バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

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今回は肝試し準備前編でふ。オリ主は裏方に徹底しているので今回は出ませんが代役が出てます。


第九十一問

第八十七問

 

『おーい! 誰かそこの釘取ってくれー!』

『暗幕足りないぞ! 体育館から引っ剥がしてこい!』

『ねぇ、ここの装飾って枯井戸だけでいいのー?』

 

「これはまた、凄い騒ぎじゃな」

「うん。雄二たちが鉄人の補習をサボるために本気で手を回していたからね」

 

明久たちが学園長からの肝試し開催の許可をもらった翌日。文月学園新校舎の3Fは肝試しのための準備で賑わっていた。

目の前で着々と進んでいく作業を、明久と秀吉は感心しながら眺めていた。

 

「それにしても、まさかAクラスまで協力してくれるとは思わなかったよ。特にAクラスの人たちって、こういうのはあんまり好きそうじゃなそうだし」

 

肝試しの会場は新校舎にあるD〜Aクラスの教室。折角やるなら広さがあって、涼しさ(寒気)を演出できる教室を、と提案したのだが、まさか本当に教室を使用できるとは思わなかった。

 

「別にそういうわけじゃないわよ」

「ん?」

 

後ろから声がかかる。明久が振り返ると、そこにいたのは秀吉の双子の姉、木下優子だった。

 

「こんにちは木下さん」

「こんにちは吉井君。秀隆はどこかしら?」

「秀隆? 秀隆なら向こうで雄二と何か会議してるよ」

 

明久が指さす方では、雄二と秀隆らが机を囲って何か話し合っていた。

 

「そう。ならいいわ」

「何か用があったの?」

「別にそういうことじゃないわ。ただ、誰かが見てないとサボるから」

「あぁ」

「確かにの」

 

秀隆は面白至上主義ではあり面倒事を嫌う質だ。清涼祭の模擬店でも何かにつけてはサボろうとしていた。

今回もそうそうに雲隠れしようとしたが、雄二に見つかり強制連行されていた。学園長に今回の肝試しの許可を取った一員なのだから、最低限の責務は果たさなければ。

 

「そう言えば、木下さん。さっきの話って」

「さっきの話?」

「Aクラスがこの手のイベントは嫌いではないという話じゃ」

「ああ、それね。私たちAクラスも勉強が苦じゃないってだけで、三度の飯より勉強好きってわけじゃないの。たまには思いっきり遊びたい時もあるわ」

「そりゃそうだよね。同じ高校生だものね。遊びより勉強の方が好きな人なんてそうそういないか」

 

Aクラスでも、「やらないといけないこと」として義務感で勉強している生徒が大半だ。勉強を楽しいと感じていても勉強が『一番』と思っている人は世間からみてもかなりの少数派になるだろう。

思い返せば、清涼祭の時もAクラスはかなり本格的なメイド喫茶をしていたから、案外根っこはFクラスと大差ないのかもしれない。

 

「そうよ。……そこの鳳君なんかはその典型ね」

「鳳君?」

 

明久が優子の指さす方向を見てみると、ベニヤ板のパネルに墓地の背景を描いている鳳誠の姿があった。

 

『凄い! もうできちゃったの?』

『絵も凄く丁寧に描かれてる』

『このくらい朝飯前だよ。次は何を描けばいい?』

 

誠は次々と渡さるパネルにどんどん絵を描いていく。

 

「へぇ。鳳君って絵が上手いんだね」

「みたいね。家でもゲームのキャラクターを描いたりしてるらしいわ」

「鳳は美術部なのかの?」

「そうじゃないみたい。趣味で時々描いてるそうよ。家では課題以外の勉強はほとんどしてないんだって」

「そうなんだ。Aクラスでも、趣味を優先する人もいるんだ」

「まあ、そうじゃの……」

 

秀吉は気まずそうに目を逸らした。

Aクラスと言えど、皆が皆家でも必死になって勉強しているというわけではない。優子のように塾に通う生徒の方が多いが、誠のように最低限の勉強だけでAクラスまで登りついた生徒もいる。逆に優子や翔子のように、日々の勉強から解放された瞬間にタガが外れる者もいるが。

 

「木下さんもこういったイベント好きなの?」

「そうねぇ……。私はこの手の遊びより勉強の方が好きだわ」

「わ、私もできれば肝試しよりお勉強の方が……」

 

明久の横では瑞希が困ったように呟く。遊びとは言っても、怖いものが苦手な瑞希からしたら肝試しより勉強のほうがマシなのだろう。

 

「だ、大丈夫よ瑞希。どうせ周りは造り物なんだし、お化けもウチらの召喚獣なんだから、怖いものなんて一つもないわ」

「それはそうなんですけど、それでもやっぱり苦手です……」

 

美波は瑞希を諭すような台詞を言うが、声が震えているので、まるで自分に言い聞かせているように聞こえる。

 

「あれ? 美波ってこういうの苦手だっけ?」

 

如月ハイランドのお化け屋敷では雄二たちを驚かす側に回っていたので平気なのかと思っていた。

 

「そ、そんなことないわよ! こんもの、怖くも何ともないから目を瞑っていても平気なんだから!」

「目を瞑ったら何も見えないでしょうが」

「完全に怖がっておるの」

 

ふと思いだすと、昨日美波はオカルト召喚獣を瑞希と同じくらい怖がっていた。中々女の子らしいところもあるもんだ。

 

「……アキ? 何か失礼なこと思ってない?」

「い、いや別に? 美波にも怖いものがあるんだなぁって」

「だから怖くないって言ってるでしょ!」

「えー? 本当〜?」

「何よその目は! アキはウチの言葉が信用できないって言うの!?」

「う〜ん……。だってさっきから美波は怖がっているようにしか見えないからさ」

「じょ、冗談じゃないわ! 怖いわけないじゃない! そ、そう! お化けはアキと違って殴れないから少し苦手なだけよ!」

「そこは素直に怖がっときなさいよ……」

 

判断基準が殴れるか、殴れないか、かなのがいかにも美波らしい。

これ以上ないという程に動揺する美波。普段の勝ち気な態度とは真逆の小動物じみた仕草に、明久は少し嗜虐心をくすぐられた。

 

「そういえば、噂で聞いたんだけど」

「な、何よ」

「この学校の建っている場所って……実はワケありらしいよ」

「わ、ワケありって何ですか……?」

 

美波の横では瑞希が不安げに明久を見る。

 

「あははっ。それはね――本当にお化けが出るんだってさぁああああっ!」

 

明久が人を驚かす時お馴染みのポーズと大声で2人に向かって叫ぶ。

 

「ぎゃぁあああっ!」

 

それに驚いた瑞希が悲鳴を上げ、

 

「いやぁあああっ!」

 

同じく美波も驚いて悲鳴を上げ、

 

「みぎゃぁあああっ!」

 

明久は驚いて驚いて勢いよく飛びついてきた美波によって頚椎(けいつい)に深刻なダメージを受けた。

 

「まったく。何をしておるのじゃお主たちは……」

「まぁ、今回は吉井君が悪いわね」

「そうじゃの。学園にお化けが出るなど」

「あら? お化けはともかく、学園が建っている場所がいわく付きらしい噂は本当よ」

「……え?」

「だって召喚獣の発見にはオカルト的な要素もあるんでしょう? この学園の土地がそういった方面に(いわ)れがあってもおかしくないわよ」

「急に明久の冗談が現実味を帯びてきたの……」

 

召喚獣についてはまだ謎な部分も多く、生徒の間でも色々な憶測が出ている。その中に、この学園、もしくは土地が大きな召喚陣なのではないかという噂もある。

そんな会話を聞き流しつつ、明久はちょっとしたいたずら&普段のし返しをしたつもりが、思わぬ特大カウンター(物理)を喰らってしまった。

 

「ご、ごめん美波……。冗談だから、離れて……くれないかな……?」

 

美波を安心させるために微笑みを作りながら話かけるが、美波は一向に離れる気配はない。

 

「う、うそっ……! だって、ウチには聞こえるもの……!『呪います! 殺します!』って……!」

「あははっ。あんまり怖いからって、そんな声が聞こえるわけ――」

 

『吉井明久……! お姉さまと抱き合うなんて、どこまでま憎たらしい男です……! 呪います……! 殺します……!』

 

明久の視界の端に縦ロールの女子生徒、清水美春が映る。

清水は美波に好意を寄せているため明久に敵愾心を抱いている。この状況は、清水にとっては呪い殺したいほどに妬ましいようだ。

 

「あ、明久君……っ! 私にも聞こえます……っ!」

 

瑞希も怯えた様子で明久を見る。2人から清水の姿は見えない上に、教室の雰囲気も肝試しの飾り付けで薄暗くなっている。明久の冗談も相まって本当にお化けの声に聞こえるのだろう。2人以外にもこの状況を怖いと思う人がいてもおかしくない。

 

「…………明久」

「「きゃぁあああっー!」」

 

美波と瑞希の悲鳴と同時に明久の腰部から「コキュッ」と小気味よい音が鳴る。おそらく腰骨からは出てはいけない音だ。

 

「だ、誰かと思ったら土屋君ですか……。驚かさないでください……」

「ま、まったくよ……。おかけでアキの腰がおかしな方向を向いたじゃない……」

「それはアナタたちのせいでしょ」

「…………ごめん」

 

多少の理不尽さを感じつつも、康太はとりあえず謝る。

こういった時に真っ先に被害を被る自分に、明久は己の不運を嘆いた。

 

「それで、ムッツリーニ僕に何か用?」

「…………向こうのロッカーを動かしてほしい」

 

死の抱擁から解放してもらいなが明久が尋ねる。女子から抱きつかれるなんて普通はご褒美でしかないのだが、明久の場合は不思議と恐怖が先行する。いつもなら妬み言のひとつでも言う康太さえ若干の同情を覚えるくらいだ。

その康太は、明久にAクラスの隅に置いてある大きなロッカーを動かしてほしいと言う。

 

「流石はAクラス、と言ったところじゃの。鍵も収納スペースもワシら(Fクラス)のとは比べものにならん」

「逆にそんな広いスペースに何を入れるか不思議だわ」

「この大きさのロッカーを人の力で運ぶのは無理ですね」

 

Aクラスのロッカーは、1人分の収納スペースが駅に置いてあるスーツケースが入るコインロッカーよりも大きく、カバンや体育着を入れても有り余る。鍵も電子ロックで頑丈に作られていてFクラスの木製で鍵が意味をなしていないボロボロのロッカーとは比べるまでもない。

もちろん金属製なので、空とは言えその重量は相当なもの。数メートル運ぶのに西村教諭レベルの人が数人は要りそうだ。

 

「わかったよ。じゃあ召喚許可を」

「…………もう貰ってある」

 

康太の後ろの方では既に世界史の田中先生が召喚フィールドを展開していた。こういった雑用だとスムーズに許可が貰えるのがありがたい。

 

「オッケー。んじゃ、試獣召喚(サモン)っ」

 

幾何学模様の魔法陣から鎧を着た明久の召喚獣が現れる。今は通常の召喚獣より手足が長いので、こういった作業はやりやすそうだ。

 

「このロッカーをどけたらいいんだね?」

「…………(コクン)」

 

のっしのっしと召喚獣をロッカーの前に立たせて、召喚獣にロッカーを持ち上げるよう動かす。

 

――ころり

 

召喚獣がロッカーの下に手を入れようと腰を落とした時、身体から頭が外れてしまった。

 

「「…………っ!?」」

「へぇ。そうなっているのね」

 

明久の後ろで瑞希と美波が息を呑む気配がする。反対に優子は興味深く召喚獣の頭を観察していた。

 

「……姉上も少しは驚いたらどうじゃ?」

「そんなの私のキャラじゃないわよ」

「それはそうじゃが……」

「何よ? 何か言いたいことでもあるのかしら?」

「いや、何でもないぞい」

 

なんて会話も後ろから聞こえるが、明久は少し困っていた。

 

「頭が外れちゃうのは不便だなぁ……」

「…………ガムテープで固定するとか?」

「う〜ん……。それでもいいけど、一旦消すとまた貼らなきゃいけないなんて面倒だし、折角の肝試しなんだから首が外れないと意味ないし……このままでいいや」

 

システムの調整が終れば元に戻るのだから、今はこの不思議な感覚を楽しむことにした。

 

「じゃあ動かすよ――よいしょっと」

 

頭を床に転がしたままにして、召喚獣にロッカーを両手でしっかりと掴ませて持ち上げさせる。人の何倍もの力がある召喚獣は、大きなロッカーを軽々と持ち上げた。あとはそのまま所定の場所に運ぶだけ。

 

「――痛ぁっ!?」

 

なのだが、ロッカーを運ぼうとしたところで突然頭に激痛かが走る。明久が何事かと周囲を見回すと、

 

「豚野郎のクセにお姉さまの抱擁を受けた罪……死して償うのです……!」

 

清水が明久の召喚獣の頭を力一杯踏みつけていた。

 

「ちょっ!? やめてよ清水さん!」

「お黙りなさい豚野郎! お姉さまの清らかな身体に、その穢らわしい身体で触れるなんて、万死に値します!」

「いや、抱きついてきたのは美波からなんだけど……」

 

その上頚椎と腰に深刻なダメージを受けているのだから理不尽極まりない。

明久は清水の蛮行をやめさせようと叫ぶが、清水は力を緩める気はないようだ。召喚獣にロッカーを抱えさせているので頭を取り返しに行くのも難しい。召喚獣は両手がふさがっているし、ロッカーを落とさないよう集中しているので明久自身が動くことも厳しい。

 

「清水! 吉井の頭を渡すんだ!」

 

明久が窮していると、須川たちFクラスの仲間が駆けつけてきた。

 

「す、須川君、それに皆……! ありがとう、助かるよ!」

 

清水の前に立ちはだかる須川たち。何だかんだ言っても須川たちもFクラスのクラスメイト。友だちのピンチには立ち上がってくれるんだ、と明久が友情に感激していると――

 

「邪魔をしないでください。この豚野郎にはお仕置きが必要なんです」

「いいからそれを寄越すんだ!」

「そうだ! 吉井の頭を渡せ!」

「それはお前には預けておけねぇ!」

 

須川たちは必死に清水を説得する。

 

「「「()()()()()()()()()()()()()()()」」」

 

明久を地獄に叩き落とすために。

 

「え!? ()()()!?」

「分かりました。そういうことなら、この豚野郎の頭を差し上げましょう」

「ちょっと待って、清水さん! 僕の頭をそんなお土産みたいに差し出さないで!」

「感謝するぞ清水。それじゃあ行くぞ皆! 女子に抱きつかれた裏切り者への、血の制裁だ! 試獣召喚(サモン)っ!」

「「「試獣召喚(サモン)っ!」」」

 

フィールド内にゾンビが溢れ出る。FFF団(明久・康太も所属)が明久の裏切り行為を見逃すはずもなく。

 

「休み時間に鍛えたバレーボールの腕前を見せてやる! そぅらっ! ジャンプサーブ!」

「あがぁっ!」

「あいよ! 突き上げレシーブ!」

「うぐぅっ!」

「ほいっ、トス! 決めろ須川!」

「ったぁ! トスの時に(ボールを)力一杯握るのは反則なんだぞ!」

「おらぁ! 殺人スパイクぅっ!」

「ぎゃぁあああっ!」

 

腐っても召喚獣。ゾンビと言えどそのパワーは健在で、ゾンビの手に渡る度に明久は頭部に多大なダメージを受ける。須川のスパイクで頭が床に叩きつけられたのもかなり痛い。

デュラハンの頭でバレーボールをするゾンビという絵面も相まって正に地獄のようだ。

 

「待つんだ。それ以上吉井を虐めるのなら、僕が相手になろう」

 

そこに一筋の光明――Aクラス次席の久保利光が現れた。

 

「ありがとう久保君! 助かるよ!」

「気にしないでいいよ吉井君。君のことは僕が守るよ――いつまでも」

 

含みのある言い方をする久保に、明久は薄ら寒いものを感じた。

 

「Aクラスの久保くん……でしたか? 美春たちの邪魔をしないでください」

「そうはいかないよ清水さん、Fクラスの皆。君たちが束になってこようとも、僕は一歩も譲らない。守るべきものが、ここにあるから……」

 

久保が眼鏡の位置を直しながら毅然とした表情で言う。端から見たら友だちを守るために立ちはだかる感動の場面なのだが、対峙しているのが久保なので、秀吉や康太は微妙な表情をしている。優子は目を輝かせていたが。

 

「男同士の熱い友情……良いわね」

「姉上が言うと別の意味に聞こえるのじゃが……」

「何よ秀吉? 言いたいことがあるならはっきり言いなさい」

「…………ノーコメントじゃ」

「ど、どうしましょう美波ちゃん。私も吉井君を助けに行きたいのに、足が竦んで動けません……」

「だ、だらしないわよ瑞希。ウチは今すぐにだって行けるけど、美春がいるせいで動けないわ」

 

秀吉たちも思い思いに戦況を静観している。

 

「上等です! 貴方は豚野郎の中ではそこそこマシな方だと思っていましたが、美春の邪魔立てをするのなら、そこの豚野郎と一緒に葬り去ってやります!

――試獣召喚(サモン)っ!」

「僕は負けない……。そう、僕が頑張って勉強してきたのは、きっとこういう時に吉井君を守るためなんだ――試獣召喚(サモン)っ!」

 

睨み合う久保と清水が同時に召喚する。

喚び出された召喚獣は、それぞれ顔は召喚者自身の顔なのだが、装備は全く同じ。藁やボロ布を着ていて、なんだかみすぼらしい姿をしている。

 

「ムッツリーニ。アレは何の物の怪か分かるかの?」

「格好からして貧乏神か疫病神かしら?」

「…………迷い神」

 

未だに虐めの最中にある明久の召喚獣を気にした風もなく、秀吉たちはのびりと会話をしている。

 

「…………人を迷わせる妖怪。一説では、道に迷って果てた人の魂が道連れを探してるとか」

「なるほど……。人の道に迷って、仲間に引きずり込もうとする中というわけじゃな……」

「私としてはあんまり認めたくない特徴の妖怪ね」

「……姉上からしたらそうじゃろうな」

 

久保と清水に共通した()()が、2人の召喚獣を迷い神にしたようだ。その特徴を明久は理解できていないが。

 

「ええいっ! 全員一斉に久保利光にかかるです!」

「「「おおーっ!」」」

「来るならこい! 僕は絶対に負けない!」

 

迷い神&ゾンビ軍団 VS 迷い神 の異種混合妖怪バトルが始まる。久保の迷い神がデュラハンの頭を抱えるゾンビに飛びかかり、ゾンビも対抗して腐った身体で引っ掻きや噛みつき攻撃を繰り出してくる。

腐肉が飛び散り、生首が宙を舞い、四肢が弾け飛ぶ。

 

「「「きゃぁあああーっっ!!」」」

 

このスプラッター映画もかくやと言わんばかりの、あまりにも凄惨な光景に、瑞希と美波はもとより教室にいた他の生徒たちも悲鳴を上げる。召喚獣の大きさがなまじ等身大に近いだけあって、リアルさが増して質が悪い。優子ですら、気持ち悪さから顔を顰めている。

 

『こ、こっちに来ないで! 試獣召喚!』

『大丈夫かミホ!? ちくしょう、よくも俺の彼女を怖がらせてくれたな……! 試獣召喚(サモン)!』

『彼女だと……? おい今コイツ彼女って言ったぞ! 裏切り者だ!』

『『『殺せぇぇっ!』』』

『あ、ちょっとそこ踏まないでよ!』

『ああーっ! 折角飾り付けしたのに!』

『もう許さないんだから! 試獣召喚(サモン)っ!』

 

あっという間に広がる混乱の輪。今や田中先生を中心とした召喚フィールドは、阿鼻叫喚の妖怪大戦争、地獄絵図と化していた。試召戦争ではないことをいいことに、召喚獣だけでなく召喚者までもが騒ぎに乗じて一部(主にFFF団絡み)で乱闘まで起き始めている。

混迷してきた騒ぎに、流石に先生がフィールドを消すのではと思ったその時。

 

「「お前らうるせぇんだよ!!」」

 

3階ではあまり見かけない顔ぶれの生徒たちが怒鳴り込んできた。




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