魔法戦士リリカルSEED Strikers   作:ぬらりひょん

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PHASE-7

その日、八神はやてとフェイト・T・ハラオウンは友人の高町なのはに付き添う形でキラ・ヤマトが入院しているの病院に来ていた。

戦闘があったあの日から三日が経ったが、キラは未だに意識を取り戻していない。

命に別状はないとのことだったが、かなりの重症だった。

それでも、担当した医者が言うには、普通の人間ならこの程度では済まなかったらしい。

話には聞いていたものの、改めてコーディネーターという種族の凄まじさを思い知った。

 

「とは言え、今回の件は完全に私の判断ミスや」

 

「もう、いい加減聞き飽きたよはやて。はやて一人のせいじゃないって何度言えばわかるの?」

 

そんな二人は今、中庭にあるベンチで缶コーヒー片手に並んで腰掛けていた。

わかりやすく項垂れているはやてに、フェイトが半ば呆れた様子で応える。

そんなやり取りを、キラの病室を出てからずっと繰り返していた。

 

「……フェイトちゃんが冷たい」

 

「うっ……べ、別にそんなつもりは」

 

じとっとした目で睨んでくるはやてに、思わずたじろぐフェイト。

はやてはそんなフェイトの反応を楽しんでいるのだが、素直なフェイトがそれに気付くことはない。

 

「まぁ冗談は置いといて」

 

「冗談だったの!?」

 

「今回の件は、ホンマにちょっと堪えとるんよ。結局、間に合わんかったわけやし」

 

「……はやて」

 

先程までとはうって変わり、自嘲的な笑みを浮かべてそう言うはやて。

その様子からはやての心情を察したフェイトは、複雑な表情を浮かべる。

 

そう。あの日、結局はやては間に合わなかった。

はやてだけじゃない。なのはもフェイトも間に合わなかった。

キラは重症。味方の被害も大きく、敵の正体と目的も一切わからないのだ。

否、目的に関しては、少なくともキラを連れ去ろうとしたことはわかっている。

だが、その理由に関しては一切わかっていない。

敵ははやての姿を確認すると直ぐに転移魔法を発動し姿を消してしまった為、何の情報も得られなかった。

とにかく今は、敵に関する何らかの情報を持っているであろうキラが、意識を取り戻すのを待つしかない。

 

「何度も言うけど、はやてだけのせいじゃないよ。私となのはだって、結局何も出来なかった」

 

その言葉の通り、フェイトとなのはもまた、キラを助ける為、独断で救援に向かっていた。

だが、二人はキラの元までたどり着くことすら出来なかった。

 

「あの白い魔導師に、まんまと踊らされた」

 

そう悔しげに呟くフェイト。

あの日、フェイトとなのはの前に立ち塞がった白い魔導師。

彼はその言葉通り、なのはとフェイトを相手に足止めという役割を果たしてみせた。

もちろん、無傷ではない。

バリアジャケットが維持できなくなるまでのダメージを受けていたし、魔力もその殆どを使い果たしていた。

対するなのはとフェイトは被弾すらしていない。

だが、いくらダメージを受けても、白い魔導師は二人の前に立ち塞がった。

顔色一つ変えず、ただ冷静に、冷徹に、冷酷に。

その戦い方も、自分の身体を省みない、捨て身の戦法で迎え撃ったかと思うと、なのは達が引くと一切追撃はしないという、とことん足止めに撤しっていた。

攻撃が外れても、攻撃を受けても、彼は全く動じなかった。

まるで与えられた命令を実行する戦闘マシンのように、下された任務を忠実に遂行していた。

 

「あんなに不気味な相手は初めてだった。正直、怖かったよ。負けるとは欠片も思わなかったけど、勝てるとも思わなかった」

 

「なのはちゃんも同じこと言うてた。出口の見えない戦いは初めてや……って」

 

そう言うとはやては、悔しげに表情を歪ませてこう続ける。

 

「けどな、自分の未熟を棚に上げておいてなんやけど、もっと効率的に部隊を動かせていれば、もっと被害を抑えられたと思うんや」

 

「……はやて」

 

その言葉に、フェイトは昨日はやてから聞かされた夢の話を思い出す。

確かに、はやてが語った夢の部隊ならば、今回の一件も何とかなったかも知れない。

 

「何とかせなアカン。今の現状を、私らの手で。じゃなきゃ、被害を受けた部下達に示しがつかへん」

 

そう言ってはやてが取り出したのは、一つのストレージデバイス。

それは、キラの護衛に就いていたはやての部下が使用していたデバイスだった。

 

「………残念…だったね」

 

「そんな言い方、死んだわけちゃうんやから」

 

そう言って笑うはやてだったが、それも虚勢だ。

その心中は、フェイトとは比べ物にならない程悲しみに満ちていた。

 

「……いや、そやな。管理局での仕事を生き甲斐にしとったんや。きっと、死ぬより辛いやろな」

 

握ったデバイスを見つめながら、はやての表情が歪む。

その瞳は、悔しげに揺れていた。

 

「まさか、魔法が使えなくなってまうやなんて」

 

 

 

 

はやてのその言葉に、キラの思考は一瞬停止した。

先程まで、思考は正常に働いていた。

その証拠に、交わされた会話から二人が誰の話をしているのか理解出来た。

あの日キラを護衛していた魔導師。

気にはなっていた。

ミゲルに切り裂かれた傷がどれ程のものだったのか、命に別状はないのか。

だが、目が覚めてからは無意識のうちに考えないようにしていた。

 

「……そん…な」

 

だが聞いてしまった。

死んではいない。だが、無事ではない。

彼は生き甲斐を、魔法の力を失ってしまった。

 

「僕の……せいでっ」

 

敵の狙いはキラだった。

彼は巻き込まれただけだ。

キラがあの日、空港跡に行きたいと言わなければ、彼が護衛に就くことはなく、傷付くこともなかった。

 

「そんなことって…!」

 

どうしようもない後悔と自責の念がキラの心を苦しめる。

噛み締めた唇から血が滲み出るが、それすら心の痛みの前では気にならない。

 

「ッ……くそっ!」

 

堪らず、自分を責めるような声が漏れる。

それがいけなかった。

 

「えっ……誰かいるの?」

 

「ッ…!!」

 

気付かれた。

その瞬間、逃げるようにその場から走り去った。

今の自分の表情を誰にも見られたくなかった。

現実から、そして自分からも逃げ出すように、キラは走り続けた。

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