俺、ヤンデレ神に殺されたようです⁉︎   作:鉛筆もどき

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第8話 解せぬ!!

 今日はアリアと、アリア母が面会した翌日の昼。

 昨日退院できるとか言ってたくせに怪しい検査ばかりさせられて、結局もう一日病院にいることになった。病室の荷物を片付け、せっかくなのでもうひと眠りしようとしていた​───

 

「やっほー! キョー君元気にしてる?」

 

 ───ところでうるさい金髪童顔ロリがきた。

 

「ああ、心配させて悪かったな」

 

「理子は心配で心配で、夜しか眠れなかったんだよ⁉」

 

「しっかり寝てんじゃねえか!」

 

 峰理子、探偵科でAランクをとっており情報操作・収集、変装・変声術に長けている天然パーマが特徴のロリっ子童顔巨乳。そのルックス故にファンが何百人といるらしい。そして俺と理子は互いにアニメ好きとして気が合う仲なのだ。

 

「でも、理子が夜に寝るなんて珍しいな。拾い食いはほどほどにしとけよ?」

 

「キョー君、お見舞いに来てあげてるのにそれは酷い!!乙女にかける言葉じゃないよ!」

 

 お見舞いとか言ってるくせに片手に何かの報告書の束を持ってくるのはなぜだ。リンゴを切ってくれて、アーンしてくれるのがお約束だろう。

 

「リンゴはなしだよ。でもリンゴよりオイシイ情報は持ってきたよ! 」

 

「皆俺の心読みすぎな。で、オイシイ情報というのは?」

 

 理子は目をキラキラと輝かせ、机に書類の束をドサッと置く。俺はベッドに寝転がり、理子はそばの椅子に座る。

 

「うんとねー、まずはアリアの情報。アリアは二つ名を持っていて、『双剣双銃(カドラ)のアリア』だって。今のところ99回連続で強襲・逮捕を成功させた」

 

「なんだその輝かしい功績 」

 

「そして何より......シャーロックホームズ4世なの、あの子」

 

 え......あの鬼畜ホームズの曾孫なの?あのピンクツインテ......そんなばかな!!

 

「本当だよ? まあアリアの情報はついでで、本題は今から話すこと」

 

「なんだ? トイレ行きたいのか?」

 

「......キョー君ってイケメンなのにそこがダメだよね。それは置いといて、アリアが今日の羽田発の飛行機でロンドンに帰るらしいんだけど、その便に武偵殺しが来る」

 

「それはどこからの情報だ? 」

 

「企業秘密で〜す! 」

 

 うぜぇ......男女平等主義者の俺が直々に鉄槌を下そうか?

 

「その便に行ってこいと? その前にアリアに知らせとかないと」

 

「アリアに言ったけど、返り討ちにしてやる!! って言っていたし、絶対に乗ると思うよ? 」

 

「強情すぎる......理子、情報提供ありがとな! 」

 

 この報告が正しく、なおかつ逮捕できたら大金が舞い込んでくるな。絶対に逮捕してやる!

 

「ねえねえキョー君」

 

「なんだ?」

 

理子が口元を緩ませ目をドルマークにして俺に詰め寄ってきた。

 

「理子への報酬は? 当然あるよね? 」

 

「……分かったよ! 買い物付き合ってやる」

 

「ふふーんその言葉、あとで後悔しないでね? 」

 

 理子の目つきが変わったぞ!? 長い買い物になるだろう.....しかもかなり危ないヤツも買わされるんだろうな。

 

「くふっ、じゃーあー......報告も済んだし、()()()()しよ?」

 

 理子は俺の横に寝転がると、胸元をはだけさせた。うぐぐぐぐ......俺の理性よ、こらえろ!!

 

「いいや、装備とか色々と整えなきゃならんのでね」

 

「本心言ってみて?」

 

「今すぐにでもその()()に顔からダイブしたいが俺の理性が阻止してるんだ。これ以上からかうなよ? 」

 

「キョー君てさ......性根から腐ってるよね。普通そういう事言う? そこがキョー君のいい所でもあるんだけどさ」

 

「腐ってるは余計だ! てかそれを押しつけるな!! 理性が死ぬ!! 」

 

「キョー君顔赤いね......可愛いよ! 」

 

 誰だってこんな美女の双丘を押しつけられたら顔も赤くなるだろ! 俺は理性が保たれてるうちにベッドから出て、部屋からそそくさと退室する。理子の声が聞こえたが無視だ。

 俺は平賀さんに入院中に頼んでおいた装備1式を受け取りに、武偵校に歩を進めた。

 

 

 俺は平賀さんにある装備を受け取りに行き、使い方を教えてもらい、アリアの元へと向かった。平賀さんの顔が赤かったから、熱でもあるのか? と顔を近づけたら殴られた。何故だ。

 

 そのあとは羽田空港に着き、アリアに色々と事情を話した。話している最中に俺にだんだんと荷物を持たせ......今はアリアの荷物全て持っている状態だ。しかもかなり重い。俺は何も悪いことしてないぞ!?

 飛行機へは、アリアの友人ということで搭乗許可がおりたが......武偵だからいいのか? ガバガバな気がする。

 

「ねえ、あんた理子からこのこと聞いたの? 」

 

 搭乗ゲートを抜け、アリアの個室へと向かいながら俺にジト目を向けてくる。

 そう、この飛行機はVIP専用機、席ではなく部屋なのだ。なんと羨ましい!!

 

「まあな。武偵殺しを逮捕出来れば金儲けにもなるし、単位も貰えるし」

 

「あたし1人でもどうにかできる。手助けは無用よ! 」

 

「不確定要素が多い中そんなことが言えるなんて......」

 

 部屋につき、アリアの自慢話を聞きながら襲撃に備え準備をする。今回の件も自信満々のようだがホントに大丈夫なのだろうか?

 俺とアリアで武偵殺しを見つけた時の作戦及び実行までの流れを決めている途中、外でCA(キャビンアテンダント)さんとキンジの話し声が聞こえた。

 キンジ? なんでここにいるんだ⁉︎ 俺は勢いよく扉を開けると、

 

「痛ったあああああ! 」

 

ゴスッ! と廊下に響く心地よい音がキンジの頭から鳴った。

 

「あ、悪いなキンジ。CAさん、こいつも友人です」

 

「そうですか……では、良い旅を」

 

 俺は、鼻をさすっているキンジを室内に入れ、何故ここに来たのかを問おうとしたが、アリア活火山が噴火しそうなのであとにしておく。

 離陸をする放送が入り、各々が席に座りシートベルトをしめる。安全に上空に飛び立ったところで……アリア活火山が噴火した。

 

「キンジ! なんでここに来たの⁉︎ 」

 

「ハイジャックされるからに決まってんだろ! 」

 

「べ、別にあんた達が来なくったって1人でなんとか​───」

 

 ​その時、爆発音を彷彿とさせる雷鳴が轟き、アリアの言葉を遮った。

 

「お、雷か。随分とでかいな、こんなにでかいの久しぶり……ってあれ? アリアどうした? 」

 

 アリアを見ると先ほどまでの勢いは完全に無くなり、今は休火山みたくなっている。

 あれ? もしかすると……

 

「ゴロゴロ! ガッシャーン‼︎ 」

 

「ヒッ⁉︎ 」

 

 ……俺が声で雷の真似しただけでビビるのか⁉︎ どれだけ怖いんだよ! ベッドの方へダイブし、二つある枕を自分の頭を隠すようにかぶっている。

 どれだけ枕に可能性を感じてんだよ! 枕じゃ何も守れねえよ! というか、頼られなかった俺とキンジって……枕以下なの?

 

「怖いぃぃぃ……」

 

 アリアはガタガタと震え、涙声になってきた。まるで子どもだな。だがなんと……天然タラシ(キンジ)がアリアに近づき手を握りはじめた……だと⁉︎

 アリアも拒むどころか握り返してるし、リア充爆ぜろ。アリアとキンジの間に砂糖より甘い空気が流れ、そろそろグロックのフルオートを浴びせる準備をしていると、部屋にあるスピーカーから電子音が流れ出てきた。

 

『コノ、飛行機二ハ、爆弾ガ、仕掛ケテアリ、ヤガリマス。解除シテホシクバ、バー、キヤガレデス。タダシ、武偵校生ニカギリヤガリマス。』

 

「​──ッ!? ついに動き出したか......アリア、キンジ行くぞ」

 

「「あ......分かった(わ) 」」

 

 アリアとキンジは互いに俺の方を見ると顔を真っ赤に染めた。もしかして2人とも、俺の存在忘れてた!? この件が終わったらキンジコロス!

 憎しみを目に宿しながら平賀さんから受け取った装備も展開準備をする。

 

 アリアが先行、俺とキンジは後方で、武偵殺しが奇襲を仕掛けてきた時に援護ができるよう位置を取る。

 (アリア)を先行させたが俺はなんとも思わない。襲われたくないからな。アリアの方が強そうだし。

 

 バーの手前のドアまで着き、俺とアリアでまばたき信号を交わす。俺が扉を蹴破り、キンジとアリアが突入する手はずだ。キンジにもまばたき信号を送り、準備は整った。

 ハンドサインで突入の合図をする。

 

(3......2......1......GO!!! )

 

 俺は目の前のドアを思いきり蹴り、キンジとアリアは流れ込むようにしてバーの中に入る。

 

 そのバーの中にいたのは......キンジがアリアの部屋の前で話していた、CAさんだった。俺達を見つけると、妖艶な笑みをこちらに浮かべる。

 

「いらっしゃいアリア、キーくん、キョー君」

 

 俺とキンジの呼び方、まさか理子か⁉︎

 キンジも同じようなことを思っているのか、少し驚いた顔をしている。

 

「あんた誰なの⁉︎ 正体を明かしなさい! 」

 

「くふっ、アリア、私だよ? 峰理子だよ? 」

 

「理子⁉︎ ……あんた、武偵殺しだったのね」

 

 アリアは全身から、常人なら気を失うレベルの殺気を理子に向ける。だが理子はそんなことお構いなしに、CAさんの変装を解き素顔を見せる。防弾制服も着ているようだ。そしてそこにある理子の顔は、いつものおちゃらけた雰囲気の理子だった。

 

「あんた、なんで武偵殺しなんかするの!? 」

 

「それはね、理子が理子になるためなの」

 

「な、なにふざけたこと言ってんのよ! 」

 

「これっぽっちもふざけてない‼︎ 」

 

 理子は鬼のような形相でアリアを睨みつけ、理子の銃、ワルサーP99を二丁取り出す。俺たちもそれぞれグロックとベレッタを構えたが、そんなのは眼中にはいってないらしいな。普段は絶対に見ることのない理子のマジギレ状態にアリアは困惑しているようだ。

 

「私の本名は、峰・理子・リュパン4世! 落ちこぼれの4世だ! 誰も私のお母様がつけてくれた、この可愛らしい名前を呼ばずに4世様〜、4世様〜って呼ぶんだ! 私は数字じゃない! 曾お爺様が倒せなかった()()()()を私が倒せば認めてくれる! この名前で呼んでくれるんだ! 」

 

「なんであたしが……オルメスだって知ってんのよ! 」

 

「うるさい! オルメスのパートナーであるキンジも、しっかり仕事をしろよ」

 

 パートナー? オルメス? 理子の言ってる事はわからない事だらけだが、戦闘は避けられないか。落ちこぼれの4世ってことも気になるしな。

 すると、激昂状態だった理子は雰囲気を一転させキンジに笑みを浮かべた。

 

「キンジ、あなたのお兄さんはね、今理子の恋人なの」

 

「理子、ふざけたことを言うな! 」

 

「キンジ、落ち着け!挑発だ! 耳を傾けるな」

 

「これが落ち着いてられるか! 」

 

 キンジは理子に掴みかかろうとしたが、何故か飛行機が、ガクンと高度を落としバランスを崩してしまう。そして理子はワルサーP99でキンジのベレッタを撃ち、破壊した。

 だが、アリアはその隙に獅子のようにスタートダッシュをし、2丁のガバメントで理子に襲いかかる。

 

 鈍い打撃音がアリアが撃った弾が理子の防弾制服にあたったのを示してくれる。理子は苦痛に顔を歪めたが、二丁拳銃で迎撃し始めた。

 

「あんたも二丁拳銃!? 」

 

「双剣双銃はアリアだけじゃないんだよ? 」

 

 理子とアリアの手が交差し、激しい交戦が開始された。武偵同士の近接銃撃戦は打撃と同じ。相手の射撃をどれだけよけられるかが鍵となる。いくら防弾制服でも至近距離から撃たれれば、金属バットで殴られたような痛みがはしるのは武偵であれば誰でも知っていること。

 だから互いの腕を自らの腕で弾き合い、相手に弾を当てる、もしくは相手の銃の破壊が優先的になる。

 だが実力が拮抗すれば、銃の装弾数で勝負が決まる。

 

 ガギッ! とアリアのガバメントがスライドオープンし、理子はニヤついた顔をアリアに向け、ワルサーを構えるがアリアは理子の突き出した両腕の内側に飛び込み、自身の両脇でホールドする。

 

「キンジ! 朝陽! 」

 

「そこまでだ! 理子! 」

 

 キンジは緋色のバタフライナイフ、俺は【雪月花】を理子の首に左右から突きつける。

 シュッと音がし、俺の突き出した【雪月花】が理子の髪を数本斬り、舞い散るように落ちていく。

 

「ふふ、ハハハハハハ!! アリア、お前はこの力をまだ知らない! 」

 

 理子は血走った目を俺達に向けると、理子の髪は神話に出てくるメデューサのように動き​───

 

 アリアと俺の側頭部を、理子の髪が握った2本のナイフで斬り、鮮血を飛び散らした。俺は血は流すもあまり深い傷ではなかったが、アリアは深く斬られたため理子の方によろけてしまった。

 理子はそれを狙っていたかのようにワルサーをアリアの防弾制服の上から心臓部分に押しつけ、

 

「バイバイ、アリア」

 

「アリア!! 避けろ! 」

 

 キンジがアリアの防弾制服を引っ張るも、それは遅すぎた対応だった。ダァン! っと銃声が響き、アリアの心臓部を打撃した。アリアはキンジの方へと仰け反り、力なく倒れた。

 考えられることは​───

 

「キンジ! アリア頼む! 心臓が動いていないはずだ! 」

 

「ッ!? 分かった! 」

 

 キンジはアリアを抱えて急いで部屋に駆け戻って行った。

 

「理子、あれは少し容赦ないんじゃないか? 」

 

「ハハハハ!! オルメスを倒した! 私は今日、理子になれる! 」

 

 まるで聞いちゃいないな。どうする? アリアほど傷は深くないが万年貧血気味の俺にとっては辛いぞ。理子はアリアを倒した余韻に浸っている。それほど『理子』という名前に固執するものがあるらしいな。

 

「ねえ朝陽、イ・ウーに来ない? 」

 

「・・・・・イ・ウーだと? 」

 

「知ってるみたいだね。私はそこの生徒なの。朝陽なら今以上にもっと強くなれるよ? 」

 

 理子が......イ・ウーの生徒だと!? だってそこは​───

 

「イ・ウーか......懐かしいな」

 

「え?......なにそれ。その​──」

 

「だって俺、そこの卒業生だし」

 

 理子は豆鉄砲を撃たれた鳩のような、凄くマヌケな顔をしている。いい顔だ! 写真とっておきたいな。

 

「い、いつからいたの!?」

 

「産まれてすぐだ。推理オタク(シャーロック)に拾われてな」

 

「......ハッタリだ。理子はお前を見たことない」

 

「それもそうだ。あいつが会わせてくれなかったしな」

理子は何かを考える仕草をする。ブツブツと独り言を言っているが、俺はそんなのはお構い無しに理子に突撃する。

 

「なっ!? 待って! 」

 

「戦いに待っては無いだろう! 」

 

 俺は平賀さんから受け取った、ダガーが仕込まれている靴のかかとを鳴らし、つま先からダガーが展開される。そのまま理子に横薙ぎに蹴りをいれるが、紙一重で避けられ距離をとられた。

 

 理子は髪で握っているナイフ2本と二丁拳銃で本物の双剣双銃で俺に向かってくる。俺も銃口の向きから弾道を予測し、弾を避けながら理子に肉薄した。

 

 グロックをフルオートで理子に撃つが、サイドステップで避けられ、低い姿勢で向かってくる。

 手を伸ばせば届く距離になり、俺はグロックだけで応戦する。こういう状況で【雪月花】なんて振れないからな。

 

 互いの腕が交差する。左手で理子の右腕を弾き、髪に握られたナイフを避け続けるが......交戦していくうちに避けられない軌道のナイフが俺の手首へと吸い込まれた。

 だが俺はそれを見切り、袖のダガーを展開させナイフを弾く。

 

「お前、そんなに武器を隠し持っていたのか!? 」

 

「諜報科のウー先生に持てって言われてな。平賀さんに作ってもらったんだよ」

 

 その時、バーの扉が開きキンジが戻ってきた。俺にまばたき信号で『アリア、無事』と送ってきた。

 

「さあどうする。強くなった俺とキンジだ。勝ち目は無いと思うが? 」

 

「そうだね。だから今日は撤退するよ」

 

「逃げ場なんて無いがどうするつもりだ? 」

 

「秘密! それとキンジ、イ・ウーに来ない? 」

 

「お姫様のお招き、受けたいところだが今日は遠慮しておくよ」

 

 おいキンジ、ヒステリアモードになった理由あとでキッチリと教えてもらうから覚悟しとけよ!!

 

「そっか〜......じゃ、バイバイキーン! 」

 

 理子は飛行機の壁めがけて何かを投げると、小爆発が起き、飛行機の壁に穴を開けた。

 飛行機の内部と外の気圧差により、吸い込まれるようにして理子が外へ放り出される。理子は自身の改造制服をパラシュート変化させ、下着姿となって夜空の向こうへと消えていく。

 俺とキンジはシートにしがみつきなんとか吸い込まれずに​────

 

 

 

 

 

 その時、飛行機が何故か急速に高度を落とし俺のバランスが崩れる。足が浮き、掴むところがなく俺は......

 

「なんで俺だけなんだよおおおお!! 」

 

 外へと放り出された……

 


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