俺、ヤンデレ神に殺されたようです⁉︎   作:鉛筆もどき

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前回 ヒルダに襲われる


第40話 足りない

「僕の名前は、エル・ワトソンです。皆さん仲良くしてください」

 

 朝方───普段は皆がまだあくびをしながらHR(ホームルーム)をのはずだが、今日は凄まじいほどの熱気に溢れかえっていた。主に女子の。

 

「ニューヨークでは強襲科、マンチェスターでは探偵科で、東京では衛生科にしようと思います。クラブ活動はしないです。特に水泳はNGで────」

 

 と、その言葉に被せるようにチャイムが鳴った。女子は一斉に席から立ち上がりワトソンの下に駆け寄る。その姿はまるで雪崩だ。高天原先生はびっくりして教壇から足を踏みはずす始末。

 

「ワトソン君カッコいい! 」

 

「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ」

 

「王子様みたい! 」

 

「うちは王家じゃないよ。子爵家だよ」

 

 女子の目はハートマークと¥マークがごちゃ混ぜになり熱気はさらにヒートアップする。

 転校生が男子であれ女子であれ気持ちも昂るものだが・・・・・俺はそんなに気分が乗らなかった。寧ろどうでも良い事だ。理由は───

 

「朝陽、理子休みだな」

 

「そうなんだよなぁ。キンジ、お前休んだ理由とか聞いてないか? 」

 

「俺が聞くわけないだろ。朝陽こそ昨日は一緒にいたんだろ」

 

「まあそうだけど、朝起きたら隣にいなくてな。探したら女子寮前の温室にいたんだが・・・・・休むって俺に伝えて自分の部屋に戻ったぞ。理由を聞いたら腹が痛いからとか明らかに違う感じで。本当の理由を教えてくれないんだ」

 

 多分昨日の件だろうけど・・・・・それでも学校を休むとは考えにくい。部屋では一人だ。その間にヒルダに狙われる危険性があるから部屋にいるよりは学校に来た方がメリットがある。

 

「一人だと危なくないか? 昨日の件もある」

 

「それについては三年の諜報科の先輩二人が外を、二年の情報科の女子二人が部屋の中の隠しカメラと盗聴器で監視してもらってるから襲われることはあってもボタン一つで俺の携帯に連絡がくるようになってる。異変があったら俺もすぐに飛んでくから大丈夫だ」

 

「・・・・・それ理子に言ったか? 」

 

「いや、言ってない。隠しカメラと盗聴器は俺が仕掛けたからバレてはないはずだ。依頼料だって結構かかったんだぞ」

 

 もちろん何事もなくヒルダを倒したなら、理子を助けるとはいえ隠しカメラと盗聴器を仕掛けたことを素直に告白して罰を受けるつもりだ。何発殴られたっていい。命には変えられないのだから。それに・・・・・なんでか知らんが部屋に来るなって言われるし。

 

「そうか。ところで首にあるチョーカーはつけたままなのか? 」

 

「はずれないんだよ。こんな趣味の悪いチョーカー今すぐ破壊したいんだがな・・・・・」

 

 ヒルダに付けられた真っ黒のチョーカー。これが曲者で、何をしてもはずれないし首とチョーカーの間に指すら入れさせてもらえない。瞬間接着剤で固定されたと勘違いさせられるほどだ。これじゃまるで首輪じゃないか。

 

「遠山ってたらしなのか!? 」

 

 と、女子に囲まれた中から突然ワトソンが大声を出しキンジを睨み始めた。

 

「俺はたらしじゃない!そいつに変なこと吹き込むな! 」

 

 キンジは反論するが多分無駄になるだろう。白雪にアリア、そして難攻不落なレキでさえオトしているからな。

 

「キンジはレキさんと神崎さん、あと白雪ちゃんの三股かけてるんだよ」

 

「まさに女殺し(レディーキラー)じゃないか・・・・・そんなに毒牙にかけてるなんて!」

 

 キンジは反論しようとしたが、ハァとため息をついて窓の外の景色を見始めた。あいにく今日の天気は曇り。それがより一層気分を悪くするというのに、何が楽しいんだか。

 

 ──つまらないな。

 俺も曇りの空を見てそう思った。毎朝理子と一緒に登校して、席が前後だからずっとアニメやほかの生徒の恋愛事情とか色々と話しているが、今日はいない。目の前にはポツンと虚しく佇む机と椅子があるだけだ。俺もキンジと同じくため息をつき、静かに雲を見続ける。重苦しく黒いソレは、少しずつ青空を侵食していった。

 

 

 

 その日の昼休み、キンジはバスカービルのチームリーダーとして教務科に呼ばれ昼食は別々にとることになった。学食安定だが、理子もいないしキンジも武藤も不知火もいない。文は誘ったが依頼があるらしく本当に残念そうに断られた。毎日襲いかかってくるRFC(理子様ファンクラブ)を除けば、あるのは朝つくった弁当だけ。つまりボッチ飯だ。手を合わせて一人寂しく弁当を頂こうとしたところで──肩をトン、と誰かに優しく触れられた。

 

「隣、いいかな」

 

「ん・・・・・ワトソンか。ボッチ飯でも揶揄いにきたのか? 」

 

「そんなんじゃないよ。僕は君に話があってきたのさ」

 

 ボッチ飯は回避だ。話・・・・・そういえばヒルダとの戦いのときにマバタキ信号で『話 ある』とか伝えてきてたな。その事だろう。

 

「何の用だ」

 

「僕が来た理由くらい予想はついてると思うけど、単刀直入に聞かせてもらうよ。君は瑠瑠色金を手放す気はあるかい?」

 

「・・・・・なんだそのルルイロカネって。どこかの国の通貨か?」

 

「リバティー・メイソンをナメないでほしい。君が瑠瑠色金を保有していることくらい知っているよ」

 

 リバティー・メイソンだと? どこの組織だよそれ。だが瑠瑠色金を知っていることから察するに秘密結社っぽいな。ここでしらばっくれても無駄か。

 

「──一応言っとくが、腕を切断する気はないぞ」

 

「そう答えると思ってたよ。ダメもとでも聞いておけって上からの命令なんだ。許してほしい」

 

 ワトソンは俺に向かって頭を下げた。だが怪しさ満載すぎるぞ。やらないと答えられて、はいそうですかとすぐ引き下がるのは。裏がありそうだな。

 

「これでも『聞け』との命令だけだからこのあと何をしろとは言われてないんだ」

 

「殺してでも奪えと命令されたら? 」

 

「その時は僕の全身全霊をかけて君を殺すよ」

 

「・・・・・そうかい」

 

 つくづく俺は色んなやつから命を狙われるもんだな。これじゃあ瑠瑠神の前に死んじまうぞ。

 ワトソンは首を傾げると、微笑みながら口を開いた。

 

「案外君は肝が座っているんだね。君のことを調べさせてもらったけど───ちゃんと良い点もあるじゃないか」

 

「なんだ、言ってみろ」

 

「クズ条ゴミ条その他諸々のあだ名をもつただのゲス野郎。強襲科と諜報科と超能力捜査研究科でSランクの実力がある。使用武器はHK45と雪月花、最近は盾を使っていて持ち前の氷系超能力(ステルス)は使用していない。なぜ超能力(ステルス)を使わないんだい? 相手の足を凍らせたり便利じゃないか」

 

「生徒をイジメるような資料だなおい。超能力(ステルス)は精神力の減りが早くなってるんだ。いつからか忘れたけどな。その関係で緊急時以外は使わない」

 

 本当は知ってる。レキに心臓に神弾を撃ち込まれた日からだ。最近になって気づいたから璃璃神には連絡つかないしレキに聞いても分からないという。白雪に聞いたら璃璃粒子というのが超能力の力を阻害する能力があって、それが体の中にあるから精神力の減りが早いらしい。常識だよっ! て言われたけどろくに授業出てないから分からんよ。

 

「へぇ。でも僕に言っていいのかい? 重要な情報だろう」

 

「そうだな。確かに重要な情報だ。だが──超能力(ステルス)が一つだなんて思わない方がいいぞ。氷系超能力(ステルス)はあまり役に立たないし使う機会もあまりないから言っただけだ」

 

 瑠瑠色金の力と璃璃色金の力。どちらも超能力を超える力を保有してると調べて分かったんだ。使う度に瑠瑠神に侵食されるのは承知の上だが死ぬよりはマシ。本当に自分の身に危険が迫った時に発動されるだろう。ココ姉妹に首をワイヤーで絞められた時がいい例だ。

 だけどあの時は命の危険が迫ってたことと・・・・・理子を救いたいって感情が混ざってたな。

 

「なるほど、は一つとは限らないと。参考にさせてもらうよ。君を殺せって命令が来た時ようにね。さて、もう一つ聞きたいことがある」

 

 コホン、と咳ばらいを一つして話を変えた。

 

「君は、峰理子リュパン四世と付き合ってるらしいな」

 

「そうだが、それがどうした? 」

 

「ヒルダ戦の時、君はヒルダの催眠術にかかって抵抗できなかったそうじゃないか。それで峰理子を危険に曝してしまった」

 

「なにが言いたい」

 

 ワトソンはやれやれという仕草をすると、グイっと俺に詰め寄った。眉も初めて会ったとき程ではないが吊り上がっている。そして、

 

「恋人をあんな危険な目に合わせるだなんて、彼氏失格じゃないか! 」

 

 と。・・・・・理不尽じゃないか?

 

「おい、俺はあいつとは初めて会ったんだ。能力どころか顔すら分からなかったし、第一お前も遅れてきたじゃねえか」

 

「僕は仕方なかったんだ。君はあの場に最初からいただろう! 」

 

「お前は初見の相手に勝てるってのか!? 」

 

 俺の反論も効かずワトソンはどんどん俺に近づいてくる。端正な顔つきが目の前にあり尚もまだ体を寄せてきた。

 

「大体君は本当にSランクなのか? あの場で精神力の減りが早いとはいえ超能力を使うべきだっただろう! 」

 

「発動できなかったんだよ! ・・・・・とにかく、アツくなりすぎだ。少し落ち着け」

 

 と右手の人差し指で詰めってきていたワトソンの胸のあたりを押すと──

 

「きゃ! 」

 

 ──女みたいな声で勢いよく後ろに後退し、そのせいで椅子から転げ落ちていた。

 なんだよ今の悲鳴。妙に声高かったし反応が女みたいだ。

 

「きっ、君はなんてことをするんだッ! 」

 

 その場で立ち上がり倒れた椅子を直しながら俺を睨んできた。頬も真っ赤だ。

 

「なにって、お前があまりにも近かったから指で押しただけだぞ」

 

「君はわた──僕になんて・・・・・くっ」

 

 目尻に涙を浮かべて心底悔しそうな顔を残して食堂の出口へ足を向けた。

 

「お、おい。飯はいいのか? 」

 

「先客がいる! 」

 

 と逃げるようにワトソンは食堂から出ていってしまった。今のあいつはともかく、瑠瑠色金について話している時は、強者のオーラみたいなのは感じ取れたぞ。手強い、相手にしたら傷一つでは済まないな。俺もあいつのこと調べてみるか。理子あたりに依頼すれば今日の放課後までには・・・・・って理子今日は休みだった。なんか調子狂うな・・・・・

 

 

 

 

 




コミケ(12日)前までに必ずもう一本あげます。(と思います)

追記 間に合いませんでした。近いうちにあげます
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