俺、ヤンデレ神に殺されたようです⁉︎   作:鉛筆もどき

17 / 83
誤字報告してくださった方、本当にありがとうございました。なんだよ関節キスって・・・・・関節と関節でキスでもするのかよ・・・・・



第15話 俺の超能力に祝福を!!

『えーこちら朝陽。ラぺリング降下で目標の部屋まで到達。そちらの状況を報告せよ 』

 

『 こちらアリア。目標の玄関のドアに小型のC4爆薬をセット。いつでも行けるわ』

 

『それはやりすぎだろ! まあいいか。突入するぞ』

『あたしに合わせて。3……2……1……GO! 』

 

 玄関の方で爆音が鳴り響いたと同時に俺は理子の部屋の窓ガラスにグロックのフルオートで大穴を開け突入する。受け身をとりながら俺はベッドの上でイチャイチャしているキンジと理子にグロックを向ける。

 

「動くな! この状況を説明してもら───」

 

「このバカキンジィ!! どういうことか説明しなさい!! 」

 

 アリアさんセリフかぶってる! 打ち合わせ通りにやってよ!

 そう、俺とアリアは今理子の部屋に突入した。キンジが理子の部屋に連れていかれるのをアリアが目視し、ブチギレたアリアがそばにいた俺を無理やり連れ出したのだ。俺にとってはどうでもいい事なんだがアリアはキンジを盗られたことに嫉妬しているらしい。キンジのこと好きなのか? って聞いたら返事がタイキックだったのはビックリしたけどな!

 

「汚らわしい泥棒猫! あたしの奴隷は盗めないわよ! 」

 

 アリアはベッドの上に立っている理子に.45ACP弾を容赦なくブッ放した。理子はそれを見切り、転がるように回避すると赤いランドセルをつかみ、起き上がりながらそれを背負った。アリアは顔から湯気を出しそうになるほど顔が真っ赤だ。

 

「なんであんたがキンジとイチャイチャしてんのよ! 朝陽と二股かけてるの!? 」

 

 理子はそれを聞くと本当に嫌そうな顔をし、汚物を見るような目で俺を見てきた。

 

「おい変態。お前まだ誤解を解いてなかったのか」

 

「忘れてただけだ! あと変態は余計だ」

 

「それにしてもアリアぁー? このシーンで別ヒロインがでてくるなんて・・・・・空気よめないなあ」

 

 理子は不満そうに頬を膨らましている。

 

「キー君理子の胸に溺れる寸前だったんだよ? 」

 

「お、溺れ!? 」

 

 理子はニヤニヤしながらアリアを見ている。そういうことが苦手なアリアをおちょくっているのだろう。そしてイヤミったらしくその大きな眼を細め、

 

「あーでも、アリアには関係ないか」

 

 と、アリアの平らな胸を見た。なんで火災現場に油を撒き散らすような発言するんですかね!? おそるおそるアリアを見ると、顔が般若のように歪んでいくのが分かった。口を大きくあけ、形のいい眉をどんどんつり上げていく。

 

「風穴・・・・・風穴開けなきゃ・・・・・死ねえええ!! 」

 

 背後に鬼のオーラが見えるアリアが2丁のガバメントを理子に向けた瞬間、理子の手には閃光手榴弾が握られていた。

 

 「「……!? 」」

 

 理子の手を離れたソレは俺とアリアの前で──

 

 ─────パン!

 全て焼き尽くすような閃光が室内を真っ白に塗りつぶしていく。どんな人間でもコレを見せられると本能的に自分を守ろうと萎縮してしまう。それは俺とアリアにも当然効果があり、顔を覆うように腕で視界を遮ってしまった。その閃光が晴れた時、室内に理子はいなかった。

 

「理子はどこよ!! あのくされビッ──」

 

「それ以上は言っちゃいけない! 」

 

「扉を開閉する音は聞こえなかった。多分窓から逃げたんだろう」

 

 キンジがいつもとは違う目つきで窓を見ている。理子とのイチャイチャでヒステリアモードになったのか・・・・・いや分からなくもないぞ。可愛い女の子に迫られたら誰だってそうなる。

 なんて羨ま・・・・・けしからんことだ!

 

「行くわよ・・・・・あたしの奴隷に手を出した罪は重いってことを教えてやる」

 

「アリアさん、目が紅く光っているのは気のせいでしょうか? 」

 

「そんなことより早く行くわよ! 」

 

 俺達は階段で屋上へと向かった。階段を一段一段登る度にアリアが踏んだところにヒビ割れが出来ているのは気のせいだろう。絶対気のせいだ! 異論は認めん! 屋上の扉の前まで着き扉を開けようとしたが、外側から何かがストッパーの役割をしているようでうまく開かない。

 

「アリア、ここは開かないから一回戻ってラペリングを───」

 

「うるァ! 」

 

 アリアのような可愛い子が絶対にだしてはいけない声をあげ、正拳突きを扉にぶち当てた。

 ガァン‼︎ と甲高い金属音が鳴り響き、扉は文字通り吹き飛ぶ。それは、まるでアリアの怒りを表しているように大きくひしゃげていた。

 対して理子はフェンスに寄りかかり、ハイジャックの時に見せたケモノのような冷たい眼を俺たちに向けた。月明かりに照らされ理子の笑顔は妖しいものへと変わっていくように見え、その顔はどんな男をも虜にする魅力が感じられる。

 

「やっと見つけたわ。峰・理子・リュパン4世! ママの冤罪、償わせてやる! 」

 

「やってみな、ライム女(ライミー)

 

 理子はイギリス人の蔑称(べっしょう)を口にすると、アリアは般若のような顔をさらに歪ませ、2丁のガバメントをホルスターから抜いた。鬼のようなオーラはさらに強くなり、もう我慢の限界が近いことがわかる。

 

「言ったわねカエル女(フロッギー)・・・・・覚悟しなさい! 」

 

 理子は戦闘狂特有の獲物を見つけた時のような笑顔を浮かべ、2丁のワルサーP99を背負ったランドセルから取り出し、いつ戦闘になってもいいように体の重心を少し前におくような構えをとった。

 激昂アリアと戦闘狂の理子。両者がここで戦闘になれば間違いなく寮が破壊される。今のアリアは扉だろうがなんだろうが理子を捕まえるためなら何でも壊しにかかるだろう。理子もそんなアリアをおちょくるから尚更手がつけられなくなる。

 

 そして開始の合図を告げるように満月の光が雲に遮られた時、アリアと理子はお互いをねじ伏せるために猛スピードで駆け出し────

 

 

 

 

 

 突如、下から巻き上げるような、神のイタズラとしか思えないような強風が俺達を襲った。キンジは思わず目を瞑ったようだが、俺は見てしまった!! その神のイタズラによって2人のスカートがめくれ上がるのを!

 

「きゃ!! 」

「な!? 」

 

 アリアと理子は顔を真っ赤に染め上げ、スカートを上から叩くようにして押さえつけた。そして2人仲良く俺達の方を向き、

 

「「見た・・・・・よね 」」

 

 と、殺気をむけてきた。キンジは首をこれでもかってくらい横に振り、見ていないという意思を伝えている。俺は・・・・・見ちゃったよ! 月を見てましたって嘘つくか? いや、そんな嘘今どきアリアくらいにしか通じない。

 だからといって『見ました! 』なんて言ってみろ、全身風穴の刑ではすまないだろう。どうする俺!

 

「朝陽・・・・・風穴開けられたくなかったら早く答えて」

 

「変態、殺す」

 

 まずい! 退路を絶たれたッ!! こうなったら・・・・・あえて真実を堂々と話し、呆気にとられ動きが止まった瞬間に敵中突破!! その隙に逃げるしか俺の生き残れる道はない!

 

 戦国時代の猛将、島津義弘も敵に追い詰められ圧倒的に不利な状況にも関わらずあえて敵中突破。命からがら助かったんだ。

 まさに『島津の退き口(のきぐち)』ならぬ『朝陽の退き口』だッ! あの人にも出来たんだから俺にもできる! さあ! 勇気をだすんだ俺!

 俺は身の毛もよだつような殺気をだしている2人にドヤ顔を向けた。

 

「ああ見たぜ! ハニーゴールドと苺のパ──」

 

 アリアと理子は疾風のような速さで俺に走り寄ると、コンクリートブロックを破壊するアリアの拳とそれと同等の威力であろう理子の拳が俺の顔面に炸裂した・・・・・

 

 

 

 

 

『頭』というものがある。頭とは口や目、鼻など重要な感覚器官が集まっている部分だ。そして頭には脳がある。脳は人間の中で最も重要な器官の1つだ。脳は頭蓋骨に守られているが強い衝撃を与えると当然割れる。コンクリートブロックが横から頭蓋骨にとんできたらはどうなるか、当たりどころが悪かったら死ぬだろう。そう、()()()()()()()()()()が2つ俺の頭に直撃した。これが何を意味するか、ある程度教育を受けている者であれば一瞬にして答えが出るだろう。それは────

 

「ホントに君はここに来るのが好きなんだね」

 

「好きじゃねえよ! むしろ嫌いだわ! 」

 

また転生の間に来てしまった……最悪だ。

 

「それはひどいじゃないか! 私と会えるのに! 」

 

「お前は守備範囲外だ」

 

「君を輪廻転生の輪から外しておくよ」

 

「ロリ最高! まじ神! 」

 

 俺はロリコンじゃないと心の中で必死に自分を慰める。さて、今度は生死を彷徨っているのか、それともホントに死んだのかどっちだ? 死んでたら生き返らせてほしいんだがな。

 

「ロリ様、俺は死にましたか? 」

 

「残念なことにまだ生きてるよ」

 

「おっ、まだ生きて・・・・・残念なことってなんだ」

 

「君みたいな変態は人類の敵だから」

 

「いや俺は変態じゃ────」

 

「迎えが来たよ! また行ってらっしゃい! 」

 

 

 変態という誤解を解くことができないまま、俺は後ろの虚空から伸びている無数の紫色の手に身体を引っ張られた。ロリ神を見ると、満面の笑顔で手を振ってくれていたがその笑顔は明らかに俺をバカにしてる笑顔だ。文句を言う暇もなく引きづられたまま下に落ちる感覚と共に意識も落ちていった・・・・・

 

 

────────

 

 

「さっさと起きなさい! 」

 

 意識が覚醒すると共にアリアの怒声が俺の頭上から聞こえた。これは・・・・・理不尽な暴力が俺を襲うかもしれない! そしてアリアが殴る場所といったら腹しかない! この間わずか0.2秒! まだ間に合うッ!

 

氷鎧(ひょうかい)ッ!! 」

 

 超能力(ステルス)を使い腹全体を覆った氷は見事アリアのパンチを防ぎ────

 

「グホッ!?!? 」

 

 ───きれずに氷の鎧を無惨にも破壊しながら俺の腹にその()()()()は振り下ろされた。

 

「あら、やっと起きたのね」

 

「やっと起きたのね?じゃねえよ! どこの世界に寝起きに鉄ハンマーを腹に食らわせる奴がいるんだよ! 」

 

「ここにいるわ。あと私の拳はハンマーじゃないわよ! 」

 

 腹の痛みに悶えながらも涙目でアリアを睨むと、横に理子とキンジもいた。アリアと理子はクズを見るような目で俺を見下ろしている。その目線に耐えかね反対の方向を見ると、白地のカーテンが風になびいてバタバタとはためいている。寝ているベッドも清潔感溢れる純白であり、ここがどこかを教えてくれた。つまり・・・・・武偵病院だ。

 

「また入院かよ・・・・・入院費だって高いんだぞ! 」

 

「あんな清々しい顔で私達のパンツ見たって言ったからよ! 」

 

 いや・・・・・言ったけども! 殴ることはないでしょ!

 

「で、今回の俺はなんで入院してんだ? 」

 

「軽度の脳挫傷」

 

「脳挫傷!? よく打撲だけで済んだな・・・・・」

 

「てことで皆で泥棒する事になったから、キー君かキョー君が女装してもらうことになりマース」

 

 え・・・・・無視・・・・・ですか? というか、

 

「どういうことだ。色々とツッコミ所があり過ぎてやばいんだが」

 

「んー1から説明するね! 」

 

 理子は鼻を鳴らし、得意気に説明を始めた。

 どうやら俺とキンジ、アリアで横浜郊外にある『紅鳴館』という洋館に潜入するらしい。そこのハウスキーパーさんが休暇をとるということで臨時のハウスキーパーが3人必要、だそうだ。立派な館ともあり、地上3階、地下1階で無数の防犯装置が張り巡らされている。

 

「で、盗むものはなんだ? 」

 

「理子のお母様がくれた十字架」

 

「・・・・・それは大切なものか? 」

 

「お母様がくれた・・・・・唯一の遺品なの」

 

 理子は少し悲しそうな眼差しで俯いた。だが、それも一瞬のことであり、すぐに明るいいつもの理子に戻った。

 

「まあそこでね、1週間くらいメイドと執事になって、潜入捜査をしてもらいたいの! 」

 

 潜入捜査。企業や暴力団など捜査対象となる組織に武偵そ潜入させ、情報を集める。場合によってはその場で強襲・逮捕する手法であり、前世では違法となっていた捜査だ。それにしても執事、か。1回諜報科の依頼でやったことあるけど・・・・・正直やりたくない。

 1日中主人のそばに控えて、一挙一動しっかり見て行動に移さなければならないからな。俺が執事はやりたくないってのはその主人が俺を性的な目で1日中見ていたから、ということもある。しかも襲われたし。女性ならまだしも、男だったから全力で逃げた。

 

「執事か、服はそっちで用意してくれ」

 

「理子の話聞いてた? まだ決まってないんだよ? 」

 

「何が・・・・・決まってないんだ? 」

 

「キー君かキョー君が女装するって言ったじゃん」

 

 は・・・・・そういう事言ってたか? ・・・・・言ってたわ。なんでだよ!

 

「なんで女装なんだよ! 」

 

「採用内容がハウスキーパー3人で、執事が1人、メイドが2人なの」

 

「だから・・・・・俺とキンジどちらかがメイドになれと」

 

「正解でーす! 」

 

 女装、阻止すべし!

 

「・・・・・そのマゾゲーの回避方法を教えろ」

 

「今からくじ引きをしたいと思いまーす! 」

 

 理子はアリアが持っていたハート型の箱のようなものを受け取り、シャカシャカと上下に振った。その箱はハートの丸くなっている2つの部分に手を入れられるほどの穴が空いている。両者一緒に手を突っ込める、ってことか。そして満足したのか、ニヤッと俺とキンジの方にその箱を突き出した。

 

「ハイ! 1枚引いてください! ピンクの小さい画用紙がメイドさんです! 」

 

 固唾を呑んで俺達はその箱を見つめた。

 なにせ人生に黒歴史を作るか作らないかの選択、運試しだ────と、キンジは思っているだろう。

 だが違う。これは運試しなんかじゃない。ピンク色の紙が出たらメイド、だ。多分もう片方はただの白色の紙だろう。理子の性格からしてわざわざ白色画用紙を買ってくるとは思えない。画用紙の質感は普通の紙より粗い、つまりザラザラしているんだ。

 つまり! ザラザラしていない方を取った者が勝者となる!

 

「キンジ、俺から先にいかせてもらうぞ」

 

 俺はクラピカ理論で左の穴を選び、手を突っ込んだ。箱の底に2つの紙があり、俺はザラザラしていない方を掴んだ。キンジも手を突っ込み、ゴソゴソと残りのハズレであろう紙を掴んだ。

 

「キンジ、せーの、で引くぞ! 」

 

「ああ、分かった」

 

 キンジも不安のあまり額に冷や汗を浮かべている。だが残念だったなキンジよ、それはハズレの紙だッ!

 

「せーの! 」

 

 勢いよくバッと紙を取り出し、俺はキンジにドヤ顔を向け────

 

 

 この時、俺は間違っていた。侮っていたのだ。自分の運の悪さ、神から好かれるあまりに不幸となってしまったことを。そして俺は世界で一番不幸だということを。

 

 

 ───手に握られているピンク色の()()()()を見て凍りついた。キンジは()()()()()()を握っていた。

 

「理子! ピンク色の画用紙じゃないのか!? 」

 

「理子のパンツを見た、その罰! 」

 

「だからって嘘つくことはないだろ! 」

 

 理子に騙されたッ!! ザラザラのほうがピンク色だと理子にそう思い込むよう仕組まれていた!!

 

「ということで、朝陽が女装決まり!! 」

 

「嫌だああああああああ!! 」

 

 悲痛な叫びが病院内に響き渡った・・・・・

 

 

 

 

「そういえばアンタ、体力テストも受けてないでしょ。明日必ず受けるようにって蘭豹先生が言ってたわよ」

 

「怪我人になんてこと言ってんだアイツ! 」

 

 




島津の退き口・・・関ヶ原の戦いにて島津義弘率いる島津軍約300が敵中約80,000に孤立してしまう。だが、あえて徳川軍本隊の目前まで一気に突破。更にそのまま脇をすり抜けて伊勢路方向へ一直線に駆け抜けダイナミック帰宅した。
(本陣目の前で転進して退却した、など諸説あります。なのであまりあてにせず、ふーん、というくらいに思っていてください)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。