理子を全力で引き止めてから1週間たった。未だに視力が回復しないからアニメが見れない。だがしかし! 視力が回復していないことによって得られたものだってある! それは───
「キョー君! 口開けて! 」
「ハーイ」
食事時にアーンしてもらえることだよ! 金髪童顔美少女にアーンしてもらうとか夢のようだな! だがこれは現実だ。全国の男子諸君、俺は更なる高みへと歩み続けるよ。
「ねえ、このお粥かけるよ? 」
「なんで!? 」
「くだらないこと考えてる顔だったから」
「今日退院できるのに火傷でまた入院したくない」
そう、今日はめでたく退院の日だ。昼頃にこの病院をでて寮に戻って寝る──という訳にはいかず、武偵校に行かなきゃならない。これも綴が、
『ちょっと伝えることがあるから来い』
ってドスの利いた声で脅迫してきたせいだ。今日は絶対に休みますと言いたかったけど、電話口の後ろから文の助けを求める声がしたから行かざるを得ない。
「キョー君なんでそんな怒ってるようで泣きそうな声してるの? 理子のお粥美味しくない? 」
「いや? これなら毎日作ってもらいたいくらい美味しいけど。そうだ!いっそ嫁にこな──」
「死ね! 」
理子の怒声とともに理子の右ストレートがボコッと鈍い音をたて右頬にめり込んだ。痛みに悶えながらも俺は文句を言おうと理子に口を開いたが──その開いた口に熱々のお粥を文字通り注ぎ込まれる。
(やばい熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い! )
「うぐっ・・・・・ごほっ!」
熱々のお粥は食道を焦がしながら胃へと滑り落ちていく。その熱さと感触を涙目で必死で堪え・・・・・お粥が全て胃の中に収まったところで再び口を開いた。
「てめぇ! 何しやがんだ! 」
「キョー君がよ、よよ、嫁とか言うからだよ! 」
「だからってお粥流し込むことはねえだろ! 」
それから理子は俺と口喧嘩をしながら、ちゃっかり俺の荷物を整理してくれている・・・・・音がする。なんだかんだ言って手伝ってくれるしな、理子は。最近急に優しくなったのは気のせいだと思うが・・・・・まあこっちも助かるし、優しいに越したことは無い。
「なあ理子」
「なに? またお粥流し込まれたいの? 」
「いや、なんで俺のお世話してくれるのかなって。ほら、理子がやらなくても看護師さんがやってくれるだろ」
「ッ!? 別に・・・・・私はキョー君の恋人だから・・・・・」
ほう。こんな所まで演技してくれるのか。まあ目が見えない時に
「理子、いつもありがとな」
「・・・・・別にいいよ。キョー君だから」
それから理子が纏めてくれた荷物を持ち、一時的とは言え視覚障害持ちなので長さが1.4mほどの白杖を手にする。この白杖はただの杖ではなく中に刀が仕込んである仕込み杖で、頼んだ訳では無いのだが文が作ってくれた。俺はゆっくりとベッドから離れ、コツコツと前に障害物が無いか確認しながら進む。
「キョー君、荷物くらいは理子が持つよ」
「女子に荷物を持たせるのは気が引けるのだが」
「・・・・・じゃあこうする」
理子はパタパタと足音を鳴らしながら俺の横に並び、杖を持っていない俺の左手をギュッと握ってきた。しかもその握り方は俗に言う恋人繋ぎというものだ。
「こうすれば安心出来るでしょ? 」
「あ、ああ。案内頼むよ」
理子に引っ張られるという形で病室をでた。ヒンヤリとして俺たち以外の足音や話し声が聞こえない廊下は、病院が実家のような俺にとっては新鮮な気持ちにさせられた。
それから理子に従いながら歩いていると、急に引っ張られる力がなくなり、それに反応できず俺は理子のかかとを・・・・・少し踏んでしまった。
「あ、すまん! 急に止まったから反応できなかった!」
ここで謝らなければ鉄拳がとんでくる。謝っても鉄拳がとんでくるけど、謝らないよりはマシだ!
「ん。いいよ別に」
「ごめんなさい拳だけは! ・・・・・え?」
「今のはちゃんと止まるよって言ってなかった理子が悪い」
なんと! 予想外の返しだ。これは地球の自転が反対向きになるかもしれん。
「理子、拾い食いはダメだぞ」
「死ね!」
グリィ!と俺のつま先に理子のかかとが突き落とされた。
「ウグぅ⁉」
その時ちょうどエレベーターが到着し、チーンという音をたてた。
この世界に俺を優しくしてくれるのは文しかいないのか!?ただの鉄と樹脂製シートと塗装だけで作られているエレベーターにまで煽られるとか・・・・・
「ほらキョー君、いくよ」
「はい・・・・・」
これ以上怪我を増やしたくないので素直にエレベーターに乗る。口は災いのもとって言うけど俺そんなにヒドイ事言ってないはずなんだけどな。一瞬の浮遊感に追従してエレベーターは下降していく。エレベーター内でも理子は手を繋いだまま。柔らかく小さな手は俺の手を決して放すまいとしている。
「な、なあ理子。これって病院にいる大量の人にみられないか?」
「見られるよ?でもキョー君、目が見えないから仕方んないでしょ?それに──もう遅いよ」
再び、チーンという音が鳴り、エレベーターの扉が開く音がした。
理子が病院を出てからもずっと手を繋いでくれていたから無事、武偵校に着いた。昼過ぎということもあり、武偵校の校門付近は大勢の人の声が祭りのように飛び交っている。
「あれ? あの人って確か京条先輩だよね? なんで白杖持ってるの? 」
「任務中に失明したらしいよ」
おう。一時的だから目が見えるようになったらよろしくな。
「峰先輩と付き合えるとか、あの人と人生変わりたいなー」
「バカ! 変わりたい気持ちは俺の方が上だ! 」
おうお前ら2人。俺と変わってくれるならいつでも変わってやるぞ。瑠瑠神セットで良いならな。
それから周りの視線が心に突き刺さりながらも職員室へと向かっていく。だんだん近づいてくる硝煙の匂いに懐かしさを感じながら。
「おう京条! お前失明したらしいな! お前みたいな変態は失明と言わず、死んだ方がいいぞ」
「じゃあなんでお前は生きてるんだよ。はよ死ね」
「ゴミ条! お前だけ爆発しろ! 」
「お前の自主規制を粉微塵にして魔法使いにするぞ」
強襲科の連中は挨拶が『死ね』だ。一般人が聞いたらキレるレベルでヒドイ。まあ慣れてくると帰ってきたって感じがしていいもんだが。
「あ、京条先輩! 」
「ん? 」
今のカッコイイ女声は・・・・・ライカだな。紅鳴館の一件以来会ってなかったから久しいな。
「我が
「何言ってるんですか。失明してる人に組手とか、アタシはそんなヒドイ人じゃありませんよ」
「そうか、じゃあ今日の用事が済んだら組手の相手してやるよ」
「・・・・・へ? 」
ライカは俺の返答が予想の斜め上を行ったらしく、
素っ頓狂な声をあげた。俺も病院生活で身体鈍ってるし、ここらで体力を元に戻しておかないと今後の武偵活動に支障がでるしな。
「じゃ、準備運動して待っててくれ」
「そ、そんな! 出来るんですか!? 」
「CQCくらいだったらな」
見えなくても何となく分かる。ライカはまだ1年だが出るとこ出てるから、そこに当てないように気をつけるだけだ。
「だったら京条先輩の用事についていきます! 峰先輩がいるとはいえ、段差で躓いたら峰先輩も怪我してしまいますから! 」
「あ、ありがとう? 」
これはつまり・・・・・金髪美女に囲まれるということではないか!? 金髪童顔の姉と金髪クール妹、俺は人生勝ち組だったんだね! わーい!
「キョー君、そんなに喜んでると爪はがすよ? 」
「さらっと痛いこと言わないでくれ」
こうして、理子とライカと一緒に職員室まで歩くことになった。ライカは俺から一歩離れたところで鼻歌交じりについてきている。いやホントに迷惑かけてすみませんね。でも後輩に慕われるってことは人望があるってことだ。これは武偵としての評価も上がる。まだ卒業後に何するか決まってないし、そもそもこの高校じゃなくて人生を卒業してるかもしれないから俺には少ししか関係の無い話だ。
「それにしても、ライライってなんでキョー君を
「おい。サラッとひどい事言うな」
俺の嘆きをスルーするかのように、ライライもといライカは、待ってました! と言わんばかりの興奮した声でその理由を語りだした。
「なんというか、アリア先輩と京条先輩が闘うのを見てカッコイイと思ったので! 」
おお!
「あと京条先輩は諜報科でもSランクをとっているのでどんな姑息な手段で相手を倒すのか知りたかったから・・・・・ですかね」
「ライカ? 褒めるのか貶すのかどっちかにしてくれ。いや貶さなくていい。褒めるだけにしてくれ」
前言撤回だ。泣くよ? 本気で泣くよ? 後輩にまでこの言われようだよ。もう理子に膝枕して慰めてもらうしか俺の心の傷は癒えんな。
「キョー君の髪チクチクしてるから膝枕は却下だよ」
「なぜバレたッ!? お前は超能力者か!? 」
「キョー君単純すぎ」
クスクスとライカにも笑われるし、理子は膝枕してくれない・・・・・皆さん俺に冷たすぎませんかね。
そうして落ち込んでいる俺の肩にライカが手を乗せてきた。同情するなら人望とお金くれませんか? とライカに言おうとしたところで──1年の教室から強襲科の後輩の声が聞こえてきた。
「火野ライカ? あんなのは最下位だ! 」
その一言から教室にいた何人かの笑い声が響いた。
「アイツ、身長も170近くあるし男っぽいしな! 」
「ありゃ女の皮をかぶった男だ! 」
「胸もパッドで誤魔化してるってか? 」
ギャハハと笑い声が廊下にまで響き渡った。──いい気分はしないな。寧ろ殴りたい。武偵同士のイジメは許されない。今後の武偵活動でのチームワークに影響するからだ。陰口も同じこと、
「理子。入口まで案内よろしく」
「はいはい。まあキョー君の良いところってそこなんだけどね」
「大丈夫です! 」
俺の肩に置いていたライカの手に力が入る。目が見えなくなりそれ以外の感覚が鋭くなったおかげで、ライカの手が少し震えていることがわかった。
「いつも言われてますから。それにアタシは可愛いくないのは本当のことですから」
切なげな声で訴えてくる。いつも言われてる・・・・・か。尚更、戦兄としてアイツらに言っておかなければならないことが増えたな。
「よし、レッツゴーだ」
「ちょ!? 」
ライカを廊下に残し、理子の案内で扉の前まで来た俺は勢いよく扉を開けた。理子と手を繋いだままで多少恥ずかしい部分もあるが、堂々とそいつらに近づく。
「おい、今何やってるんだ? 」
「え、えと、クラスの可愛い子ランキングです」
「そうか。俺はライカに一票だ」
「あ、理子もライライに一票で! 」
男子たちから驚きの声が上がった。俺は声を低くし、脅すような口調で続けた。
「ライカは俺の可愛い
「「す、すみませんでした! 」」
「あと、ライカは可愛いからな! 」
廊下にいるライカにも聞こえるような大声でその男子達に言い放つ。ライカにとって俺はただの先輩かもしれないが、俺にとっては特別な存在だから。特別って言っても、恋愛的な意味ではなく、肉親の妹のような感じだ。だからあいつの事は妹って呼んでる。
「キョー君、理子の前でそれ言う? 」
「あ・・・・・ゴメンな──」
「後でオハナシしよっか」
「はい・・・・・」
結局最後までカッコつけられず、尻を蹴られながら教室を出ていくはめになった。痛いよ・・・・・身体にも心にもダメージが来るよ。俺は尻をおさえ、机に何度も足をぶつけながら扉を開けた。
「京条先輩! 」
「ん? なんだ? 」
「あの・・・・・アタシが、かか、か、可愛いって・・・・・」
「おう! ライカは可愛いぞ! 」
言い終えた瞬間に突然後ろから膝を蹴られ、俺は前のめりに倒れこんでしまい───
むにゅっという感覚が顔を挟み込み、俺は倒れずにすんだ。・・・・・なんだろうこの感覚。そして後ろにいるであろう理子から発せられるこの殺気。今すぐこのむにゅむにゅからどかなければ俺の首が持ってかれるッ!
「あの・・・・・先輩・・・・・」
「んー! んー! 」
「ちょ!? そんなところで喋らないでください! 」
俺の頭に拳が叩き落とされた。ハゲるからやめてもらいたいんだが!? 俺は即座にその場に立ち、後ろへと下がった。
「すまん! 俺何か触ったか? 」
「いや・・・・・そうじゃなくて・・・・・その・・・・・」
「キョー君。いったい何人の女子をそうやってたぶらかすの? 殺すよ? 」
「なんで!? 俺倒れただけじゃん! 」
「もういいや。行くよ」
俺は理子に耳を引っ張られながら職員室へ再び向かった。てか理子さん? 引っ張る力強くなってないですか? 耳の中でミリミリ音が聞こえるんですけど。
それから歩を進めるたびに痛くなり、そろそろ離してもらおうかと理子の手を掴もうとしたところで俺の耳を引っ張る力は弱まった。
「着いたよ」
「ありがとう・・・・・出来れば中まで連れて行ってくれると助かる」
「そう言うと思ったよ」
理子はギュッと俺の手を強く握り直し、職員室の扉をノックした。
以前の理子なら、『理子の手を握っていたいだけだろ』からの『うん! 』で俺が蹴られてたんだが、まあ優しくなったのは嬉しいな。ツンとデレの差が激しいのが難点だけど。
「すぐ戻るからライカはここで待っててくれ」
「あ、強襲科の棟で準備運動でもいいすか? 」
「お、気合はいってるね。じゃあ先行っててくれ」
ライカは俺にお礼を言うと走って行ってしまった。頭の感触が何なのかは聞いたらビンタされそうだし、聞かないでおこう。知らぬが仏ってやつだ。
俺は理子に引っ張られ、少しヒンヤリとした職員室に入り綴の机まで歩く。職員室の扉から綴の机までは近いということは白雪の護衛の一件で職員室に潜入した時に予習済みだからな。
「綴先生、連れてきました」
「ん? あー峰か。ご苦労だったな。さて京条、ちょいと座れや」
「はい・・・・・」
理子に椅子の位置を教えてもらいゆっくりと座った。綴先生とは正直長く話したくない。いつも死んだ魚のような目をして絶対違法な葉巻のような何かを吸っているのだ。そして時折見せる不気味な笑顔は背筋が凍るほど怖い。今日もいつも通りの目つきをしているのだろう。
「まずお前に伝えることが2つある」
「その2つとは・・・・・」
「1つは車輌科、衛生科共にEランク降格おめでとう」
俺は綴先生が何を言ってるのかわからなかった。もう一度、綴先生が言ったことを心の中で反芻し・・・・・
「──はい!? なんでですか!? 」
「講義出てなかっただろ? 下げられて当然だ」
講義・・・・・そういえば一学期が始まってから一回も講義に顔出してないな。出てるのは強襲科と超能力捜査研究科、諜報科くらいだ。ああ・・・・・衛生科はどうでもいいが車輌科はイタすぎる。Eランクってことはバイクと中型車までしか乗れなくなるのが一番いたい。せっかくヘリコプターの操縦を勉強しようと思ってたのに!
「じゃあ! もう一つ俺に伝えたいってことは!? 」
「えーっと・・・・・アレだ。お前の二つ名が決まった」
「ホントですか!? よっしゃあああ!! 」
待ちに待った二つ名! ようやく世に誇れる名がついたよ! 前世の母さん、父さん、やっと世界の武偵達の仲間入りを果たすことが出来るよ!
「キョー君凄い嬉しそうだね」
「そりゃ理子は
幸せな気持ちで綴先生の言葉を待つ。
「ふふっ・・・・・よし、発表するぞ」
「頼みます! 」
「2年強襲科、京条朝陽、お前の二つ名は──
『ワールドエネミー』だ」
ワールド・・・・・エネミー? なんだ世界の敵って。俺は世界に恐怖されるような事なんてしてないぞ。大層な名前だが厨二クサい。人前で名乗れるはずもない。
「なんですかその名前・・・・・」
「お前は戸籍上は日本人だからしっかり漢字表記だ──ククッ」
戸籍上は日本人ってなんだよ。というか、なんで今笑ったんだ?
「笑わないでくださいよ! で、どういう漢字ですか? 」
「これだ」
何かの書類が顔の前に近づいてきたのが感覚で分かった。いや、俺まだ失明してるんですけど。見えませんよ。
すると、甘酸っぱい良い匂いが鼻腔をくすぐってきた。きっと理子が二つ名の漢字表記を見ようと顔を近づけて来たのだろう。そして──
「キャハハハハハハハハ! 」
理子はいきなり大声で笑い始めた。そしてすぐ横でドタッと床に倒れる音が続く。職員室だからなのかすぐ引き笑い気味になったが、完全にツボに入ったように笑い続けている。
「そんなにおかしいか? 」
「お前の二つ名の漢字表記は『変わる』という字に『態度』の態だ」
「それって・・・・・変態じゃねえか! 」
「ワールドエネミーは世界の敵。世界の敵は女の敵。女の敵は・・・・・
「武偵局は頭おかしい人しかいないんですか!? 」
「なんで変態なんですか!? 」
「お前、中国の
「はい。確か・・・・・去年の9月のことでしたね」
去年の9月頃に横浜で怪しげな取引があるから偵察、違法な取引だった場合強襲しろとの任務だった。キンジと不知火、武藤のパーティで臨んだ・・・・・気がする。
「その時の用心棒だった女を撃退した時にお前は何をした? 」
「あー確か語尾が変な四姉妹ですね。見た目が幼女のくせに強かった覚えがあります。撃退方法は確か・・・・・言いたくな───」
「情報は上がってんぞ〜。ソイツらの一人がスカートだった事を利用して、風でめくれあがった瞬間にパンツの紐だけが切れるようにグロックで超精密射撃したんだよな? そして見事命中。かわいそうなことにその幼女は泣いて帰ったんだってな。『アイツは変態だヨ! 』って喚いて」
「見てないからセーフです! 」
俺もその時は出来るとは思わなかったよ! 手強かったから他に方法もなかったし、青竜刀で俺もあちこち斬られてたから苦し紛れの一発だった。まさか・・・・・
「もしかして・・・・・それが原因ですか? 」
「それ以外にもあるが一番の原因はそれだろう。まさに、
なんというバタフライエフェクトッ! まさか見た目が幼女のパンツの紐を切ったことがここまで響くとはッ! 誰も予想できねえよ! たかだかパンツごときに何俺の人生狂わせてんの? バカじゃないの!? 絶望に絶望を重ねても絶望にしかならねえよ!
「即刻、二つ名の改名を要求します! 」
「はぁ? ・・・・・まあ今回の件に関しては気の毒だからな。掛け合ってやるが、時間かかるから待っとけよ」
「出来るだけ早くお願いします! 」
「さて、伝えたいことは伝えた。もう帰っていいぞ」
俺はゲンナリしながら立ち、まだ笑い転げている理子の首根っこを持って職員室の扉へと引きずって向かう。記憶を頼りに何度も先生達の机や椅子にぶつかり、目に涙が浮かんでくる。
ああ神よ! こんな俺にも慈悲をください!!
────その後、ライカに変態先輩と呼ばれ、疲労で動けなくなるほどCQC訓練に付き合わされたのはいい思い出だ。
藍幇の四姉妹、ごめんなさい
ライカは妹キャラです。