。
「キラ君がいた世界は、時空管理局の管理下にあるどこの次元にも……存在しないんや」
◇
陸上警備隊104部隊の本部を離れたなのはは、宿泊先のホテルに戻っていた。
はやては部隊長にキラのことを報告する為、まだ本部に残っている。
そして件のキラは、
「……今日は……もう、一人にしてください」
そう言い残した後与えられた部屋に戻り、それ以降顔を見せることはなかった。
「キラ君 ……大丈夫かな」
部屋のベッドに腰掛けながら、ぼんやりと呟くなのは。
すると、その隣に誰かが腰掛け、ベッドが軋んで音を上げた。
「なのは。もうそれ三回目だよ」
「うっ……ご、ごめんねフェイトちゃん」
フェイト・T・ハラオウン。
時空管理局に所属する執務官であり、なのはの無二の親友でもある。
彼女もなのはと同じように休暇中でありながら空港火災の救助活動に参加した功労者の一人だ。
「ううん。それにしても、管理局でも確認出来ていない世界があって、それが地球だなんて」
なのはからキラについての事情を聞いていたフェイトは、驚きを露にしながらそう言った。
「うん、私も驚いたよ。しかも、キラ君がいた地球では科学技術が何倍も進歩してて、えっと……モビルスーツっていう質量兵器に乗って人間同士で戦争をしてるって。正直にわかには信じられないよ」
「でも、なのはは信じてるんだよね」
「うん。とても嘘をついてるようには見えなかったから」
自分の世界について語るキラの表情を思い出しながら、なのはは複雑そうな表情でそう言った。
「なんだか、凄く不安げに話すんだ、キラ君。まるで、自分の言葉を信用出来ないみたいで。だから、私が信じてあげなくちゃって、そう思ったの」
なのはらしい言葉に、フェイトは思わず笑みを浮かべる。
「じゃあ、私も信じるよ。なのはが信じるその子のこと」
信頼の深さが伺えるその言葉に、なのはも微笑みを浮かべる。
「ありがとうフェイトちゃん。今度、フェイトちゃんにもキラ君のこと紹介するね」
「うん、お願い。私も会って話してみたいから」
そう言うと、フェイトの表情に一瞬影が射した。
その表情の変化に、フェイトが何を考えているのか理解したなのはは、少し心配した様子で問いかけた。
「やっぱり、コーディネーターのこと、気になる?」
「……うん。とても、他人事とは思えないから」
「フェイトちゃん」
遺子操作によってより優れた能力を持って生まれた新たなる種族、コーディネーター。
人造魔導士として生まれたフェイトにとって、その存在には思うところがあった。
「なのはが私を助けてくれたみたいに、私もその子を助けてあげたい。知らない世界に一人きりで、記憶もなくて、きっと不安で苦しい思いをしてると思うから」
「うん、そうだね。助けよう、私達で」
フェイトの決意に、なのはも応える。
二人にとっては、その為の魔法だ。
きっと、この二人ならばキラを救うことが出来るだろう。
キラの知らないところで、キラを助けようと心から思ってくれている人がいる。
その事実を、もし今のキラが知ることが出来たのなら、これから起こる悲劇を避けることも出来たかもしれない。
だが、現実はいつも残酷だ。
世界は、いつだってこんなはずじゃないことばかりなのだ。
運命の歯車は、この時もう既に回り始めていた。