俺、ヤンデレ神に殺されたようです⁉︎   作:鉛筆もどき

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前回 璃璃神と戦いました。恋人(仮)のおかげで死なずにすみました。


第26話 デートのお誘い

「なあハニー」

 

「なに? ダーリン」

 

「暑いしセミがうるさい」

 

「暑いって言うの禁止。セミは仕方ないでしょ」

 

 夏の日差しが容赦なく照りつけ、俺たちが歩いている並木道の背の高い木々を舞台にセミが合唱大会を開催している中、俺と理子は東京武偵高校に歩いて向かっている。M93Rを返さないと文に怒られるから仕方なく向かっているのだが・・・・・あの極寒の雪国から帰ってきた途端にこの暑さだ。帽子も被れない。ビルの上から狙われた時にスコープの反射光が見えないという理由で禁止されているのだ。

 

「はあ・・・・・こんな暑いなら車でも買おうかな」

 

「買うとしたら何買うの? てかそんなお金持ってるんだ」

 

「日々貯金してるから車くらい買えるさ。今考えてるのはGT-R35か86GTだな」

 

「ダーリンが運転したら事故に巻き込まれそう」

 

 否定出来ないのが辛いな。持ち前の不幸で玉突き事故に巻き込まれたりだとか、考えれば色々とある。それでも車は欲しい。そろそろ自転車通学は色々と不便なこともある。

 

「事故しないように努力はするが」

 

「そうしてね。理子が痛車に改造してあげるから」

 

「やめろ。個人的にはそうしたいところだが()が傷ついたら泣くぞ」

 

 嫁と言うと、理子が睨んで俺の脇腹にパンチをしてきた。激痛が走ったがこの暑さで反応する気力もない。

 

「ダーリン? 二次元はいいけど、現実(リアル)で浮気したら・・・・・控えめに言って地獄に堕とすからね」

 

「全然控えめじゃないと思う」

 

 浮気か。そういえば前世で学年一番のイケメンが浮気をしている事がバレたことがあったな。そのイケメンの浮気相手が学年で一位二位を争う美女だったから余計にタチ悪い。最後は土下座させられてたし、浮気だけはしたくない。

 

「そっか。ところでダーリン、後ろから車が猛スピードで迫って来た時の対処法を教えて」

 

「何言って​───」

 

 振り向くと、スポーツカーらしき車が確かに迫ってきていた。どう見ても100キロ以上は出てるだろう。それならば問題ない。問題なのはその車が歩道を走っている事だ。セミたちも警告しているのか、より一層()()の声が大きくなっていく。

 

「避けろ理子ぉ! 」

 

 理子を並木道の背の低い木の上に突き飛ばす。

 直後、凄まじい衝撃で自分が、風に飛ばされた紙のように夏空へ吹き飛ばされた・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪かったな。メンゴメンゴ」

 

「轢いたことに関してまったく悪気がないように感じるのですが」

 

「歩道にいる方が悪いだろぉ」

 

「それはこっちのセリフだ! 」

 

 クーラーが効いた車内で、俺を轢いた人​──綴先生は悪びれもなくそう言った。歩道にいる方が悪いだろなんてこの暑さで頭がおかしくなったんじゃないだろうか。元から頭がおかしい人だとは思うが。

 

「その詫びとしてこうやって乗せてやってるんだ。そろそろ許してくれよ」

 

「受け身とれてなかったら死んでましたからね。でもなんで歩道なんかに突っ込んできたんですか? 」

 

「車の中が涼しすぎて寝た」

 

「運転免許剥奪されればいいのに」

 

「まあまあ。キョー君も生きてるし良いじゃん」

 

 理子は俺に近づくと、全身を預けるようにして寄りかかってきた。せっかく涼しいのにくっつくなよ。

 俺は『暑いから離れろ』と目で訴えるが、理子はヒマワリのような眩しい笑顔で『いやだ』と伝えてきた。なんでコイツの笑顔はこんなに可愛いのだろうか。

 

「峰の言う通りだ。さて、話は変わるが、お前らの恋人のふりは上手くいってるようだな」

 

「え? まあうまくやってます」

 

「私たちも安心してるぞ。今の所、誰にも知られてないよな? 」

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

 言えない。既にキンジ、アリア、白雪、平賀さん、武藤、不知火に知られているなんて。口が裂けても言えないぞ!

 

「そのまま付き合ってみたらどうだ? お前に寄りかかっている奴は、まんざらでもないって感じだが」

 

 綴先生はバックミラー越しに理子をニヤニヤと見始めた。理子はそれが自分に言われている事だと気づいたのか、弾かれるようにして俺から離れた。

 

「べ、べべ別に! 理子の理想は、身長が同じくらいで、優しくてキョー君みたいに変態じゃなくて、誰にも負けないくらい強い人がいいんです! 」

 

「へえ。お前、前は身長が高い人が好きとか言ってなかったか? そう言えばとある本に書いてあったな。『好きな人の前では、好きな人とは逆の容姿や性格を言ってしまう』って」

 

 すると、理子の顔が茹でタコのように真っ赤になってしまった。この反応は​───そういう風に捉えてもいいかな⁉︎

 

「理子。今からお前は俺の嫁だ」

 

「黙れ変態! 」

 

 理子の右ストレートが俺の顔面に放たれた。

 

「あべしっ! 」

 

 至近距離から放たれるそれは、瞬間移動でも使えない限り避けることが出来ない一撃。俺に瞬間移動など出来るはずもなく、当然直撃してしまった。この一撃は・・・・・普段のよりも重いぞ!

 

「理子はキョー君のこと、何とも思ってないから! 」

 

「そんな否定しなくても」

 

「じゃあ峰、なんで京条に寄りかかってたんだ? 幸せそうな顔で」

 

 綴先生にイタイところを突かれると、理子はいきなり両手を握りこぶしにすると、天高く突き出した。

 

「痛い! 」

 

 理子は体を折り曲げ、小動物のような唸り声を上げ始めた。忙しいやつだな。

 綴先生の車の天井は一般車より低い。しかも見た所防弾仕様だ。天井を殴ればそうなる事はコイツでも分かっていたと思うんだが。

 

「挙動不審で怖いのですが」

 

「キョー君うるさい! 」

 

 目に涙を溢れんばかりに溜めながら俺をギロッと睨みつけてきた。睨んでいる顔も可愛いというのは反則だろう。

 

「理子は眠かったから寄りかかっただけです! 」

 

「へぇー」

 

 綴先生は意地悪そうな笑みを浮かべた。そして心なしか、尋問科で相手を尋問している時と同じ雰囲気となってきている。思い出せば、綴先生の尋問の技術は日本でも五本の指に入る尋問のプロだったな。ここで理子が尋問され、恥ずかしい思いをすれば後々被害を被るのは俺だ。だからここでその話題は打ち切らせてもらう!

 

「そんなことより綴先生、ジャック先生との関係はどうなっているんでしょうか」

 

 俺が武偵病院でいつもお世話になっている担当医だ。

 何か進展があればプレゼントでも渡そうと思うのだが。

 

「そ、それはだな・・・・・」

 

 まさかの不意打ちに綴先生は口ごもっている。微かに耳も赤い。

 

「おー! 綴先生ってば、あの人とそんな関係になっていたのですか!? 」

 

「う、うるさいぞ! 言いふらしたら殺すからな! 」

 

 車が少し左右に揺れ始めた。生徒に自分の恋愛事情を聞かれたくらいで動揺しすぎだろ。

 

「まだ綴先生の片思いですか? それとも付き合い始めましたか? 」

 

「あえ、えと、そのだな・・・・・付き合い始めた・・・・・」

 

「おっふ」

 

 片思い止まりかと思っていたが、まさかそこまで進展していたとは。

 さっきまで綴先生にいじられていた理子も、形勢逆転とばかりに目を輝かせている。

 

「それでそれで! どこまでいったんですか!? 」

 

「教えるわけないだろう! 」

 

 徐々に車の揺れが大きくなり始め、対向車線にはみ出しそうになってきた。綴先生ってここまで自分の恋愛ごとに弱かったか?

 

「教えてくれたらジャック先生が行きたがっていたお店を紹介しようと思ったのですが」

 

「なっ!? ・・・・・分かった」

 

「教えてくれるんですね!? やったー! 」

 

 理子、そろそろ綴先生限界だからやめとけ​──と言いたいところだが、俺もそれには興味がある。綴先生もそんなことで釣られるなんてチョロすぎだ。

 

「え、えと、その・・・・・」

 

「「その? 」」

 

「​───ギューまで、した」

 

「「・・・・・はい? 」」

 

 ギューとはあれか? 抱擁のことだよな。ハグという言い方もあるな。

 いや待て。待て待て。

 

「綴先生それは今どきの中学生カップルなら誰でもやっていると思うんですが。中学生ですか? 」

 

「な、なにを! 」

 

「うんうん。大人ならせめてキスまでいかないと! 」

 

「・・・・・そういうもんなのか? 」

 

 その言葉が理子のスイッチを押したのか、綴先生相手に大人の恋愛授業なるものをやり始めた。もっとも、俺には女心というものが分からないから途中でリタイアした。今度不知火あたりに女心の掴み方でも教えてもらおう。そうすれば俺に好きな人ができた時に生かせるからな。そう言えば俺、初恋もまだだった。仲が良くて、なおかつ傍にいて安心できる女子は・・・・・文と理子くらいか?

 

「先生! そういうところがダメなのです! 」

 

「だ、だめなのか? 」

 

「男が付き合っている女性に対して心を奪われる仕草というのは──」

 

 涼しい車内に揺られ、理子の()()()を聞いているうちに眠たくなってきた。最近は本当に死にかけるような事ばかりしてきたから、その疲れがついに来たって感じだ。ここは抗わず、素直に従っておこう。

 俺はその眠気に身を委ね、静かに目を閉じる。不思議とセミの合唱は聞こえてくることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『───してる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コツコツと頭を軽く叩かれる衝撃で夢の世界から現実の世界へと引き戻された。目を開けると運転席の綴先生が俺を見て微笑み・・・・・え? アナタそんな顔できましたっけ?

 

「着いたぞー」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「もう、そんなだらしない顔して。理子の肩枕はどうだった? 」

 

「肩枕? ・・・・・まあよかったよ」

 

 理子は嬉しそうにはにかむと、綴先生とまた何か話し始めた。正直肩枕されてたなんて気づかなかったけど、ここは言わない方が殴られなくて済む。

 

「とにかく、峰、今日はありがとな」

 

「いえいえ! また相談にのりますよぉー! 」

 

 かなりのハイテンションで騒いでいる。終始このテンションだったの? コイツに疲れという二文字はないのだろうか。それにしても​──何を話していたのかは気になる。

 

「お前の京条に対する気持ちも知れたし、今日はいい日になった。ジャックに何をすれば喜んでくれるかもしれたしな」

 

「はい! じゃあまた進展があったら教えてくださいね! 」

 

 理子に引っ張られるようにして外に出た。いつの間にか日も傾き夕暮れ時になっている。それでも暑いのには変わりなく、眠気が一気に吹き飛んだ。綴先生は一回クラクションを鳴らし俺たちに別れを告げると、アクセル全開でまたどこかへ行ってしまった。

 

「何話してたんだ? 」

 

「んー秘密! 」

 

 理子は口に人差し指をあてウインクをした。

 うん。殴りたい、この笑顔。

 

「とりあえず文のところに行くか。さっさと家に帰って寝たい」

 

「理子が添い寝してあげよっか? 」

 

「暑苦しくなるから来んな」

 

 すると理子に手を優しく握られた。この暑さでなんで握ってくるのかと思ったが、また人肌が恋しくなったのだろう。あの雪国でもそうだったしな。俺はその柔らかく小さな手を握りながら歩き出した。

 ──だが何かおかしい。

 

「なあ理子? なんで歩くたびに握力が強くなっているのかな? 」

 

「気のせいじゃない? キョー君が『来んな』とか酷いこと言ったからとかじゃないから」

 

「ゴメンなさい来て良いので一旦手を放して──」

 

「やだ」

 

 少しずつだが着々と俺の手を締めつける力が強くなっていく。このまま行けば装備科に着いた頃には握り潰されているかもしれん。マズイですよ!

 

「痛そうな顔をしているキョー君に質問でーす」

 

 俺の手を握ったまま理子は、俺の前に立ち塞がるようにして立った。空いている手をマイクを握っているようにすると、俺の口元にそれを出してきた。

 

「隣にいたら安心する異性を教えてください! 」

 

「俺が隣にいたら安心する異性? 」

 

 理子は顔を少し赤くしている。恥ずかしかったら聞くなよ。

 

「そうだな。やっぱり理子​───」

 

「ほんと!? 」

 

「​───と、平賀さんかな」

 

 一瞬だけ目を輝かせたが、文の名前を出すと、途端に不機嫌そうになり頬を膨らませた。

 

「キョー君はホントに一回死ねば? 」

 

「圧倒的理不尽! 」

 

 理子は俺を引っ張りながら装備科へ再び歩き出した。握力はどんどん強くなっていく一方であり、手の骨が軋む感覚が再び押し寄せてくる。

 なぜこんなに不機嫌なのか。あとでライカにでも聞いてみようか。・・・・・最近クエストが多いらしいからあまり会えないだろうが。​それにしても痛い。痛すぎる。

 

「そろそろ離して​───」

 

「まだつなぐ」

 

 

 

 それから装備科の文専用の部屋に着くまで手を握り潰されるような痛みを堪え​るはめになった。理子に手を離してもらっても圧迫感が残るほどだ。どこからその力が出ているんだ?

 

「ほらキョー君、あややに会うならそんな股間を蹴られた時の痛みで悶絶してるような顔してないで」

 

「誰のせいでこんな顔してると思ってんの? 」

 

「だぁれ? 」

 

 理子が俺の背中にワルサーP99を押し付けてきた。

 

「・・・・・俺のせいですごめんなさい」

 

「素直でよろしい」

 

 もう理子に頭が上がらないかもしれん。

 俺はうなだれながら文専用部屋のドアを開ける。ノックし忘れたが、文は俺たちが入ってきたことにすぐに気づいた。

 

「あ、きょーじょー君いらっしゃいなのだ! 理子ちゃんも一緒で、どうしたのだ? 」

 

「この前借りてたM93Rを返しに来たのと、新しい装備でも揃えようかなと思ってね」

 

「あ、それだったらM93Rは新しい装備が出来るまできょーじょー君に預けとくのだ」

 

「いいのか? 」

 

「武偵が帯銃してないのは危険なのだ」

 

 確かに、理子のワルサーP99でも借りようと思ったけどそれは理子に迷惑かかるわけだし。いざっていう時に手に馴染まない拳銃を使ってたいたら負傷率があがるしな。

 

「ありがと。まあそんなわけで新しい銃を探してるんだ。何か良いものはないか? 」

 

 文はそれを聞くと、傍に鎮座している作業机の引き出しから一冊の雑誌を取り出した。表紙にはハンドガンとアサルトライフルのシルエットが交差しているデザインだ。文はページをペラペラとめくり──とあるページでその手を止めた。

 

「L85A1はどうなのだ? 」

 

 L85A1は確かイギリスで作られたアサルトライフルだ。

 

「マガジンが自重で落下して、すぐ弾詰まりするから却下だ。A2なら考える」

 

「G11は? 」

 

「薬莢がないってのは画期的だが、リロードしてるうちに殺されちまう。弾代も高くつくしな」

 

「ジャイロジェットピストルはどうなのだ⁉︎ 」

 

「・・・・・なんだそれ。理子は知ってるか? 」

 

 理子は、知らないと首を横に振った。

 俺はそんな銃の名前見たことも聞いたこともないぞ。

 文はそんな俺たちを見ると、自慢げにそのジャイロジェットピストルとやらの説明を始めた。

 

「ジャイロジェットピストルは片手で撃てる世界初のロケットランチャーなのだ」

 

 片手で撃てるロケットランチャー、だと!?

 

「拳銃程度の大きさで専用のロケット弾を使うのだ。ハンマーはトリガーの真上にあって、ロケット弾の先端を叩く仕組みなのだ。この衝撃でロケット弾の尾部がファイアリングピンにぶつかって着火、十分な推進力を得られたらハンマーを押しのけて発射されるのだ」

 

「ん? あやや、それって発射時の反動はゼロってこと? 」

 

「ご名答なのだ! しかも発射時の音がほとんど出ないから隠密性に優れていたりするのだ」

 

 おお! そんな銃が世の中にあったとは! でもそしたらなんで有名じゃないんだ? 高性能に聞こえるが。

 

「でもあやや、それだと至近距離の威力が低くなるんじゃない? 」

 

 理子が尋ねると文は、バレたかという顔をした。

 

「・・・・・そうなのだ。十分速度が出る距離をとればマグナム弾並の威力なのだ。でも距離が近かったらアメリカ軍の鉄帽も貫通できないくて、逆に遠すぎたら弾があらぬ方向に飛んでいくのだ」

 

「つまり? 」

 

「有効射程が50mだけど、距離が近すぎたら威力が弱いから注意するのだ」

 

 珍銃じゃねえか。比較的近距離で戦う強襲科でそんな銃は使えないな。

 それに​──理子がその事を言った時にギクッとした顔してたから、在庫処分品を俺に押しつけようとしてたな?

 

「文、ちょっと目を瞑って」

 

「い、いきなりどうしたのだ? 」

 

 俺は文に顔を近づける。文は俺の顔が近づくにつれ顔を紅潮させ始めた。緊張しているのか膝の上に置いている手が震えている。

 

「文、早く目を瞑って」

 

「きょーじょー君!? 心の準備が! 」

 

 俺は文の頬に両手をのばす。文は目を強く瞑り、今では湯気が出るんじゃないかと思うほど顔が赤くなっている。

 

「優しく・・・・・してなのだ」

 

「ちょっとキョー君!? 」

 

「優しくするわけ・・・・・ないだろ。むしろ乱暴にしてやる」

 

「ええ!? 」

 

 文は何の妄想をしているのか知らないが、俺はヤることをヤるまで。

 俺は互いの吐息がかかるまで近づいた。子供っぽさを感じさせる幼気な顔がすぐそこにあり、文は小さく可愛らしい口を真一文字に結び、来たるべき時を待っている。そして​────

 

 

 

 

 

「いひゃいいひゃいやへふのはー! 」

 

「俺を使って在庫処分しようとしたお仕置きだ!」

 

 ​────両手で文の頬を横に思いっきり引っ張った。文の頰はマシュマロのように柔らかく、触り心地も良い・・・・・って、そんなことを考えるなんてまるで変態じゃないか俺!

 

「ごへんなはいー! 」

 

「素直でよろしい」

 

 手を離すと、文は小さい唸り声をあげ、涙目になりながら俺を見てきた。ホントに小動物みたいで可愛いな。

 

「それで、在庫処分品じゃなくて実戦で使えるリストはないのか? その引き出しに」

 

「ソレは寮にあるのだ」

 

 すると文は何かに気づいたように顔を上げ、両手を股の間に入れてモジモジと動き始めた。

 トイレにでも行きたくなったのか? でも直接それを言うとデリカシーがないって言われそうだし、聞かない方が身のためだ。

 

「きょーじょー君、提案があるのだ」

 

「なんだ? 」

 

「​──今日、もしよかったらあややの部屋で一緒に銃を選びたいのだ。来てくれるのだ? 」

 

 文の部屋・・・・・つまり女子寮、つまりつまり女の子の部屋だ。理子の部屋に何度か遊びに行ったことはあるのだが、それとこれとは訳が違う。もし誰かに文の部屋に入るところを見られたら、俺に浮気疑惑がかかる。

 いや、でも文なら大丈夫か。文だし、見た目子どもだから。

 

「おういいぞ! 」

 

「ホントなのだ!? 」

 

「​──キョー君? 」

 

 その時、背後から凄まじい殺気が俺の背筋を凍らせた。この場でそんな殺気を出せるのは一人しかいない。怖々と後ろに振り返ると・・・・・金髪の髪をメデューサのように逆立てている理子の姿があった。

 

「いや理子さん? 俺は今後の武偵活動に関わる銃を選びに行くだけであって」

 

「分かってる。理子は今日友達の手伝いに行かなくちゃならないから一緒に行けないけど。あややに変なことしたら・・・・・分かってるよね? 」

 

「しません! Yesロリータ Noタッチです! 」

 

「Goタッチしたら足のかかとから薄くスライスしてあげる」

 

「地味に痛いからやめてッ! 」

 

 よかった・・・・・てっきり理子ならダメと言うかと思ったが、意外だったな。初めてこういう賭け事に勝った気がするぞ! 世界一不運でも幸運なことはしっかりあるじゃないか!

 

 ​───こうして俺は理子以外の女子の部屋に初めて行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

「​キョー君、そういえばYesロリータってどういうこと? ロリコンなの? やっぱり変態だね。二つ名も変えなくていいじゃん」

 

「そういうことじゃない! 」

 

 




⁇?「マガジンは自重で落下します」

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