第十一問
Bクラス戦から二日間の補給テストを終え、いよいよAクラスと雌雄を決する日が来た。
「先ずは皆に礼が言いたい。不可能だと周りから言われていたにも拘らずここまで来れたのは、他でもない皆の協力があってのことだ。感謝している」
そう言って壇上で頭を下げる雄二。プライドの高い彼からは想像できない光景だ。現に、1年の時から付き合いのある明久達は一様に驚いていた。
「ゆ、雄二どうしたの? らしくないよ」
「ああ。自分でもそう思う。だがこれは、偽らざる俺の気持ちだ」
「まあそう言いたくなるのも無理ないわな。E、Dクラスならまだしも、Bクラス、更には盤外戦とはいえCクラスも倒しちまったからな」
一つ、二つランクが上のクラスなら戦略、戦況次第で勝つことはできる。だがBクラスとなると単純な戦力に差が開きすぎているので、普通なら勝利するのはかなり難しい。実際、Dクラス戦の時ですら教師を含めFクラスの勝利を予想するものはほぼ居なかった。雄二が皆に感謝したくなるもの理解に苦しくなった。
「ここまで来た以上、絶対にAクラスにも勝ちたい……勉強が全てではないと、教師やAクラスの奴らに思い知らせてやるんだ!!」
『おおーーー!!』
『そうだーーー!!』
『勉強だけじゃねえんだーーー!!』
雄二の熱演に、Fクラス生徒も大声で応えた。『勉強が全てではない』これは雄二が示したかった悲願でもある。何としても、Aクラスには勝ちたかった。
「皆ありがとう。そして残るAクラス戦だが、これは一騎打ちで決着をつけたいと思う」
Bクラス戦の前に明久達に告げられた最終作戦が他のクラスメイトにもここで発表された。
『どういうことだ?』
『誰と誰が一騎打ちすんの?』
『それで本当に勝てんのか?』
案の定、教室の彼方此方から雄二の作戦を疑問視する声が上がる。
「落ち着いてくれ。それを今から説明する」
雄二は机をバンバンと叩き、一度皆を落ち着かせた。
「やるのは当然俺と翔子だ」
試召戦争なので代表同士で決着をつけるのは当然の流れである。だが相手はAクラス代表、つまりは学年主席である。いくら奸計を巡らせるのが得意な雄二とはいえ、まともに一騎打ちをして勝てる相手ではない。
「バカの雄二が霧島さんに勝てるわけがな――」
――シュッ、ドス――
明久の頬を、雄二が投げたカッターナイフが掠めた。明久は「いくら雄二でも友達を本気で殺そうなんて……」と思い雄二を窺うが、
「次は耳だ」
次弾を構える雄二がいた。どうやら明久は友達とは思われていないらしい。
「だが明久の言う通りだろう? お前が霧島に挑むのは、蟻んこが単身でアフリカゾウに挑むようなもんだ」
「確かに。明久と秀隆の言う通り、翔子は強い。正面からまともにやり合っていては、勝ち目はないだろう」
あっさりと打ち明ける雄二。だが、この様な状況は今回が初めてではない。
「だがそれはD、Bクラス戦も同じだったろう? まともにやり合えば俺達に勝利はなかった」
ここまでFクラスは2戦2勝。皆の心には、その自信と誇りが刻まれていた。
「今回だって同じだ。俺は翔子に勝ち、FクラスはAクラスを手に入れる。俺達の勝ちは揺るがない」
そして何より、Fクラス代表には絶対の自信があった。
「俺を信じてくれ。かつて『神童』とまで言われた力を、今皆に見せてやる」
全員が静かに頷く。これまでの戦いで、雄二への信頼は揺るぎないものまでになったいた。
「具体的なやり方だが、一騎打ちではフィールドを限定するつもりだ」
「フィールド? 何の教科でやるつもりじゃ?」
雄二はフィールドを従来のように入れ替え自由ではなく、単一教科に限定して戦うつもりのようだ。
「日本史だ。ただし内容は限定する。レベルは小学生程度。方式は百点満点の上限有り。召喚獣勝負ではなく純粋な点数勝負とする」
しかも教科だけでなく方式も限定するときた。しかも百点満点のテスト勝負。これは誰がどう見ても『真っ向からの真剣勝負』である。
「でも同点だったらきっと延長戦だよ? そうなるとブランクのある雄二には厳しくない?」
「それ以前に雄二が百点取れるかどうかが不安だがな」
明久と秀隆の指摘通り、この勝負は百点、最低でも九十点代後半の点数を取ることが要求される。いくら神童とはいえそれはもう過去の栄光。数年のブランクがる雄二にはかなり不利な勝負と言える。
「おいおい。俺をあまり舐めるなよ? いくらなんでも、そこまで運に頼り切ったやり方を作戦と言うものか。あと例えブランクがあったとしても小学生の問題にそう手こずりはしねえよ」
雄二はこの作戦にかなりの自信があるようだ。
「それなら、霧島さんの集中を乱す方法を知ってる、とか?」
「それか日本史が比較的苦手な教科とかだな」
「いいや。アイツなら集中なんてしなくても、小学生レベルのテストなら何の問題もないだろう。それにアイツに苦手な教科はない。どの教科も同じくらいの点だ」
秀隆と明久の予想を、雄二は否定した。
「俺がこの作戦を取った理由は一つ『ある問題』が出ればアイツは確実に間違えるからだ」
「あの霧島にそんな問題が?」
学年主席が必ず間違える問題。それは――
「その問題は……『大化の改新』」
大化の改新とは、飛鳥時代は孝徳天皇の時代、西暦645年(大化元年)に起きた政治的改革である。中大兄皇子と中臣鎌足(後の藤原鎌足)が蘇我氏本宗家を討ち滅ぼした『乙巳の変(おっしのへん)』から始まり、翌年西暦646年(大化二年)に改新の詔が出された。これが大化の改新である。
「誰が何をしたのか説明しろとか? そんな問題小学校でやったっけ?」
流石に孝徳天皇や乙巳の変を小学生が覚えるのは酷だろう。
「いや、そんな掘り下げた問題じゃない。もっと単純な問いだ」
「なら、何年に起きたとか、かの?」
「ビンゴだ秀吉。その年号を解く問題が出たら俺達の勝ちだ」
確かに、大化の改新の年号は乙巳の変を入れるか否かで年号が違ってくる。霧島がどちらで覚えているか、解答例がどちらを取っているか。カギはそこだろう。
「因みに、大化の改新が起きたのは西暦645年。こんな問題は明久でも間違えない」
「……」
雄二の言葉に目を逸らす明久。間違えて覚えていたに違いなかった。
「だが、翔子は確実に間違える。そうすれば、俺達は晴れてシステムデスクを手に入れることができる」
雄二の顔は自信に満ち溢れていた。
「あのう……少しいいですか?」
とここでリリアがおずおずと手を挙げた。
「何だ? リリア」
「坂本君と霧島さんって、どんな関係なんですか?」
「あ、私も気になってました」
「そうよね。さっきから霧島さんのことを『翔子』って呼んでたりするし」
この疑問はクラス全員の疑問だった。同学年の誰もが近寄りがたい学年主席の霧島を『アイツ』や『翔子』と呼んでいることから、親しい間柄のようだ。
「ああ。アイツとは『幼馴染み』だ」
「総員狙えーーー!!!」
『『『うおおおお!!!』』』
雄二が『幼馴染み』と告白した直後、明久の号令でFクラス男子生徒(秀吉を除く)が一斉に上履きの投擲態勢に入った。
「待て! 何故明久の号令で戦闘態勢に入る!? それに秀隆は既に知っていたことだろうが!」
「まあノリで」
秀隆は軽いノリで返した。しかも秀隆が構えていたのは上履きではなく木製のトマホーク(投擲斧)だった。一体幾つ武器を持っているのやら。
「黙れ男の敵! Aクラスの前に貴様を血祭りにあげてくれる!」
「俺が一体何をした!?」
先程の信頼はどこへやら。一転してFクラスは内乱寸前の状態になった。そして明久の台詞だと明久は同性愛者になるのだが、カオスな状況に唖然としていて誰もツッコまなかった。
「遺言はそれだけか? 待つんだ須川君、靴下はまだ早い。それは奴に洗い浚い吐かせてから口の中に押し込むものだ」
「了解です隊長!」
ビシッと敬礼する須川。と言うか明久はいつの間に、何の隊長に任命されたのだろう。
「あの、吉井君」
「ん? 何? 姫路さん」
瑞希が明久に話しかけ、明久は正気を取り戻した。
「吉井君は……その……霧島さんみたいな人が好みなんですか?」
「え? そりゃまあ、美人だし……」
「「……」」
瑞希と美波は明久の言葉に意気消沈すると、徐に秀隆のカバンを漁りだした。
「え? 待って! 何で二人とも泣きながら武器を構えているの!?」
瑞希と美波の2人は、秀隆のカバンから其々包丁とメリケンサックを取り出すと、明久に向かって泣きながら構えた。しかも瞳からは光が消え失せていた。まさしく『貴方を殺して私も死ぬ』状態だった。
「あー、姫路。悪いけどそれ今日帰りに刃物屋に行って砥いてもらう予定なんだ。だから上手く刺せないぞ?」
「……大丈夫です」
「……そうね。瑞希が刺した後ウチが押し込めばいいんだし」
「待って!? 全然大丈夫じゃないよ! 秀隆も傍観してないで助けてよ!」
恋は盲目とはよく言ったものであるが、この2人の場合は行き過ぎてヤンデレ化してしまっているが。Fクラスは更に一層カオスになってしまった。
「落ち着くのじゃ、皆の衆」
秀吉が手を叩いて皆を落ち着かせた。
「む、秀吉は雄二が憎くないの?」
「冷静になって考えてみるが良い。相手はあの霧島翔子じゃぞ? 男である雄二よりも、寧ろ興味があるとすれば……」
「……そうだね」
心配そうに瑞希を見る明久と秀吉。それにつられて皆の視線が瑞希に集まった。
「な、何ですか? もしかして私何かしましたか?」
「いや、したと言うか、しかけてはいたな」
何故皆に見詰められているのか分からずに困惑する瑞希。実は、霧島には同性愛の噂が流れていた。一年の時から上級生を含め多くの男子が霧島に告白しては玉砕してきた。それだけならまだよくある話だが、その断った理由が、『……男子に興味がない』だったのだ。だから、霧島が同性愛者であるのでは、という噂が立った。
そして、その『霧島翔子の意中の相手候補』の筆頭が瑞希だった。もっとも、その噂自体が一部の生徒たちの間でまことしやかに囁かれていたものだったので、不幸中の幸いにも、その噂が瑞希の耳に入ることはなかった。
「とにかくだ、俺と翔子は幼馴染みで、小さい頃に間違えて嘘を教えていたんだ。翔子は一度覚えた事は決して忘れない。だから今学年トップの座にいる。俺はそれを利用してアイツに勝つ。そうすれば俺達の机は――」
『システムデスクだ!!』
――Aクラス前――
所変わってAクラス前の廊下。雄二を始めとするFクラス首脳陣全員でAクラスに戦争の交渉に来ていた。最初秀隆は渋ったのだが、秀吉の助言で渋々ながらついて来た。今は皆の後ろに隠れるようにして様子を窺っている。
「一騎打ち?」
「ああ。Fクラスは試召戦争として、Aクラス代表に一騎打ちを申し込む」
「いったい何が狙いなの?」
交渉に出たAクラスの女子生徒、秀吉と瓜二つの顔を持つ彼の双子の姉、木下優子が怪訝そうな顔をした。
「勿論。俺達Fクラスの勝利だ」
増々警戒色を強める優子。それもそのはず、団体戦ならまだしも、代表との一騎打ちでFクラスに勝ち目があるとは到底思えない。雄二の作戦を知らない優子はそう考えていた。
「ま、面倒な試召戦争を手軽にしてくれるのは有難いけど、|Aクラス≪ウチ≫が態々そんなリスクを冒す必要もないわね」
「賢明だな」
優子の言う通り、一騎打ちは時間も手間も取らず直ぐに決着がつく。ただし、Aクラス側にも万が、いや億が一の可能性がないとも言い切れなかった。慎重になるのは当然の判断だ。
「ところで、Cクラスとの試召戦争はどうだった?」
「Cクラス? 特に問題もなかったけど? Cクラスのほぼ全員が私に敵意むき出しだったこと以外」
「そうか。それは災難だったな」
Cクラスが敵視していたのは、正確には優子を演じた秀吉なのだが、優子がそれを知っているわけもなかった。
「話は変わるが、Bクラスとやり合う気はあるか?」
「Bクラスって、昨日来ていた『あの』?」
そう。女装した根本がいるクラスだ。余程酷い光景だったのだろう。優子の顔は青ざめていた。
「ああ。アレが代表をやっているクラスだ。まだ宣戦布告はされていないようだが、さてどうなることやら……」
ニヤリと厭らしい笑いをする雄二。まるで獲物を狙う蛇のようだ。
「でも、BクラスはFクラスに負けたから三ヶ月経たないと試召戦争は起こせないはずよね?」
試召戦争のルールに『戦争に負けたクラスは三ヶ月の準備期間を経ないと宣戦布告出来ない』というのがある。これは負けたクラスが直ぐに再戦申し込んで戦争が泥沼化すつるのを防ぐ為である。
「いいや。実際はどうあれ、Bクラスとは『和平交渉にて終結』となっている。規約に何の問題もない。当然、Bクラスだけでなく、Dクラスもな……」
「……それって、脅迫?」
「人聞きの悪いことを言うな。これはただの『お願い』だよ」
今この場に居る全員は、雄二が根本以上の悪者に見えた。
「いいわ。受けてあげる」
「え? 本当?」
「ええ。だって……あんな格好をした代表がいるクラスと戦争するなんて嫌だもの」
両腕を抱いて震える優子。相当トラウマになっているようだ。
「ただし、こっちからも提案させてもらうわ。勝負は代表だ同士だけじゃなくて五対五。五人選抜の一騎打ち五回戦でどう?」
「なるほど。こっちから姫路や秀隆が出てくる可能性を警戒しているのか?」
「秀隆? ああ。そこでコソコソ盗み聞きしている『ゴミ』のこと?」
「姉上!」
秀隆を『ゴミ』と称する優子。その優等生らしからぬ物言いに、雄二達は一瞬呆気にとられ、秀吉は抗議の声を上げた。
「気にすんな秀吉。なにもお前が貶されたわけじゃないだろう?」
「しかし……」
まだ何か言いたげな秀吉を、秀隆は軽く宥めて制した。
「ふん。まあアンナ奴はどうでもいいけど、姫路さんの調子が良くて代表が悪いってことになったら万が一もあるかもしれないし」
「それなら安心してくれ。こっちからは俺が出る」
「それは信用できないわよ。だってこれは戦争だもの。特に、裏でコソコソと嗅ぎまわるのが大好きな『溝鼠』のいるクラスだと」
「姉上! いくら姉上でも、これ以上は許さんぞ!」
激昂し優子に殴りかかろうとする秀吉。だが、その秀吉を止めたのは、他ならぬ秀隆だった。
「よせと言ってるだろ。お前が優子を殴って何になる」
「じゃが!」
秀隆が説得しても、秀吉は中々拳を降ろそうとしなかった。見慣れない光景に、Fクラスの一同は目を見張るしかなかった。
「……そこまで」
「代表」
「翔子」
そこに現れたのは、何とAクラス代表の霧島翔子だった。霧島は優子の隣に立つと、
「……あんなことを言うなんて優子らしくない」
「……ごめんなさい」
と優子を諌めた。代表に諌められて冷静になったのか、優子はそのまま一歩後ろに下がった。
「……雄二達の提案。受けてもいい。その代わり、試合形式は優子の言った一騎打ちの五回戦」
「いや。どうせなら七回戦にしてくれないか?」
雄二は戦いの回数を増やすことでFクラスの勝率上げようと試みた。
「……別にいい」
「そうか。序でに勝負の内容もこちらで決めさせてもらえると嬉しいんだが」
「……それは流石にダメ。けど……半分の四つまでならいい」
「まあ。妥当なところか。分かった。いいだろう」
これで一騎打ちの大まかな形式が決まった。問題は、誰を選抜するかだが。
「……最後に1つだけ」
「何だ?」
「……負けた方は勝った方の言うことを一つ何でも聞く。この条件を受けてくれたら雄二の提案を受けてあげる」
「なっ!?」
霧島は、最後にとんでもない条件を切り出してきた。
「……いいだろう」
「ちょっと雄二! まだ姫路さんが了承してない!」
「心配すんな。姫路には迷惑はかけねえよ」
雄二の自信は、ここにきても揺るがなかった。
「……試合は何時からにする?」
「そうだな……10時からでいいか?」
「……分かった。それじゃ……」
霧島はそう切り上げると、教室に戻った。雄二達も準備の為にFクラスに戻ろうとしたが――
「ちょっと待ちなさい」
優子が呼び止めた。
「どうした? 木下姉。まだ何か用か?」
「用があるのは貴方じゃないわ。そこのクズよ」
優子の秀隆に対する罵倒の言葉は一体いくつあるのだろうか。
「ん? Aクラスの木下女史から直々のご指名とは光栄だな」
「ふざけないで。白々しい」
優子は苛立ちを隠そうともしなかった
「へいへい。んで、要件は何だ?」
「さっき代表が言ってた条件。アンタも受けなさい」
優子は秀隆にも賭けをしろと言ってきた。
「はあ? 何を言うかと思えば。優等生らしからぬ発言ですなあ、木下優子嬢」
「いいから。受けるの? 受けないの?」
「はっ。もう交渉は成立してるんだ。今更そんな賭けに乗る義理はないな」
と言って、秀隆はその場を立ち去ろうとしたが、
「……そう。『また』逃げるのね」
「……あ?」
優子の一言で足を止めた。
「今、何つった?」
「逃げるのねって言ったのよ。まあ、アンタにはそれがお似合いね」
「んだと?」
「負けると分かったらすぐ逃げる。だからアンタは弱いのよ!」
「テメエ!」
「まずい! 明久、秀隆を止めるぞ!」
「わ、分かった!」
優子に殴りかかりそうになった秀隆を、明久と雄二は二人係で取り押さえた。
「離せ!」
「止せ秀隆! さっき秀吉に殴っても意味ないって言ったのはお前だろうが!」
「そうだよ! 落ち着いて! こんなの、秀隆らしくないよ!」
「……ちっ!」
二人に諌められて、秀隆は漸く大人しくなった。
「情けない。だから観察処分者なんかに落ちぶれるのよ」
「……テメエには関係ねえだろ」
「……そうね。アンタはそういう奴だったわね」
互いに睨み合う秀隆と優子。まさに一触即発といった状況だ。
「……いいぜ。テメエの賭け、乗ってやるよ」
秀隆は唸るように宣言した。
「あら? いいの? どうせ結果は見えてるのに」
「ぬかせ。テメエの泣き顔をAクラスの連中に見せつけてやるよ」
「精々楽しみにしてるわ」
優子は髪を掻き上げると踵を返し教室に戻った。
「……悪いな。迷惑かけた」
「いや、それはいいが。お前、木下姉と何かあったのか?」
「……昔、ちょっとな……」
秀隆には珍しく歯切れの悪い答えだった。それほどいやな、辛い記憶なのだろう。
「秀吉は何か知ってるのか?」
「すまぬ。わしの口からは何も言えぬ」
「そうか。お前らが言いたくないなら無理に聞きはしない」
「すまん」
頭を下げる秀隆。そんな彼を、仲間達は誰も責めはしなかった。
「気にするな。勝負に勝ってくれればそれでいい」
「そうだよ。これからが本番なんだから!」
「……必勝」
「頑張りましょう!」
「ウチらもいるしね!」
「エイエイオー、です!」
「秀隆。必ず勝つのじゃぞ!」
「お前ら……ああ! 絶対勝つぞ!」
FクラスとAクラス。互いの信念を賭け、今激突する。
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1話分の長さは?
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