バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

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今回は肝試し準備編その2です。
例の2人が久々に登場します。


第九十二問

第九十二問

 

「「お前らうるせぇんだよ!!」」

 

肝試しの準備中に騒動を起こしていたAクラスに、怒号とともにあまり見かけない顔ぶれの面々が怒鳴り込んできた。

その中でも、先陣を切っていた坊主頭とソフトウェアモヒカンの2人が目ざとく明久を見つけると、ドカドカと肩を揺らしながら近づいてきた。

 

「あの2人は……?」

「3年生ね」

 

その2人に見覚えがあったのか、優子が少し顔を歪ませる。

 

「騒がしいと思ったらやっぱりまたお前か! 吉井!」

「お前はつくづく目障りなヤツだな……!」

 

2人は明久の顔を見るなり、嫌そうに顔を歪め悪態をつく。

向こうは明久のことを知っているようだが、明久に覚えはなく、なんとか記憶を探ると。

 

「変態た――変態先輩でしたっけ?」

「おい!? 今言い直そうとして俺たちの顔を確認して言い直すのを止めなかったか!?」

「お前俺たちの事を心の底から変態だと思っているだろ!? 常村と夏川だ! いい加減名前くらい覚えろ!」

 

2人が名乗りを上げたことで、明久の容量の少ない記録媒体から2人の顔と名前が一致した。

彼らは通称常夏コンビ。清涼祭でFクラスの模擬店を妨害し、召喚大会で秀隆に瞬殺された3年生の2人組だ。

 

「それで常夏先輩。どうしたんですか?」

 

召喚獣にロッカーを一旦床に下ろさせて常夏コンビに向き合う。

 

「テメェ……。個人を覚えられないないからってまとめやがったな……」

「流石は吉井明久だ。脳の容量が小さすぎるぜ」

「失礼な。面倒になったから一つにしただけです」

「「お前の方が失礼だろ!」」

 

3人の周りで何人からが失笑する。

 

「っていうかお前らうるせぇんだよ! 俺たちへの当てつけかコラ!」

「夏期講習に集中できねぇだろうが!」

 

常夏コンビと一緒にいる他の3年生たちも「そうだそうだ」と騒ぎ立てる。彼らがなんだか殺気立って見えるのは、受験勉強でピリピリしているからだろう。『夏を制する者は受験を制する』というキャッチフレーズがあるように、夏休み中にどれだけ勉強したかで受験の合否が左右されると言っても過言ではない。

そこにきて下の階ではこの大騒ぎ。真面目に夏期講習を受けている身からしたらたまったものではない。こちらに非があり、先輩たちの怒りも理解できるため明久は素直に謝った方がいいと判断した。

 

「すみません。まさか上の階まで響いているとは――」

「おいおいセンパイ方。そいつは酷い言いがかりじゃないか?」

 

明久が頭を下げようとしたところ、雄二が秀隆を連れ立ってやってきた。

 

「え? 雄二。言いがかりってどういうこと?」

「口実を設けて難癖をつけることだ。いちゃもんとも言う」

「いや、言葉の意味は聞いてないんだけど。……さてはキサマ、僕の事を凄いバカだと思っているな!?」

「「……え……?」」

「なんで2人して『何を今更』って顔してるのさ! 僕の事をそこまでバカだと思っているのは雄二と秀隆くらいに決まってるじゃないか! 他の皆は――って待った! どうして皆気まずそうに目を逸らすの!? 僕の目を見てよ!」

「明久。それでお前の目を見るのは姫路と島田と久保くらいだぞ」

「明久。この件は今度ゆっくり話そううな? 今は他の話があるからな?」

 

明久は雄二に子どもを諭すような言い方をされ、一回本気でぶん殴ってやろうかと思った。

 

「それで、えーと……何の話だったか?」

「3年生の文句が言いがかりではないか、という話じゃ」

 

脱線しかけた話を秀吉が戻す。雄二は「そうだったな」と言って3年生に向き合った。

 

「俺たちが騒がしいのは認めるが、これだって歴とした試験召喚獣を使った行事の一環だ。学園長もそれは認めている」

「新校舎の装飾も学園長の許可を得てやってるからな。これ自体に文句を言われる筋合いはねぇよ」

 

今回の肝試しは試験召喚獣を使った学園長公認の催し物だ。これを否定するなら、試召戦争、ひいては試験召喚システムを否定することになる。頭ごなしに批判される(いわ)れはない。

 

「べ、別に俺たちはお前らが何をしてようが関係ねぇよ! 」

「先輩が真剣に受験勉強してるのに、ギャいギャい騒いで勉強の邪魔をするなってんだよ!」

「それこそあり得ねぇ言いがかりだな。旧校舎ならともかく、ここは試召戦争を前提として建てられた新校舎だぞ? 」

「試召戦争中も他の授業の邪魔にならないように防音や耐震設備は完璧にできている。下の階が多少騒ごうが、それが上の階の戸を閉めた教室に響くわけがないだろ?」

 

普通の学校ですら鉄筋コンクリート製の校舎なので、上下階の騒ぎが勉強に影響が出るほど響くことはない。ましては文月学園の新校舎は更に騒がしくなる試召戦争を想定して作られているので上下どころか隣接する教室の音でさえそうそう聞こえることはない。少なくとも、教室の中で授業を受けている分には。

 

「ま、廊下で勉強するか、床に這いつくばって勉強する場合は例外だがな」

「そんな特殊な勉強方するわけねぇだろうが!」

「なら結論が出たな。要はセンパイ方は勉強に飽きてフラフラしているところで、俺たちが何やら楽しそうなことをしているのに気がついて、八つ当たりにきたってわけだ」

 

雄二の言葉に、常夏コンビや他の3年生たちもバツの悪そうに目をそらす。3年生がピリピリしていたのも受験勉強のストレスだけでなく、楽しそうにしている2年生への嫉妬もあったようだ。

 

「じゃあ言わせてもらうが坂本に神崎よぉ! お前らは迷惑極まりないんだよ! 学年全体での覗きに、挙げ句の果てには2年男子全員が停学だぞ!学園の評判が落ちて俺たちまでバカだと思われたらどうしてくれんだ! 内申に響くじゃねぇか!」

「「「う……」」」

 

夏川の台詞に、今度は雄二と明久を筆頭とした2年生男子のほぼ全員が目を逸らす。

合宿のあの一件が文月学園のイメージに大きく関わっていることは間違いない。2年生男子のせいで関係ない3年生まで世間から後ろ指を刺されかねないという主張はもっともだ。その点に関しては、全員が申し訳なく思っていた。

 

「その程度で響く内申なら、最初からその程度だったんだろ」

 

神崎秀隆(この男)を除いては。

 

「「「はぁっ!?」」」

 

あくびを噛み殺しながら言った、秀隆の開き直りと言うにはあまりにも不遜な台詞に、3年生だけでなく2年生も目を見開いた。

 

「テメェ神崎! 言うにこと欠いて開き直るってのはどいううことだコラ!」

「お前人様に迷惑かけている自覚あるのか!?」

「覗き未遂の一件で学園の沽券に関わったことについては反省している。――その節はご迷惑をおかけしてすみませんでした」

 

囂々と非難を浴びる中、秀隆は意外にも覗きの件はあっさりと謝罪した。

見せかけではないと感じ取れるしっかりとした謝辞と辞儀に、その場の全員が面食らった。

 

「そ、そうやって頭下げたって騙せれねえぞ!」

「どうせお前は俺たちのこと陰で笑ってんだろ」

「それも否定はしない」

「「ちょっとはオブラートに包めやコラ!」」

 

支離滅裂な言動に、明久ですら唖然としている。

 

「秀隆不味いよ。流石に今回は僕らが悪いんだから」

「だから覗きに関しては謝ったろうが」

「けど、内申に響いたら受験に影響が」

「それ、勘違いだぞ」

「え?」

 

勘違い、と言った秀隆の言葉に、一部を除いて首を傾げた。

 

「そもそも、内申に学校の評判は関係ねぇ」

「そうなの?」

「内申点っていうのは、受験生個人の成績や生活態度を点数化したものなのよ」

 

秀隆の説明を優子が補足する。

 

「だから受験生が()()()()()に通っているかは基本的にそこまで考慮されない。じゃないと名門校ってだけで無条件に受験に有利になって不公平になっちまうからな」

「それに内申が重要になるのは学校推薦やAOみたいな面接試験で、一般入試ではほとんど影響はないわ」

「つまり、どんな学校の生徒であろうと、内申に重要なのは生徒自身の能力や生活態度で、学校という枠組みは関係ないということか」

「そういうことだ」

 

秀隆は田中教諭に向き直り「そうですよね?」と尋ねる。

 

「……そうですね。概ねその考え方で合ってます。強いて言うなら、学校の評判は面接の時に色眼鏡にかけれる可能性はある、というくらいですか」

 

教師として答えるべきか悩んだが、田中教諭も秀隆の考え方を肯定した。

基準が厳しい学校推薦はともかく、AO入試(総合型選抜)はその大学のアドミッションポリシーに則り、学力だけでなく受験生の意欲や個性、能力を多角的に評価する選抜方式だ。受験生の『中身』を評価するのに学校という『外枠』で評価したのではそもそもAO入試の理念に反する。もちろん、面接官も人間であるため、受験生の出身校からある程度内面を偏見の目で見る可能性は否定はできない。

 

「ほら見ろ! やっぱり影響するんじゃねぇか!」

「だからそれは面接官の色眼鏡だってんだろ。んなもん受け答え次第でどうにでもなる。考え方によっては、むしろプラスと考えるべきだな」

「出来の悪い後輩がプラス? 冗談じゃねぇ。百害はあっても一利もねぇだろ!」

「たしかに実生活ではそうかもな。けど、それを()()としてエピソードは作れるだろ?」

「逆境だと?」

 

コイツ何言ってんだ、と聞き返す夏川に秀隆がニヤリと嗤う。

 

「そう、逆境さ。ようは面接で自分の能力の高さを示せばいいんだからよ。例えば『バカな後輩を指導して更生させた』みたいなエピソードを面接でアピールすれば、リーダーシップの高さを評価されるんじゃないか?」

「「「!?」」」

 

秀隆の発想は3年生には目から鱗だったようだ。

 

「んなに驚かなくても……。部活やってるヤツならその手のエピソードなんでご万とあるだろ」

「た、たしかに……」

「おい騙されるな常村! 面接でそんな嘘エピソードが通じるわけねぇだろ!」

「アンタたちは『嘘も方便』って言葉を知らねぇのか? 面接で話を盛るのなんて常套手段だろ」

 

面接で部活動について質問された場合、『頑張って練習したが予選敗退した』と正直に答えるよりも『インターハイ目指して部員と切磋琢磨してきた。結果は予選敗退という残念な結果だったが、部活を通じて仲間と努力することの大切さを学んだ』と言えば成長をアピールできる。

嘘ではないが言葉以上のことをアピールするのが面接のコツだと言われている。田中教諭も秀隆の身も蓋もない言い方に微妙な表情をした。

 

「つまりだ。内申の不安要素を自分じゃなくて学校の評判という他者を理由にしいてるかぎり、『自分には何の取り柄もエピソードもありません』って自白してるようなもんだ。まぁ――」

 

ここで秀隆はもったいぶった様に一呼吸置き、

 

「竹原()教頭から推薦状を書いてもらえるくらいには()()()先輩方には一切関係ない話だろうがな」

「「う……」」

 

といつもの人を食ったかのような笑みで言ってみせた。

秀隆の言葉に、常夏コンビをはじめとした一部の3年生がまた気まずそうに目を逸らす。

彼らは清涼祭の折に竹原元教頭の悪巧みに加担していた。結果的には未然に防がれ、彼ら自身は()()()()()()()としてお咎めなしになってはいるが、秀隆という最悪の相手に弱みを握られるハメになっている。

 

「ん? 内申が生徒の生活態度によるってことは、僕らの内申って……」

 

ここにきて、ようやく明久が何かに気づいた。

 

「んなもん覗き未遂した時点でただ下がりに決まってるだろ。そもそも俺たちFクラスに内申点なんて最初からあってないようなもんだ」

「う……やっぱりか……」

 

Fクラスは基本的に成績最下層の生徒たちが集まる。元々成績トップクラスの瑞希たちや熱心に部活をしている秀吉を除き、ほとんどのFクラス生徒は生活態度も悪いので、内申点なんて考慮されるわけもない。

そんな肩を落とす明久たちを見て、常夏コンビが息を吹き返した。

 

「そうだ! だいたいお前ら2年は出来が悪すぎるんだよ。バカの代名詞の観察処分者だって2年にしかいねぇし、しかも2人もときたもんだ」

「おまけに新学校早々にAクラスに試召戦争挑んであっさり返り討ちだったらしいじゃねぇか。そんなバカげた事をするなんてお里が知れるぜ。クズでバカなヤツが同学年だと苦労するよなホント」

「だってさ。言われてるよ雄二、秀隆。謝りなよ」

「何言ってんだ。観察処分者は明久と秀隆の2人だろうが」

「鉄人に目をつけられてるバカはお前らだろ。明久、雄二」

「お前ら3人だよクズ」

「「「なん、だと……っ!?」」」

「何でお前らはそこまで心外そうな顔ができるんだ!? 普通に考えたら当然の評価だろ!?」

 

3人が3人とも他2人と同列に扱われるのを不本意だと思っているので致し方ない。

 

「まぁ、バカ久が気に入らないというそちらの言い分は分かった」

「そうだな。ウチのクズ久が申し訳ない」

「待って2人とも。そうやって全ての責任を僕に押し付けるのは良くないと思う――ってさり気なくまた僕の事をバカにしたな!?」

「美春もこの豚野郎は気に入りません!」

 

いつの間にか近くにきていた清水が明久に蔑むような視線を送る。完全な逆恨みに、明久も辟易していた。

 

「清水。面倒だからしゃしゃり出てくんな」

「美春に指図しないでくださいこの豚野郎!」

 

あしらおうとする秀隆にも清水は罵声を浴びせる。そんな清水の態度を自分たちへの後押しだと受け取った夏川は、ノリノリで清水に話しかけてきた。

 

「おお。話が分かるじゃねぇかそこの縦ロール」

「調子に乗って美春に話しかけないでください豚先輩! 家畜臭いですっ!」

 

先輩だろうと容赦なく罵声を浴びせるのは流石と言ったところか。しかし、2年生と3年生の溝は深まるばかりだ。

 

「……っメェら上等じゃねぇか……! お前らのことは前々から気に入らなかったんだ!」

 

ついに夏川が顔を真っ赤にして激昂しだした。ある意味では当然ではあるが。

 

「おい夏川。先生もいるんだぞ。暴力は止めておけ」

「まるで先生がいなかったら殴ってるみたいな言い方だな。ま、俺はそれでもいいけどよ」

「止めなさい秀隆。時間の無駄よ」

「お前仲裁しているようでサラッと俺たちが負ける前で話しているな!?」

「そうですけど、何か?」

「……流石は()木下秀吉だ。性格の悪さが滲み出てるぜ」

「何ですって!? 秀隆、やっちゃいなさい!」

「時間の無駄だっつったのはお前だろうが……」

 

止める側が止められる側に抑えられては元も子もない。

 

「心配すんな常村。……こうすりゃいいだろ! 試獣召喚(サモン)っ!」

 

田中教諭がいるこど召喚許可が出ていることを察した夏川が召喚獣を呼び出す。すると、幾何学模様の魔法陣から頭が牛で大槌を持った鬼が現れた。

 

「牛頭鬼か」

「地獄の獄卒。本質は悪役ってところかしら?」

 

秀隆と優子が冷静に夏川の召喚獣を分析する。

夏川の召喚獣の姿がいつもと違うのに3年生たちが驚かないのは、3年生は3年生で事前に学園から召喚システムの変化についての説明があったからだろう。

 

「さて吉井よぉ。お仕置きの時間だぜ」

「くっ……。やっぱり僕の召喚獣狙いか! でも、どれが僕の召喚獣なのか分かるわけが――」

「コイツだろ」

「あがぁっ!」

 

ロッカーを床の上に置いていたデュラハンが牛頭鬼に殴られる。

 

「さ、流石は腐っても3年のAクラス……! 僕の召喚獣を一瞬で見抜くなんて、鋭い洞察力だと褒めて」

「いや。頭がないなんてバカな召喚獣は明らかにお前しかいないだろ」

「鋭い洞察力だと褒めておこう!」

 

明久が夏川の台詞を打ち消すように大声で叫ぶ。自分が傷つきそうな台詞は聞かないことにする。これが明久が厳しい社会を生き抜く上で身につけた知恵の一つだ。

 

「秀隆。手伝ってあげなさい」

「はぁ? 何で俺が」

「このままだと吉井君が不憫じゃない」

「……本音は?」

「あのソフトモヒカン野郎をぶっ飛ばして」

「……だそうで?」

「癪だが俺もお前をぶっ飛ばしてやりてぇと思ってたところだ」

「はぁ……。なんでこうも俺の周りには血の気の多いヤツが多いんだよ」

「お主が言えた立場ではなかろうて」

「「――試獣召喚(サモン)っ!」」

 

加勢というなの個人的理由で秀隆と常村も召喚する。出てきた召喚は秀隆の悪魔と、常村は馬の頭をして槍を持った馬頭鬼。

 

「そっちはやっぱり馬頭鬼か。牛頭鬼(相方)にぴったりだな」

「そう言うテメェこそ、悪魔なんてぴったりの召喚獣じゃねぇか」

「失礼な。善良ないち後輩を捕まえてなんて台詞だ」

「どの口が!」

 

馬頭鬼が先制とばかりに槍を構えて突進する。

 

「さっき坂本が言ったように、これは試験召喚獣を使った模擬戦だ。これだってうちの学校では立派な授業の一環だから文句はねぇよなぁ!」

「そうだな」

 

馬頭鬼の猛進を悪魔がひらりとかわす。着地後にあくびをする余裕まで見せた。

 

「コイツ……っ!」

「落ち着け常村。所詮相手はFクラスだ。俺たちに勝てるわけがねぇ」

「お前ら試験召喚大会の結果を忘れたのか?」

「またあんなマグレが起きると思うなよ!」

 

バチバチと火花を散らす両者。

いつものように、召喚から少し遅れて召喚獣の頭上に点数が表示される。

 

  Aクラス 常村優作 & Aクラス 夏川俊平

  世界史  174点  & 世界史  163点

 

表示された点はおおよそAクラスの平均点。試験召喚大会の時は一瞬で決着がついたため常夏コンビの実力はイマイチ分からなかったが、社会系の点数はAクラスでは中堅といったところだろうか。

それを見て、明久が自分たちの点数が表示されるのを待っていると――

 

「どこ見てんだオイ。ずいぶんと余裕じゃねぇか」

「が……っ!」

 

明久の肩に激痛が奔る。明久が注意を逸らしている内に、牛頭鬼がデュラハンに攻撃をしかけていたのだ。

 

「痛ぇか? そいつぁ何より……だなぁっ!」

 

態勢を崩したデュラハンに牛頭鬼と馬頭鬼が追撃をしかけようと武器を振りかぶる。

 

「そっちこそ、よそ見してんじゃねぇよ! 裂想蹴(れっそうしゅう)!」

 

そこにすかさず悪魔が割って入る。常村の馬頭鬼を横から蹴飛ばすと、その横にいた牛頭鬼もろとも吹き飛ばした。

 

「神崎……っ! やっぱり戦闘力だけは高ぇみてぇだな……!」

「それよりも吉井だ。さっきの一撃がほとんど効いてないなんてどういうことだ……?」

 

常夏コンビが俄に戦く。想像以上に明久の召喚獣が強くて驚いているようだ。

 

「あまり甘く見ないでくださいね変態先輩。こっちだっていつまでもバカなままじゃないんですから」

 

 

明久がニヤリと口の端を上げて言ってのける。

明久の自信の態度に触発されたのか、皆が遅れて表示された明久の点数に注目する。

 

 Fクラス 神崎秀隆 & 334クラス アレクサンドロス大王

 世界史   198点  &  世界史   161点

 

「「……………………」」

「さぁ勝負はここからだ! この僕の本当の力を見せて――」

「……おうコラ。ちょっと待てそこのバカ」

「……何か不都合な点でも?」

「不都合な点しか見当たらねぇよ……」

 

常村が呆れて頭に手を当てる。盛り上がっいたところにこの有り様で、秀隆ですら申し訳なさそうにしていた。

明久が言い訳を口にする前に、夏川が怒鳴り声を上げた。

 

「誰だよアレクサンドロス大王って! しかも334クラスなんて学校拡張しすぎだろ!?」

「それに何だその点数は! 明らかにお前の点数じゃねぇだろ!?」

「ち、違います! ちょっと間違えちゃっただけで、点数は正真正銘僕の点数です! 名前のミスなんて誰もが一度はやることじゃないですか!」

「漢字覚えたての小学生じゃねぇんだぞ! 無記名ならともかく、何をどう間違えたらアレクサンドロス大王になるんだよ!?」

「そ、それは、その……えーと……」

 

どう頑張って取り繕っても、明久がとてつもないバカだと思われることには変わりない。

 

『ほら見ろ。やっぱり2年はバカ揃いじゃないか』

『ち、違う! 吉井が群を抜いてバカなだけで俺たち他の2年はそこまでじゃない!』

『それに吉井は来年もう一度2年生をやるだろうから縁は切れるはずだ』

 

ギャラリーからも酷い言われようである。

 

「おい夏川。最近は召喚システムの調子が悪いみたいだからな。もしかしたら名前が違うのもその影響かもしれないぞ」

「ん? ああそうか。確かにそうでもないとこんな事はあり得ないか」

「……」

 

そう言って常夏コンビは勝手に納得してしまう。こうなっては本当の事は言い出しづらい。

 

「まぁ、名前のとこは不具合だとしても、お前らかも学園の汚点であることに変わりは――」

「不具合とは聞き捨てならないねぇ」

 

さらに言い募る夏川の台詞を遮って、不機嫌なそうな声と顔がAクラスに現れた。

 




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