俺、ヤンデレ神に殺されたようです⁉︎   作:鉛筆もどき

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前回 炮娘との戦い


第35話 反省と後悔

 ホームの端に立っている狙姉(じゅじゅ)の声に反応しココ姉妹がアリアの足にしがみついた。どうやっても抵抗させないつもりらしい。

 

「レキ! 動くなアル! 朝陽も動いたら眉間を撃ち抜くネ! 」

 

 ドラグノフを構えようとしたレキに狙姉(じゅじゅ)が叫ぶ。

 レキはその命令に従い構えずにジッと睨んだ。

 

「風、よくレキを躾けたネ。この戦いでよく分かったアル。でもそのせいでもう使えない。処分するアル」

 

 レキは何も言わず、ただ狙姉(じゅじゅ)を睨み続ける。

 

「レキ、まだ弾を持っているはずネ。それで自害するアル。今ここで真っ赤な花を咲かせるアル」

 

 なぜ自害なのか、それは多分狙姉が持っているM700はボルトアクション式で連射ができないから。その隙を晒して反撃に出られるのを防ぐためだろう。

 

「お前が死ねばキンジは殺さないネ。朝陽も使える駒だから殺さないようにしたいアル」

 

 まだ俺を藍帮に引き入れることを諦めていないらしい。それにキンジも誘われているってことは、元からある才能か───HSS。ヒステリアモードがバレてそれを利用するかのどちらか。

 

「レキ、あいつの話に耳を────」

 

「喋るなキンジ! 我はレキに聞いているアル! 」

 

 キンジの声に狙姉は自らの言葉を重ねてきた。

 

「ココ。ウルスのレキが問います。貴女は曹操の名において、私が死ねばキンジさんや朝陽さん。理子さんと・・・・・アリアさんを殺しませんか? 」

 

「我は誇り高き魏の姫。約束は絶対アル」

 

「──この誓いを破ればウルスの四十六女が貴女を殺しに行きます。たとえ武器がなくなり肉体だけになればその肉で、肉がなくなれば自らの骨で、貴女を滅ぼす」

 

 背伸びしたレキが銃口を自らの顎の下につけた。

 

「キンジさん。ウルスの女は銃弾。ですが私は・・・・・失敗作だったようです。不発弾は誰にも拾われることなく朽ち果てる。無意味な鉄くずです」

 

 レキの目は真剣そのもの。本気で自分を銃弾だと言っているのだ。主人のためならいつでも死ねる銃弾だと。

 

「私は主人を守るため自分自身を撃ちます。ですが、これは造反には当たらないことを知っていてください。なぜなら───」

 

 ドラグノフのトリガーに足の指をかけた。

 まずい、あれは本気で撃つ気だ! 急いで璃璃神に話しかけるが、応答がない。むしろ何かノイズが入っている。つまりは・・・・・見捨てるってことか!?

 

「やめろレキ! 」

 

「私は一発の銃弾・・・・・」

 

 くそっ! 何の為に俺は盾を持っている!? 銃弾から、危険から身を守るためだ。身を守る───それは自分のでも、仲間のでも同じことだろ!

 

「故に人の心を持たない。故に何も考えない・・・・・」

 

 腕の中の炮娘をホームの床に置きレキのドラグノフを蹴り飛ばす───その行動は炮娘(ぱおにゃん)に腕にしがみつかれ止められた。

 

「何してる!? 離せ! 」

 

「行くな朝陽! レキは死なないネ! 」

 

 必死の形相で俺を睨みつけている。

 だが、顎から脳天にかけて銃弾で撃ち抜かれて死なない人間など存在しない。どうしても炮娘(ぱおにゃん)の言っている意味がわからない。

 

「ただ目標に向かって飛ぶだけ」

 

 ついに足の指でトリガーが引かれ────

 

 

 ───ガチッ!! と

 

 

 

「ふ、不発弾? 」

 

 キンジから聞いた話によればレキは弾を自作しているらしい。レキの精密機械と言っても過言ではない目で一発ずつ。そんなレキが選んだ弾が不発、宝くじの一等が当たる確率と同等だろう。その確率が今、当たったのだ。

 

「朝陽! 行くなら今ネ! 」

 

「おう! 」

 

 レキの前に立ち塞がったキンジのさらに前に躍り出る。優先順位の一番上はレキを守ること。そして二番目に──狙姉の拘束。

 

「キンジ、頼む! 」

 

「分かった」

 

 意思疎通が完了し、二番目の優先順位(狙姉)に向け走り出す。おそらく俺とキンジどちらを撃つか迷っているはずだ。その間に1mでも多く稼ぐ。そうすればどちらを狙うかが、俺を狙う、しか選択肢がなくなる。まだ一発耐えれるかどうかの盾があるんだ。

 

「きひっ! だったらプラン変更アル! 」

 

 狙姉が不意に片足立ちになり、そのまま体を横に反らした。それでも狙姉は邪悪な笑みを絶やさない。

 狙撃に不向きな体勢に自暴自棄にでもなったかと思ったが・・・・・レキの頭に巻かれた包帯のことを聞いた時の言葉を思い出した。

 

『昨日ココに狙撃された時の傷です』

 

 レキは狙撃されている。だがレキが不意打ちで狙撃されるとは思えない。おそらく勝負で負けて傷ついたんだ。レキに勝つほどの腕前を持つ敵でココと呼ばれる人物。そいつは俺の視線の先のやつしか知らない。

 そう、レキに狙姉は勝った。ならば、片足で、体を反らした状態でキンジを容易に狙うことが出来る。その状態ならば俺に弾丸は当たらず後ろに弾丸は通っていくから。

 

「キンジ! 」

 

「殺ったネ! 」

 

 パァン! と乾いた火薬の音。弾丸は大気を切り裂きながら俺の真横を颯爽と通り抜けた。

 ───ダメかもしれない。

 そんな思いで首だけ動かして後ろを見ると、キンジがなにかやったらしい。キンジのさらに背後にある花束の自販機のガラスのショーケースが見るも無残に割れていた。弾丸はキンジに確実に当たるコースだったが──また人間やめたことしやがったな。何したか分かんないけど。

 

「なっ!? ありえないアル! 」

 

 あと少し。狙姉が驚きのあまり固まって動けない今が最大のチャンス。

 それを応援するように突風が俺を押してきた。ショーケースの中から出てきたであろう花びらが舞い散り、綺麗な花吹雪となる。その風と共に、

 

「ここは暗闇の中。一筋の光の道がある。光の外には何も見えず、何も無い。私は──光の中を駆ける者」

 

 レキの、静かだが堂々たる声。そしてドラグノフの銃声が背後から俺を追い抜かしていく。

 再び俺の真横を通り抜けた弾丸は、空中に舞っている花びらを掻き分けながら進み───狙姉の頭部を掠めて命中しなかった。

 

「きひっ・・・・・! 」

 

 冷や汗をかいた狙姉は片足立ちから普通の立ち方に戻りM700を発砲した。

 ────斜め上、全くの見当違いの場所へ。

 

「あ、あれ? 」

 

 狙姉は何が起きたか分からない表情でよろけると、その場で倒れた。だが、まだ迫り来る俺を見逃すまいと未だ瞳に闘士を宿し俺を見続けている。

 

「お前だけでも道連れアル! 」

 

 装填し直したM700を今度こそ俺に向けた。狙いは保護されていない頭もしくは体勢を崩させる足。だが頭を狙った場合、俺に避けられた時の立て直しが間に合わない。装填し直している間に俺に追いつかれるだろう。ならば狙いは、足だ。それも万が一外れても俺のずっと後ろにいるレキかキンジに当たる軌道───太ももしかない!

 

「当たれぇ! 」

 

 狙姉がトリガーを引いた瞬間、軽く飛んでから体を丸めて太ももの位置に盾を持っていく。

 右腕そのものが持っていかれる衝撃が盾に加わり、その勢いで盾が腕から抜けホームの床に落とされてしまう。右腕が完全に痺れ右腕の盾も弾き飛ばされた。

 

 だが、そのおかげでもう狙姉は目の前にいる。

 

「来るなアル! 」

 

「嫌だね」

 

 狙姉は右手の袖からグロック18Cをもたつきながらも抜いた。

 フルオートで撃たれたら左腕の盾も破壊されるだろう。ならば───その前に一回限りの必殺技! ちゃんと機能してくれよ俺の盾!

 

閃光(フラッシュ)! 」

 

 盾の裏側を出来るだけ自分の顔に近づけ取っ手についているボタンを押した。

 盾からは軋むような金属音が鳴り──バチッ!

 辺り一帯を一瞬だけ昼より明るく照らす閃光が、狙姉の前で放たれる。俺は盾で視界も守られていたが狙姉はもろに受けた。

 

「み、みえないアル! 」

 

「見えなくてとうぜ───」

 

「くふっ! いただき! 」

 

 逮捕しようと掴みかかる寸前、どこに隠れていたのか理子が飛び出してきた。理子は狙姉にのしかかると、両手で両腕を羽交い締めにし・・・・・蛇のように動くツーサイドアップのテールで狙姉の首を絞めている。

 

「おい! 俺の獲物だぞ」

 

「こういうのは早い者勝ちなのです。漁夫の利おいしい! 」

 

 狙姉は苦しそうにしながらも背後の理子の顔に手を伸ばすが、

 

「往生際が悪いわよココ! 」

 

「え、ちょっと待ってアリアっ! 」

 

 理子の慌てる声を無視してアリアは全力疾走からのドロップキックを理子ごと吹っ飛ばす形で狙姉に叩き込んだ。

 吹っ飛ばされた狙姉と理子は仲良くノビている。

 

「おいアリア。お前の筋肉どうなってんだ」

 

「どうもなってないわよ。普通の女の子よ」

 

「普通の女の子がドロップキックで女の子二人を吹き飛ばせるはずないんだよなぁ・・・・・」

 

 なによ、と睨むアリアを無視して俺が理子を、アリアが狙姉を抱える。怪我だらけの俺とは反対に理子は傷一つついていない綺麗な肌だ。

 ずっと──この肌が綺麗なまま将来を向かわせてやりたいな。俺のせいで傷ついたら目も当てられん。

 

「──anu urus wenuia..., 永遠──」

 

 レキの歌声が風に乗って俺たちの耳をくすぐってきた。普段のレキは歌どころか口すらまともに開かないのに・・・・・そのレキが、歌っているのだ。

 

「──Celare claia ol..., tu plute ire, urus claia 天空───」

 

 部分的に聞こえる日本語以外はどこの国の言葉か分からないが、聞くもの全てを魅了する不思議な歌声。

 だがその歌声も、風が少しずつだが強くなってきてレキの歌声が聞き取りづらくなっている。

 

「──Celare claia ol..., tu plute ire, urus claia 天空───」

 

 さっきと同じ歌詞。違うのは心臓の付近が妙に熱くなっていること。きっとこの歌声に璃璃神が反応しているのだろう。この歌はレキにとっての卒業式。親離れなのだ。

 

「──anu urus wenuia..., 永遠─── 」

 

 今日一番に吹いた風は、中空に舞っていた花びらをより高く打ち上げた。風に煽られ光に照らされたそれらは、満天の夜空に輝く流れ星となりレキの卒業を祝う風からの贈り物にも見える。

 ───卒業おめでとう、レキ。

 

「朝陽さん、ごめんなさい。もう私は風の声が聞こえません・・・・・瑠瑠神の件、もう私は使えそうにないです」

 

 そう伝えるためわざわざ俺のところへ歩いてきた。

 頬に涙のあとを残して。

 

「大丈夫だ。瑠瑠神なんて今は考えないで、自分のしたいことをしてこい。じゃあなレキ、また武偵校で」

 

「──さようなら。またお会いしましょう」

 

 レキは舞い落ちてくる花びらに身を隠され──姿を消した。横にいるアリアは何度も目を擦ってはレキがいないか確認したが、どう頑張っても今のレキを見つけることは不可能だろう。何をしなくてのステルス性を兼ね備えているんだ。レキが本気で隠れようと思ったら絶対に見つけられない。だからこそ───次会う時が楽しみだ。どんな風に生まれ変わっているのか。みんなと待ってるよ、レキ。

 

☆☆☆

 

 数日後。武偵校の屋上に俺、キンジ、アリア、白雪、理子の五人が防弾制服の黒色バージョンを着て集まっている。というのも、チーム登録をする時にはこの制服、防弾制服(ディヴィーザ)(ネロ)を着なければ登録に必要な写真を撮ってもらえないという謎仕様である。チーム名は、『バスカービル』でメンバーはここにいるメンバーと──未だ姿を現さないレキ。ポジションは俺が両腕の盾──今は両方とも文に預けて修理中──で突っ込む前衛の先駆け。キンジとアリアはその後の突入役だ。支援が白雪とレキ、後尾が理子。

 

 白雪とレキは中遠距離攻撃で支援してくれるから取り逃した敵もやってくれるだろう。理子は後方奇襲に備えたり逃げる時の殿になる───追撃阻止係だ。これらのポジションの中では、当たり前なのだが俺が一番被弾率が高い。この間ココ姉妹との戦闘とその他諸々で受けた傷がまだ回復してないのにも関わらず前衛の先駆けは鬼畜の所業だ。しかも盾を持っているからだが、任務の度に盾を改修しないとダメらしい。金が湯水の如く飛んでく様子が目に見えるよ。まあそれも・・・・・レキが来た場合のことだが。

 

「これでレキが来なくてチームが組めなくても、後悔はないんだよな? 」

 

「当たり前じゃない。てか来ることは確実よ。あたしの勘だけど」

 

「レキュなら絶対来るよ! 」

 

 理子が腕を掴んできて・・・・・って胸近い!

 こいつ、なんで下着つけてないんだ!? もしかして、痴女にでもなったのか!?

 理子の胸元にある蒼いロザリオが太陽の光を反射し、胸元を見るなと目にダメージを与えてくる。

 

「痴女じゃないし、殺すよ」

 

「なんで毎回毎回考えてること読んでくるの? 」

 

「ヒント。目線とキョー君の性格」

 

「・・・・・ああ。わかった」

 

 そうか。もう俺は理子に隠し事はあまり出来なさそうだな。性格と目線でバレたらしょうがない。

 それよりも聞きたいことがある。

 

「理子、お前って超能力(ステルス)保持者だったか? 」

 

「なに、いきなり」

 

「いや何、狙姉を押さえつけた時お前の髪が蛇みたいにうねっただろ? 自在に操れるみたいだし。サイコキネシスか? 」

 

 過去に一回聞いたかどうか曖昧だからもう一度聞いておく。ココ姉妹との一件以来ずっと政府のお偉いさん方に色金について質問攻めにされていたから聞けなかったのだ。

 

「あれは・・・・・このロザリオに極微量含まれている()()()()の力。もしかすると、キョー君も使えるかもよ? 物を動かす力が」

 

「使えたとしても、使い方が分からないからどうしようもないんだよなぁ」

 

「あんたらよく国家機密レベルのことを世間話みたいに話せるわね」

 

「体内に二種類も埋まってるんだからしょうがないだろ。それよりレキに連絡は」

 

「・・・・・まだ、つかないわ」

 

 まずいな。あと残り四分弱。時間厳守のこの高校において遅れは絶対に許されない。たとえコンマ一秒でもだ。そろそろ───姿を現してもいいんじゃないか?

 

「レキ! 」

 

 突然アリアがレキの名前を呼ぶ。反射的に振り向くと、空調設備に背を預けて無表情に斜め下を見つめているレキが───防弾制服(ディヴィーザ)(ネロ)を着て無言で立っていた。

 

「レキさん! よかった、間に合ったんだね・・・・・心配したんだよ! どこ行ってたの? 」

 

 白雪がお姉さんの口調でレキに問いだたすムードで尋ねた。

 

「ハイマキと合流しに京都へ行ってきました。先ほど携帯を新調したものですから、アリアさんの連絡を見て急いで来ました」

 

 頭にもう包帯は巻かれていなかった。他のところも怪我していたはずだが、今はもう完治しているらしい。

 

「アリアさん。その──ありがとうございました。新幹線の上で手を繋いでくださって」

 

 アリアはキンジの横で恥ずかしそうにモジモジしていたが、レキの感謝の言葉を聞くとアリアは───

 

「もう、心配したんだから! 」

 

 ───涙目になりながら抱きついた。

 アリアにとってレキは掛け替えのない友達。そしてレキにとってもアリアは掛け替えのない友達だ。絶交なんてやっぱりするべきじゃないとお互い分かったことだろう。

 

「レキ、あたしも、ありがとう。あの時あたしに合わせてくれて。えと、絶交しちゃったけど・・・・・再交? また交わりましょ」

 

 これでもうレキとアリアが喧嘩することはあっても、絶交するなんて言わないはずだ。それにしても・・・・・いい話だよ。

 

「ホラ! 私ノ可愛イ生徒タチ! 締切マデ十五秒ヨ! 」

 

「やべっ、行くぞ! 」

 

 オカマ喋りかつ声だけ聞こえるが姿が見えないことで有名な、諜報科教諭のチャン・ウーだ。どこかから聞こえたが分からないが・・・・・あんたもいたんだな。

 

「くぉらガキ共! さっさとワクに入れ! 撮影するで! 」

 

 強襲科教諭の蘭豹がカメラを振り回しビニールテープで囲まれている所定位置を示した。そこまで俺達は全力で走り、

 

「よし、笑うな! 斜向け! 」

 

 全員バラバラに並んだ。普通の集合写真なら全員正面を向いてピースなりするだろう。だが武偵校の集合写真は自分の顔がはっきり写り込んではいけないのだ。狙われる危険性が高まるから。

 

「チーム・バスカービル! 神崎・H・アリアが直前申請(ジャスト)します! 」

 

 隣にいる理子は俺の腕を掴みたわわな胸で挟み込むと顔だけ横に向いて目だけでカメラを見た。俺の腕を掴んだのは──自分の銃を隠したいからか。

 俺も理子と同じ風にする。狙姉につけられた目の横の傷が完治してないからそこが写ってしまうのはしょうがないだろう。キンジは痛めた指のテーピング──どうやら指で銃弾を逸らしたらしい──を隠すためポケットに手を突っ込んだ。

 

「九月二十三日、十一時五十九分! チーム・バスカービル───承認・登録! 」

 

 シャッターが押される直前、レキの卒業を祝った風が今度は俺たちを祝ってくれた。無事チームになれて、おめでとうと。

 

 

 ───だがその風が悪かった。

 その風に乗ってきたらしいホコリらしきものが鼻に入り、思わずくしゃみをしてしまった。しかも盛大に。

 鼻を手で押さえていたからよかったが、くしゃみをした時に前に頭を倒してしまい、前にいたアリアと頭がぶつかりあった。

 

「いたっ!? 」

 

 アリアは俺の頭突きに頭を少し下げさせられ、反動でアリアの手が横の白雪の顔面を直撃。白雪が仰け反り理子の顔に白雪の後頭部が直撃し、同時に白雪の指がレキの頬をぐにゅっと内側に押した。

 無情にもパシャッとストロボの閃光が弾け・・・・・結果、キンジ以外全員変顔という有様だ。

 

「あーこれは・・・・・ギリギリセーフやな。色々お疲れさん」

 

 蘭豹がカメラから出た写真を俺の足元に投げると屋上からそそくさと出ていってしまった。

 恐る恐る写真を見ると───それはもう、女子の皆さんに見られたら殺されるレベルの変顔で。

 

「朝陽ぃ? 」

 

「おい変態」

 

「朝陽さん」

 

「朝陽くん? 」

 

 女子の皆さんのとっても殺気のこもった声。

 逃げる準備をしながら顔だけ後ろを向くと、

 

「こんな顔じゃキンちゃんに嫌われちゃう・・・・・」

 

「どうしてくれるんですか? 」

 

「動かないでねっ。理子が直々にかかとからカミソリでじわじわと斬りつけてあげるから」

 

「風穴ァ! 」

 

 それはもう、どんな物でも凍らせる冷たさを瞳に宿した女子の皆さんが、それぞれ武器を俺に向けていて・・・・・

 

「お、俺は悪くなあああああい! 」

 

 死闘を繰り広げる戦いは今日も、幕を開けた。

 

 

 

 ────こんなチームに入らなければと心の底から思った。そうすればあんな目に会うこともなく・・・・・何も失わずにすんだのだから。

 




ちなみに炮娘がなぜレキが死なないと分かったのかは、次に決戦する時に分かります。

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