魔法戦士リリカルSEED Strikers   作:ぬらりひょん

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PHASE-4

魔法。

それは管理局管理下世界のほとんどに存在する魔力素を特定の技 法で操作し、作用を発生させる技術体系。

術者の魔力を使用し変化の作用を起こす事象。これら作用を望む効果が得られるよう調節し、または組み合わせた内容をプログラムと言い、用意されたプログラムは詠唱・集中などのトリガーにより起動される。

その為、数学や物理といった理系的な知識が魔法の構築や制御には重要になる。

つまり、魔法は自然摂理や物理法則をプログラム化し、それを 任意に書き換え、書き加えたり消去したりすることで作用に変える技法である。

 

「防御魔法プロテクション、正常に起動。残存魔力15%低下。戦闘続行に問題なし。続けて攻撃魔法プログラムを起動。詠唱を開始」

 

その原理を、キラは昨日なのはから話され、理解した。

勿論、理解はしたが実際に魔法が使えた訳ではない。

現に、最も初歩的な魔法である念話さえ、昨日はろくに使えなかった。

だが、今のキラは違う。

なのはから得た知識とデバイスから得られる情報を元に、どうすれば魔法を使えるのか、自然と理解出来た。

自分の身体の状態、リンカーコアの状態、周囲の状況と魔力素。

あらゆる情報がキラの脳裏に流れ込んでくる。

 

「フォトンバレット・マルチシフト」

 

『Standby.』

 

その情報から、この状況を打破する方法を導きだし、実行する。

 

「チッ!おいおい、魔法の存在は昨日知ったばかりなんじゃねぇのかよ!」

 

キラの詠唱に魔力が反応し、6つの魔力弾が形成される。

込められた魔力は決して大きくはない。

これまで数々の魔導士との戦闘を経験してきたミゲルにとって、脅威にはなり得ない。

だが、

 

「とてもじゃないが、素人とは思えねぇなぁっ!」

 

だが、その光景はミゲルのプライドを大きく傷つけた。

何せ、ミゲルは魔法を知った当初、魔力弾の形成すらまともに出来なかったのだ。

まともに魔法が使えるようになったのは、それから更に1ヶ月後のことだった。

 

「シュート」

 

『Fire.』

 

それを、キラは意図も簡単に使いこなしているのだ。

ミゲルにとって、それは屈辱以外の何物でもなかった。

 

「そんなものがっ!」

 

キラが形成した6つの魔力弾がミゲルを襲う。

フォトンバレットと呼ばれるその魔法は、直射型の基礎的な射撃魔法だ。

シンプルだが、使う者が優秀であればその分強力になり得る。

 

(威力、発生速度、射程、それぞれC、B、B、ってとこか)

 

6つの魔力弾を回避、または撃ち落として対処しながら、ミゲルはキラの魔法を分析する。

だが、

 

『Ring Bind.』

 

「なっ!?」

 

突如、デバイスを持つミゲルの右手首が拘束された。

 

「設置型のバインドか!」

 

リングバインド。

発生させたリングで敵を拘束するバインド系の基礎的な魔法だ。

基礎的な魔法なので拘束力は低い。

だが、

 

「ちっ!次から次へと!」

 

発生までの時間が短く、応用力も高い。

あっという間にミゲルの左手首までもが拘束された。

 

「こんなものっ!」

 

魔力を込め、右手首のバインドを強引に破壊するミゲル。

拘束するのも早いが、破壊されるのも早い。

ましてや、使用者がキラのような素人だと尚更だ。

 

「フォトンバレット・マルチシフト」

 

『Standby.』

 

それに構わず、キラは再びフォトンバレットを6つ生成し、自分の周囲に滞空させる。

それを見て、ミゲルはほくそ笑む。

確かに、キラの射撃魔法は素人とは思えない程完成度が高い。

だが、それでも所詮は素人が使う基礎魔法だ。

肝心の威力がCでは、ミゲルの防御を破ってダメージを与えるには至らない。

 

「収束」

 

だが、それはキラも承知していた。

故に、その解決策も用意していた。

キラの声を合図に、周囲に滞空していた6つのフォトンバレットが螺旋状に収束し始める。

 

「一点突破っ!フォトンバレット・スパイラルシフトッ!」

 

『Fire.』

 

そして、放たれる螺旋の収束射撃魔法。

6つのフォトンバレットを収束させ、貫通力に特化させたフォトンバレット・スパイラルシフト。

 

「こいつはっ!」

 

流石のミゲルも、これには表情が凍り付いた。

まともに食らえば只では済まないことなど火を見るよりも明らかだ。

 

「インヴォークッ!」

 

『Protection.』

 

すかさず防御魔法を展開するミゲル。

そして、衝突するキラとミゲルの魔法。

迸る魔力同士のぶつかり合いは、若干ではあるがキラが押していた。

 

「ッ!インヴォークッ!カートリッジロード!」

 

その声に応えるように、ミゲルが持つ剣型のアームドデバイス、インヴォークの柄の部分がスライドし、カートリッジがロードされる。

瞬間的に爆発的な魔力を得たミゲルは、その全てをプロテクションに注ぎ込む。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

「おおぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

 

互いに全力の魔力をぶつけ合うキラとミゲル。

だが、カートリッジで魔力を上乗せした分、ミゲルのプロテクションは破れる気配がない。

そして遂に、キラのフォトンバレットを最後まで防ぎきった。

 

「ハッ、どうだ!素人の魔法なんざ所詮はこんなもんだっ!」

 

そう言って、すぐさま反撃に移る為バインドを破るミゲル。

そのバインドを破る為の一瞬の硬直。

それこそが、キラの本当の狙いだとは気付かずに。

 

『Quick Move.』

 

「なっ!?」

 

ミゲルがバインドを破ったその瞬間、キラの姿は既に目の前にあった。

クイックムーヴと呼ばれるその魔法は、陸戦魔導士が好んで使用する高速移動魔法だ。

 

(こいつ、どこまでーーッ!?)

 

キラの順応性の高さに驚くと同時に、目の前に迫った危機にミゲルの身体が無意識に反応した。

アームドデバイスを持つ右手で片手突きを繰り出す。

だが、キラはその突きを汎用デバイスで無難に受け流し、更に懐へと踏み込む。

 

(もらった!)

 

それを見て、ミゲルはバインドを破ったばかりの左拳に魔力を込める。

デバイスによる斬撃には劣るが、魔力で強化した拳は生身のキラにとって十分脅威になり得る。

更に、今攻撃を受け流したばかりのキラよりも、確実に速く攻撃出来る。

そうして、怯んだキラの身体に再度斬撃を繰り出せば、この戦闘は終わる。

ミゲルの勝利という結果だけを残して。

その確信が油断となり、

 

「なっ!?」

 

キラに絶好のチャンスを与えた。

 

(こいつ、折れた左手をーーッ!)

 

予想に反して、キラの攻撃が先にミゲルの身体を捉えた。

折れた左手が、ミゲルの鳩尾に触れていたのだ。

 

「ブレイク」

 

そして唱えられる詠唱。

 

『Impulse.』

 

その詠唱にデバイスも応える。

次の瞬間、

 

「ぐっーーおおぉぉぉぉぉぉぉっっ!?」

 

キラの左掌から魔力が迸り、ミゲルのバリアジャケットを粉砕した。

 

ブレイクインパルス。

杖、または素手での接触により、目標の固有振動数を割り出した上で、それに合わせた振動エネルギーを送り込んで目標を粉砕する魔法。

それを、キラは折れた左腕で繰り出した。

 

(その分、こっちの左腕はもう使い物にならない。でも、ゼロ距離での近接打撃粉砕魔法。これならっ)

 

確実に、ミゲルにダメージを与えたはずだ。

その確信から来る虚脱感に、キラの身体に蓄積されていたダメージが思い出したように溢れだし、堪らず膝を着く。

これ以上はもう動けそうになかった。

冷静な思考が、自分の身体の状態を分析した上でそう告げていた。

 

(残存魔力10%以下に低下。左腕は使用不能。バリアジャケット未展開でのクイックムーヴの使用による全身へのダメージも無視出来る範囲を越えている。これ以上の戦闘続行は不可能。これでダメなら、もう)

 

祈るようにミゲルの様子を伺うキラ。

魔力爆発により巻き起こった土煙は未だに晴れず、ミゲルの姿は確認出来ない。

 

「あ~ぁ。俺としたことがまぁた忘れてた」

 

だから、土煙の中から聞こえてきたその声は、キラの敗北を決定付けるものとなった。

 

「油断して、思わぬ反撃を受けて、カッとなって熱くなって……それが俺のいつもの敗北パターンじゃねぇか」

 

その声と同時に土煙の中から姿を現すミゲル。

その姿は、先程までのミゲルとはまるで違っていた。

バリアジャケットは中破し、自信に満ち溢れていたその表情みもなりを潜めていた。

だが、今のミゲルから漂う闘気は、先程までとは比べ物にならない程溢れていた。

 

「だからよ、もう油断も驕りもなしだ。素人だろうがなんだろうが関係ねぇ。ーー全力で、お前を倒す」

 

そして、ここに来てようやくミゲルは片鱗をみせる。

 

「インヴォーク」

 

『Twilight mode. Drive ignition.』

 

魔導士ミゲル・アイマンの、全力全開の力を。

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