魔法戦士リリカルSEED Strikers 作:ぬらりひょん
六課隊舎近くにある高台。
空間シミュレーター内で行われている訓練のようすをモニター出来るその場所に、二つの人影があった。
ライトニング分隊副隊長シグナムと、六課専属のヘリパイロット、ヴァイス・グランセニック陸曹。
航空隊時代からの同僚であるこの二人は、現在新人フォワード隊の訓練を見物しながら、それぞれ対照的な表情を浮かべている。
「いやぁ~、やってますなぁ」
操縦者用のツナギ姿のヴァイスは、 両手を腰に当てながらそう言うと、にやりと笑みを浮かべた。
「初出動がいい刺激になったようだな」
対するシグナムは、制服の姿で腕を組み、いつも通りの凛々しい顔立ちで空中に展開されている五つの空間投影モニターを眺めている。
二人とも空いた時間に訓練の様子を見に来ていたのだが、予想外に面白い事態になっている現状にそれぞれ違った意味で瞳を輝かせていた。
「いいっすね、若い連中は」
「若いだけに成長も早い。まだしばらくの間は危なっかしいだろうがな」
新人フォワード陣四人の動きを見ながら、しみじみと言うヴァイス。
一方シグナムは、彼女らの上司としての立場で彼らを見ている。
立ち位置が違うヴァイスの様な気楽さこそないが、彼女なりに新人達の成長には心躍るものがあるようではあった。
「はあ、そっすね……」
その事を理解しているヴァイスは、軽く溜息を吐いてそれに同意する。
そして、ふとシグナムの横顔へと視線を移し、伺うように声をかけた。
「シグナム姐さんは、あ~……参加しないんで?」
「……私は古い騎士だからな。スバルやエリオの様に、ミッド式と混じった近代ベルカ式の使い手とは勝手も違うし、剣を振うしかない私が、バックス型のティアナやキャロに教えられる様な事も無い」
残念そうな様子もなく、淡々と訓練に参加しない理由を語るシグナム。
そして自嘲するかのように軽く鼻で笑うと、皮肉気な口調でこう続けた。
「まぁ、それ以前に私は人にものを教えると言う柄では無い。戦法など、届く距離まで近づいて斬れ、ぐらいしか言えん」
先程も述べたように、以前からシグナムの事を知っているヴァイスからしてみれば、今の彼女の言葉は実にらしいものだった。
「なるほど、そりゃごもっともで。それじゃあ……」
そう言って、再びモニターに視線を戻すヴァイス。
そこに映し出されている人物を見ながら、改めて問い掛ける。
「たまにこいつの訓練に付き合ってやってるのは、別に鍛えてやってるわけじゃあないんスね」
「むっ?」
ヴァイスの言葉に、シグナムの表情が固まる。
見ると、そこには先程以上ににやけた表情のヴァイスの顔があった。
「………さぁな」
目線をモニターに戻し、素っ気なくそう答えるシグナム。
だが、そこそこ付き合いの長いヴァイスには、それが彼女なりの照れ隠しであることは筒抜けであった。
「……そうですか」
(全く。姐さんもさなおじゃないねぇ~)
これ以上の追求は野暮だと自重し、適当な返答をして口を閉ざすヴァイス。
そして改めて、モニターに映る人物に視線を戻す。
(ったく…羨ましいぜ)
軽薄な表情の裏に隠れた複雑な感情に、内心で少々毒づくヴァイス。
「贅沢過ぎるっての、この野郎」
それでもどうしても堪えきれず、思わず言葉が口から出てしまう。
そんなヴァイスを尻目に、少し赤くなった顔を誤魔化すように溜め息を吐くシグナム。
(全く……やはり柄でもないことはするものではないな。どこで誰が見ていかわからん)
そうして自分を落ち着かせ、モニターに映る人物、キラ・ヤマトを見る。
その瞳に浮かぶのは、相反する感情である不満と期待。
(あの姿になったということは、アレを使うつもりなのは間違いないだろう)
細めた目で憎らしげにキラを見つめるシグナム。
(この私が付き合ってやったのだ。中途半端な剣では只では済まさんぞ、ヤマト)
シグナムはそう心のなかで呟くと、それを誤魔化すようにモニターに映る映像を切り替えるのだった。
◇
キラ・ヤマトのデバイス、F4Uの第二形態。
その性能は、防御を捨て速さに特化している。
エリオやフェイトとはまた違うその圧倒的な速さを前に、ティアナは未だ対抗手段を見つけられずにいた。
「だあぁぁぁぁっ!!」
新人フォワード陣の中でエリオに次ぐ縦の速さを誇るスバルが、自身のデバイスであるマッハキャリバーの力を発揮し、目で追えない速さを持って接敵する。
だが、キラはそれを上回る速さでスバルの懐に入り込み、その剥き出しの腹部に膝を叩き込む。
「ぐっ!?」
攻撃に反応したマッハキャリバーが辛うじてバリアを展開してそれを防ぐ。
だが、続けざまに放たれた二つの魔力刃による素早い連続攻撃に対応できず、弾かれて体勢を崩してしまう。
『Twin photon zambaer.』
その隙を狙われ、高密度に圧縮された斬撃魔法を叩き込まれるスバル。
体勢を崩され踏ん張りのきかないスバルに、それを受け止めるだけの力は残されていなかった。
「ぅわあぁぁぁっ!?」
展開したバリアごと勢い良く後方に吹き飛ばされるスバル。
直撃こそ免れたが、バリアが中破したせいで何割かのダメージを直接その身に受けたスバルは、すぐには立ち上がれず膝をついてしまう。
だが、すぐに動けないのはキラも同じ。
頑丈なスバルの防御を突破する程の大技を繰り出したのだ。
術後の技後硬直は免れないだろう。
『Speer angriff.』
その隙を見逃す程、六課のフォワード陣は甘くない。
スバルの後ろに控えていたエリオは、彼女がキラと打ち合っている間にストラーダのカートリッジをロードしていた。
直後、ストラーダの槍の穂から魔力がロケットのように噴射される。
そしてスバルが吹き飛ばされるのと入れ違いに、エリオの突撃魔法、スピアーアングリフがキラを襲う。
『Variable shield.』
直後、キラが事前に発動して待機中だった魔法が発動する。
防御力を犠牲に変幻自在にその形状を変えることが出来るオリジナルの魔法『バリアブルシールド』。
それを三角錐型に展開し、エリオのスピアーアングリフを上に逸らした。
その際、威力を完全には殺せずシールド全体に罅が入る。
「術式変換」
キラの声を合図に、罅割れたシールドがその性質を変えた。
粉々に砕け散ったかと思うと、その破片一つ一つが鋭い魔力弾となり、エリオに襲いかかる。
「ッ!?」
見たこともない魔法に咄嗟に対応できず、シールドの破片を浴びてしまうエリオ。
破片一つ一つの威力は小さいが、その分数がある。
辛うじてストラーダを前に出して防御したエリオだったが、はみ出した足や肩に直撃を食らってしまう。
「させないわよ!」
更に追撃を加えようとするキラに対し、ティアナが誘導弾、キャロが直射型の魔力弾を撃ってエリオのフォローに入る。
数は四つ。
それぞれ時間差を置いて発射させ、弾道の予測をつけさせないよう変則的に動かしている。
だが、キラはその四つの誘導弾を撃ち落としもせず、防ぎもせず、切り捨てた。
限界まで引き付け、両手に持った魔力刀で舞い躍るように切り裂き、そしてそのまま流れるような動きで後ろを振り返ると、
「Photon Zamaer.」
ダメージを無視し、せめて一矢報いようと背後から奇襲を仕掛けたエリオを、一太刀で切り捨てた。
「ぐっーーあっ!?」
自分がいつ切り裂かれたのか、それすらわからないまま倒れるエリオ。
非殺傷設定なので怪我はないとはいえ、そのあまりの速さに恐怖を感じた。
「ごめんね、エリオ。怪我はない?」
「あ、はい! 身体の方は、全然!」
エリオを斬った際無意識だったのか、心配した様子で問い掛けるキラ。
それに空いている左手を動かしてエリオは無事を伝える。
「そっか、良かった」
安堵した様子で溜め息を吐くキラ。
そして改めてティアナを振り返り、挑戦的な笑みを浮かべて声をかける。
「さて、これで三対一だね」
「ーーッ」
キラのその一言に、ティアナの表情が険しさを増す。
(どうする!? エリオは戦闘不能、スバルは魔力も体力も限界が近い、私やキャロではアイツの速さに対応できない……)
思考を巡らせるティアナ。
だが、どうしても打開策が見つからない。
それほどまでに、キラの強さは圧倒的だった。
F4Uの第二形態『ハイマットフォーム』。
バルディッシュのザンバーフォーム、フェイトのソニックフォームを参考にして作られたこの形態は、一撃離脱の中近距離戦闘用にチューンナップされている。
その性能は前述した通り、全てにおいて速さに特化している。
移動速度はもちろんのこと、腕の振りやフットワーク等の身体全体を動かす速さも、ブリッツアクションを常時かけ続けることで限界まで加速させている。
そして使用する魔法は主に近距離から中距離用の魔法で、発動までのプロセスが複雑且つ魔力の消費が激しい高火力の魔法は全てオミットされている。
一瞬にして接近し、一瞬にして魔法を発動させ、一瞬にして敵を斬り裂く。
そんな単純且つ効果的な戦法が、この形態での基本戦術となる。
(と言っても、その分防御は紙も同然。魔力消費も激しいから長期戦には向かない。一応、弱点らしい弱点はあるっちゃある)
ハイマットフォームの特性を正しく理解し、その弱点も把握しているティアナ。
だからこそ、その打開策が思い付かなかった。
現状、ハイマットフォームを破る方法は二つ。
一つは、四人の連携で何とかして一撃を入れる。
一度でも直撃すれば、バリアジャケットの防御力が皆無に等しいハイマットフォームは、その耐久限界を越えて解除される。
だが、それは先程失敗に終わった。
四人の連携攻撃はことごとく回避され、返り討ちにされた。
真正面から挑んでも、現状では勝ち目が無い。
ならば、残る方法は一つ。
(相手の魔力が切れるまで、出来るだけ戦いを長引かせる残された手段はこれしかない。けど……)
そこまで考え、ふとフィールド外の空中に表示されたモニターに視線を移す。
(制限時間は残り十分。それまでアイツの猛攻を耐えられる? ただでさえ、こちらはエリオがリタイアして数が減ってるってのに……)
例え逃げに徹したとしても、エリオやスバルと違い機動力の無いティアナとキャロは真っ先にやられるだろう。
だからと言って真正面から挑んでも、攻撃が当たらないのでは魔力の無駄な浪費だ。
対策があってもそれを実行する為の戦術が思い浮かばない矛盾に、ティアナの中で苛立ちだけが募っていく。
そんな時だった。
(ティア!)
(ーーッ。スバル?)
突然かけられた声に驚くティアナ。
見ると、ぼろぼろになりながらも立ち上がり、一切の迷いも無い瞳でティアナを見つめるスバルの姿があった。
(まだやれる! 私も、キャロも、そしてティアも!)
(………スバル)
スバルの声に、姿に、胸中で渦巻いていた迷いや苛立ちを忘れるティアナ。
(そうです、ティアナさん! 私も精一杯お手伝いします!)
傍らのキャロも、補助と回復魔法の連発で疲れきっている筈だが気丈に振る舞ってティアナの背中を押してくれる。
(……そうね。苛々してたってどうしようもない。向こうは一人で、私にはこの子達がついてる。それが何よりのアドバンテージじゃない)
迷いを振りきり、再び奮い立つティアナ。
思考はいっそシンプルに。
出来ないことはやらない。
今の自分に出来ることを全力全開でやるしかない。
(……ありがと)
そう一言感謝の気持ちを呟くと、改めてキラの姿を見て表情を引き締める。
(二人とも、聞いて。最後の作戦よ)
そして、新人フォワード陣のラストアタックが始まる。
◇
一方のキラも、徐々に限界が近付いていた。
(魔力は残り三〇パーセント以下。制限時間を考えると、全力での戦闘は残り一回が限度か)
ハイマットフォームの弱点である魔力消費量。
それは予想以上に戦闘に支障を与えていた。
(今までの攻撃ではスバルの防御を完全に突破出来ない。防御ごと切り裂くには、もっと大きな魔力を高密度に圧縮しなきゃ……)
そこまで思考して、一つの可能性に思い当たるキラ。
恐らく、スバルの防御を破らなければこちらの勝率は大きく落ちる。
だがそれさえなんとかなれば、勝利はほぼ確定したも同然だ。
(なら、やるしかないよね)
そう心の中で呟き、数メートル先に視線を移すキラ。
そこには、迷いなき瞳でキラを射抜くティアナの姿がある。
(向こうも、覚悟を決めたみたいだし)
そして、二振りあった魔力刀の内、一本を腰の専用アタッチメントにマウントすると、姿勢を低く保って居合いのそれに似た構えをとる。
そんなキラの様子の変化にも、ティアナ達の顔に戸惑いは無い。
その姿からキラは悟る。
彼女達は、次の攻防に全てをかけるつもりだ。
(うん。それでこそ…だ)
迎え撃つ構えのキラ。
ティアナ達の全力を、自らの全力を応戦するという意思表示だ。
それを受けたティアナ達が、次の瞬間動いた。
スバルが飛び出し全速力でキラに接近すると同時に、その背後に向けてティアナが魔力弾を撃ち放つ。
すると、キラの位置からはスバルの背後にある魔力弾が見えず、その弾道を予測出来なくなる。
(波状攻撃か。だけどっーー)
スバルの攻撃に応じる構えのキラ。
魔力弾がスバルの背後にある以上、直射型なら必ずスバルが弾道から逸れる動きをするはずだ。
誘導制御型なら、直前に展開してその弾道を確認出来る。
どちらにしても、このハイマットフォームなら対応できると判断したキラは、その場から動かずに迎え撃つ選択肢を選んだ。
だが、次の瞬間その予想は大きく外れた。
「リボルバァァァっ!」
スバルが選んだのは、近接用の魔法ではなく中距離射撃型の魔法だった。
「シュウゥゥゥトッ!」
気合いと共に打ち出される魔力弾。
常人からすれば脅威となるその魔力弾だが、
「遅い!」
キラから見ればあまりに遅い。
自分の間合いに入った瞬間、目にも止まらぬ速さでそれを切り捨てる。
そして、スバルが停止すると同時に展開した三つの魔力弾が目前に迫る。
予想通りの誘導制御型の魔力弾。
この程度の速度なら、返す刀で全て斬り落とせる。
そう判断して二つまで斬り落とし、最後の一つに目を向けたその時だった。
「ーーッ」
気付いた。だがもう遅い。
既に動き始めた身体は止まらず、寸分の狂いもなく最後の魔力弾を斬り裂く。
同時に眩いばかりの閃光がキラの視界を襲った。
(閃光弾かっ!)
そう、ティアナは放った三つの魔力弾の内、最後の一つに幻術魔法をかけ、魔力閃光弾を紛れ込ませていたのだ。
威力こそ大したこと無いが、その光は人間の視界を殺すには十分過ぎる程の輝きだった。
だが、直前に気付き視線を逸らしたおかげで致命的な隙にはならず、視界もすぐに回復したキラ。
そして飛び込んできたのは、
「「「はあぁぁぁぁっ!!」」」
目前に迫る、三つの鋭い拳だった。
「ーーっ!」
咄嗟に反応し、向かいの拳の下を潜り抜けるようにして回避するキラ。
そうしてすぐさま距離を取り、その光景を目の当たりにする。
「「「まだまだっ!」」」
三人のスバルが、キラに襲い掛かろうと再び駆け出していた。
「ティアナの幻術か!」
その正体に気づき、迎え撃つキラ。
先程はその幻術魔法にしてやられたが、種さえわかれば対処できる。
繰り出される三人のスバルによる拳の連打を掻い潜り、冷静に一太刀を浴びせるキラ。
一体目が消失。
同時に襲いかかる拳を魔力刀の腹の部分で受け流し、返す刀で袈裟斬りに身体を斬り裂く。
二体目が消失。
そして最後の一体。
本物であるはずのそれに横凪ぎの一撃を入れようと構えたその瞬間、
「ーーーッ!?」
上空に突如出現した白龍の姿に、思わず目を見開いて驚いた。
(幻術魔法を並列処理!? そんなことがーーっ!)
オプティックハイド。
ティアナが使う幻術の一種で、術者と術者に接触した対象を透明にし、見えなくする魔法だ。
身体や衣服の上に複合光学スクリーンを展開し不可視状態にするそれは、人ならざるものにも効果がある。
それを利用して龍魂召喚後のフリードを隠し、上空に待機させていたのだ。
「ブラストレイッ!!」
フリードの背に乗るキャロから魔力を供給され、フリードが魔力砲を撃ち放つ。
「くっ!?」
スバルを斬り裂く動作に入っていたキラはそれを受けきれないと判断し、ブリッツアクションで強引に身体を動かしてその場を離脱する。
が、完全には回避出来ず、炸裂した魔力に巻き込まれてしまう。
「F4U!」
『Photon Zambaer shoot.』
ダメージを受けながらも、即座に反撃を行う。
中距離用の斬撃魔法を撃ち出し、空中のフリードに応戦するキラ。
「キャアァァッ!」
まさか直後の反撃があると予想していなかったキャロは、それを回避出来ずに直撃を食らってしまう。
そもそも、補助、回復魔法の連続でほとんどの魔力を使い果たしていたのだ。
そんなキャロに、全開のフリードを操るだけの魔力は残されていなかった。
「ごめんね、キャロ」
落ちるキャロの真下にフォールディングネットを展開し、受け止めるキラ。
これでキャロも戦闘不能だ。
残るは二人。スターズのティアナとスバル。
そこでふと、キラの脳裏に疑問が浮かぶ。
先程斬り逃したスバルはどこに行ったのか?
まさか、フリードの放った砲撃魔法に巻き込まれたのか?
否、それはない。
いくら突撃思考のティアナでも、仲間を犠牲にするような戦術を実行するはずがない。
ならば、答えは一つ。
(あれも幻術! なら、本体はっ!?)
直後、膨大な魔力の奔流に大気が揺らぐ。
振り向くと、そこには二人分のオプティックハイドを解除したティアナと、ありったけの魔力を注ぎ込んだ魔力スフィアを展開するスバルの姿があった。
「二つのオプティックハイドにフェイクシルエット。結構キツかったけどなんとか上手くいったわ」
あまりの疲労に片膝をつく自分を守るように立つスバル。
その頼もしい背中に、ティアナは語りかける。
「だからーー後は頼んだわよ、相棒」
「うん、任せてティア!」
そしてスバルが放つのは、なのはへの憧れから編み出した自身最大火力の砲撃魔法。
文字通り、全力全開の一撃だ。
それに対し、キラは先程のダメージが残っているせいで回避は難しい。
残る手段は一つ。
こちらも全力全開で迎え撃ち、打ち破る他無い。
「カートリッジロード」
キラの声に反応し、F4Uがカートリッジをロードする。
その数は三。
瞬間的に魔力がみなぎり、その全てを一振りの魔力刀に込める。
圧縮した魔力が限界まで高まり、眩いばかりの閃光を放つ。
その圧倒的な魔力の輝きを前に、スバルは一歩も引かない。
「一撃…必倒っ!」
「いっけぇぇぇっ!スバルゥゥッ!!」
そして、展開した魔力スフィアを左手で保持し、
「ディバインッ…バスタァァァァァッッ!!」
全ての想いを乗せた右拳で、勢いよく撃ち出した。
撃ち出された魔力砲は、その名に恥じぬ威力をもってキラへと迫る。
だが、キラはそれを真っ向から迎え撃つ。
その手に握る刀には、この技を受け継いだ覚悟と責任が乗っている。
「一刀…両断っ」
眩い光が刀身に集束し、魔力が臨界点まで高まる。
変換した魔力を武器に付与し、斬撃として撃ち出す。
そんなベルカ式の基礎にして奥義と言われる技を、キラはその手で撃ち放つ。
「極光……一閃っっ!!」
放たれたのは魔力を高密度に圧縮した光の刃。
光の速さで放たれたそれは、スバルのディバインバスターとぶつかり合い、拮抗する。
「くっ……あ"あぁぁぁぁっっ!!」
「 はあぁぁぁぁぁぁっっ!!」
炸裂する魔力の奔流。
お互いに譲れない想いがあり、負けたくない理由がある。
「撃ち…砕けえぇぇぇぇぇっ!!」
「斬り…裂けえぇぇぇぇぇっ!!」
そんな二人の想いと力を乗せた魔法は、決して譲ることはない。
そしてそれはついに限界を迎え、激しく爆発した。
発生した魔力爆発によって、辺り一帯が爆煙に包まれる。
ティアナの視界には、爆発の余波に吹き飛ばされ膝をついたスバルの姿のみだ。
「スバル、無事!?」
「あたた……だ、大丈夫。魔力切れで立てないだけだから」
ティアナの心配する声に、頭を掻きながら苦笑いで答えるスバル。
それに安堵の笑みを浮かべ、直後に表情を引き締める。
微かに、だが確かに聞こえた。
それは、徐々にこちらに近付いてくる足音だ。
「ーーッッ!」
そしてそれが目前に迫った瞬間、正面にクロスミラージュの銃口を突き付けるティアナ。
煙が晴れ、そこに姿を現せたのは、
「………僕の負けだね」
魔力刃が消失したF4Uを肩に担ぎ、バリアジャケットを解除した姿で、困ったような笑みを浮かべたキラ・ヤマトの姿だった。