魔法戦士リリカルSEED Strikers 作:ぬらりひょん
機動六課 空間シュミレーター
機動六課の初陣から数日が過ぎた。
レジアス中将の一件は、フォワードメンバーの向上心を大いに煽ったらしく、あの日以降スターズ、ライトニング共により一層訓練に気合いが入っていた。
そんなフォワード陣の様子に触発されてなのはの教導にも力が入り、今日からはコンビネーションや連携の錬度を向上させる訓練から、 個々のスキルを上げるための訓練に移行していた。
「あたしらのポジションはなぁ!」
そんな中、空間を震動させるかのような怒号と共に、愛機である鉄槌型のアームドデバイス『グラーフアイゼン』を両手で振りかぶったヴィータが、その正面で防御魔法を展開しているスバルに襲い掛かった。
「敵陣で単身斬り込む事もあればっ!」
小柄な体型から想像もつかない、力でスバルのバリアに鉄槌を叩きつけるヴィータ。
そのあまりの威力に、受ける側のスバルの表情が引き攣る。
「最前線で防衛ラインを守ったりもするんだっ!」
直後、ヴィータが全身を右側に捩じりながら、振りかぶっていた鉄槌でスバルが展開するバリアの中央に追撃を加えた。
「 ぐ……ぐぅっ!」
バリアと鉄槌が激突し、苦悶の声を上げるスバル。
踏ん張らせていたマッハキャリバーの車輪が地面を抉る程の威力に、打たれ強さには定評のあるスバルでもさすがに辛そうだ。
「でああありゃぁっ!!」
一撃で仕留められなかったヴィータが、ダメ押しとばかりに再びグラーフアイゼンを後ろに振りかぶり、横薙ぎの一撃を加える。
まだ先の衝撃から立ち直れていないスバルに、それを耐えるだけの力は残されていなかった。
「うあぁぁぁっ!?」
反射的にバリアで防いだスバルであったが、今度はばかりは踏ん張りきれず、そのまま後ろに吹き飛ばされ、丁度真後ろにあった木の幹に背中を強く打ちつける。
「あがっ!?」
背中への強い衝撃に、肺の中の息が一気に吐き出される。
苦痛に表情を歪めるスバル。ぶつかった際、後頭部にはダメージがなかったのが幸いだった。
「ふん。なるほど、強度自体は悪くねえようだな」
ヴィータはそんなスバルの様子を見つつグラーフアイゼンを下ろすと、少しだけ感心した様子でそう告げる。
見ると、ヴィータの一撃を受けて吹き飛ばされても尚、スバルはバリアを展開し続けていた。
「は、はは……ありがとうございます」
ようやくバリアを解除してぐったりと右腕を下すと、口端を引くつかせながらそう返答するスバル。
そのまま飛ばされる前の位置へとマッハキャリバーで移動すると、次のヴィータの言葉を待つ。
「まあ、それとして……いいか?つまり防御スキルと生存能力が高いほど、攻撃時間も長く取れるし、サポート陣にも頼らねえで済む。これはなのは隊長に教わってるな?」
「はい! ヴィータ副隊長!」
痛む背中を無視して背筋を伸ばし、ヴィータの言葉に返答するスバル。
その姿は既にボロボロだが、瞳からはまだまだ闘志がみなぎっていた。
そんなスバルのようすを眺めつつ、ヴィータは教導を続ける。
「受け止めるバリア系、弾いて逸らすシールド系、身に纏って自分を守るフィールド系……」
身振りを交えながら一つずつ説明をしていくヴィータ。
「この三種を使いこなしつつ、簡単にぶっ飛ばされねえように、下半身の踏ん張りとマッハキャ リバーの使いこなしを身に付けろ!」
「頑張ります!」
『I'll learn.(学習します)』
スバルとその相棒とも言えるインテリジェントデバイス『マッハキャリバー』が頼もしく答える。
これを見て、ヴィータは不敵な笑みを浮かべながら、地面に置いていたグラーフアイゼンのヘッド部分をスバルの鼻先に向ける。
「防御ごと潰す打撃は、私の専門分野だからな……グラーフアイゼンにぶっ叩かれたくなかったら、しっかり守れよ?」
突然向けられたスパイクの先端に上半身を仰け反らしたスバルであったが、心剣な眼差しを受けると、「はいっ!」 と決意を込めた返事を発した。
そしてそれ以外の場所でも、個人訓練は着々と進んでいた。
エリオとキャロのライトニングコンビは 、二人の保護者でもあるフェイトの指導の下、俊敏性と実戦での立ち回りを鍛えるための訓練を行っていた。
こちらも、スフィアから放たれる射撃を障害物状況下で回避していくという、かなりハードな訓練である。
この回避訓練はレベルが上がっていくに連れスフィアの動きも高速化、複雑化していくようになっている。
なのでフェイトは今の二人が何とかクリア出来る程度のレベルで切り上げようと考えていたのだが、
「………す、すごい」
フェイトが思わずそう呟いてしまう程、訓練は予想以上の成果をみせていた。
というのも、エリオとキャロの回避スキルが、予想していたレベルよりも大きく上回っていたのだ。
「ふ、二人ともいつの間に。もしかして、この訓練知っていたの?」
驚きと感心が半々の声色でそう問い掛けるフェイト。
すると、荒れた息を整えながら側にいたエリオが答える。
「い、いえ。ただ、似たような回避訓練はキラさんが教えてくれてて、たまに手伝ってくれてたんです。その時、自立型の魔力スフィアの行動パターンを教えてもらっていたので……」
「そ、そうなんだ。へぇ~……キラが……」
エリオの返答にフェイトの表情が若干固まる。
そんなフェイトの顔色に気付いたキャロが、額の汗を拭いながら首をかしげる。
「フェイトさん、どうかしましたか? もしかして、体調がよろしくないんですか?」
「へ!? あ、いや、そんなことないよ? 体調はむしろ凄く良い方だから!」
そんなキャロに、フェイトは少し大袈裟な仕草と笑顔で答える。
その言葉通り、体調に関しては今日のフェイトは絶好調だった。
何せ、可愛い子供(義理のではあるが)と訓練という名目上で存分にコミュニケーショを取れる滅多にない機会だ。
この日の為に体調を万全にし、限られた時間を割いて訓練メニューを考えてきた。
「じゃ、じゃあ次のメニューに移ろうか。えっと……エリオは疑似ターゲットとの一撃離脱による攻撃の反復訓練でーー」
「あ、それもキラさんから教わりました!」
「えっ!? そ、そっか……じゃあ、キャロ! キャロは補助魔法の術式を効率的に組む訓練をーー」
「はい! それもキラさんから教わってます!」
「ーーーー」
その努力が、一瞬にして脆くも崩れ去った。
自身が信頼を置く優秀な部下、キラ・ヤマトの純粋な好意によって。
「そ……そっかぁ。二人は私が知らない間にどんどん強くなってたんだね」
内心の同様を悟らせまいと無理矢理浮かべた笑顔でそう言いつつ、エリオとキャロの頭を撫でるフェイト。
すると、嬉しそうにそれを受け入れた二人は、深い親愛が込められた無邪気な笑顔でこう答えた。
「「はい! 僕(私)達、フェイトさんがいなくても大丈夫なように、いっぱい頑張りましたから!」」
「ーーーーーッッ!!」
止めは、愛する子供達の無邪気な笑顔と言葉だった。
その後、フェイトが声を上げずに号泣したのは言うまでもない。
一方その頃、新人フォワード陣の指揮官であるティアナは、自身の分隊の隊長であるなのはとワンツーマンの指導を受けていた。
インターセプトトレーニングと呼ばれるそれは、主に射撃型の魔導士が行う訓練用魔力弾による迎撃訓練だ。
その内容は、飛行機動や速度、着弾時の効果がそれぞれ異なる色違いの弾丸の特性を見極め、対応した弾丸を生成して確実に命中させるという過酷なもの。
最初の段階では特性に応じ色分けがなされているが、段階の進行ごとに徐々に見分けづらくなっていく。
更に、センターガードのポジションを任されている彼女は、より実戦に近い環境で行う為に中央のポジションを常に維持しなくてはならない。
なので、無理な回避運動を取ろうとすると、
「ほら! そんな避け方をしてたら、後が続かない!」
このように、なのはの檄が飛んでくると同時に、追加の魔力弾が発射される。
「ッ! はいっ!」
「疲れててもバランスを崩さない!立って飛んでくる弾に照準を合わせて!」
容赦のない追撃と叱責がティアナにぶつけられ、精神的にも体力的にもどんどん追い込まれていく。
(くっ、この程度で音をあげてはいられないってのに!)
焦れば焦るほど効率が悪くなるのは重々承知している。
迅速に体勢を整え、発射された魔力弾に照準を合わせるティアナ。
その特性を見極め、対応する魔力弾を生成し、発射する。
「そう、それ!」
ティアナの立ち回りを見て、なのはが嬉しそうに声を上げる。
「足は止めて、視野を広く! 射撃型の真髄は……」
「あらゆる反撃に正確な弾丸をセレクトして命中させる、判断速度と命中制度!」
なのはの言葉を引き継ぎながら、ティアナは言葉通りそれぞれの弾に対応した魔力弾を迅速に生成し、確実に命中させていく。
「チームの中央に立って誰よりも早く中長距離を制する。それが、私やティアナのポジション、センターガードの役目だよ!」
「はいっ!」
なのはの言葉に返答すると同時に、最後の魔力弾を撃ち落とすティアナ。
その様子に満足げな表情を浮かべて頷くと、なのはは周囲に展開していた魔力スフィアを消し、ティアナの側まで歩み寄る。
「はい、そこまで! お疲れ様、ティアナ。ひとまず休憩ね。」
「はぁ…はぁ…はぁ……は、はい」
両膝に手を付き、肩で呼吸をしながらなのはに返答するティアナ。
その場に座り込んでもおかしくないほどの運動量だったが、そうならなかったのは彼女自身の負けん気の強さと日頃のトレーニングの結果の現れだった。
「うん、予想以上だったよティアナ。後半少し乱れがあったけど、あのくらいなら全然許容範囲内だよ」
「は、はい。ありがとう…ございます」
息を整えつつなのはの賛辞に礼を述べたティアナは、ふとなのはの後方に視線を移す。
それに気付いたなのはは、不意に思い付いた様子で自分の後ろに控えていた人物に声をかけた。
「キラくんはどう思った? 今のティアナの動きを見て、何か感想はある?」
その声かけに対し、なのはの後ろでティアナの訓練の様子を見ていた人物ーーキラ・ヤマトは、おもむろに口を開いた。
「……そうですね。なのはさんの言う通り、後半の乱れを含めたとしても今の動きは良かったと思います。とても初めての訓練とは思えないですね」
「………ありがとうございます」
キラの評価に幾分か声のボリュームを落としながらそっぽを向いて答えるティアナ。
その様子に苦笑しつつ、キラは言葉を続ける。
「本当に凄いと思う。僕なんてあっという間に追い越されちゃうかもね」
そう言って笑うキラの様子に、若干苛立ちを募らせるティアナ。
キラがフォワード陣の訓練に参加してからと言うもの、ティアナは常にこうだった。
初めてキラが訓練に参加したのは、初出動があった日の翌日だった。
早朝訓練に誰よりも早く来て待っていたキラは、簡単な自己紹介と適性ポジションを告げた。
その際ティアナは初めて知ったのだが、キラはセンターガードとガードウィングの両方に適性があるらしい。
つまり、ティアナとエリオのポジションを、状況に応じて使い分けているのだ。
その事実を知った時、ティアナは言い表しようのない敗北感に苛まれた。
だからこそ、この人に負けたくないとより一層強く思うようになった。
自分と同じく、魔導士としての才は凡人の域を出ないキラ。
それでも自分の上を行く彼に憧れ、同じくらい嫉妬していた。
だが、蓋を開けてみれば彼は存外甘い人間であることがわかった。
厳しくも優しいなのはの言葉とは違い、彼の言葉には厳しさが無かった。
薄っぺらい、うわべだけの言葉に聞こえてならないのだ。
(こんな男に、負けたくない!)
対抗心を剥き出しにしてキラを睨むティアナ。
そんなティアナの闘志を感じ取り、キラはより一層気まずい表情になる。
(な、なのはさん?)
(なぁに? キラくん)
(僕、ランスターさんに何かしました? なんだか凄く睨まれてるんですけど……)
(うーん、どうだろうねぇ)
不安そうに尋ねるキラに、何故か嬉しそうな様子で答えるなのは。
キラはそんななのはに益々首を傾げつつ、諦めたように溜め息を吐く。
「それじゃ!休憩が終わったら午前中の最後の実戦訓練だよ!」
そんなキラを尻目に、なのははティアナを含めたフォワードメンバーにも、モニター越しにそう伝える。
その実戦訓練という言葉に、フォワードの四人は揃って首を傾げる。
というのも、そのような訓練があるとは今朝訓練開始前のミーティングの時点では聞かされていなかったのだ。
「あの、実戦訓練って何をやるんですか?」
そんなフォワードメンバーを代表して、目の前にいるティアナがなのはに対しそう問い掛ける。
「うん、それはね……」
するとなのははふと振り返り、後ろに控えるキラの姿を一瞥する。
そして満面の笑みを浮かべてティアナに向き直ると、妙に生き生きとした様子でこう答えた。
「模擬戦だよ。フォワード四人対キラくんの、全力全開の一本勝負!」
『『『「「………………えっ?」」』』』
直後、広大な空間シミュレーターの敷地内に、五人の声が大きく響き渡った。
なかでも取り立ててキラの声は、輪をかけて大きく響いていた。
どうもはじめまして。
初めて後書きというものを書きます、ぬらりひょんです。
ここまで読んでいただいた皆様に感謝を述べると同時に、皆様にお願いしたいことがありまして後書きを書かせていただきます。
そのお願いしたいことというのは、このSSのヒロインに関してのことです。
最近感想内でヒロインの候補を挙げていただく機会が多く、僕自身も非常に悩んでおります。
というのもこのリリカルなのはという作品に登場する女性キャラクターは、皆各々違った個性と強さを持つ魅力的な女性ばかりだからです。
正直、選べません。
なのはもフェイトもはやてもシグナム姐さんもヴィータちゃんもシャマルさんもリィンもスバルもティアナもキャロもシャーリーもアルトもルキノもヴィヴィオもギンガもカリムもシャッハもオーリスもナンバーズのみんなもみんな良いです。
なので、読者のみなさんのご意見を聞き、それを参考にヒロインを選び、ストーリーを構想していきたいと思います。
と言っても、中盤までのストーリーは出来てます。
具体的には原作11話までの内容は固まっており、それ以降の展開をヒロインによって変えていこうと思っています。
なので、皆さんが選ぶヒロインとその理由(無くても構いません)を教えていただけると非常に嬉しいです。
もちろん強制ではないので、そんなのめんどくせぇよバーカしねという方は無視していただいて大丈夫です。むしろこんな面倒な作者でごめんなさい。
ちなみに、作者の一番好きなキャラはクロノくん、時点でエリオくんです。
いや、まぁほら、女の子ばかりの中で光る男の子キャラの魅力ってあるじゃないですか。
………はい、すみません。普通じゃないってのはわかってます。でも好きなんです。
スーパークロノタイムは何度も見直したし、エリオの変身シーンなんかコマ送りで見ました。
反省はしています。ですが後悔はしていません。
こんな変態な作者ですが、どうかこれからもよろしくお願いします。
PS.なのはINNOCENTのプレミアムくじの再版を引きました。金欠なので一回だけ。F賞のラバストでした。一番好きなカップリングのなのフェイを選びました。即スマホに付けました。幸せです。