バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

106 / 137
肝試し準備回その3です。

また性懲りもなく新キャラ出てきたよ(白目)


第九十三問

第九十三問

 

「不具合とは聞き捨てならないねぇ」

 

不機嫌そうな声と顔で現れたのは、学園長だった。

 

「あ。学園長」

「んだよババア。何か用か?」

「コラ。学園長に失礼でしょ」

「用があるから来たんだよクソガキ。でないとこんなことろにわざわざ来るわけないさね」

 

半目で睨む秀隆に、学園長も鼻を鳴らして返す。

 

「それはさておき。まったく……。吉井のバカについてシステムが原因だなんて言われたらたまったもんじゃないさね。それは正真正銘そこのジャリ自身のミスさね」

 

学園長はこの妖怪騒ぎですらシステムの調整ミスを認めず、元からの仕様だと言い張ったのだ。こんな些細なことでもミスだと言われるのは心外なのだろう。

 

「で、でも点数はっ!」

「信じられないだろうけど、点数もソイツのちゃんとした点数さ。記名ミスだから成績としては0点だけど、システムとしては問題ないさね」

「う、嘘だ!」

 

常夏コンビは信じられないと吠える。期末試験までは良くて二桁後半だった明久が、いきなり100点以上も点数を伸ばしているのだから当然の反応だ。反面、暗記系以外の科目は相変わらずなのだが。

 

『う、嘘だ! 吉井の点数が俺より高いだなんて!』

『吉井君ってそんなに頭良かったっけ?』

『点数だけならAクラス並だぞ……』

 

周りも明久の点数の高さにどよめいている。

 

「はっ!? そうだ! どうせカンニングでもしたんだろ!」

「そうだな。そうでもしなきな吉井や神崎みたいなバカがこんな点数取れるわけがねぇ!」

「おいコラ常夏。人を巻き込むんじゃねぇ」

「そうですよ! 僕がカンニングなんてそんな」

「だいたい明久がカンニングなんて器用なことできるわけないだろ」

「卑怯なまね――え?」

『『『たしかに……』』』

 

まさかの方向からの擁護に明久の目が点になるが、秀隆の指摘に全員が納得した。明久は少しだけ涙が出そうになった。

 

「そういうわけで、これは(れっき)とした吉井の実力さ。けど、こちらのミスと思われるのも癪だし、その名前の部分くらいは直しておいてやろうかね」

 

ミスでないものをミスと認識されたままでは具合が悪いので、学園長が珍しく明久に憂慮した。そもそもこの状況自体がシステムの調査ミスによるものなのだが。

 

「んで、用件ってなんだよ」

「おっと忘れるとこだったね。神崎がいるってことは坂本もいるね? ちょいと2年生に伝えることがあるから呼んでくれるかい?」

「ん? なんだババア?」

 

離れた所で状況をニヤニヤと笑いながら眺めていた雄二が一歩前に出る。

 

「この肝試し、学園側が援助してやろうじゃないか。大掛かりな設営も召喚のための教師も応援する。精々派手にやるこったね」

「そいつはまた、ずいぶんと気前がいいな。どういうことだ?」

「その代わり、作ったものはそのままにしておくこと。盆休み辺りに一般公開でもしてやろうかと思ってるんでね」

 

明久の目には学園長の瞳が『(かね)の字』になっているよう見えた。

 

「つまり、学園のイメージアップ戦略のためってか。甲斐甲斐しい努力に涙が出るぜ」

「心にもないこと言うんじゃないよ気持ち悪い。そもそもどっかのバカどもが学園の評判をどんどん下げてくれるから、こっちの苦労が絶えないんだよ」

「それはそれは、迷惑なバカがいたもんだ。学園長も大変だな。いっその事そのまま即身仏にでもなったら雀の涙くらいのご利益は出るんじゃないか?」

「そしたらアンタの枕元に化けて出てやるさね」

「現代妖怪が何か言ってら」

「現役悪魔に言われたかないよ」

 

相変わらずバチバチに火花を散らす秀隆と学園長に、2年生も3年生も若干引いている。

 

「それに、元々この召喚獣の変更はそれが目的だったからね」

 

学園長が念を押すように強調する。下手な反論をして肝試しが中止となりまた地獄の補習が再開されるのは勘弁願いたいので、明久たちは大人しく黙っていた。

 

「それと……折角だから、3年生もこの肝試しに参加したらどうだい? こんな所で小競り合いしているよりはその方が有意義さね」

 

そう言って学園長が水を向けると、3年生の先頭に立っていた常夏コンビが鼻を鳴らして答えた。

 

「冗談じゃねぇ。こんなクズどもと仲良く肩を並べて肝試しなんかできるかよ」

「だよな。胸くそ悪い」

「それはこっちの台詞だ」

 

後ろにいる3年生たちも声には出していないが態度で同様の意思を示している。2年生もあまりいい顔はしていない。どうにも2年生と3年生の溝は深そうだ。

 

「なんだいアンタら。同じ学び舎で勉強する先輩後輩なんだから少しは仲良くしな」

「アンタがそれを言うかよ」

 

そもそもの原因を作り、生徒に対しては興味なさそうな態度を取る学園長には言われたくないだろう。

 

「けどまぁ……。そういう態度を取られると、是が非でも参加させたくなるねぇ……。よし、決めたよ。明日の夏季講習・補習の最終日は全員参加の肝試しするよ」

「「な……っ!」」

「「えーっ!?」」

 

学園長の通達に常夏コンビが目を白黒させ、瑞希と美波は絶望の悲鳴を上げた。

 

「これはあくまでも補習と夏季講習の仕上げだからね。補習の講習の参加は余すことなく全員さんかすること。いいね」

「だからってっ」

「内申云々気にしているなら、なおさら3年生に拒否権はないはずだよ。それこそ『学校行事に消極的』な態度はマイナス評価だしねぇ」

「「「う……」」」

「それに、そこの坊主とソフトモヒカンは文化祭で無銭飲食したそうじゃないか。それでいでアタシの提案を蹴るなんて、よほど生活態度に自身があるんだねぇ」

「あ、アレはちゃんと後で払って」

「それだって西村先生が一度立て替えたそうじゃないか。そんな状態で余計に評価を下げたくはないだろう?」

「「うぐ……」」

「理解したのなら、諦めて参加することさね」

 

3年生と常夏コンビそう告げると、学園長は勝ち誇ったように頷く。

 

「ちょっと待てババア。ついでに一つ聞きたいことがある」

 

颯爽と教室を出ようとした学園長を、秀隆が呼び止める。

 

「なんだい。アタシは忙しいんだよ」

「今の召喚獣について一つ聞きたいんだが」

「……なんだい?」

 

召喚獣という単語に、学園長の眉がピクリと動く。

 

「そう警戒すんなよ。俺たちの召喚獣なんだが、指示をしていない時に勝手に動く時があるんだが、原因は分かるか?」

 

秀隆が昨日から気になっていたことを学園長に投げかける。秀隆が質問している間にも悪魔は昼寝、牛頭馬頭はフィールド内を徘徊するゾンビや迷い神を追いかけ回していた。

 

「ああ、それかい。それは単純に『一定時間指示がないと召喚獣の姿に即した行動を取る』ように設定されているからさね」

「? どういうことですか?」

「前の召喚獣は指示がない時は棒立ちになるよう設定されているんだけど、今だとそれじゃ面白くないからね」

「つまり、折角お化けの姿にしたんだから、少しはお化けらしい動きをつけたかった、ということか?」

「要は格ゲーの待機モーションみたいなもんか」

「そういうことさね」

「何故にそのような設定にしたのじゃ?」

「だから肝試しのためだよ。そうしたら、召喚獣を出すだけである程度の驚かしにはなるからね」

「なんだか後付けくさいなぁ」

 

つまり召喚者本人が不在でも、システムとして喚び出した召喚獣がある程度アトラクションになってくれるということだ。学園長が『肝試しのために召喚獣を変更した』と言い張る限り、こういった細かい変更も許容すべきなのだろう。

 

「ん? てことは、俺の召喚獣が惰眠を貪ってるのは……」

「アンタの性質もあるけど、召喚獣そのものがが怠惰の悪魔だからだろうね」

「まじかよ……」

「悪魔的な性格にサボり魔。まさに秀隆ね」

 

秀隆は悪魔にしてはやたらに豪奢な服装と、常に寝ていることが気になっていたが、そういうことだったのだ。納得がいくと同時に腑に落ちない気持ちになる。

 

「理解したかい? ならアタシはもう行くよ。精々夏の風物詩を楽しみな。ああ、それと、今回の肝試し中に宣伝用の映像も撮るつもりだからそのつもりでいな」

 

そう言い残すと、今度こそ学園長は颯爽と教室を出ていった。

 

「やれやれ……。ま、そう言うワケだセンパイ。楽しくやろうぜ?」

「うるせぇ! 俺はお前らなんぞと仲良くやるつもりはねぇ!」

「それはこっちの台詞だ」

「俺もアンタは気に食わねぇ。……てことでこういうのはどうだ?」

「あぁ?」

「驚かす側と驚かされる側に分かれて勝負をする。適当な罰ゲームでもつけて、な」

「2年生と3年生に分かれてってことか?」

「ああ。それなら、わざわざ仲良くする必要は全くないだろ?」

 

要は敵と味方に分かれるということだから、確かに仲良くする必要はない。結果次第で軋轢は増しそうだが。

 

「悪かぁねぇな。当然俺たち3年生が驚かす側だよな? 俺たちはお前らにお灸を据えてやらなきゃならねぇからな」

 

夏川がいじめっ子らしい獰猛な笑みを浮かべる。2年生を怖がらせて笑いものにしたいという魂胆が見え見えだ。

しかし気質だけで言えば雄二も秀隆も同じ側なので、明久はこの要求は却下されると思っていた。

 

「ああ。別にそれで構わない」

「俺も異論はない。好きにしてくれ」

 

意外にも、2人ともあっさりと夏川の提案を受け入れた。元々の目的が補習を潰すことだから、肝試しそのものには興味ないということだろうか。

 

「決まりだな。……ルールと負けた方への罰は?」

「これが俺たちが最初予定していたルールだ。文句があれば一応聞くが」

 

雄二が常夏コンビにA4サイズのプリントを渡す。装飾中に秀隆たちと考えていたルールが書かれているようだ。

明久たちと1枚受け取り中身を確認する。

 

①二人一組での行動が必須。一人だけになった場合のチェックポイント通過は認めない。

※一人になっても失格でない。その場合、悲鳴を上げずに待機室に戻ればペアを組み直して再開可能とする。

②二人の内、どちからが悲鳴を上げたら両者失格とす。

③チェックポイントはA〜Dクラスに各一箇所ずつ。合計四箇所とする。

④チェックポイントでは各ポイントを守る代表者二名(クラス代表でなくとも可)と召喚獣で勝負する。撃破でチェックポイント通過とする。

⑤一組でもチェックポイントを全て通過できたら驚かされる側、一組も通過者を出さなければ驚かす側の勝利とする。

⑥驚かす側の一般生徒は召喚獣でのバトルは認めない。あくまで驚かすだけとする。

⑦召喚時に必要な教師は各クラスに一名ずつ配置する。

⑧通過の確認用として驚かされる側はカメラを携帯する。

 

「へぇ。結構凝ったルールね。これは面白そうだわ」

「そうだね。このルールなら学園長も納得するだろうね」

「あとはこれに設備への手出しを禁止するって要項を追加する予定だ。学園長がうるさそうだからな」

「一般公開するのに、肝心の設備がボロボロだと意味ないもんね」

「その方がある意味肝試しらいかもしれんがの」

 

とは言うものの、最初からそういう風に作ってある設備と、後からそうなった設備では雰囲気が全然違う。それに装飾だけでなく元からある設備まで壊されては学園としても看過できないので、ルールの追加は必須だ。

 

「坂本。この悲鳴の定義はどうなっている?」

 

ルールに一通り目を通した常村が雄二に尋ねる。たしかに一言で悲鳴と言っても、それがアウトかどうかの客観的な基準は必要だ。そこを曖昧にしていると、後で揉め事火種になりかねない。

 

「ん? そこの部分か。そうだな……。そこは声の大きさで判別するか。カメラを携帯させるわけだし、そこから拾う音声が一定値を超えたら失格ってことでどうだ?」

「そんなことできるのか?」

「…………問題ない」

「カメラには集音マイクを付けれるし、確認用の録画ソフトに音量を出す設定をすればいけるな」

 

最近は音声を利用したゲームもあるので、工夫次第では可能だ。それに2年生にはその手の技術に長けた康太がいる。原動力が下心なのが玉に瑕だが。

 

「チェックポイントの科目決めはどうする?」

「そこはお互い1科目ずつ指定ってことでどうだ?」

「1科目ずつ? 2科目じゃなくて?」

「もう現国と化学の教師には話しちまったからな。センター試験には必須だし、受験でも選択されやすいその2科目ならそこまで有利不利もないし問題ないだろ?」

 

文系と理系の代表的科目である現国と化学なら、得手不得手はあるものの有利不利の差は少ない。チェックポイントでの勝負もペアで肝試し自体が団体戦。戦略しだいで状況はどうとでも変わる。

 

「坂本よぉ。それよりもさっき言ってた負けた側の罰をきかせろよ」

 

夏川がいやらしい笑みを浮かべる。何としてでも明久たちをハメてやろうという顔だ。

 

「そうだな。負けた側は2学期にある体育祭の準備や片付けを相手の分まで引き受けるってことでどうだ?」

 

体育祭も清涼祭同様に生徒主体で行われるという体裁を取っているので、準備も片付けも各学年が担当を持って行う。

体育祭自体は大掛かりなイベントなので準備も片付けもそれなりに手がかかる。雄二や秀隆はもちろん、大半の生徒はサボれるならサボりたいと思っている。

 

「おいおい坂本。お前にしちゃずいぶんヌルい提案じゃねぇか」

「神崎と揃いも揃ってその程度じゃぁな。ひょっとして、お前ら実は勝つ自身がねぇんじゃねぇか?」

 

常夏コンビの言う通り、人の嫌がることを考えさせたら右に出る者はいない2人にしては簡単過ぎる罰ゲームだ。それを自信のなさと受け取った常夏コンビは、これ見よがしに雄二たちを小馬鹿にする。

 

「アンタらと勝負するってこと自体皆に知らせてないからな。勝手に決める罰ゲームとしてはこのくらいが妥当だろ? 俺らも、アンタらも」

「勝手に変な罰ゲーム決めて、いざ『負けました』となって文句言われるのも面倒だからな。アンタらだって、もし負けたら他のヤツらへの面目が立たないだろ?」

 

学園長のお墨付きがあるとは言え、それはあくまでも2年生3年生合同で肝試しをやるところまで。分かれての勝負云々は急遽決まったことだ。知らされてない生徒からしたら常夏コンビの個人的な復讐に巻き込まれるのだから、勝手に変な罰ゲームを決めらるのは不本意だろう。

 

「……けっ」

 

その事を理解しているのか、夏川があからさまに舌打ちをする。

 

「そう(はや)るなよセンパイ。勝負がしたいのなら、アンタらはチェックポイントにいてくれたらいい。そうしたら、俺と明久が個人的が勝負してやるからよ」

「え? 何で僕まで巻き込まれて」

「チェックポイントで直接対決か……。面白ぇ。その話、乗ったぜ」

「当然、神崎もだよな?」

「ああ? 何で俺まで」

「もちろんだ。アンタら秀隆の方が恨みがありそうだからな」

「勝手に話を進めるんじゃねぇよ」

「んじゃ勝負は明日ってことで。楽しみしているぜセンパイ」

 

秀隆の文句はスルーされ、話は纏まりかけたのだが。

 

「ちょっと待ってもらおう」

 

教室の扉の方から野太い声が待ったをかけた。

 

「あん? 誰だよアンタ?」

「大友?」

「何でここに?」

 

常夏コンビに大友と呼ばれた声の主は、制服が破れんばかりの筋骨隆々の巨体で浅黒い肌をした3年生だった。

 

「おいおい。鉄人以上に暑苦しいヤツが来たな」

「失礼だぞ秀隆。あんなんでも一応高校生らしいからな」

「聞こえているぞキサマら」

 

大友はギョロリと秀隆と雄二を睨む。

 

「まぁ、いい。俺は3年Aクラスの大友だ」

「そのナリでAクラスかよ」

「家庭科部の部長でもある」

「いやその見た目で家庭科部は無理があるだろ!?」

「冗談だ。本当はレスリング部だ」

「何でそんなとこで嘘つくんだよ……」

 

どうにもAクラスは2年生3年生関係なく、想像以上に個性的な人が多いようだ。

 

「んで、その大友センパイが何の用だ?」

「先ほど肝試しのルールについて聞かせてもらったが、一つ俺から追加の要望がある」

「……一応聞こうか?」

「そう警戒するな。俺からの要望は『チェックポイントの追加』。Aクラスのチェックポイントを一つから二つにしてもらいたい」

「……理由は?」

「メリハリをつけるためだ。おそらく肝試しで(まわ)る4クラスの内、Aクラスは最後になるのだろう? ただでさえ広いAクラスで、チェックポイントが一つというのは少し退屈だと思ってな。」

 

Aクラスの広さは他のD〜Cクラスを足した面積くらいある。大友の指摘通り、Aクラスだけで3クラス分の広さを徘徊するのだから、一般公開を想定すると、場合によっては倦厭 (けんえん)されるかもしれない。

 

「なるほど。チェックポイントを増やすことで達成感を増幅させるわけか」

「そういうことだ。ただ恐怖を味わうだけなら長い迷路でも作ればいいが、それですぐにリタイアされてはつまらんからな」

「おい大友! 勝手に決めんなよ!」

「そうだぞ! 俺たちは2年にお灸を据えなきゃなんねぇんだ!」

 

自分たちを無視して話を進める大友に、常夏コンビが文句を上げる。他の3年生もそれに同調するように声を上げた。

 

「はぁ……。まったく……。だからお前らはダメなんだ。短絡的な思考で大局を見誤れば、受験面接なんて到底無理だぞ」

「なんだとっ!?」

「いいか? 学園長はこの肝試しで学園のPR映像を撮ると言ったんだぞ」

「そんなの分かってるっての!」

「つまり学園は『召喚獣を使用した様々な行事を催している』とアピールしたいわけだ。しかし、試験召喚獣の醍醐味は何と言っても試験召喚戦争。恐怖で顔を引き攣らせる生徒の顔よりも、白熱した召喚獣での勝負映像が多いに越したことはないだろう?」

「それは……」

「まぁ……」

 

常夏コンビもこの指摘に渋々と頷く。

試験召喚システムは生徒の勉強に対するモチベーションアップのためのツールだが、それは文月学園の生徒や学園を受験する受験生の親御さん向けの話で、受験生にとっては『召喚獣を使ったイベント』の方が重要だ。学校説明会で流す映像の量や質が上がれば、自ずと受験生が増えるという寸法だ。

 

「それに一般公開するのなら、坂本たちが作ったチェックポイントのルールを応用しない手はないしな」

「つまりアンタは、一般公開時の客足と学園のPR映像の内容を加味して、チェックポイントを増やしたいと?」

「そういうことだ」

 

一般公開するなら、雄二たちが設けたチェックポイントに問題文と解答欄が記された用紙を置いておけば、肝試しと同時にクイズも楽しめ一石二鳥。問題によっては文月学園の学力レベルの高さもアピールできる。

見かけよらず考えているな、と明久は同じAクラスなのに常夏コンビとの差に内心舌を巻いた。

 

「嘘つけ! どうせお前が勝負したいだけだろ!」

「それもある」

 

見かけによるものだった。

 

「それで、どうする?」

「ふむ……。Aクラスにチェックポイントを2つ置くとして、Aクラス通過の条件はどうする?」

「2つのチェックポイントの通過。ただし誰が片方を通過した場合、次の組からそちらは通過扱いで免除とする」

「中ボス大ボスみたいな一本道方式か?」

「もしくはボス2体が通過用のカギをそれぞれ持っているイメージだ。どちらにするかはこちらで考えさせてもらう」

「追加する科目はどちらが選ぶ?」

「それについては英語がいいだろう。英語なら既に決まっている2科目同様センター試験でも受験でも選択されやすいし、文系理系で得手不得手も少ない」

 

雄二と秀隆の質問に、大友は理路整然と答えていく。あのルールを見ただけで瞬時に追加ルールを思いつくのだから、やはり実力は常夏コンビより上なのだろうか。

 

「どうする雄二?」

「どうするかな……。俺たちに断る理由はないしな」

「そうだな。……そちらが肝試しの準備を引き受けてくれるというなら、こっちも問題はない」

「無論、そのつもりだ。――お前らもそれでいいな?」

 

大友がドスの効いた声で3年生に聞く。大友のような大男に凄まれては、3年生は頷くしかない。

 

「大友テメェ……!」

「勝手に決めやがって……!」

「そうがなるな夏川、常村。お前らの個人的な勝負に水を差すつもりはない」

「本当だろうな?」

「当たり前だ。それに、俺は俺で勝負をしたいヤツがいるしな」

 

そういうと大友は一瞬だけ秀隆に視線を送った。

 

「それじゃ、今度こそ決まりだな」

「明日が楽しみだな。センパイ」

「クズどもが。年上の恐ろしさを思い知らせてやる」

「1年程度で恐ろしさもくそもあるかよ」

「絶対に吠え面かかせてやるからな」

 

始まる前から常夏コンビと最悪コンビの間でバチバチと火花が散っている。

 

「それじゃ話もまとまったところで、僕はこれだけ運んでおきますね」

 

と、明久が少々場違いな台詞を言う。3年生の乱入で忘れていたが、明久はロッカーを運ぶところだったのだ。準備は3年生に委託されたとは言え、任された仕事は終わらせておきたい。

 

「ん? このロッカーを運ぶのか?」

「はい。このロッカーはかなり重いので、僕の召喚獣で運ぼうかと」

「そんなことをする必要はないぞ」

「え?」

 

そう言うと、大友は床に置いていたロッカーの前に立つ。

 

「少し召喚獣でロッカーを浮かせてくれないか」

「あ、はい」

 

明久が大友の指示通りに召喚獣で床とロッカーの間に隙間を作ると――

 

「ふんっ!」

「「「……は?」」」

 

気合の籠もった掛け声とともに、大友がロッカーを持ち上げた。その規格外の光景に、2年生も3年生も呆気にとられた。

 

「すまんが誰か運ぶ場所を教えてくれ」

「……あ、はい! こっちです」

 

我に返った2年生の一人が慌てて大友に運び先まで案内する。大友はそのままノッシノッシロッカーを運んで行った。

 

「……なぁ、常夏センパイよ」

「……なんだよ?」

「3-Aはゴリラでも飼ってるのか?」

「……アイツが別格なだけだ」

 

まさか西村教諭並かそれ以上の化け物が生徒にいるなんて、明久たちは想像もできなかった。




ご感想などお待ちしております。

1話分の長さは?

  • 5000字程度(約5分)が良い
  • 10000字程度(約20分)は欲しい
  • 区切りが良ければ何文字でも構わない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。