「ふぅ、集合時間の12時まであと──五分か」
晴れ渡る空の下に少しばかり冷たい風が通り抜けていく今日は、文化祭の二日目。例年通りの暖かさはどこへ消えたのか、デートの日に限ってなぜだか寒くなる。寒いと傷をチクチク刺激するから厚着したいんだが、コートでも着ているのを教務科に見つかったらビリビリに破かれるからな。このぐらいの寒さでコート着んなや! って。
───それよりも。
「だーれだ」
と、ヒトの指で視界を塞がれた。蕩けるような耳に残るあどけなさと少しばかりの色気。文化祭に来た一般客の目に最も映る校門でそんなイチャイチャカップルがやる行為をするなと言いたいが、口に出せば最期。保健室に担ぎ込まれることになる。だから、余計な事はせず、
「理子だ」
と答える。
「あったり! さっすがキョー君。集合が早いですね~」
「まあ。遅れるよりはマシだろう」
「もしかして理子とのデートがそんなに楽しみだった? 」
目隠しされてても分かるぞ。今の理子はご機嫌だ。しかも今までで一番と言っていいほど。となればここはギャルゲーの主人公並みの満点解答で答えなくてはならない。現実は非情だから選択肢など無いが、ケースバイケースだ。やるしかない。
「そりゃ理子とのデートだからな。楽しみじゃない方がおかしいだろ」
「・・・・・そっか。嬉しいなぁ。予想だとキョー君は、眠いからサボりてえな、とか言い出すのかと思ったよ」
「理子以外だったらそう言ってたかもな」
どうだ今の答えは。今のは一瞬で思いつく数々のセリフから厳選したものだ。完璧、とは言わずも満点に近い回答のはず───!
「なーんか微妙だなぁ。無理にそんなセリフ言わなくてもいいよ? 機嫌取んなきゃって魂胆丸見えだから」
なんて、目隠しをやめて俺の前にトコトコ現れた本人様。おうおう。周りの目線がイタイな。あんな男が彼氏なのか爆ぜろって目だ。
「・・・・・バレてたのか。てか微妙ってなんだ。頑張って考えたんだぞ」
「はいはい。ほら行こ、もう売店とか始まっちゃってる時間だし、お客さんに食べ物全部取られちゃうよ」
苦労が──血が足りない脳にフル回転させて絞り出したセリフをそんな・・・・・。
こうなったら別の方法で─ってもういいか。これ以上やってもウザがられるだけかもしれないし。大人しくいつも通りで過ごそう。
「わかった。昨日見た限りじゃ今年の客は例年より多いかもしれないからな。はぐれないように」
理子の右手を握って賑やかな屋台通りを目指す。武偵高の敷地は広いから色々な種類の店が開かれるのだ。たこ焼きや焼きそばといったテンプレから、クレープ屋、そば屋。全然関係ないがイケメンコンテストが今日は開催中で、昨日はミスコンだったらしい。本当に客来んのかって話だが。
「ねえキョー君?これもご機嫌とり? 」
「これって・・・・・何のことだ? 」
「──やっぱり自然体の方が安心するなあ」
顔をほころばせて、手を握り返すのではなく左腕に抱きついてきた。一気に周囲の目線もキツくなるけど、理子がしたいなら抵抗する気も起きないな。拒否権ないし。拒否するつもりもないし。
途中、同級生に冷やかされながらも屋台通りに着いた。祭り同然の──これも一種の祭りだが──賑やかさで、あちこちで客引きの元気な声が生まれていた。普通に繁盛してて大盛り上がりだ。
「昼ごはん食べたか? 」
「食べてないよ。でも、今宵は祭り。であれば何か二人だけでゆっくり食べれる場所は、やはりあそこしかなかろうっ! 」
妙なハイテンションで屋台通りを抜けて校舎に入る。着いた先は、校内の三階に位置するメイド喫茶。三階といえば一年生のクラスの出し物が占めている。だからメイド喫茶の店員さんも一年生なわけだが・・・・・。
「なんで先輩たちがここに──うぅ」
「スマン。理子が来たいといったんだ。許してくれ」
金髪のポニーテールを左右に揺らしながら、恥ずかしそうに受け答えをするライオン耳のメイド。
「大体、昨日は先輩演劇終わった後に倒れたじゃないですか。なんで復帰してるんですか」
「仮にも強襲科Sランクだぞ? 貧血と脳震盪くらいで二日もダウンなんてしてられん」
昨日の
「いいじゃんいいじゃん! ライカかっわいいよ!」
と、さっきまでキラキラと目を輝かせながらも黙っていた理子が、いきなりライカの片手を包み込むようにして握った。あまりの迫真さに俺もライカもビックリしたが。
「へ⁉ そっそんなことないです!あたしなんかが可愛いわけないっすよ・・・・・」
「いーやいや。これほどの逸材は中々見つからないよ」
否定し続けるライカと、絶対に可愛いと推し続ける理子。女子の可愛い可愛くないの押し問答は前世でも今も見る光景だが、ライカは普通にイケてると思う。自己評価が低いのが残念だけど、男女と貶されてた過去があるライカにとって自分が可愛いなんて思えることは難しい。ライカの
「峰先輩! あたしのことなんかより、今は京条先輩とデート中っすよね! 注文、注文はどうなさいますか? 」
「えー・・・・・じゃあ、理子はオムライスで」
「俺も理子と同じで」
「かしこまりました。せんぱ・・・・・じゃなくて。
ご、ごしゅ、ご主人、様」
おぼんで顔の半分を隠しながら早口で言い終えると、理子が反応する前には裏方に引っ込んでいった。
大変そうだな。やっぱりコスプレは慣れてない人には恥ずかしいだろうし。慣れれば私服を着こなしてる感覚なんだけど。それでも───
「みんな、楽しそうだな」
メイド姿の誰もがキラキラした笑顔で接客してる。作り笑いなんて一人もしてない。
「だって年に一度の学園祭だよ? 予算だって支給はされるけど自分たちのお金も使ってるとこあるから、他の学校より自由だし。演劇だって結構お金かかったんだからね」
「ほんと、成功してよかったな・・・・・あ」
演劇の最後で思い出した。舞台に出演者全員で挨拶する前に、理子が耳打ちしてきたこと。演劇といえば真っ先に思い浮かんでしまう言葉。
『───大好きだよ、キョー君』
「なんで顔赤くなってるの? 」
「あ、いや。なんでもない」
「んー・・・・・あ! もしかして理子が最後に言ったアノコト、思い出しちゃった? 」
机に肘をついてイジワルそうな表情で迫ってきた。
なんでコイツは人の心読めるんだよ。しかも外れたことは一切ないからタチが悪い。
「アノコトってなんだよ。知らん」
「覚えてるくせに。理子がキョー君のこと、好きって言ったことだよ」
───ふう。よし、落ち着け俺。惑わされるなよ俺。相手はリュパン四世だ。今さら言葉一つに左右されてるんじゃあない。前世も今も
「お前のことだ。どうせ演技なんだろ。今さら俺が引っかかるわけ」
「理子、どこかの誰かさんに口説かれた時に言われたなー。
自分を偽らずに過ごしてほしいと。確かに。確かに言ったけども。嘘はつくなとは言ってないからな。こうやって人をイジって遊んでるだけで──って、なんで俺はそんな嫌がってんだ?
「で、キョー君は理子のこと好き? 今なら誰かさんが理子の部屋に仕掛けた盗聴器みたいに盗み聞きされないし? 」
「そっ、それは謝る。守るためとはいえプライベート筒抜けだったんだよな。ごめん。けど今は言えないんだ。自分の気持ちが分からないって言うかなんというか」
「───また引き延ばして。もしかして、キョー君は理子のこと嫌い? 」
「あ、いやっ、そういうわけじゃ! 」
やばい! 誤解させたっ! ここで喧嘩でもしてみろ。瞬く間に全校生徒と教師共に知れ渡って卒業までなじられる! というか理子が泣く!
「嫌いじゃない! でも本気かどうか分からないだろ? 嬉しいけど。こうやって真正面から言われたことないから混乱してるだけだ! そもそも・・・・・」
ああダメだ。頭が混乱してきた。一緒にいて一番楽しいのが理子だ。ずっと一緒に居たいというのも、本心で話せるのも。だけどそれを好きと言っていいのかどうか。
「くふふっ」
不意に弾けるような笑い声。顔をあげれば、理子がニマニマしながら俺を見ていて。
「おいっ! なんだその顔! 」
「慌てふためくキョー君。ごちそうさまです」
「はあ!? 」
熱い。顔がもっと赤くなってるのは一目瞭然だ。悔しいが自分でも認めざるを得ない。経験不足なのだと。
理子の扱いは馴れたつもりだったが、今までは序章に過ぎなかったってか!?
「とっ、とにかく! この話はまた今度だ。これ以上話されても
「断らないってことは
ガバッ、とさらに机に乗り出しキラキラ目で迫られ。
余計にコイツのニマニマ顔を間近で拝まされることに。
「ああうるさい! 料理来たから戻れ! 」
ナイス援護だ我が
「ご注文のオムライスですごごご主、人様。いっ今から魔法の言葉ででででもっと美味しくなるようにしま」
目をぐるぐると。なんか壊れてないか? それに魔法の言葉って───あっ。
「お、おおお・・・・・おいし、れ、おいしくなー・・・・・」
口の開いたケチャップを下に向けたまま、壊れたラジオみたいに魔法の言葉を繰り返し、やがて恥ずかしさが臨界点を超えたようで、
「も、もう無理だあかりいいいい! 」
と、最後に大量のケチャップをふわふわのオムレツの上にぶちまけて、裏方に引っ込んでしまった。近くの席の男は、「良い属性──ああ、神よ」とかなんとか言う始末。ライカは女の子慣れしてないのか、単に恥ずかしいだけなのか。ケチャップ特盛のオムライスに比べればさして問題ではない。
「結構ケチャップかかったな」
「あの子はあれが限界なの。今ごろ間宮あかりちゃんに慰められて、
「きりんって──アイツらと一緒にいる中三のCVRか? 」
「そ。アタシの元
銀色スプーンを手に取って一口掬い、ぱくり。
んぅ〜と頬に手をあてて満足そうだ。ケチャップのしょっぱさを感じさせてない。俺もケチャップを分けて一口掬って口に運び──
「甘ッ! 」
普通に吹き出しそうになった。オムライスが激甘ってなんだよ。いや甘いのはあるが限度があるだろ限度が。これじゃまるで、大量の砂糖を調味料に加えてる甘さだ。だけど理子はこの甘さをものともせず食べ続けている。
「普通だよこれ」
「なっ・・・・・お前、これが普通だと? 」
「論より証拠だね。他の客見て」
もう一度教室内を見回して同じオムライスを食べている客を見つける。そばにはメイドがいて、楽しくおしゃべりしながら食べてるようだが──笑顔だ。料理の味に文句をいう
「ここの高校の女子って可愛い子ばかりでしょ? そんな芸能界にいそうな子が傍で接客してくれたら、味なんて霞んじゃうでしょ。男は単純だし、営業スマイルでもイチコロだよ」
「ああ、なら効かないわけだ。俺は他の女子に笑顔向けられても何とも思わないし、そも接客してくれるメイドが逃げたからな。残すのは勿体ないから全部食べるけど」
一口ずつ口に運んでいく。タマゴが下のご飯に溶けだして、食欲を唆られる香りまではいいんだけど。ご飯にもケチャップで甘味増してるし、もうちょっとみりんと砂糖の量を調節して・・・・・。
「ねえ、ここのオムライスって変なモノはいってた? 」
からん。
スプーンを持っている手つきで固まった理子は、口を開けたまま俺の方を向いていた。
あ、口の端にケチャップついてるな。
「なんだ。腹を壊すようなものは入ってないはずだが」
「だって、キョー君の口から、他の女子に笑顔を向けられても動じないとか、聞き間違い、かな? 」
実際そうだ。今ならCVRに何されても動じない自信しかない。ハニートラップには完全の耐性を得たと思う。何でか知らんが。
「聞き間違いじゃないだろ。
未だ動かない理子の口元を軽く数回押すように拭く。こんな殺伐とした人生の中で唯一花があるとすれば、
「わ、わわ。
などと、俺からハンカチを勢いよく盗ってから手の届かない位置まで椅子を後ろにずらした。
ほほーん。耳が赤いところから察するに、口元についたケチャップを拭かれて、周りから自分が子供みたいに思われてることが恥ずかしいんだな?ランドセル背負って学校来る奴が今更子ども扱いされたくらいで恥ずかしがるなよ。
「自業自得だ。そも、これくらいで恥ずかしがるなよ。俺がこんなことをするのも理子が悪いんだからな」
「理子が悪い──か。その、
んん? 責任って、何の責任だ? てか俺をどんな風にしたんだ。ハンカチで拭いたことか?
「責任って」
ぎゅうぅ、と俺の愛用しているハンカチが強く握りしめられていた。
──ああ。ハンカチ汚したからその責任取って洗濯するってことね。
「よろしく頼む。まあ今日あたり理子の部屋に行ったときにすれば俺は構わない」
「ふ、二人だけで⁉ しかも今日なの⁉ 」
「今日がいいだろ。今日を逃したら落ちにくいし」
汚れはなるべく早めに落としたほうがいい。あとで忘れてて後悔する羽目になるからな。
「
ちょっと暑くなってきたね、と理子はスカートをバタバタさせた。
バタバタさせる度に理子のバニラの香りがして、何とも甘ったるい空気になってる。甘いのはオムライスだけでいいんだがそれよりも──ハンカチを洗濯するだけで喜ぶとか、微笑ましいな。しかし、なんで別荘って単語が出てきたんだ?
「バタバタさせるとパンツが見えるからやめとけ」
「だって、
聞いちゃいない。
んー・・・・・落ちる準備とか別荘。荷物とお金──何か勘違いしてないか? ハンカチ洗うのにお金は必要だとは思うが、それ以外全くいらないぞ。
「たかだかハンカチのために別荘まで行く必要ないだろ」
「雪山だから、スキーとか? あそこら辺は人もいないしゆっくりと──えっ? 」
理子の行動の一切がその瞬間止まった。時間停止させられたように、ぴたりと。
「ハンカチをの汚れを落とすだけだろ? 荷物とかお金とか別荘とか。
「え、あ──えっと、え? 」
お。気づいたらしいな。
自分の顔を両手で押さえて俯いてしまった。綺麗で色っぽいうなじも今は羞恥の色に。恥ずかしすぎて穴があったら入りたいって様子だ。しかも埋めてくれとまで言いそうだが。そして今度は地団駄を踏み始めた。何やら唸り声も聞こえてくるが、内容までは分からないよ──
「ねぇ! なんで紛らわしいこと言うかな! 」
「紛らわしいも何も、俺は初めからハンカチのことしか話してない。アレだ、さっき俺をからかった仕返しだ」
何と勘違いしてたんだと問い詰めたいが、この勝負、引き分けにしといてやろう。
「そっかぁ。でも勘違いじゃなきゃいいのに・・・・・」
「ん、なんだ? 」
「なんでもない。このバカ」
バカとはなんだバカとは、と開いた口に理子のスプーンが飛び込んできた。オムライスの味が舌に染みて、言葉と一緒に飲み込む。
「定番でしょこういうの。はい、あーん」
さらに自分のぶんのオムライスをすくって俺の口の前へ。前屈みだから、セーラー襟の合間から深い谷間がモロ見えで、
「い、いらない。席に戻れ」
「知ってるよ。ここ、見てたんでしょ? えっちぃ」
と、自分の指で自らの胸を押した。
半年くらい前だったらガン見してから拝んでたが、今は何でか目を逸らしてしまう。
「うるさいこれでも食っとけ」
反撃に俺も理子の口にオムライスを運んだ。もちろんスプーンで。ちらっと見えたけど理子の舌って肉厚なんだな。甘い声が出るわけだ。
残りは二人でアーンしながら全部食べて──俺は普通に食べたかったけど理子が許してくれなかったので──メイド喫茶を出るころには、廊下は人で溢れていた。
それからは手を繋ぎながら、理子の提案で色々な場所を巡った。甘い物を次々と食べて、生徒によるライブに行って、お化け屋敷に行って。お化け屋敷は親子連れが入りやすい『初級』とガチでビビらせに来る『地獄級』の二種類あって、どちらとも入ったが、理子はホラゲーで慣れているようで悲鳴の一つも上げず笑っていた。
だけど寂しいことに、楽しいことほど時間は早く過ぎ去ってしまう。気が付けば夕焼けが教室内を照らす時間になっていた。文化祭ももう終わりの時刻が近づいてる。
「さて、最後にどこ行くか」
「んー。こっち、ついてきて」
理子に連れ着いた先は、夕焼けが一望できる屋上。二人きりで劇の練習をした場所でもある。
「はぁー風が気持ちいい! 」
「そうか? 少し肌寒い気もするが」
グラウンドや屋台通りは喧噪が続いているのに不思議とここは静かで。そのちぐはぐさが文化祭ではしゃいでいた心を落ち着かせた。
二人でフェンス際のベンチに腰かけて、ただただ沈んでいく夕陽を眺める。太陽など昼間は空高くその色は真っ白にしか見えなかった。ただ、日が堕ちていくと少しずつ色は変化して、今は緋色に見える。ずっと太陽を見続けていれば、白から緋色に変化していく様子など気づくことはほぼ無い。気づけるのは、変化の過程を見ていない者だけだ。俺も理子も、些細な変化は互いに気づくけど、不知火とか武藤から見たら、俺たちはどんなふうに映ってるんだろうか。
「なんか、小難しいことでも考えてた? 」
理子が俺の頬をグニッと指で押した。
「ちょっとな」
「──あと何回、この風景を一緒に見られるかな」
「飽きるほど見れるよ。死なない限りいつでもここに来れる。何回も生死をさまよって、その度に迷惑かけて。それでも俺は生きてる。心配するな。いつだって側にいるから」
理子と肩を寄せ合う。こうして
「なんでそんなセリフ言えるかな───本気にしちゃうぞ! 」
理子はぷんぷんがおーと両手の人差し指を頭につけて威嚇。
「ん? 何か変なこと言ったか? 」
「あ───いや、別に何も? でもそういうの、他の女の子に言っちゃダメだからね」
「お前にしか言わん」
大事なことだから目を合わせて言ったら、そっぽ向かれてしまった。
平賀文に預けてある盾はアリアもキンジも、白雪もレキも守る。だけどそれは余裕がある時だけ。誰かひとりだけしか守れないのだとしたら、
「そう・・・・・なんだ。ありがと。嬉しいよ」
お礼なら面と向かってからしてほしいものだが。一向にこちらに向こうとしない。おかしいな、
「お、おーい──」
「そうだッ! 写真、写真撮ろ! 文化祭の記念写真! 」
そう言うや否や携帯を掲げ勢いよく立ち上がった。俺も連れて立ち上がり、
「ほら、もっとくっついて! 」
「お、おいっ」
右腕を胸で挟まれた。抵抗する暇も与えてくれず、カシャリとシャッターが押された。
「どれどれ・・・・・くふっ、キョー君変な顔」
見れば焦っているような驚いているような顔。確かに変な顔だ。残されては困るし、今も胸に挟まれた腕をどうにかしたい。なんだか緊張というか恥ずかしさで心臓が破裂しそうだ。
「いっ、今すぐに取り直せ! 」
「やだねーだ」
と、取り返すよりも早くスカートの内側に隠された。
「いいでしょ? 充電無かったし、もう撮れないよ」
「───はぁ。まあいいか。バラまくんじゃねえぞ」
「はーいはい。これは二人だけの秘密だから、絶対に誰にも見せないから安心して」
うぐっ、上目遣いは反則技だろ──! 許す以外の選択肢無くなったじゃねえか! 本当にこいつはズルい。
「よし。思い出作りも済んだことだし、最後のイベント消化しに行きますか」
「最後のイベントって・・・・・あ、あれか。帰っていい? 」
「だめ。ほら行くよ! 」
最後のイベント。いや、これが原因で死ぬかもしれん。今から胃でも強化しておくか・・・・・。
・・・・・この日。理子と写真なんて撮らなければよかった。心の底から
記念すべき50話。遅れてゴメンなさい。
勘違い上手くなくてゴメンなさい。
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