魔法戦士リリカルSEED Strikers   作:ぬらりひょん

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PHASE-32

機動六課 隊舎 食堂

 

キラと新人フォワード陣との模擬戦が終了した後、なのはを含めた隊長陣から総評を貰い、朝の教導は終了した。

そして新人の四人は、各々シャワーで汗を流した後食堂で一緒に昼食を取っているわけなのだが……。

 

「……………」

 

場の空気は、お世辞にも良いとは言えなかった。

というのも、模擬戦が終了してからずっと、ティアナの機嫌が優れないのだ。

 

「……あのー…ティア?」

 

一人仏頂面で黙々と食事を進めるティアナ。

そんなティアナに、スバルは恐る恐る声をかける。

 

「………………」

 

「ティア? ティアナさーん? 聞こえてますかー?」

 

かけられた声を無視して食事を続けるティアナの顔を横から覗き込み、わざとらしく目の前で掌をひらひらと動かすスバル。

端から見ても鬱陶しいその行動に、さすがのティアナも業を煮やしてフォークを置いた。

 

「……っさいわねもう! あによ!?」

 

目の前でひらひらと動く手を払い除け、横目でスバルを睨み問い掛けるティアナ。

スバルは払い除けられた手を擦りながらそれに答える。

 

「あによ、じゃないよティア。そんな顔してたらせっかくのお昼ご飯も美味しくなくなっちゃうでしょ?」

 

頬を膨らませ、ティアナ以上に不機嫌そうな顔でそう不満を漏らすスバル。

それに対し、ティアナは面倒くさそうに表情を歪めた後、諦めた様子で溜め息を吐いた。

 

「………悪かったわね」

 

「うん!ご飯は楽しく食べなきゃね!」

 

満面の笑みを浮かべて答えるスバル。

その様子に毒気を抜かれたティアナは、少し落ち着いた様子で正面のエリオとキャロに顔を向ける。

 

「エリオとキャロも悪いわね。私、少しナーバスになってたわ」

 

「い、いえ!」

 

「だ、大丈夫です!」

 

素直に謝罪するティアナに、先程まで気まずい雰囲気だったエリオとキャロの顔にも笑顔が戻る。

 

「ほれにひても……んぐっ。なーんでそんなに不機嫌そうなの? キラさんにも勝てたし、なのはさんにも褒められたのにー」

 

食事を再開しながら、心底不思議そうに問い掛けるスバル。

その言葉通り、あれだけ勝利に拘っていたキラとの模擬戦は見事勝利をおさめ、その総評の際にはなのは達から賞賛の言葉を貰った。

一見すると、ティアナが不機嫌になる要素は無いように見える。

 

「………やっぱり、気付いてなかったのね」

 

そんなスバルの問いに、呆れた表情を浮かべるティアナ。

二人の様子に首を傾げるエリオとキャロは、おずおずとティアナに問い掛ける。

 

「あの、ティアナさん……」

 

「気付いてない…って?」

 

「……うっ」

 

二人の純粋な瞳に見つめられ、ティアナも誤魔化すことが出来なくなる。

 

「………本気じゃなかったのよ」

 

呟くようにそう答えるティアナ。

 

「「「……え?」」」

 

その答えに、ティアナ以外の三人が再び首を傾げる。

それに一つ溜め息を吐くと、改めて三人に向けてはっきりと答える。

 

「要するに……先の模擬戦、本気じゃなかったのよ…アイ…ヤマト一等空士」

 

憎らしげな表情で告げるティアナ。

その事実に、スバルが眉を潜めて問い掛ける。

 

「え、でも……なのはさんも、キラさんには全力で…って」

 

「えぇ、確かに全力ではあったわよ。けど、本気ではなかった」

 

そう答え、頬杖をついて視線を逸らし、再び不機嫌さを露にするティアナ。

 

「魔力も魔法も確かに全力で、出し惜しみなんかしてなかった。けど、あの人の戦い方はあくまで教導の域を出ていなかったのよ。つまり、私たちの潜在的な力を引き出すため、私達にレベルを合わせた戦い方をしていた、ってわけ。全く……私も終わった後、冷静になって気付いたわ」

 

そう言って、昼食のスパゲッティをフォークでひと巻きして口に運ぶ。

 

「えっ?」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

ティアナから告げられた真実に驚く三人。

三人とも、てっきりキラは全力で相手をしてくれていたと思っていたのだ。

 

「恐らく、アイツが本気になったのは二度だけ。エリオに奇襲を受けた時と、スバルとの最後の一騎討ちの時だけよ」

 

言っているうちに腹が立ってきたのか、その表情は益々不機嫌さを増していく。

だがそれでも言葉を止めなかったのは、彼女のプライドがそれを許さなかったからだろうか。

 

「えっ!? ぼ、僕もですか?」

 

話を聞いていたエリオが自分の名前が出たことに驚き、声を挙げる。

その驚きは先程の非ではなく、思わず持っていたフォークを取り落としてしまう程だ。

 

「そうよ。エリオから奇襲を受けたあの時、あの人の動きには一切の容赦が無かった。つまり、完全に不意をつかれ、無意識に身体が動いたのよ」

 

「なるほどー。通りで他の攻撃とは速さが段違いだったわけだ!」

 

ティアナの解説とスバルの感心した声に、エリオはまんざらでもない様子で照れたように顔を逸らす。

と言っても、成す術もなく切り捨てられたことには悔しさが残っているようで、その表情も一瞬で切り替わる。

 

「でも、そうですね。ティアナさんの言う通りだとしたら、確かに悔しいです」

 

「はい。キラさんが強いのは知ってましたけど、それでも、私達もそれなりに成長しているつもりでしたから……」

 

「キュクルー」

 

悔しげな表情を見せるライトニングの二人とフリード。

普段から世話になっており、接する機会も多いせいで忘れていたようだったが、魔導士としてのキラ・ヤマトと自分の力量の差に少々ショックを受けているようだった。

 

「う~ん、そっか。でも、仕方ないことじゃないかなぁ」

 

そんな中、スバルは一人呑気な声で答える。

その表情は、ティアナの様に苛立っているわけでもなく、エリオやキャロのように沈んでいるわけでもない。

 

「なにせキラさんって、あのなのはさんの一番弟子で、フェイトさんの執務官補佐なわけでしょ? 昨日今日なのはさんの教導を受けたばかりの私達じゃ、束になっても勝てないのは……悔しいけどしょうがないよ」

 

その表情はむしろ晴れやかで、悔しさを受け止め、それでも純粋に前だけを見ていた。

 

「だからさ、今度戦う時までにもっともっと強くなって、今度こそキラさんを本気にさせてみせる! その為にも、午後の訓練頑張んなきゃね!」

 

そう言って輝くように笑うスバル。

それを見るエリオとキャロの顔にも、自然と笑顔が伝染していく。

 

「はい! 僕達も頑張ろうね、キャロ!」

 

「うん! 負けないよ、エリオくん!」

 

お互い頷き、笑い合う二人。

二人もスバルに触発され、悔しさを乗り越えて前を向くことができたようだった。

だがその傍らで、ティアナだけが眩しそうにその光景を眺めている。

 

(……私は、スバルのようには割り切れない。才能の無い私にはスバルやエリオ達とは違ってのびしろがない。このままじゃ、いつまで経ってもアイツに追い付けやしないわ)

 

思わず拳に力が入り、握りしめたフォークがくの字に折れ曲がる。

だが、そんな些細なことが気になる程、ティアナの心に余裕はなかった。

 

(才能がない私が強くなるには、才能がある奴らの倍努力するしかない。それが、唯一にして一番の近道)

 

そう心に決め、この場にはいない自身のライバルに想いを馳せるティアナ。

 

(見てなさい。私は自分なりのやり方で、アンタを越えてみせる)

 

その瞳は、決して折れない不屈の意思と、手段を選ばない一種の危うさが秘められていた。

 

 

 

 

 

 

時空管理局 首都中央地上本部

 

 

「レリック事態のデータは以上です」

 

「封印はちゃんとしてあるんだよね?」

 

地上本部内に設置された、地上の様々なデータが管理された施設内に、二人の姿はあった。

シャリオ・フィオーニとフェイト・T・ハラオウン。

捜査主任であるフェイトとその補佐を勤めるシャーリーは、現在先日回収されたレリックとガジェットドローンのデータを確認するため、六課を離れ地上本部に足を運んでいた。

 

「はい、それはもう厳重に。それにしても、よく分からないんですよね、レリックの存在意義って」

 

モニター前の椅子に座り、フェイトの指示通りにキーボードを操作しデータを確認していたシャーリーが、ふとそう首を傾げた。

モニターに映るのは赤い宝石の様な結晶。

言わずと知れたレリックである。

 

「エネルギー結晶体にしてはよく分からない機構があるし、動力機関としても何だか変だし……」

 

「まぁ、直ぐに使い方が分かるようなものならロストロギア指定はされないもの」

 

シャーリーの疑問に、苦笑しながらフェイトは答える。

確かに彼女の言う通り、それが簡単に解明されるようなものであるなら、管理局本部もロストロギアとして認定はしないだろう。

そうしている間にも、モニターの映像は変わり続ける。

 

「あ、こっちはガジェットの残骸データ?」

 

ふとフェイトが反応を示したのは、先日の出動で回収した新型ガジェットの残骸データだ。

 

「はい。こっちはヴィータさんやシグナムさんが捕獲してくれたものと変わらないですね。新型は内部機構自体は大差ないし……」

 

フェイトの問いに答えつつ、シャーリーは手を休めることなくキーボードを操作して次々と画面を切り換えていく。

とその時、ある画像に切り替わった瞬間、フェイトの顔色が一瞬にして変わった。

 

「あっ、ちょっと戻してくれる? さっきの三型の残骸写真」

 

「え? あ、はい」

 

「たぶん、内燃機関の分解図」

 

「というと…この辺りとか?」

 

「それ!」

 

フェイトの指示通りに画面を戻すシャーリー。

映し出されたのは、内部が剥き出しになったガジェットドローン三型の残骸写真だ。

その中心部に設置された、青い宝石の様なものに、フェイトの目が奪われる。

 

「これ、宝石? エネルギー結晶か何かですかね?」

 

その宝石の画像を拡大し、首を傾げるシャーリー。

一般の局員からしてみれば、それが何であるかなど想像もつかないだろう。

その問いに、フェイトが答えようとした瞬間だった。

 

「ジュエルシード。次元震を発生させる程の力を持った

ロストロギア指定の次元干渉型エネルギー結晶体だよ」

 

不意に、二人の背後から疑問に答える声が聞こえてきた。

慌てて振り向くと、そこには脇に結構な量の資料を持ったキラの姿があった。

シャーリーと同じ、フェイトの執務官補佐であるキラも、この調査に同行していたのだ。

 

「キラさん」

 

「お疲れさま、キラ」

 

「はい、お疲れさまです。本局のデータベースから見つけてきた一連の事件と関連性の高い資料、持ってきました」

 

持ってきた資料を二人に見せるキラ。

その量に、フェイトは頼もしそうな、シャーリーは若干呆れ気味な笑みを浮かべる。

 

「相変わらずの情報収集能力ですねー。もういっそ無限図書に転属したらどうですか?」

 

「でも、凄く頼りになるよ。ありがとうキラ」

 

そう言ってキラから資料を受けとるフェイト。

その隣に座り端末を操作するシャーリーが、ふと疑問そうに首を傾げ、キラに問い掛ける。

 

「ていうか、何でキラさんがこの結晶体のこと知ってるんですか? えっと…ジュエルシード…でしたっけ?」

 

「うん。随分昔に、私となのはが探し集めてて、今は本局の保管庫で管理されてるはずのロストロギアなんだけど……」

 

シャーリーの疑問に便乗し、フェイトも首を傾げてキラを見つめる。

そんな二人の疑問に答えるように、キラはフェイトに渡した資料を指さした。

 

「僕も今日初めてその存在を知りました。その資料にも記載されてるんですが、どうやら少し前に本局から地方へと正式な手続きを通して貸し出されていたジュエルシードが、何者かの手によって盗まれたらしいんです」

 

「えっ?」

 

キラの報告に、フェイトの表情が険しくなる。

ジュエルシード関連の事件に関わった者として、その危険性を身をもって経験しているフェイトだ。

事の重大性を誰よりも早く理解したのだろう。

 

「なるほど……って、じゃあこれはその盗まれたジュエルシードってことですか?」

 

「わらない。けど、その可能性は高いーーッ!」

 

改めて画面の中のジュエルシードを見るシャーリーとフェイト。

内フェイトの瞳が、その画面に映るある一点を捉えた。

 

「シャーリー!そこの上の部分、もっと拡大して!」

 

「ぅえっ!? は、はいっ!」

 

突如出された指示に驚きながらも、言われた通りに端末を操作するシャーリー。

そうして拡大された画像に映し出されたのは、赤い盤面上に無数に走る白いラインと、その上にある黄色いプレートに書かれた文字だった。

 

「これ、名前ですか? ジェイ……」

 

「ジェイル・スカリエッティ 」

 

シャーリーの言葉を引き継いで答えるフェイト。

その名を呟く顔と声からは、深い因縁のようなものが感じられた。

 

「様々な事件に数えきれないくらい関与している、超広域にわたって指名手配されている一級指名手配犯の一人。キラは知っているよね?」

 

「はい。少し前からフェイトさんが追ってる指名手配犯ですよね。ロストロギア関連の事件に数多く関わっているとされている……」

 

「うん。多分彼は、この事件に私となのはが関わっているのを知っているんだ」

 

そこまで言うと、フェイトは一旦言葉を切り、暫く考えてから再び口を開く。

 

「これが本当にスカリエッティだとしたら、ロストロギア技術を使ってガジェットを製作できるのも納得できるし、レリックを集めている理由にも想像がつく……」

 

そういうと、フェイトは傍らのシャーリーに視線を移して続ける。

 

「シャーリー。このデータをまとめて、急いで隊舎に戻 ろう。隊長たちを集めて緊急会議をしたいんだ」

 

「はい!今直ぐに!」

 

指示に従い、データのまとめを開始するシャーリー。

彼女程の腕があれば、数分とかからずに作業は終わるだろう。

その腕を信頼しているフェイトは、シャーリーの側から離れ、自分も隊舎へと戻る準備を始める。

そんな彼女の隣に、ふとキラが並んだ。

見ると、彼にしては珍しい程険しい面持ちでフェイトの顔を見つめている。

 

「フェイトさん。一連の事件、本当にスカリエッティが関わってるとしたら……」

 

言葉の続きは、口にしなくても想像はついた。

スカリエッティは、生命操作や生体改造に精通している。

そんな彼が興味を示しそうな人物に、二人は心当たりがあった。

 

「………うん。多分、彼なら確実に目をつけると思う」

 

冷静な声で答えるフェイト。

だが、その心中は穏やかではないだろう。

何せ、誰よりも家族や仲間を大切に思うフェイトのことだ。

身内が危険な人物の興味対象となる事実に対し、何も思わない筈がない。

 

「………大丈夫です」

 

そんなフェイトの心中を察したキラは、真っ直ぐに前を見て力強く断言する。

 

「フェイトさんの大切なものは……部下である僕が、この身に代えてでも守ります」

 

「ーーッ」

 

不屈の心を宿したその横顔が、親友のそれに重なるフェイト。

そして、その危うさも知ってるからこそ、フェイトは不安になる。

 

「………何、格好付けてるの!」

 

「ーーえっ、ぐぉっ!?」

 

突然、衝撃と激しい痛みを感じるキラ。

見ると、フェイトの肘がキラの鳩尾にめり込んでいた。

 

「げほっ、ごほっ! な、何するんですか!?」

 

「そんなこと言って、私からあの子達を奪うつもりでしょ!」

 

「はい!? な、なんの話ですか!?」

 

「それになのはも! 私知ってるよ!最近なのはを見る目がちょっとイヤらしいよね!」

 

「そ、そそそんなことありませんよ! なんの言い掛かりですか!?」

 

問い詰めるフェイトに、あからさまな動揺を見せるキラ。

先程までの雰囲気は何処へやら、いつも通りのキラへと戻っている。

そんなキラの様子に思わず安堵し、自然と笑みが漏れるフェイト。

 

 

【挿絵表示】

 

 

(そうだ。キラだって、私の大切な仲間の一人……)

 

笑みを溢しながら、改めてキラの横顔を見つめるフェイト。

そう、スカリエッティの興味対象といえば、キラも例外ではない。

異世界から来た、遺伝子操作を行った新たな人種であるコーディネーター。

その一人であるキラがスカリエッティの目に止まれば、狙われる可能性は十分にある。

 

(私の大切な人達は、誰一人傷付けさせやしない)

 

心の中で決意を固めるフェイト。

その瞳にも、キラと同じ不屈の心が宿っていた。




ご愛読いただきありがとうございます。
作者のぬらりひょんです。

前回に引き続きの後書きとなりますが、今回は感謝の気持ちを述べさせていただきます。
感想、またはご意見板に貴重なご提案や意見を書いてくれた皆様、本当にありがとうございました!
お陰さまで更に物語の方向性が固まり、ヒロイン候補もある程度絞り込むことができました。
まだまだ意見やご要望、提案などはご意見板にて受け付けておりますので、遠慮なくドシドシ書き込んでやってください!
こらからも、魔法戦士リリカルSEED strikersをよろしくお願いいたします!
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