怪盗の相棒   作:黒雛の赤龍

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名探偵コナン、から紅の恋歌見てきました。

ネタバレ防止のために深くは言いませんが、とにかく最高でした!皆さんも是非見てください!


第十五話 落とし穴は思わぬところにあるものである

そのことに気づいたのは、木葉が私服に着替えて観衆に紛れ込んだ時だった。

 

「ヘリが、四台……?」

 

確か事前に調べた時の情報ではヘリは三台だったはずだ。だか今日飛んでいるヘリの数はどうみても四台。特にこれと言ったトラブルも起こっていないのに突然応援が来ることに疑問を覚えた。

仮に何かトラブルが起こっていたとして、それでヘリの応援が来たとしてもどうも一台だけというのが気になる。数字も中途半端だし、『四』という数字は読み方を変えれば『し』、つまり『死』を連想させる。だから昔の人は物を買う時は『四』という数字を避ける傾向がある。だから警察の人達もそういう数字を避けるものだとばかり思っていたが……。

 

「(……私の気にしすぎだといいけど)」

 

それでも嫌な予感は拭いきれなかった。

一応自分の相方に伝えておこう。そう思って観衆の中をかいくぐって人気の無いところに移動し、相方に連絡する。

 

「……ヘリの数が一台増えてる。もしかしたら何かトラブルが起こったのかも。気をつけて」

 

しかし、帰ってきた言葉は予想外のものだった。

 

『……ハッ、それはトラブルじゃねーよ。紛れもない警視庁からの応援だ』

「……どういうこと?」

『俺の変装がバレた。今通気口を伝って移動しているが、警官の一人が俺を追いかけてきてる。今日はやけに冴えてるなって思ってたがそういうことか』

 

怪盗キッドの変装を見破るなんて素人には中々出来ないことだ。今まで怪盗キッドが変装して建物に侵入したことは何回もあるが、その変装を見破ったのは今のところ白馬だけだ。それも白馬の場合は直接目で見て怪盗キッドの正体を見破っている。今回来た警視庁の応援……仮に『X』と名付けるが、『X』はヘリから怪盗キッドの正体を見破ったのだ。目視しているわけがないのでカメラ越しで見ていたのは容易に推測出来る。しかしあの怪盗キッドの変装をカメラ越しで見破れるほどキッドの変装は甘くない。

 

警察からも変装の達人とも言われている怪盗キッドの変装をカメラ越しで見破るなんて考えられなかった。

 

「(一体どうやってキッドの正体を……)」

『相棒、少し頼みがある』

「何?」

『ヘリから警察に助言している奴の正体を見破ってくれ』

 

変装を見破った方法はまだ分からないが危険な存在に変わりない。恐らくその『X』は白馬以上に厄介な敵になるだろう。今後怪盗キッドの現場に現れないとも断言出来ない。ならば敵の情報を少しでも多く入手しておくのは怪盗として当然の結論とも言えるだろう。

木葉は快斗の提案に小さく首肯した。

 

「分かった」

 

木葉は『一般人』という仮面を捨てて『怪盗の仲間』の格好に変装する。変装といってもいつも仕事をする時の格好に戻っただけだが。

 

「……まずは高いところに上ってみますか」

 

ヘリの中の人を確認するなら地上からでは困難だ。だが高いところから双眼鏡などを使えば運良くそのヘリの中の人物を確認出来るかもしれない。

だがそれでも顔だけだ。もう少し情報が欲しい。

 

「……あの人に頼んでみよう」

 

言って携帯電話を取りだして木葉はある人物に電話を掛けた。

 

「寺井さんですか?急で申し訳ないんですけど、少し調べて欲しいことが……」

 

電話を掛けた人物は、快斗の父親の盗一の元付き人の寺井だった。

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

「……もう一度いいます。直ちに時計台の出入り口を封鎖してください。こちらの指示があるまで絶対開けないように。これで彼に逃げ場はない」

 

ヘリの中では若い青年が通信機とパソコンを使って警察官に指示を出していた。

 

 

 

 

 

 

時計台の中にいる中森警部は部下からの電話の内容に不信感を抱いていた。

 

「怪盗キッドを発見したぁ?おいおいそれは本当なんだろうな?」

『間違いありません!氏名、年齢、誕生日を聞いた後に免許証番号を聞いたところ見事ヒットしました!』

「免許証番号!?」

『はい!他人なりすます変装の達人なら人の覚えていない内容まで覚えている可能性があるからと、警視庁から応援に来た少年が……』

「少年だと!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

木葉は廃ビルの屋上で、中森警部に付けた盗聴器から電話の内容を聞いていた。

 

「なるほど、免許証番号か……」

 

他人になりすます時は外見はもちろん、その人の性格や口調、人との繋がりまで把握しなければならない。もちろん、その人の基本データもだ。言われてみればそうだ。木葉は免許証を持っていないので今まで実感が湧かなかったが、よくよく考えれば免許証番号なんて覚えている人なんて相当の変人でない限り覚えているはずがない。免許証にはその人の基本データが全て書かれているので、それをまるごと覚えるのが効率がいい。

 

その変装術を逆手に取った、ということか。

 

「やるね……『X』」

 

恐らく『X』は警察に顔が利く人。先ほど『少年』と言っていたから年齢は二十代か……もしかしたら自分達と同じ年齢かもしれない。

 

そんな人物なんて、そうそういるはずが……。

 

「……いや、一人だけいる」

 

頭に浮かんだのは一人の高校生の顔。

確かに彼なら警察にも顔が利くし、頭も切れる。まだ断言は出来ないが恐らく……いや、十中八九――

 

と、その時だった。

 

「ん、電話?」

 

携帯を開くと、そこには『寺井』という文字が書かれていた。

 

「はい」

『木葉様ですか。調べ物の件、何とか分かりました』

「本当ですか!?」

『はい。どうやら今回警視庁から応援に来たヘリは捜査一課の物です』

「捜査一課……」

『同乗していたのはヘリの操縦士二人と捜査一課の目暮十三警部、そして――』

 

 

その名を聞いて、木葉は思わず苦笑いをしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『目暮ぇぇぇ!!やっぱりお前か!!どういうことだ!?こんなところにガキ連れてきて!?』

 

ヘリの中では電話越しに中森警部の怒号が響いていた。スピーカーにしていたわけでもないのにどうやったらここまで大きな声が出せるのだろう。

ベージュ色のスーツを着た目暮十三警部は携帯を片手に冷や汗をかいていた。

 

「いやーすまんすまん。一度彼にヘリに乗せるという約束をしててな。どうせならと思って現場に連れてきたんだが――」

 

と、目暮警部が中森警部と連絡していた携帯電話を、鮮やかな手さばきで取る人物がいた。

 

「警部さん、申し訳ありませんがあなたの議論している時間がありません。泥棒を捕まえて欲しければ僕の指示に従ってください」

『何ッ!?』

「彼は今犯行前に正体を破られて計画が狂い始めて動揺している。捕まえるのには絶好のチャンスだ」

『誰だ……お前は何者だ!?』

 

 

淡々と話す年下の少年に驚きを隠せなかった。白馬は警視総監の息子ということであの推理力も頷けるし、事実彼の功績は何かと大きいので最近では助かっている節もある。

だがまさかそれ以上の逸材がこの東京にいるとは思わなかった。それも声からして白馬と同じぐらいの年齢。その彼の正体を知りたいと思うのは当然の反応だったとも言える。

 

そして。

 

そも彼は被っていたヘルメットを取って、強気の笑みを浮かべながらその名を言った。

 

 

 

 

 

 

 

「工藤新一……探偵ですよ……」

 

 

 

 

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

「まさか本当に君だとは思わなかったよ……工藤君……」

 

寺井から伝えられた名前を聞いて、動揺の色を隠せなかった。

まさか自分が働く店の常連さんがこんなところに出てくるとは思ってもみなかった。盗聴した先から手に入れた情報で彼の顔が浮かんだのは確かだったが、まさか本当のそうだったとは。

しかし彼の指示は的確かつ無駄のないものだった。最低限の指示で怪盗キッドの変装を見破り、犯行前だというのにかなり追い詰めている。これは木葉も予想外だった。

 

一応相方にそのことを伝える。

 

「……今大丈夫?」

 

そう聞くと、イヤホン越しにドンドンという鈍い音が帰ってきた。これは今は自分と会話出来る状況ではないということ。

 

逃走中か、それとも隠れているか。

 

「……指示を出していた人物が特定出来た。名前は工藤新一、高校生探偵でかなりの切れ者だから気をつけて」

 

と全て伝えると、ドンという鈍い音が帰ってきた。これは相方と決めた了解という合図。伝えたことを確認して木葉は一度大きく息を吐いて時計台の方を向いた。ここから見る時計台はいつも以上の多めのライト照らされ、上空にはヘリが四台、付近には数百名の観衆がごった返していてより物騒な状態になっていた。

 

「……今更私が侵入出来そうにないし」

 

頭が切れる工藤のことだから出入り口は完全に封鎖されていることだろう。例え変装出来たとしても入ることは厳しいと考えた方がいい。

しかしここで指をくわえて待っているつもりもない。自分の相方がピンチなのだ。助けに行くのも相棒の役目なのだから。

 

「……工藤君はヘリ越しでしか指示を出せない。これを使えば私たちにも被害が来ると思うけど……手段を選んでいる暇はなさそうね」

 

自分の手の中にある物を転がしながら弱々しく呟いた。。

今相方が自分と連絡している暇がないというだけでこんなに不安になるとは思ってもみなかった。もしかしたら捕まっているかもしれないという恐怖が一気にこみ上げてくる。

 

 

 

「工藤新一……思ってた以上に厄介な敵だね」

 

 

 

しかし彼に臆している暇はない。もうすぐ犯行予告した時間になってしまう。

 

木葉は急いで作業を開始した。

 

彼ら警察を翻弄できる唯一の手段を使うために。

 

 

 




『四』のくだりがありましたが、あれはマジな話です。

僕が子供の頃は祖母の家と近かったのでよくシュークリームとか買って来てくれたんですよ。でも僕は四人家族だったので普通は四個買ってくるはずなのに、祖母は毎回五個買ってくるんですよね。

その理由を母に聞いたらあんなエピソードを語ってくれました。

直接聞いてないので信憑性に欠けるかもしれないですけど……。
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