アリアにココがかかっている病───中二病の事を伝えると、少し考える素振りを見せ、何かを思ったのか目を輝かせた。
「中二病・・・・・なんかカッコイイ響きね」
「早速感染してんじゃねえよ! 」
ダメだ。アリアまで感染させたら目も当てられない事態になる! ココはただの思い込みだと思うが、コイツの場合は緋緋色金が体内にあるせいで変な能力を使えるんだ。『緋天』だったか? それを撃ちながら中二病発言でもしてみろ、世界中から頭のおかしい娘だと警戒されるに決まっている。
「そっちが仕掛けないなら、コッチから仕掛けるアルよ! 」
ココは元々小柄な体をさらに小さくするように屈むと、地を這うようにして突進してきた。
「───ッ」
アリアはそれを見ると、逃げたりはせずその場で膝を少し曲げて体の重心を下げた。ココはアリアより身長が低いため投げ技をかけられやすい。それを警戒してわざと逃げなかったのか。
「食らうアル!
ココはアリアの一歩手前で回転すると、そのまま懐に飛び込んだ。ココが回転する事で自慢のツインテールがアリアの目線の高さまで浮き上がって目隠しの役割を果たしたのか。てか普通に回転しただけじゃねえか。
ココは低い姿勢から一気に飛び上がりアリアの首元に巻きつけるように足を交差させた。そのまま・・・・・首の骨を外そうと締め上げてるぞ!
「アリア! 」
「ぐっ・・・・・来なくていい! 」
アリアは苦しい表情を浮かばせながら、ココの太ももを鷲掴むと、爪を突き立てるようして握った。
「いいいいたいいたいアル! 」
「痛い、なら離しなさい! 」
アリアはさらに力を込めたようで、ココの細く柔らかそうな太ももに爪がさらにめり込む。もうそれ刺さっているんじゃないか!?
ココは痛みに顔を歪ませるとアリアを拘束している両足を解き、そのまま勢いが乗った拳をアリアの顔面に放った。
「そう来ると思ってたわ」
アリアは真正面にきた拳を見てニヤッと笑みを零すと、その拳を自分の体の外側に弾き今度はアリアが懐に飛び込んだ。勢いが乗っている拳を『止められた』わけではなく『弾かれた』ココはその勢いを殺せず、アリアのコンクリートを破壊する威力を持つ中段蹴りが腹に炸裂するのを黙って見ることしか出来なかった。
「ごほッ!? 」
ドゴッ、という痛々しい音が聞こえ、ココは数十メートルも吹き飛ばされてしまった。だがアリアの攻撃を食らったにも関わらず、体操選手のように空中で華麗な回転をしながら着地した。
「ちっ、当たる瞬間に衝撃を吸収されたわ」
「・・・・・完全に殺す気だったよねアリア」
「うるさいわね理子。あれでも加減したほうよ」
人が数十メートル吹き飛ぶ蹴りが『加減』した程度の威力なのか。加減という意味を調べた方がいいんじゃないかな。
「やるアルね。もうちょっと受け身が遅れていたら胃が破裂してたヨ」
「ほらやっぱり殺す気だったじゃねえか! 」
「変態は黙ってなさい! 」
ココはアリアに歩み寄りながら、左手に巻かれている包帯を少しずつ解き始め、それと同時に気味の悪い笑い声を辺りに響かせる。
「きひひひヒ! やっぱりお前は強いネ。遂にこの力を発揮する時が来たアル! 我が
「そんな事・・・・・あたしの
「アリアが堕ちた!? 」
アリアはココに真正面から突っ込んで行く。ココはまたきひひと笑うと、アリアの顔が来る位置に鋭い回し蹴りを放った。だがアリアも自らそこに飛び込んでいき、ココの回し蹴りが当たる寸前に空中前転で頭を下げる事で回避する。そのままアリアはかかとをココの額に振り下ろした。
だが超スピードで落とされたそれは、ココが上体を後ろに反らす事で避けられる。その代わりにココのかかと落としが、地面に仰向けに倒れたアリアの腹に直撃した。
「うぐっ! 」
「死ねアル! 」
包帯が半分解けた左腕の拳でアリアの顔に強烈な一撃が迫る。
だがアリアはその迫り来る拳に頭突きで迎え撃ち──ゴンッ! 見てるこっちが痛くなる威力のモノがぶつかり合った。アリアは自分の額を、ココは左腕の拳を庇いながら両者とも距離を開けた。
「コノ石頭! どれだけ硬いアルネ!? 」
「アンタの左手も頑丈なのね」
二人共肩で息をしている。だがココの瞳に宿っている闘志は未だ健全なままだ。アリアもきっとやる気満々だろう。だが、その雰囲気を壊す一本の電話がココから鳴り響いた。
「なにアルか・・・・・」
ココは構えを解くと自分の胸元に手を突っ込み、折り畳み式の携帯を取り出した。ピンク色でいかにも女の子らしい携帯だ。そこだけは中二病入らなかったんだな。
「・・・・・わかったアル。今すぐ行くネ」
渋々といった感じで携帯をまた胸元に戻すと、半分ほど解けていた包帯をまた巻き始めた。だがアリアはそんな事はつゆしらず、ココに殴りかかろうと足を踏み出したが、ココはそれに動揺することなく袖を大きく振り払う動作をした。ただカッコつけて振るっただけか?
「朝陽、理子! 目を閉じて! 」
「・・・・・え? 」
その瞬間、世界が真っ白になった。比喩ではなく、何も見えなくなるくらいに真っ白に染め上げられた。そして遅れてやってくる目を焼き尽くされるようなこの痛みは───
「目が、目があああああああ!? 」
「キョー君食らったんだね・・・・・」
もはや自分が立っているのか、それとも地面に横たわり無様に転げ回っているのか分からない。だが一つだけ言えることがある。
「何も見えねえし痛い! 」
「耳は聞こえる? フラッシュバンだったけど距離はあったし、耳は大丈夫か。ほら、立って」
理子が俺の右手を握ってきた。こういう気遣いはありがたいな。
俺は素直に握り返し立ち上がり、左手も何か掴めるものはないかと伸ばすと、ムニッとマシュマロのように柔らかい何かを掴んだ。理子の・・・・・肩か?
「ふう、これで落ち着いた」
「な、ななな何が落ち着いただよ! 死ね! 」
理子の罵声が聞こえ───
「うぶっ!? 」
俺の顎に左から右へと突き抜ける衝撃が走り抜けた。それは俺の意識を刈り取るには十分すぎるほどの威力であり、真っ白な世界から一転、暗い世界へと塗りつぶされていった。
「君、そろそろ私もキレそうなんだけど」
「何で俺ここにいんの? 」
「君が峰理子の胸を掴んで『ふう、これで落ち着いた』とか言うからだよ! 」
「え、胸・・・・まじかよ」
目の前には見渡す限りの花畑。空は雲が散りばめられ、どこからともなく吹いている風は穏やか。気候も夏とは思えないほど暖かく心地の良い場所だ。そして俺のすぐ側に、優しげな目をつり上がらせている少女がいる────睨まれてなければ、あと転生の間でなければ幸せだったんだけどな!
「おい
「それはね・・・・・私が最上位神だから」
「理由になってるようでなってねえぞ」
「そんな事より君の女癖が悪いのが気になるんだけど」
「話を逸らすなよ! 」
目の前にいる
「まあそういう事にしてやろう。それで今回の死因は? 」
「死んでないけど、峰理子に顎を殴られて脳震盪を起こしながら固い地面に倒れたことかな」
これで死にかけたのは何回目だ? 数えるのも面倒になってきたな。完全に死んでないだけマシだとは思うが・・・・・
「君は死にたがりなの? あ、もしかして私に会いに来るため!? 」
「全然ちげえよ」
「殺───」
「違くなくもないと言いますか、えー今の所はその質問には答えられません。ですが一つだけ言えることがあります。死にたく、ないです」
ロリ神は、ハァとため息をつくとジト目で俺を睨んできた。
「大体君は死にそうになりすぎなんだよね。これじゃあ
「以後気をつけますよっと。それで、瑠瑠神を倒す方法って瑠瑠色金を傷つけること以外あるか? 」
「うーんそうだね・・・・・」
小さい手を口に当てると俺の周りをグルグルと回り始めた。そんな所も小さい子と似てるのか・・・・・逆にコイツが高校生くらいの時の考える仕草を見てみたいな。
「一つだけあるよ」
「──ッ、本当か? 」
「でもこの方法は本当に最後の手段。君が瑠瑠神に手も足も出せなくて追い詰められてる時しか使えない。それにこれは倒す手段じゃないけど。まあ・・・・・その時が来たら教えるさ」
「これは私からの御守りだよ。ちょっと痛い思いをするけど、我慢してね」
何を───
「───あづっ! 熱い熱い! やめろ離せ! 」
「あとちょっとだから待って! 」
熱い熱い熱い! 焼けた鉄棒でも押し付けられてるのか!?
背中の皮膚がドロドロに溶けてる感触が・・・・・痛みで腰が抜けそうだ!
「う・・・・・ぐううぅぅう」
「もう少し」
熱さで手足の感覚が麻痺してくる。ロリ神の手から抜け出そうとしてもピクリとも動かない。
そろそろ・・・・・限界だぞ!
「もう少し・・・・・うん、終わり! 」
すると背中を溶かすような熱さが一瞬にして消え去った。その安心感に膝から崩れ落ちるようにして倒れる。
「はあ・・・・・はあ・・・・・お前何を、した? 」
「君に私の御守りをあげただけだよ。痛かったかな? 」
「痛いを通り越して熱いわ! 俺の背中は今どうなってる? 」
「普通だよ。私がちゃんと治癒させてあげたんだから」
ってことは治癒する前は悲惨だったことだな。痛えよ。御守りを受け取るのにこんな痛い儀式的なものがあってたまるか。
「御守りって渡すのにこんな痛いのかよ・・・・・」
「ごめんね。でもこうするしか方法はなかったの」
「まじかよ・・・・・で、効力のほうは? 」
「私からの祝福。君が瑠瑠神を無事に倒すことが出来るようにね」
「祈るだけだったらこんなに痛い思いさせなくてもいいだろ! 」
「あはは・・・・・あ、迎えが来たよ」
後ろを見ると、木製のドアから無数の紫色の手が俺に伸びていた。これももう見慣れてしまった光景だ。
「そういえば君に一つ伝え忘れていたことがあった。君が持っている雪月花だが、絶対に肌身離さず持っていてね」
「あ、その事で戻される前に一つ頼み事がある」
「ん、なんだい? 」
「文から貰った盾を装備すると重いんだよな。ダガーやら雪月花があって。だから雪月花をもうちょっと短くできないか? 」
ロリ神はそれを聞いた途端、不機嫌そうな顔をした。
「そんな事は無理。その盾を捨てちゃえばいいのに」
「ひどいこと言うなよ・・・・・」
「とにかく! 絶対肌身離さず持ってて! 」
別に雪月花を使わないって言ってないのにそんな怒ることでもないだろ。
盾は標準装備させたいし、雪月花とHK45は必須だから・・・・・ダガーを外すしかないか。そうでもしないと動きが制限されるからな。
「はいはい。肌身離さず持ってますよ」
「もう一度言っておくけど、それは私が作った対
「はあ? 魂って───」
重要なことを聞く前に抗い難い力で後ろに引っ張られた。必死に言葉を紡ごうとするが紫色の手の一部が俺の首を締め上げ・・・・・そのまま意識は暗転していった。
「知らない天井───って眩し!? 」
真夏の太陽が視界の端に映り込み反射的に視線をずらすと、柔軟剤の良い匂いがする服が目の前にあり、側頭部に柔らかい何かが当たっている。
「おはようキョー君。閻魔様に地獄追い出された? 」
「残念だったな! 死ぬ寸前だったから会ってないぜ! 」
ああ、これは理子の匂いだ。しかも膝枕。最高だッ!
「じゃあ朝陽も起きたことだし、早速お台場に行きましょ」
「ん、俺どのくらい死んでた? 」
「大体五分くらいよ。そんなに長くないわ」
五分か・・・・・結構短いな。今までで最短かもしれん。早く戻れるようにロリ神が気を利かせてくれたのならロリ神呼ばわりせずちゃんとゼウスっていうんだが。どうせそんな事考えてないだろう。聞きたい事があった気がするが──なんだっけ。
というか俺の『死んでた? 』ってセリフにツッコミをいれてくれないのは酷くないですか?
「分かった。このまま理子に膝枕をしてもらいたい所だが、もう殺されるのはゴメンだ」
心残りがあるが俺は体を起こし立ち上がる。
その時理子が俯いたままボソッと何か言ったが聞き取れなかった。
それから真夏の太陽に照りつけられながら駅まで歩き、お台場行きの電車に乗る。電車の中はクーラーが効いているので快適だ。
「ねえ。理子に殺されてる間にどんな夢見てたの ? 」
「なんでだ? 」
「だってキョー君、背中を抑えて暴れてたもん」
「あー・・・・・アレだ。背中から焼かれた鉄板の上に落ちた夢だ」
「なにそれ」
理子とアリアは苦笑いをした。
本当はロリ神に『御守り』とやらを授かったんだが信じてもらえそうにない。どこの世界に痛みを伴う御守りの授かり方があるんだってな。俺が聞きてえよ。
その後もどのくらい焼かれてた等あの痛みを思い出させるような質問を遠慮なくかけられゲンナリしたところで、
『次は〜台場。台場です』
と、機械で作られたアナウンスが電車内に響いた。
「お、もう着くのか。外に出たくねえな」
「あ! 台場駅の近くにクレープ屋ができたらしいね! アリアも行こうよ! 」
「いいわね。
「なんでだよ! 絶対払わないからな! 」
すると両側から四丁も銃を突きつけられた。それも他の乗客に見えない絶妙な角度で。俺何も悪いことしてないぞ・・・・・
台場駅につきアリアの案内でクレープ屋に着いた。
そこに並んでいる男女七人くらいの高校生グループの後ろに並ぶ。高校生グループの中の女子──結構可愛い子達は俺たちを見るとヒソヒソ話し始めた。
『ねえ、あの金髪の人めっちゃ可愛くない!? 』
『横にいるピンク色・・・・・赤色? みたいな髪の子も可愛いよね! 』
アリアと理子も聞いていたようでドヤ顔を向けてきた。俺は? 俺のことは何か言わないんですか? あとムカつくからそのドヤ顔はやめろ。
『真ん中の男の人もカッコイイけど、変態そうな顔してるね』
『分かる! ムッツリスケベ的な? 』
何がムッツリスケベだよ! 外見で人を判断しちゃいけないって習わなかったのか!?
横を見ると理子が引き笑い気味に笑っていた。
終いには泣くぞこら。
「毎度あり! いつもありがとね! 」
「じゃねーおじさん。また来るよー」
高校生グループはクレープ屋のおじさんに別れを告げると、和気あいあいとしながら駅の方へ向かって行った。平和で羨ましいよ。
「おじさん! 桃まんクレープってある? 」
あるわけないだろ。常識的に考えて。
「おお嬢ちゃん! あるに決まってるじゃねえか」
「「あるの!? 」」
え、桃まんだぞ? あのよくわからない食べ物のクレープがあるのか!?
「ちょっと待ってな。あとの坊ちゃんと金髪の嬢ちゃんは何にするんだ? 」
「じゃ、じゃあ理子はイチゴクレープで」
「俺も同じやつをお願いします」
「あいよ! 」
クレープ三つの代金を渡す。
おじさんは代金をレジに入れると、器用な手さばきでクレープ生地を薄く伸ばしていく。そして生地が丸型の鉄板に十分に広がったところでヘラのようなものを取り出した。
それを固まった生地の下に滑り込ませると、もう一つの丸型の鉄板の上に寸分の狂いもなく乗せた。
「おじさんすっごーい! 」
「へっへっ。この道十年だからな」
満面の笑みを浮かべると、桃まんの中身と思われる具材を生地の上に並べ、それを素早く生地で巻いた。
「はいよ! これはオマケだ」
と、アリアに差し出されたクレープの上に、自作であろう小さい桃まんが乗っている。それを見るとアリアは両手を胸の前で合わせ目を輝かせた。
「ありがとうおじさん! 」
「おうよ! そこの坊ちゃんと嬢ちゃんも今作るからな! 」
さっきと同じ手順でクレープが作られていく。
もう職人レベルまで到達している手さばきだ。テレビに出てもおかしくないぞ。近くにフジテレビあるし。
「ほれ! イチゴクレープだ」
おじさんから二つイチゴクレープを受け取り──イチゴの多い方を理子に渡す。俺の方が多いとあとでクレープごと食われるからな。
・・・・・まあどうせ気づかないだろうけど。
「あ、ありがとう」
「
「・・・・・何で英語なの」
「気分と気分。あと気分だな」
「どれも気分じゃん」
おじさんにもう一つイチゴクレープを貰いそばの木陰のベンチに腰掛ける。アリアは先に座っており満足げな顔で桃まんクレープを頬張っていた。
俺もアリアの隣に座りイチゴクレープを食べる。
「美味しい! これで私の宿敵・・・・・いや、我が宿敵のココと決着がつけられるわ」
「そろそろやめよ? あとで恥ずかしくなるから、ね? 」
「飽きたらね」
コイツが飽きた時にこの時の言動を見せたらどうなるのだろうか。ビデオカメラでも持ってたら撮るが、生憎そんなもの持ってない。貴重な姿なんだけどなあ。
アリアのそんな姿を見ていると肩を優しく叩かれた。振り向けば、口元にクリームをつけている理子が俺の体をじろじろと見ている。
「キョー君、あややから盾貰ったんだっけ? 今それはどこにあるの? 」
「制服の背に隠してあるぞ」
理子は俺の背に触り盾があることを確認すると不満げな表情をして俺を睨んできた。
「ふーん・・・・・いいの貰っちゃって」
何でそんな顔するんだ?
───もしかして。
「なあ、もしやとは思うが、文と仲悪い? 」
「そんなわけないじゃん。あややは大好きだよ」
「じゃあ何でそんな顔しているんだ? 」
「・・・・・
理子が文と競うことでもあるのか?
本当にこの二人の関係は謎だ。
──もしかして二人が俺のこと・・・・・いや、ないな。ラブコメの主人公じゃないんだ。それに文も理子も俺のこと好きじゃないって言ってたしな。三十歳超えるまでに
俺がそんなくだらない事を考えていると、どこからともなく突風が吹いてきた。
「あ! 紙が! 」
アリアの桃まんクレープを包んでいた紙が風で飛ばされてしまった。てか食べ終わるの早くないですか。
「もう、取ってくるわ」
「迷子にならないようにな」
「子どもじゃないわよ! 」
──ゴスッ! と俺の頭をぶん殴ってから風に煽られた紙を取りに駆けて行った。
脳震盪起こしたばかりなんだから、せめて頭だけはやめてくれよ。
アリアが紙を追いかけて見えなくなった所で、理子が変な事を聞いてきた。
「キョー君はさ、ハーレムってどう思ってる? 」
いつものおちゃらけた雰囲気とは違う感じだ。
「ハーレム? まあ男の夢だな。可愛い子に囲まれれば人生バラ色だろ」
「そう・・・・・なのかな。やっぱり男の人って」
「世間一般だったらね。でも俺はそうは思わないよ」
理子は面食らった表情で俺を見た。
「複数の可愛い子から好意を寄せられて、男だったら嬉しいさ。でも・・・・・男がその中の誰か一人だけを好きになってしまったら、他の子達はどうなる? 男の方も好きじゃないのに相手にしなければならない。仮に他の子達に自分の思いを告げるのだとしたら、数が多いだけ辛い思いをすることになるから。だから俺はハーレムは好きじゃない。二次元だったらいいけど」
ちょっと長く話しすぎたかな。理子も唖然としてるし。
「そっか・・・・・じゃあ二人の女の子から好きって言われたら、キョー君はどうする? 」
「俺は不器用だから二人に同じぶんだけの愛情を注ぐことはできない。悩んで悩んで、悩み抜いて一人を選ぶよ」
理子はそっかと頷くと、少しはにかんでから残りのイチゴクレープを食べ始めた。俺も残りのクレープを食べるため理子から目を離す。
視線を逸らす一瞬前に見えた理子の顔は、いつもの笑顔に戻っていたが───大きく可愛らしい瞳には、どこか切なげな気持ちを宿しているように見えた。
「───アンタはいい! 」
突如吹いた風に乗ってアリアの怒鳴り声が聞こえてきた。俺と理子で顔を見合わせ、アリアが紙を追っていった場所へと向かう。
そこには・・・・・
「あ、ああアンタはいい! そういうヤツだって分かってたから! そうよね、アンタはそっ、そういうおとなしい美人がだぁい好きだもんね! しっ、白雪とか! アンタは別に・・・・・でもレキ! あんたやってくれたわね!? 校内ネットで見たわよ! あたしに断りもなく・・・・・キンジと二人チームの申請をするなんて! 」
修羅場が広がっていた。
紅龍ノ鎌 ツインテ振り回すだけ
緋色流星 ただの頭突き