バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

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今回は肝試し編Aクラス攻略。オリ主たちのAクラス突入前の会話回になります。

それぞれの思いを胸に、明久たちは最終ダンジョンへ挑む……


第百二問

第百二問

Cクラスをクリアした時とは一変、Fクラスに重苦しい雰囲気が満ちる。

常夏コンビの真の実力、大友の圧倒的パワー。思わぬ伏兵の島津も2年生に絶望を抱かせるには十分な効果を発揮していた。

 

「……雄二、勝ち目はアリそう?」

 

沈黙を破ったのは明久だった。重苦しい雰囲気に耐えられなかったのもあるが、少しでも現状を知っておきたかった。

 

「……正直に言えば、かなり厳しいな。高く見積もっても 4:6 ってところだな」

「五分五分ですらないのか……」

「翔子はともかく、俺の物理は精々150点程度だからな。召喚獣の操作も向こうの方が1年長くやってる分慣れているだろうしな」

 

3年生も頻度は今の2-F程ではないにしても、それなりに試召戦争はやっているはず。少なくとも、雄二や翔子よりは手慣れていると考えいた方が良い。そう考えると、雄二の予想は妥当な数値だと言える。

 

「それなら、他の人に少しでも消耗させてもらって」

「…………それも厳しい。残っているのは、今突入している組を除いたら後4組だけ」

「え? もうそんなに減ってたの?」

「Fクラスは坊主のゴスロリと着物先輩のお色気でほぼ全滅。他のクラスのヤツらも順当に肝試しでリタイアしていったからな」

「あ、そっか」

 

一部悍ましいトラップはあったとはいえ、3年生の肝試しのクオリティが想定以上に高かった。もっとも、仮にFクラスメンバーが想定通り残っていたとしてもチェックポイントをどれだけ削れたかは分からない。

 

「ということは、残っているのは雄二、霧島さんペアと秀隆、木下さんペアと」

「…………ちなみに、その内の一組は明久たち」

「え? 僕たち? あ、そっか。そういえば美波が気絶しだけで僕らは失格にはなっていなかったね」

 

幸か不幸か、美波が悲鳴を上げずに気絶したため、明久は失格にはなっていない。

 

「でも、悪いけど僕らじゃ戦力にはならないよ」

「アキはもちろん、ウチの成績もそんなに高くはないわ」

 

2人とも物理と化学の成績はFクラス並み。到底太刀打ちできる点数ではない。

 

「それは分かっている。だがな明久。お前は2つ勘違いをしている」

「勘違い? 2つ?」

「ああ。一つは、他にも失格になっていないヤツがいること」

「他にっていったい誰が」

 

明久が不思議に思って辺りを見渡す。雄二と翔子、秀隆と優子は除外するとしても、康太も秀吉もやられてしまった。美波も失格になっているものの、残念ながら戦力としては力不足。残るは――

 

「わ、私のことでしょうか……?」

「あ、そうか! 姫路さんか!」

「そうだ。姫路はここまで肝試しに参加していなかった。だから失格になっていない」

「なりようがない、と言った方が正確じゃの」

 

今まで肝試しに参加すらしていなかったのだから当然瑞希は生き残っている。

 

「でも雄二。姫路さんを参加させるのは少し酷じゃない? 美波は一応自分から参加するって言ったけど、それでも相当怯えてたし」

「う、ウチは、お、怯えてなんかないわよ!」

 

普段は勝ち気な美波ですら気絶するレベルだ。その美波と同等かそれ以上に怖がりな瑞希を参加さるのを、明久は忍びなく思った。

 

「あ、あの……。私、ああいうのは本当に苦手で……」

「あ、うん。そうだよね。姫路さん画面越しでも悲鳴上げてたし」

「だから、その……。明久君に、すごく迷惑をかけちゃうと思うんですけど……」

「いや、そんなに気にしないでも大丈夫だよ姫路さん。罰ゲームもたいしたこないんだし――」

「それでも良かったら……明久君と一緒に、参加したいです……」

「無理に参加する必要は――って、えぇっ!? 姫路さん、行ってくれるの!?」

 

てっきり不参加かと思っていた瑞希がまさかの参加を決意。これには明久だけでなく雄二たちも驚いた。

 

「あ、はい。明久君の迷惑にならないなら……。それに……」

「それに?」

 

瑞希は祈るように胸の前でギュッと手を握る。

 

「私、悔しいんです」

「悔しい?」

 

瑞希が珍しく唇を噛み締める。

 

「美波ちゃんもマクスウェル君も、他のクラスの皆さんも、怖いのに、勇気を出して肝試しに参加しているのに……。私だけ安全なところでただ流れてくる映像を見ているだけなのが、情けなくて、悔しくて……」

「瑞希……」

「姫路さん……。でも、それは姫路さんがお化けが苦手だからで」

「苦手だからと言って何もしなければ、前に進めません。明久君たちだって、苦手なお勉強を頑張って成績を伸ばしたじゃないですか」

「それは、そうだけど……」

 

瑞希の目には、恐怖と決意が混在している。

 

「……本当のことを言えば、今、私は逃げ出したいくらい怖いです」

「瑞希……」

「でも、ここで一歩踏み出さないと、私は変われません。病室のベッドから窓の外を見ていただけの、小学生の私から」

 

聞けば瑞希は小学生の頃は病気がちで、よく入退院を繰り返していたそうだ。そのせいもあって当日は今にも増して引っ込み思案で、友だちと呼べるひとはほとんどいなかった。

病院の窓から顔をのぞかせてきた少年を除いて。

 

「だから、私も勇気を出さないといけないんです。変わるためにも、皆さんの頑張りを無駄にしないためにも」

「姫路さん……」

 

過去は消えない。病院の窓から外の世界に憧れを抱くだけの幼い少女は自分の中から消えはしない。

だからと言って、それを理由にしたくない。塞ぎ込んだままの少女はここまで成長したのだ。先に進むためにも、今は一歩前に踏み出さなければならない。あの時の少女に胸を張れるように。

 

「だから明久君。なけなしの勇気しか持っていない私ですけど……一緒に行ってくれますか?」

「もちろんだよ! むしろ大歓迎だよ!」

「あ、明久君っ!?」

 

明久は飛び上がらんばかりに喜んで瑞希の手を取る。明久は戦力云々を抜きにして、純粋に嬉しく思っていた。折角のイベントを『ただ画面を見て怖がっているだけ』で終わらせるのがもったいないとも思っていた。大事なのは勝敗云々ではなく、参加して終わった後に『怖かったね』と笑い合えること。思い出の1ページに残してくれることだ。その助けができることを、明久は心から喜んだ。

それに、あれだけ怖がっていた瑞希が、皆のためにと勇気を振り絞ってくれたのだ。瑞希はなけなしのと謙遜したが、本人からしたら大きな決断に違いない。そのことを伝えてくれたのが、何よりも嬉しかった。

一方、いきなり手を握られた瑞希の顔がトマトのように真っ赤になるが、明久に気づいた様子はない。

 

「そ、そのご迷惑をおかけするかもしれませんが……」

「迷惑なもんか! そうだよね皆?」

「そうじゃな。姫路がいれば、アヤツらにも対抗できよう」

「…………百人力」

 

当然、瑞希の参加に反対するものはいない。皆も瑞希と一緒に思い出を作れることができて喜んでいる。

 

「あと個人的な理由なんですが」

「なに?」

「……あの先輩たちに負けるのが、なんとなく嫌で……」

「あ、大丈夫。それも皆同じだから」

 

明久の言葉に全員が頷く。やはり皆常夏コンビに負けるのは納得がいかないようだ。

 

「そうか。姫路もやっとその気になったか。ま、当然だよな。あの島田と明久を見て何もしないようじゃ、姫路に勝ち目はないからな」

「さ、坂本君!? それ以上言ったら怒りますからねっ!?」

「へいへい、了解。黙りますよっと」

 

瑞希の真の目的に気づいていた雄二がニヤニヤ笑いながら口を滑らすが、瑞希に睨まれて(反省する様子もなく)口を噤んだ。

 

「瑞希」

 

美波が思い詰めたような顔で瑞希を見つめる。

 

「美波ちゃん……。ごめんなさい。折角明久君とペアになれたのに」

「ううん。いいのよ。どうせウチじゃ先輩たちには勝てなかっただろうし」

「美波ちゃん……」

「だから」

 

美波がギュッと瑞希を抱き寄せる。

 

「美波ちゃっ」

「だから、ウチの分もお願い。ウチのなけなしの勇気もあげるから、ウチの分まであの坊主先輩たちをボコボコにして」

「美波ちゃん……。分かりました。美波ちゃんの分まで、私頑張ります!」

「ありがとう、瑞希」

 

美波は瑞希の背中をポンポンと軽く叩くと瑞希から身体を離した。

 

「その、変わりないと言っちゃなんだけど……」

「? 何ですか?」

「う、ウチがアキにお姫様だっこやおんぶしてもらったことは許してほしいなって」

「それとこれとは話が別です」

「う……」

「ふふっ。冗談です」

「――もう! 瑞希ったら!」

 

Fクラスに束の間穏やかな空気が流れる。

 

「して、雄二よ。お主が言った明久のもう一つの勘違いは何じゃ?」

「あ、そう言えば」

 

雄二は明久は2つ勘違いしていると言った。一つが瑞希の参加なら、もう一つはいったい何か。

 

「ああ、それか。それはな――俺の言った勝率は『ある前提』で成り立ってるってことだ」

「ある前提?」

 

雄二は明久の質問に答える変わりに親指をクイッと傾ける。その先には、瞑想するように腕を組んで目を瞑る銀髪のクラスメイト。

 

「コイツが大友に勝つことだ」

 

雄二は2年生の勝利には秀隆が大友に勝つことが大前提だと言う。

 

「常夏コンビ、或いは大友だけだったら今の戦力でもどうにかなったかもしれねぇ」

「しかし、ワシらはその両方を相手取らねばならぬ」

「そうだ。だから必然的にこちらの戦力も分散させられる」

 

今までのチェックポイントは1クラスに1つだったので、集中すれば突破可能だった。しかしAクラスには2つ。その両方をクリアしないと突破にはならない。

 

「俺と翔子。明久と姫路。どちらの組も無傷でのチェックポイント突破は不可能だろう」

「そうだね。悔しいけど、相手も400点超えだもんね」

「…………激戦は必須」

「だから俺たちが常夏コンビに集中するためにも、秀隆には大友を倒してもらう必要がある」

 

雄二たちの視線が秀隆に集中する。

 

「……正直、単純な点数だけなら、大友に負ける気はない」

 

秀隆の化学は康太の保健体育に次ぐFクラスの主戦力で学年トップクラス。例え相手が翔子だろうが大友だろうが負ける気はない。

 

「だが、試召戦争となると話は別だ。不確定要素もあるしな」

「でも今回は実質タイマンみたいなものだから大丈夫なんじゃ」

「あるだろ。点数で負けていても逆転できる切り札が」

「切り札?」

「400点を超えた召喚獣に与えられる、特殊能力の腕輪だよ」

 

各科目で400点以上を達成した生徒の召喚獣には、点数を消費して発動する特殊能力を持った腕輪が与えられる。明久もこれまで康太の加速、瑞希の熱線、秀隆の浮遊盾、優子の神槍を見てきた。どれもこれも一つあれば戦況をひっくり返せるものばかりだ。

 

「今回は召喚獣の勝手が違うとは言え、400点を超えていたらなんならかの能力が与えられているはずだ」

「ムッツリーニの召喚獣も、狼に変身して攻撃しておったからの」

「けど大友先輩の召喚獣に変化は見られなかったようだけど?」

「発動する気がなかったか、そもそも発動するタイプじゃなかったのかもな。召喚獣の仕様が違うから常時発動型能力の可能性も十分にある」

 

今回の召喚獣は肝試し仕様で古今東西の魑魅魍魎になっており、能力もモチーフとなった妖怪や怪物由来だろうと秀隆は予測した。吸血鬼が攻撃の際に狼になったのも、『吸血鬼は狼や蝙蝠に変身する』という伝承が由来だろうと。

 

「じゃぁ大友先輩の召喚獣は、能力でもっと強化されているかもしれないってこと?」

「いくら点数差があるとは言えトレイズの召喚獣を真っ二つにしたからな。点数以上のパワーはあることは確かだろうな」

「となると、一撃でもまともに受けたら致命傷、か」

「そういうことだ」

 

あのパワーが元々の力プラス能力によるものだとしたら、まともに攻撃を受けたらひとたまりもない。

 

「だが、だからと言って、俺が諦める理由にはならん」

「秀隆」

「勝つしかないんだ……託されちまったからな」

 

トレイズはAクラスを出る時大友に向かって『勝つのは俺たちだ』と宣言した。秀隆や明久がAクラスを突破することを信じて。

 

「勝てるのか?」

「負けられない理由ができた。だから勝つ。それだけだ」

 

淡々と、噛み締めるように秀隆は言う。

勝てる見込みがないわけではない。だが負ける可能性も否定はできない。後は、覚悟の問題だ。

 

「そうか。なら勝て」

「応さ。そっちこそ、常夏コンビなんかに足元をすくわれるなよ?」

「誰にものを言っている?」

 

秀隆と雄二は拳を突き合わす。

負けても良いと思っていた賭けが、負けたくないものに変わった。意地でもプライドでもない。ただ負けたくない。そのために勝つ。どんな手を使ってでも。

 

『ねぇ』

『ちょっといいか?』

 

と、明久たちに恐る恐る声をかける2人の男女。

 

「君たちは?」

「…………さっき言った、残り4組のウチの最後のペア」

Aクラス(私たち)のクラスメイトよ」

 

参加者リストを見返していた康太の台詞に、Aクラスの2人は頷いた。

 

「あ、そうなんだ。どうしたの?」

『いや、その』

『一言謝りたくて』

「謝る?」

 

2人は明久に謝りに来たと言う。しかし、明久には謝られる節が思い当たらない。

 

『俺たちじゃ力になれなさそうだから』

「そんな。2人ともAクラスなんでしょ? 戦力としては十分心強いよ」

『私たち、物理も化学もAクラスの平均点しかなくて』

「いやいや、Aクラスの平均点って200点弱くらいでしょ?」

「ワシらよりも遥かに上じゃな」

「…………比べるまでもない」

 

1人でFクラス3人分以上の点数。戦力としては申し分ない。

 

『でも、あの先輩たちには敵わないわ』

「それは……」

『悔しいけど、俺たちじゃきっとまともに戦うこともできない』

 

女子生徒は目をふせ、男子生徒は歯噛みした。相手はAクラスの中でも理系トップレベル。凡庸な自分たちでは太刀打ちできないという現実を、否が応でも突きつけられた。

 

『だから、虫のいい話だと思うけど』

『私たちの分も頑張って欲しいの』

「2人とも……」

 

だから託すしかない。賭けているとはいえ負けても大きなペナルティのない勝負。それでも、やはり負けたくないという気持ちは同じなのだ。

 

「いや、お前ら2人には重要な役割がある」

『『え?』』

 

秀隆は意気消沈する2人に、やってもらいたいことがあると言った。

 

『いったい何を?』

「俺たちの変わりにAクラスをクリアして(ゴールテープを切って)もらう」

『む、無理よ! 言ったでしょっ。私たちの成績じゃ先輩たちには』

「勝負してもらいたいわけじゃねぇよ。お前らは『保険』だ」

『保険?』

 

2人は意味が分からないという顔をする。いったい何の保険なのかと。

 

「俺たちは勝負に勝つ。勝ってチェックポイントをクリアする。けど万が一、全員が相打ちして全滅、または誰か1人になる可能性はある。」

『それは、たしかに……?』

「そうなった場合、ルール上俺たちじゃチェックポイントの通過は不可能になる」

 

今や2年生は文字通りの総力戦。加えてチェックポイントの通過条件は()()()2()()()()()()()()()こと。たとえチェックポイント勝負に勝ったとしても、1組でもペアが残っていなければ意味がない。

 

「その時に、変わりにAクラスの肝試しを突破するペアが必要だ」

『それが、俺たち?』

「そうだ」

『でもまた勝負をすることになるんじゃ?』

「いや、今回はそうはならない。なぜなら今回は一度クリアしたクラスの肝試しからスタートすることも認めているからだ。もちろん、その時はチェックポイントはスルーできる」

「つまり、お前たちが無人のチェックポイントを通過しても問題ないってわけだ」

『それなら、まぁ』

 

元々純粋に肝試しのみを楽しみたい生徒向けに設けた措置だったが、思わぬ形で役に立ちそうだ。

 

「ただきっちり肝試しはクリアしてもらうことになる。そこは大丈夫か?」

『大丈夫。……少し怖いけど』

『君たちの苦労に比べたらどうってことないさ』

 

肝試し自体と怖いことは怖い。それでも何もできなりよりはずっといい。

 

「そっか。ありがとな」

 

そう言うと、秀隆はポケットから2枚のチケットを取り出す。

 

「んじゃこれ。前払いってことで」

『これは?』

フランドール(俺のバイト先)のコーヒーチケット。コーヒー系なら何でも一杯無料で飲めるやつ」

『あ、私このお店知ってる。前にお母さんがコーヒーとチーズケーキが美味しって言ってた』

「そいつはどうも」

『へぇ。喫茶店って『ラ・ボエーム』くらいしか知らなかったな』

「学園の生徒にはそっちの方が人気だからな」

 

『ラ・ボエーム』はクレープやケーキが人気で甘い物好きの学生から人気が高い。一方『フランドール』はクラシックな雰囲気で社会人からの人気が高い。

 

『でも、本当に貰っても大丈夫?』

『俺たち、結果的に何もしないわけだし』

「いいから、いいから。成り行きとはいえ俺たちが皆を巻き込んだ形だからな。これくらいさせてくれ」

 

秀隆は半ば強引に2人にチケットを握らせる。2人は戸惑いながらも、ありがたく受け取った。

 

『ありがとう』

『絶対に勝ってくれよな』

「おう。まかせとけ」

 

ニヤリと笑う秀隆。

そんな秀隆たち様子を、優子は一歩離れたところから眺めていた。

 

「……優子?」

「……」

「……優子」

「――え? あ、ごめんなさい代表。どうかした?」

「……優子、さっきから少し変」

「変? 私が?」

「……うん。神崎の方をじっと見ていた」

「あー……。まぁ、そうね」

「……何だか嬉しそうだった」

「えっ!?」

 

翔子に指摘されて、優子は慌てて頬をムニムニと揉みほぐす。どうやら無意識に口角が上がっていたようだ。

 

「……優子も嬉しいの?」

「え?」

「……神崎と肝試しができて」

 

翔子は優子が秀隆と肝試しに参加できることを喜んでいると思ったようだ。

 

「あ、うん。そうね。楽しみだわ。なんせ、アイツと肝試しなんて小学生振りだもの」

「……如月ハイランドに行ったよ?」

「え? あ、そうだった、わね」

 

動揺したのか、優子が珍しくどもる。翔子はいつもの照れ隠しだろうと予測した。

 

「……優子」

「なに?」

「……頑張ろう」

「ええ」

「……夫を支えるのは妻の支えだから」

「……私たちまだ結婚できない年齢なんだけど……」

「……大丈夫。愛があれば法律は関係ない」

「せめて高校卒業まで待ってあげて。坂本君のためにも」

 

時々おかしくなる学年首席に、優子はこめかみをを押さえることになった。

 

「んじゃ、先ず秀隆と木下姉が突入。時間を置いて明久と姫路。俺と翔子の順で突入していくぞ」

「その順番なら、確実に目当ての相手と戦えるね」

「お前らは雄二たちが突入してしばらくしてから突入してくれ。たぶん迷路をぐるぐる回されると思う」

「できればそれまでにチェックポイントクリアの目処は立てて置きたいわね」

「そこは私たちの頑張り次第というわけですね」

「……頑張る」

 

突入順も決まり、先ずは秀隆と優子がAクラスに向かう。

 

「んじゃ、行ってくる」

「気をつけてね」

「優子ちゃん、頑張ってくださいっ」

「ええ。全力を尽くすわ」

 

次鋒の明久と瑞希に見送られ、秀隆と優子はAクラスに突入した。

 

「じゃぁ姫路さん。僕らも行こうか?」

「は、はいっ。よろしくお願いしますっ」

 

 

肝試しの恐怖からか、はたまた明久と一緒にいるからか、瑞希は少し緊張した面持ちで教室を出た。

 

「さてと。そんじゃ、俺たちも行く準備をするか」

「……雄二。怖かったら私に抱きついてもいい」

「断る。そしてお前は怖くても1人でなんとかしろ」

「……それは無理。私は怖い物がすごくが苦手だから、ずっと雄二にくっついている」

「今度、俺を攻撃している時のお前の顔を見せてやる。大友の召喚獣以上の恐ろしい鬼が見られるぞ」

「……きゃぁ、こわい」

「ぅぐぉおっ!? か、関節が!?」

「……コホン、コホン。きゃあ、キャア……? いやぁ……?」

「お前今悲鳴の練習してるだろ!? くそっ! 俺は絶対に騙されなぎゃぁああっ!」

「……そっか。ぎゃぁああっ、と……」

 

雄二は何故か翔子に関節技をきめられたまま教室を出ていった。

 

「雄二と霧島は相変わらずじゃの」

「関節技で悲鳴を投げなければいいんだけど」

「…………ある意味一番心配」

 

一抹の不安を抱えながらも、秀吉たちはAクラスに突入する3組を見守っていた。

 

 




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