怪盗の相棒   作:黒雛の赤龍

8 / 23
誤字報告ありがとうございます!!

あれ便利だね(小並感)


第七話 怪盗は時に正体がバレるものである

2月10日。怪盗キッドは今日も宝石を手に入れるために、とあるビルの中へと侵入していた。

 

「待てぃ、怪盗キッド!!」

 

キッドを追って数十年になる中森警部は先日怪盗キッドが現れたというのにその疲労を見せないような動きで怪盗キッドを追い詰めようとしていた。 しかし今回も怪盗キッドが一枚上手だった。宝石を手にした状態で窓から勢いよく飛び出してハンググライダーを使って夜空へと飛び出した。

 

「あばよ中森警部!」

 

小さくなっていくキッドの姿を見ている自分を情けなく感じながら中森警部は吐き捨てた。

 

「クソッ、必ず奴の正体を暴いてやるからな!!」

 

中森警部が小さくなっていく怪盗キッドを見つめていると、後ろから若い青年の声が聞こえた。

 

「それも間もなく分かると思いますよ……」

 

その言葉にここにいる警官が一斉に振り向いた。彼は白馬探。イギリスから留学していた高校生探偵で白馬警視総監の息子。様々な難事件を解決してきてその実力は確かなものだが、先日初めて怪盗キッドと対決し、彼は完全敗北した。その悔しさからか、白馬は今日も怪盗キッドが予告したビルに赴いている。

 

「彼は重大な手がかりを残していきました」

「手がかり?」

 

中森警部がそんなものあったか?と思い出していると、彼は指と指の間に挟まっている物をみせて言った。

 

「髪の毛ですよ。これで奴の正体に一歩近づける」

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

 

白馬研究所にて。

 

「ここは……」

 

中森警部は白馬研究所に連れてこられた。そのある一室に入ると両方の横の壁が見えなくなるほどの棚があり、その棚には色々な本や資料、研究に使うと思われる機器が置かれたいた。

 

「叔父の研究所ですよ。さあ見てください。これが今まで僕が集めた怪盗キッドのデータです」

 

と言われて中森警部は白馬が操作しているパソコンのモニタを覗き込む。

そこには怪盗キッドと思われる画像と色々な数値や文字が書かれていた。

 

「怪盗キッド。身長174cm、体重58kg。視力左右共に2.0。IQ400、声色無数でスポーツ万能。集中力はあるが根性はなし」

「あと性格も悪いぞ」

 

後ろから付け加えるように中森警部が言う。白馬は一応全ての情報を説明し終えたので別のデータへと移る。そこにはキャップ帽を被った女のような姿をした人が映し出されていた。

 

「あとキッドの仲間の情報ですが……」

「……ん?キッドの仲間だと?」

 

白馬の言葉に驚いたように中森警部が声を上げる。そういえばこのことはまだ言ってなかったと気づき、中森警部に説明をし始める。

 

「僕が初めて怪盗キッドと対決したとき、一度だけ屋上に姿を現したんですよ。全く口を開きませんでしたが、容姿からして女かと」

「仲間か……あんなコソドロにもそんな奴がいるんだな。それで、そいつはどうした?」

「逃げられました。ですが彼女がキッド逃走用に設置していたバルーンやロープは切りました。これで怪盗キッドを追い詰めることが出来ると思っていたんですが……」

「……フン、結局逃げられては意味がないだろ」

 

何十年も追い続け何十回も逃げられている中森警部が言えたことではないと思うのだが白馬は今はそれについて追求しなかった。大事なのはそこではない。

 

「それもあるんですが……彼女は僕がロープを切り、バルーンを空へと離した後、もう一度付けたんですよ。それも僕がそれを行ったのは予告時間の一時間前……」

 

そこまで聞いて、中森警部は事の重大さが分かった。

 

「お、おいちょっと待て!予告の一時間前ってたらもう俺の部下達が警備に付いてるはずじゃ……」

「そうです。屋上のバルーンは可能だとしても美術館の外から二階窓をつなぐロープをもう一度つなごうと思えば嫌でも人目に付きます。それも怪盗キッド捕獲のために警官が大勢いたなら尚更……」

「ば、バカな!?じゃあキッドの仲間は誰にも気づかれずにそれをやったというのか!?」

「……恐らくは。眠らされていた警官はキッドが美術館に侵入際に変装された警官一人だけ……切ったロープは回収しましたので切ったところをつなぎ合わせてロープを張ることは出来ません」

「警官を誰一人として眠らせずに、誰にも気づかれずに、ロープを再び張った……」

「怪盗キッドも恐ろしいですが、一番厄介なのはキッドの仲間の方かもしれません。現に、怪盗キッドの情報はそこそこ集まっているというのに、仲間の方の情報は性別と……せいぜい身長しか分かっていませんからね」

 

そこまで言って、白馬と中森警部は厳しい表情になる。自分達の敵がどれだけ強大か、改めて思い知らされた。これからはいつも以上に警戒しなければ彼を……いや、彼らを捕まえることは出来ないだろう。そんなとき、不意に研究室のドアが開いた。振り返ると数枚の紙を持った気弱そうな、白衣を着た研究員が立っていた。

 

「探お坊ちゃま。毛髪の検査が終了しました」

「おお、そうですか」

 

白馬が声を上げて驚き、イスから立ち上がって研究員の方へと向かう。研究員は白馬が近づいてきたことに少し驚きつつも検査結果を読み上げる。

 

「頭髪、黒。人種、日本人。血液型、B型」

 

ここまではある程度白馬も中森警部も予想していた。怪盗キッドの素顔は未だ明かされていないが、シルクハットとゴーグルの間から見える顔立ちからして日本人だとは予想していた。

 

「それで推定年齢は?」

「え、えっと……」

 

と、ここで淡々と説明をしていた研究員が困ったように言葉を詰まらせる。急にどうしたのだろうか?

 

「ハン、どうせ38~40だろ。それとも50代か?」

 

中森警部が当然だと言わんばかりの態度で研究員の言葉を待つが、研究員から告げられた年齢は予想を上回るものだった。

 

「す、推定年齢……15~17歳……」

「ハッハッハ、なんだまだ高校生か!」

 

……高校生?

 

「なにぃ高校生!?ワシは二十代のころから奴を追ってるんだぞ!!」

 

確かに怪盗キッドが初めて姿を表わしたのは18年前。どんなに若くても30代後半でなくてはおかしいのだ。さすがの中森警部もこのいい加減なデータには呆れてしまった。

「ばかばかしい!ワシは帰るぞ!!」

 

しかし、白馬はそのデータを見ながら顎に手を当てて何かを考えていた。

 

「ぼ、坊ちゃま……これは何かの間違いでしょうか……?」

「……確かここにはありとあらゆるデータが揃っていましたね」

「は、はい……」

「では高校生のデータをお借りしたい……47都道府県全ての高校生のデータを」

 

そこまで聞いて、白馬が何をしたいのか理解したようだ。研究員は汗を流しながらも白馬には逆らえないので了承してしまった。

 

「……今夜は徹夜になりそうですね」

「は、はい……」

 

 

 

――――

―――

――

 

 

次の日。快斗が学校から帰るとポストに一通の招待状が入っていた。

 

「……なんだこれ?」

 

招待状には宛名宛先共に書いておらず、最初は何かのイタズラかと思った。しかし、その招待状の内容を見て、快斗は眉をひそめた。

 

 

 

黒羽怪斗殿。

 

今夜19:00、貴殿を大島美術館に招待します。

 

願わくば、これが最後になりますように……

 

 

 

「……」

 

短い内容だったが、快斗は内心焦っていた。大島美術館といえば今日快斗が予告した場所と同じなのだ。それも丁寧に予告一時間前に招待するという話。最後の一文の内容を加えると、この招待状が示すことはただ一つ。

 

「(俺の正体を見破ったから捕まりに来い……ってか?)」

 

もちろんイタズラの可能性もなきにしもあらずだが、黒羽怪斗宛てに予告状の場所に招待するなんて……そんな偶然あるか?

 

「……」

 

馬鹿馬鹿しい、と持っていた手紙を投げ捨てようとせん勢いで自宅に入っていったが。

 

『これからはもっと慎重にね。今日みたいにならないように』

 

ついこの前言われた仲間の言葉を不意に思い出す。

 

「……一応あいつに連絡しとくか」

 

言って、快斗は携帯電話を取り出す。

 

今宵のショーは、ひと味違ったモノになりそうだ。

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

大島美術館にはいつになく大勢の警察官がいた。

 

入り口からメインの展示室までありとあらゆるところにいるので、心なしか気が張ってしまう。メインの展示室には大きな銅像が建てられており、それを象徴するように宝石が展示されている。ただ今日は怪盗キッドが来るということで宝石以外の展示物は取り外し、美術館の倉庫に厳重に保管されている。

 

そんな場所に、今日は怪盗キッドとしても黒羽怪斗としても訪れていた。

 

建物は二階建てなのだがこのメイン展示室は特別で、二階から一階が見渡せるように天井が解放されており、怪盗キッドがメイン展示室にこっそり侵入出来ないようになっている。

 

「(ま、俺が本気出せばこんなの簡単に突破できるけどな)」

 

心の中で言いながら怪盗キッド――いや黒羽快斗はメイン展示室を見て回っていた。適当にうろついている時、不意に中森警部と目があってしまった。快斗を見た中森警部は驚いた様子でこちらにやってきた。

 

「快斗君!?」

「どうも」

 

青子と幼馴染みということもあって中森警部とは顔なじみなのだ。軽く礼をして答えるが、中森警部は驚きを隠せないようで。

 

「どうして君がここに!?ここは立ち入り禁止のはずじゃ……」

「い、いや僕はここに呼ばれたので……」

「呼ばれた?誰に?」

「えっとそれは……」

「僕ですよ」

 

と、中森警部と快斗の話に割り込んで来たのはあのホームズのコスプレをした白馬だった。余裕綽々の笑みを浮かべてこちらにやってくる。

 

「(こいつがあの招待状を……?)」

 

怪盗キッドとしては何度か現場で対決することはあったが、黒羽怪斗としてはお互い初対面だ。どうして会ったこともない白馬が自分の家に招待状を送ったのだろうか?

 

「白馬君が?一体何のために!?」

「それはそのうち分かりますよ。初めまして黒羽快斗君、白馬探です」

 

言いながら快斗に手を差し出してくる。快斗は不振に思いながらも手を差し出しで握手をした。

 

「ご丁寧にどうも」

「もっとも君とは初めましてではありませんがね」

「あん?どういうことだよ?」

「もうすぐ分かりますよ。君に招待状を出した理由と一緒にね」

 

意味深なことを言う白馬に中森警部は終始首を傾げていたが、快斗は数時間前に思い立った可能性が現実味を帯びてきていることを実感していた。

 

「(こいつ……本当に俺の正体を!?)」

 

その仮説が正しければ会ったこともない自分に怪盗キッドが予告した美術館にわざわざ招待した理由も納得がいく。どうやってそこまで結論づけたのかまでは分からないが……

 

「(こりゃさっさとここを離れて怪盗キッドになる準備をした方がよさそうだな)」

 

予告の時間まではまだたっぷりあるが、時間ぎりぎりになって離れれば逆に不振に思われるだろう。快斗は気配を殺してメイン展示室を抜けだそうとした。

 

「おや、黒羽君どこに行くのですか?」

 

しかし、その途中で白馬に見つかってしまう。

 

「……トイレだよ」

「そうですか。予告の時間までには戻ってきてくださいね」

 

この言い回し。やはり白馬は快斗が怪盗キッドだということに確信を持っているとみていいだろう。

 

「(そっちがその気なら……)」

 

快斗はトイレに行きながら、今日自分が考えた作戦を思い出していた。

これが上手くいけば、白馬は二度と自分を怪盗キッドと疑わないだろう。

 

「(それじゃあ作戦開始♪)」

 

 

 

いたずらっ子のような笑みを浮かべながら快斗は携帯電話を取りだした。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。