俺、ヤンデレ神に殺されたようです⁉︎   作:鉛筆もどき

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番外編です。理子視点。短め


番外編
番外編第1話 この気持ちは何だろう


 

 起床を急かす目覚まし時計が私を夢の世界から現実の世界へと引き戻した。ボヤけた視界の中時間を確認すると、長針は六、短針は六と七の間を指している。つまり六時三十分だ。

 

「ふわぁーあ・・・・・」

 

 もう少し寝ていたい。そう思うのだが、私は大きく体をのばし、登校の準備に移ることにした。

 洗面台に行き、自分の胸から上を映し出す大きな鏡にはボサボサの金髪にまだ眠たそうな顔つきの私がいた。

 

(こんな顔をアイツが見たらなんと言うだろうか)

 

 そんなことを頭の片隅で考えつつ、私は洗顔やボサボサの髪を整えたりとテキパキと支度をする。

 諸々の支度を済ませたあと、朝ごはんは食べずにランドセルを背負う。高校生にもなってランドセルで登校するのはちょっと恥ずかしいけど、皆が可愛いって言うから仕方ない。

 

「じゃ、行ってきます」

 

 靴を履きながら私以外誰もいない部屋に挨拶をする。昔からお父様とお母様が、出かける時はしっかり挨拶をしなさいと言っていた名残だろう。

 ドアを開けると、暖かい陽気が私を包み込んだ。もう春を過ぎて夏に入り始めるのに、今日は運がいい。

 まだ朝早く誰もいない廊下を歩き、寮のエレベーターに乗ると、上の階に住んでいる同級生が一人乗っていた。

 

「あ! りこりんおはよー! 」

 

「おはよー。朝早いね! 」

 

「先生から補習に来いって言われちゃってさー」

 

 苦笑いをしながら指で頬をかいている。先生に呼ばれるほど成績が悪いとは、さすがの私も驚くよ。どれだけバカなのだろうか。

 

「そうなの? 頑張ってね! 」

 

 でもそれを口には出さない。私はそういうキャラではないのだ。皆を笑顔で応援する、それが私なのだから。

 

「じゃ、行ってくるねー! 」

 

「行ってらっしゃい! 」

 

 よほど急いでいるのか私に別れを告げると、女子寮のガレージに入ったかと思えば、中からスポーツカーが出てきた。そして道路交通法など知らないとでも言わんばかりの暴走運転で学校方面に行ってしまった。

 

「その速度は捕まるんじゃないかな・・・・・」

 

 一人ボソッと呟くがその声はもう届かない。その時、私のお腹が寂しそうに鳴った。朝ごはんを食べていないのだから当然だ。

 私はアイツのいる男子寮へ向かう。女子寮からあまり遠くないこともあり、男子寮に女子がいたりすることもある。逆もまた然りだ。ナニをしているのか大体見当がつくのだが、私はそれを問い詰めたりしない。

 人にはプライバシーというものがあるから。

 

 

 

 そうして私は男子寮についた。寮長はまだ寝ているのだろう。というか、仕事をしている所を見たことがない。上の階からエレベーターが降りてくると、中から男子生徒が出てきた。

 

「あ、理子さんおはようございます! 」

 

「おはよう! 今日も一日頑張ってね! 」

 

 朝から私に会って興奮してるのか知らないが、鼻息を荒くして顔を赤くしている。これが時々だったら良いのだが、毎朝会うのだから鬱陶しくて仕方がない。しかも先輩とか後輩だったらまだしも、同級生だから一々対応も面倒だ。

 

「じゃあ行ってきます! 理子さんに認められるように俺、体張ります! 」

 

「じゃあ期待しちゃっていいかなー!? 」

 

「はい! 」

 

 ソイツはニコニコしながら男子寮を出ていった。そろそろ諦めてくれと言いたいけど、そしたら私のイメージが崩れる。私はソイツにまた何か言われないようにエレベーター内にそそくさと移動した。ソイツは振り向きながら何かを私に伝えていたが、扉が閉まったせいで読唇も出来なかった。まあ出来たとしてもしないけど。

 

 

 目的の部屋はある階に着き、長い廊下を歩く。一歩進む度に不思議と胸が高鳴った。顔も少し熱い。人生で誰かの部屋に行くのにこんなドキドキしたことはない。

 私はドアノブに手をかけた。少し前にピンクツインテが蹴ってへこませたせいでドアを開けるのにコツがいるのだ。

 

「おじゃましまーす」

 

 私はその部屋に入り、小さく挨拶をした。そのまま玄関を抜けると、お味噌汁のいい匂いが私の鼻孔をくすぐってくる。アイツは毎日朝早く起きて朝ごはんを作っているのだから、本当にありがたい。もっとも、私が押しかけているだけなのだが。

 

「おー今日も来たか。おはよう」

 

「おはよ、キョー君。今日も美味しそうだね」

 

 私は促されるまま席についた。テーブルに並べられた朝食は、私の食欲を焚きつけるのには充分すぎるほどだ。

 

「いただきます」

 

「いただきます」

 

 コイツのルームメイトであるキンジはまだ寝ている。だからいつも私とコイツだけの朝食だ。

 

 

 

 

 

 

 

 ───それから朝食を食べ終え、使った食器を洗い終わるとキョー君はリビングのソファーに腰を下ろした。

 

「はぁ・・・・・最近は疲れることばかりだ」

 

 そんな愚痴をこぼしているキョー君の隣に座る。

 コイツは一年生の時とは比べ物にならないほど死にかける場面が多いし、なにより神様にも命を狙われている。それなのにこうやって普通に過ごしているのだ。どれだけ神経が図太いのかと思う。単に考えていないだけの可能性もあるが。

 

 私はそんなコイツを労うように自分の体をキョー君の体に密着させた。キョー君の腕に私の両腕を絡ませる。キョー君はこうやって体を預けてくれるのが好きらしいから。まあ下心が丸見えなのはバレバレだけど。

 

「なあ理子? 腕に柔らかいものが当たってるんだが」

 

「どけた方がいい? 」

 

「いや、むしろこのまま永久の時を───」

 

「殺すよ? 」

 

「理不尽の極み!? 」

 

 ・・・・・キツい言葉を言ってしまった。本当は私を女の子としてしっかり見てくれていて嬉しいけど、なんでか本心とは違った言葉が出てしまう。

 

「じゃあどいた方がいいか? 」

 

「このままの体勢でいい。朝ごはん食べて眠くなったからちょっと寝させて。動いたら殴る」

 

 ああ、また殴るなんてキツい言葉を言ってしまった。

 でも、コイツの隣にいれば何故か安心できる。

 暑さとは違う、ポカポカとした何かが私の心に浸透していくのが分かる。この感情は一体何なのだろうか。

 ────『恋』と言われたら、それが本当に『恋』なのか私には分からない。初恋だって私が知る限りまだなのだから。

 

 

 いや、これが初恋だとしたらいつからだろう。

 

璃璃神とかいう神様と戦った時からだろうか。

 

 凍え死にそうになっていた私を助けてくれた時から?

 

 病院で私を引き止めてくれた時から?

 

 ブラドを倒してくれた時から?

 

 ───分からない。いつからこんな奴に不思議な感情を抱くようになったのか。もしこの不思議な感情が『恋』だとしたら、こんな奴のどこを好きになったのだろうか。変態で、デリカシーの欠片もなくて、偽の恋人同士とはいえまだ一回もデートに連れて行ってもらってない。私の理想な王子様とはかけ離れている。

 

 だけど、コイツの一挙一動を目で追ってしまうし、授業中も気づいたらコイツのことを見てる。他の女友達とコイツが喋っていると、胸が少しだけ痛くなって八つ当たりもしてしまう。男友達と本音で喋ることができるのだってコイツくらいだ。

 

 そんな分からない事だらけでも、今一つだけ確信して言えるものがある。

 私はそっと目を閉じ、コイツの肩に頭を乗せ、それをコイツに聞こえない程度で小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 「───この幸せがずっと続きますように」

 

 

 




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