「嘘だろおおおおおおおおお!? 」
理子の小型爆弾で飛行機に穴を開けられ、外に吸い込まれた。この夜空の中、俺はどうしろと? 落下中の俺に出来ることは少ないし、強いていえばこれまでの人生を振り返ることくらいか……
ん? 前世でも今でも、俺は
俺は理子を本気で呪うと計画していたが、なんと50m下に張本人様がいた。これは良い計画を思いついたぞ。
俺はニヤつきながら理子の元へと落ちていく。空中での移動は
「な、なに!?」
「俺様ご登場でやがります!! 」
パラシュートは上から俺が飛び込んだせいでその役目をはたせなくなった。バランスを崩し、理子が体勢を立て直すも俺は理子の柔らかい身体にしがみつく。
「な! キョー君変態!! 」
「フハハハ!! 残念だったなあ!! 」
パラシュートは再度開き、速度を落としているが俺が理子にしがみついているせいで、まだかなりの速度だ。
「落ちろ!! 」
「 蹴るな!! お前の下着がどうなっても知らないぞッ! 」
「何言って……キョー君死ね」
「辛辣なコメントありがとうございます! 」
そう、理子にしがみついた時点で俺はとある細工をしていた。それは、俺の防弾制服と理子の下着を
「お前が無理に俺を落とせば俺と繋がっているお前の下着も一緒にずり落ちることになる!! 裸で夜空を楽しみたいなら俺を落とせばいいさ! 」
「くそっ! 末代先まで呪ってやるからなこの変態!! 」
「お前が開けた穴に吸い込まれた俺の身にもなれ! 」
罵りあいながらも、ドンドン降下していく。
このままだと着陸場所は海面になりそうだな。救助もしてくれるだろう。
俺らよりキンジ達の方が心配だ。あれをうまく着陸させないといけないし、キンジは操縦経験なさそうだしな。
「朝陽、当たってるから今すぐ氷を溶かして落ちろ」
「ああ? 頭にのってるのはなんだと思ったが脂肪のかたまりだったか」
「冗談はお前の顔だけにしろ」
「なんだとこの童顔ロリが! 口調も変わりすぎだわ! 」
「うるさいど変態! 」
こいつ! ……今すぐパラシュートだけ奪って落としてやろうか⁉︎ 理子は武偵殺しとしての重要参考人だが、そんな衝動に駆られる。俺が理子にしがみついているせいで落下速度があまり減速してないが大丈夫だろう。
「おい、イ・ウーにいたこと、しっかり説明してもらうぞ」
「あとでな! 今はしがみつくので精一杯だ! 」
理子と話しているうちにドンドン高度が下がっていく。
妙に分厚い雲を抜けるとそこは───大雨と強風が入り混じり、カオスとなっているこの状況、つまり暴風域だ。台風並の風と雨で俺と理子を乱暴に濡らし、しがみついている腕と足が滑っていくのがわかる。
「おい理子、雨のせいで滑る!! お前からも俺を支えろ! 」
「そんなことまで!? この変態ヒモ野郎!! 」
「ヒモだけはご勘弁願うよ! 」
俺は理子に必死にしがみつき、理子は俺を支える。いつ滑り落ちてもおかしくないこの状況に内心ビビりまくりの俺だが、そこは口にださない。落ちるフラグなんてたてたくないからな。
乱暴に叩き付ける風に抗うこと5分、ついに海面がすぐ近くまで近づいていた。
「よし、海面少し凍らせるから飛び降りるぞ」
「分かった......」
随分おとなしくなった理子を尻目に、
「よっと」
「おい! ちょっと待て──」
理子が必死に俺を離すまいとより一層俺を支える力を強くした。だが、なぜそんなことをしている? 重力に従い、俺と理子の差は離れていく。
あ、そういえば理子の下着と繋がってるんだった。氷の小島に飛び降りながら俺は理子に詫びをいれた──
「最低ど変態ヒモ野郎死ね」
「ごめんって見えてなかったから……待て! ただでさえ揺れてるのに押すんじゃない! フリじゃないぞ、フリじゃないからな! 」
暴風域にはいっている海は大荒れ。いくら氷の小島を作ったとはいえ、揺れるものは揺れる。滑って落ちないように壁も作ったが、理子は俺を落とそうと必死のようだ。まったく、俺が死んだら悲しむ人だっているんだからな!
俺は救助してもらうため、持ち物を確認するが……無い! 発炎筒なんて持ってるわけないか!
「理子、発炎筒みたいに光るもの持ってないか? 」
「理子がそんな物持ってるわけないでしょ。死ね」
いい加減機嫌なおしてくれ、的な目線を向けるも、無視された。あれ? 目から水が……こうなったら朝まで待つしかないか。
「なに……変態のブレザーなんて困るんだけど」
「お詫びだ。風邪ひいたら一緒に買い物行けなくなるだろ」
「全部朝陽のおごりだからな。覚えておけよ」
「はいはいお嬢様。出来ることならなんでもしますよ」
「その言葉、絶対忘れないからな」
寒い。まじで寒いよ! 春ってこんな寒かったっけ!?
これじゃ風邪ひいてもおかしくないな。看病で理子にリンゴでも切ってもらうか。それにしても朝まで何時間だ? 氷が溶けないようにするのに地味に精神力使うんだよな……
─────────────────────
「ん? ここどこ……あ、あの変態が作った小島か。おいキョー君、そろそろ起きろ」
気がついたら朝になっていた。昨日の雨に引き続きまだ空には雨雲が漂っている。はやくこいつに何とかしてもらわなければ風邪ひくのだが……さっきから声をかけても反応しない。
「……」
「聞いてるのかこの変態!! 」
罵っても返事すらしない。私は横たわっている朝陽に近づき……様子がおかしいことに気がついた。苦しそうに顔を歪め、呼吸も早くなっている。風邪でもひいたのか?
「あ……起きたか。お……はよ……」
「風邪でもひいたのか?」
「まあ、な。通信機器とか……もってるか?」
「一応ある。昨日の雨で壊れてなければいいけど」
昨日使わなかったのは雨で使えなかったから。
朝陽が小島全体を覆う屋根でも作ればよかったんだけど、そんな余裕ない! って言って私だけ氷の膜のようなもので覆ってくれた。朝陽はずぶ濡れで少しだけ可哀想だとは思ったな。
無線機を取りだし、武偵校に連絡をいれる。繋がらない心配もあるけどそれは杞憂だったね。
「武偵校2年峰理子です。今すぐこの無線の位置にボートかなにかを送ってください」
『分かりました。迅速に対応します』
「朝陽、助けを呼んだからそろそろ起きろ」
「そん……な事言ったって……力が入らないんだ……」
「まさか!?」
そういえばこいつは海に落ちてからずっと氷の小島が溶けないように
「朝陽、これ以上
「理子をこんな目にあわせ……俺……責任……」
「おい朝陽! しっかりしろ! お前のプリン全部食うぞ!」
「……」
意識が朦朧として、目の色も灰色に近い色になってきてる。だが、氷の小島は崩壊しない。無意識でも作ってるのか!? 一刻も早く止めなければ命がいくつあっても足りなくなる! 早く助けに……
─────────────────────
眩い光が閉じているまぶたの隙間から見える。
助かったのか? 目をあけると、1度見たことがある場所にいた。
「ここは……花畑?」
「なんで君がここにいるのか説明が必要かい?」
「な!? ロリ神!? 」
「殺す」
そう、俺が幼なじみに殺されて、行き着いた場所。いわゆる転生の間にいた。え? 死んだの俺。
いやいやいやいやいやいや!!
「君はまだ死んでないよ」
「え? じゃあなんでここに……」
「死ぬ間際、生と死の狭間にいるって感じね」
「危ねええええ!! 」
「テンション高くてウザイわ」
生と死の狭間? 不幸体質の俺なら死のほうに傾くよね?
いや傾いてほしくないけどもさ。不幸なんて消えてしまえ! 瑠瑠神もいなくなってしまえばいいのに! そう言えば俺って……瑠瑠神に見せられた悪夢をあわせて何回死んだ?
……2回か。いや、死にかけのこれも合わせれば3回かよ⁉︎
「俺って実は弱い? 」
「これまでの転生者の中で弱い部類にはいるわね」
なん……だと⁉︎ これまでの転生者ってことは前にもこいつに転生させてもらったやつもいるのか。その中でも弱い部類って……どうせチートつけて転生なんだろ⁉︎ 俺もチートほしい! というかロリ神も助けてくれればいいのに、ケチなやつだな。
「ほんとに私はロリじゃないんだけど」
「その姿で言われても説得力がないんだが」
「元々この姿は5週目の姿なの」
5週目だと!? つまり、成長しきったらまた限界まで若返るあれか!? じゃあロリじゃなくてロリババアか。いや待て、若返ったんだからババアの時間は来ていないということになるのか? ならロリか? ロリだな。
「つまりロリだ」
「もういいわ。それより君、祈ったらどうなの?」
「祈るって自分が生き返ることをか?」
「そうだけど……死ぬことが怖くないの?」
「そりゃ怖いけど……死んでもお前がどうにかしてくれんだろ? だったら安心できるよ」
ロリ神は驚いた顔をしている。なんだよ? 俺なんか変なことでも言ったか?
「君、やっぱりやるわね」
「何が」
「なーんでもないよ! 」
上機嫌なのは頼られたからか? なんかあれだな、娘を見る父親のような感じだな。ん? ジト目でこっちを見るんじゃない。パパ怒るぞ!
「殺す」
「落ち着け! 頼むから! 」
「一回殺さないと……あ、そろそろお別れの時間だよ」
「え? 」
ロリ神が俺に手を振っている。お別れって俺死ぬの⁉︎ それとも生き返る⁉︎ どっちだよ! 俺が死んだらロリ神も少しは悲しむはずだ。だからそんな淡々と別れなんて告げないはず……待てよ? 俺がいつもロリロリ言ってるからウザいのが消えてラッキーなんて思われてるかも。
やばい、その可能性の方が断然高いんだが⁉︎ 裏をかいて生き返るか? でもまたその裏をかいて……
「そんなこと、自分の目で確かめなよ。迎えがきたよ」
「迎えってなに……」
後ろを指さされ、俺が後ろを向こうとした瞬間、決して抗うことのできない力によって引っ張られた。感触的に無数の手が俺を掴んでいるようだ。どんどん後ろに引き込まれていく。本当に俺死んだ? 生きてたらこんな酷い引きずりかたしないもんな……
ダサい死に方で恥ずかしすぎるだろ! 強敵との戦いの末に死、っていうのが夢だったんだが……考えを張り巡らせていると、無数の手の一部が俺の顔を覆ってきた。その手は紫色に染まっている。この手って……脳が震える、っていうあの人の手とそっくりだな。自分の能力の使いすぎで死ぬって……俺、怠惰ですね……
それが、意識が途絶える前に考えた最後の感想だった。
───目が覚めた。地獄の業火を見ようと思ったが、見えたのは白い天井。そして第一声、
「知ってる天井かよ! 」
「ちょ⁉︎ キョー君大きな声出して驚かさないで! 」
朝陽君の超能力の氷は通常の水を凍らせた氷とは違います。それはまた後に。