Tari tari 1人の少年   作:一塔

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よろしくお願いします


素直になったり、嘘ついたり

  相模湾流域練習試合が行われる為、体育館二階のギャラリーに来ていた。

  声楽部の合唱の後、相模中央高校と湘南海星高校がユニホーム姿で練習を始めた。

  第一試合は相模中央高校対湘南海星高校から始まり、審判は白浜坂高校のようだ。

  バレーの知識がない来夏達はどっちが勝つんだろうと楽しそうに見ている。

  テレビでしか見た事のない人達には残酷的な結果になるだろう。

  テレビの試合はある程度力が拮抗して、白熱の試合になるが全国大会常連校(湘南海星高校)と地区大会2回戦がやっとのチーム(相模中央高校)では力の差が歴然。

  会場全体が言葉を失うのも時間の問題だろう。

  試合が始まった。

  2セットマッチ、デュースなし、サーブは海星高校から始まった。

  ボールを上げ、スパイクを打つかのようにサーブは放った。

  そのままボールは相手コートに突き刺さった。

  海星高校応援団のエールが飛び交う。

  「バレーって初めて見たけど凄いね」

  ウィーンが楽しそうに呟いたが最初だけだった。

  結果25ー7、25ー5

  海星高校の圧勝で1試合目が終わった。

  点数よりも内容はびとかった。

  相模中央高校の得点は0、全て海星高校のミスによる得点しかなかった。

  流石の出来事に来夏達も言葉を失った。

  想像してたより、無残のものだったからだ。

  次の試合は時間が空いて白浜坂高校と相模中央高校との試合。

  「竜司くんは次はどっちが勝つと思う?」

  「えっ、ああ、練習を見る限りだと相模中央高校かな、レフトエースは中々やるしな、多分、白浜坂高校には太刀打ち出来る選手がいるかどうかかな」

  沙羽の言葉に竜司は練習を見ながら呟いた。

  「湘南海星高校はやっぱり強いんだね」

  「全国大会常連校だからな、他のチームと比べてもレベルが数段違うし、プレー1つ1つの質がまるで違うからな」

  「・・・よく知ってるね」

  何気なく質問したつもりだったが予想以上の答えに驚いていた。

  笑いながら誤魔化している竜司を横目でチラッと和奏は見ていた。

 

 

  試合は相模中央高校が危なげなく勝利した。

  竜司の言った通りに相模中央高校のレフトエースを最後まで止める事が出来なかった。

  最終試合、コートには白と青のユニホームを纏った白浜坂高校と水色と白のユニホームを纏った湘南海星高校が立っていた。

  結果は見るまでもないなと思いながら試合中盤に竜司はトイレに足を運んでいた。

  一方試合終盤、試合を見ていた来夏達は必死に応援をしている。

  点差は24対3

  絶望的な点差に来夏達も諦めムードが漂っていた。

  それでも最後まで来夏は声を出し続けた。

  それが通じたのか、海星高校のスパイクが打ったボールが白浜坂高校のレシーバーの足に当たり、小さく跳ねた。

  それを見て二人選手が同時に飛び込んだ。

  ボールはコートに転々と転がり、ぶつかった選手二人はそのまま倒れていた。

  「大丈夫かな」

  心配そうに呟く来夏に沙羽は大丈夫だよとそっと声をかけた。

  「ウィーン、どこ行くの?」

  二階のギャラリーから走り出したウィーンを見て和奏が声をかけたが返事がなかった。

  気になって来夏達は追いかけた。

  ウィーンが向かったのは倒れた選手二人の元だった。

  心配になって駆け寄ったのだろう。

  「意識はあるみたいだね」

  ホッと息を吐きながらウィーンが呟いた。

  ここで海星高校のキャプテンが倒れた選手二人に近づいた。

  「軽い脳震盪だな、大事を取って試合は控えたほうがいい、代わりの選手は?」

  キャプテンの問いかけに白浜坂高校の選手は首を横に振った。

  なぜなら白浜坂高校バレー部は6人しかいないからだ。

  「なら仕方ない、試合はここで・・・「待って」

  「ウィーン」

  没収試合にしようと思った所でウィーンが止めに入ったのだ。

  何をするつもりなのと来夏が声をかけたが聞く耳を持っていなかった。

  「僕が代わりに出るよ」

  「ウィーン、バレーやったことあるの?」

  「ないけど」

  「あちゃー」

  いきなりの申し出に驚きながら沙羽が声をかけたが余計に頭を悩ませた。

  「でも、最後まで諦めない姿に僕は心が打たれたよ、だから最後まで戦いたいんだ」

  「・・ウィーン」

  ウィーンの決意が分かった。

  その気持ちは来夏も同じであった。

  「気持ちは分かるがもう1人はどうするんだ?当てでもあるのか?」

  「・・・それは」

  「え、私、無理、無理」

  ウィーンが入ってもあと1人足りなかった。

  そこでウィーンは沙羽に視線を向けた。

  「沙羽ならやれるよ、バトミントン上手だったし」

  「バトミントンは関係ないでしょう、だったら来夏の方が」

  「私こそ無理だよ」

  沙羽と来夏は首を横に振った。

  やっぱりダメかと思い落ち込むウィーンの隣で和奏が意を決した表情を浮かべた。

  「・・・私に心当たりがある」

  「本当⁉︎」

  「うん、ダメ元だけど」

  和奏の言葉にウィーンは笑顔になった。

  「3分だ」

  「分かりました」

  海星高校のキャプテンに時間を指定されて和奏は力強く頷いた。

  「ユニホームを持っててくれ、こっちで着替える時間はないから」

  「うん、行ってくる」

  「和奏、頼んだよ」

  ユニホームを握り締めて、体育館から走り出す和奏の背中にウィーンは大声で叫んだ。

 

 

 

 

  (そろそろ試合は終わったかな)

  トイレで手を洗いながら竜司はそう考えていた。

  本当は海星高校のバレーの試合は見たくなかった。知ってる顔もいた。

  ちょっと気まずい気持ちがあったがそれ以上に海星高校のバレーを見たくなかったのだ。

  体育館に戻りながら憂鬱な気持ちになっていた。

  「竜司くん!!」

  「和奏?どうしたそんなに慌てて」

  息を切らしながら、近寄ってきた和奏に声をかけた。

  和奏はゆっくりと息を整えた。

  「実は・・・」

  先程の試合で起きた出来事を竜司に全て話した。

  話し終えても特に竜司は慌てた素振りを見せなかった。

  「どうして俺に?」

  いつもの感じで話をしているが何かいつもと違う雰囲気が感じとれた。

  「竜司くん、湘南海星高校のバレー部だったんでしょう」

  その場から立ち去ろうとする竜司に和奏は覚悟を決めて口を開いた。

  竜司は足を止めた。

  「ごめんね、アルバムの写真見ちゃって、違うかなとは思ったんだけど、今日の湘南海星高校のユニホームを見て確信したの」

  怒られると思いながらも和奏は竜司の言葉を待った。

  「俺は元湘南海星高校バレー部だった」

  「なら「でも俺はバレーを辞めてたんだ、海星高校を辞めて、のこのこと白浜坂高校に転校して逃げてきた俺が白浜坂高校でバレーをやろうとは思わない」

  いつもと変わらないけど何かが違う、和奏はそんな気持ちでいた。

  「・・・竜司くん」

  「悪い」

  それだけ言い残して立ち去ろうとする竜司に和奏は叫んだ。

  「あなたはあなたじゃない」

  あまりの声の大きさに竜司は足を止めた。

  周りから視線が飛んでくる。

  「逃げてる事を言い訳に自分の気持ちに嘘をついてるだけ、本当はバレーが好きなのに、好きじゃなかったら、アルバムを取っておくわけない」

  「俺のバレーは海星高校で終わったんだ」

  「だから何?今のあなたは白浜坂高校三年、佐原竜司でしょう、好きな事に理由なんていらないんでしょう、バカ!!」

  いくら言っても埒があかないと思った和奏は全て吐き出した。

  ユニホームを無造作に竜司に投げつけて走り去っていた。

  ユニホームを拾いながら竜司は自分の肩を優しくさすった。

 

 

 

  落ち込んだ様子で体育館の中に入ると一目散に沙羽が飛びついてきた。

  「和奏、どうだった?」

  「・・・ごめん」

  小さな声でポツリと呟いた。

  「そっか、仕方ないよ、」

  「なら、今日はここまでだ、あいつも駄目そうだし」

  海星高校のキャプテンが白浜坂高校のベンチを見ながら呟いた。

  和奏も追うように見るとベンチに座ってテーピングを巻く、ウィーンの姿があった。

  「どうしたのウィーン?」

  「軽くパスをしてたんだけど、すぐに突き指しちゃって」

  和奏の疑問に沙羽は苦笑しながら答えた。

  ここまでかと和奏は心の中で思った。人の気持ちを動かす事は簡単じゃない、来夏や竜司のように人の心を動かす事ができなかった。

  和奏は唇を噛み締めた。

  「ユニホーム小さいな」

  先程まで聞いていた声が聞こえてきた。

  慌てた様子で声のする方に振り返るとそこには。

  「・・竜司くん」

  「悪かったな、和奏の言う通り、自分の気持ちには嘘がつけなかった」

  「ううん、私こそ生意気言ってた」

  「気にするな、それより、薫!」

  どうやら人の心を動かす事ができた。

  竜司は今にも泣きそうな表情をする和奏に優しく微笑んで、海星高校のキャプテンに声をかけた。

  「なっ⁉︎お前!」

  驚いた様子で竜司を見ていた。

  「久しぶりだな、試合、いいか?」

  「お前、大丈夫なのか」

  「気にするな、なんとかなるだろう」

  「お前なぁ」

  呆れた様子を浮かべる薫に竜司は肩を叩いた。

  「楽しい試合やろうぜ」

  「生憎だが、竜司が入った所で人は足りない、あいつはバレーもやった事のない素人、怪我をされたら俺らが困る」

  笑顔でいる竜司に薫はベンチに座っているウィーンを見ながら答えた。

  いくら格下の相手でも手加減をするつもりはないと言う言葉の意味を汲み取った竜司は変わらないなぁ〜と思った。

  「だったら僕が出るよ」

  「達也!」

  「お前何を」

  突如現れた海星高校のユニホームを着ている青年の言葉に薫は驚いた様子を浮かべた。

  「いいだろ薫、久々に竜司にトスを上げたくなったんだ」

  「俺からも頼むよ薫」

  達也と竜司が手を合わせてお願いする姿に薫は頷いた。

  「そのかわし、試合はすぐに始めるからな」

  「オッケー」

  「なら試合開始だ」

  薫は自陣のベンチに戻っていった。

  「達也、ありがと」

  「うん、とりあえずこの試合勝とうね」

  「ああ、ウィーン、悪いけど出番は無しだ」

  「うん、竜司頼んだよ」

  「ああ」

  ベンチにいるウィーンに声をかけて白浜坂高校の部員はエンドラインに整列した。

  一方海星高校ベンチでは。

  「誰ですか?あいつ?」

  選手の1人が竜司を見ながら薫に質問してきた。

  「元海星高校バレー部、佐原竜司だ、2年の時に転校している」

  「へぇ〜内を逃げ出した奴が相手ですか、負ける気がしませんね」

  「そんなんじゃないが、一つアドバイスしておく、点は取れる時に取れるだけ取っとけ」

  それだけ言い放ちベンチに腰掛けた。

  海星高校もエンドラインに並んだ。

  ピピィッ!

  「お願いします」

  コートに入っていく6人が円陣を組んだ。

  「えっと、俺のポジションは?」

  「佐原先輩は裏レフトをお願いします、海星高校の方はセッターをお願いします」

  「「オッケー」」

  ポジションの指示を受け、竜司と達也は同時に声を出した。

  「サインは特にないね、適当に入ってきて、俺が合わせるから、何かあったら言って」

  「かっこいいね」

  達也の指示に竜司が笑いながら茶化した。

  作戦は特にないが竜司と達也以外はポジションについた。

  「竜司」

  達也は自分のポジションにつこうとする竜司を呼び止めて小声で話をした。

  それに竜司は片手を上げてポジションについた。

 

 

  竜司達がポジションについた所でベンチの後ろで立って見ていた沙羽が隣にいる和奏に声をかけた。

  「心当たりって竜司くんだったの?」

  「うん、竜司くん、昔バレーやってたみたいだから声をかけたの」

  「大丈夫かな」

  「沙羽?」

  「う、ううん、何でもない、あっ、全く来夏、勝手にベンチに入って怒られるよ」

  少しだが悲しげな表情を浮かべた沙羽に和奏は気になったが、すぐにベンチに座っている来夏を見つけて連れ戻しにいった。

 




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