過去の遺恨を乗り越えた優子と秀隆の進展は……
第百七問
「ウハハハッ! 完敗だ!」
塵となり消えゆく自身の召喚獣を見送りながら、大友は豪快に笑った。心なしか召喚獣も笑顔のまま消えていったかのように見えた。
決着がついたことで布施教諭が召喚フィールドを解除。秀隆の悪魔と優子の堕天使も光となって退場した。
「やけにあっさり認めんだな」
「当たり前だろう? あれほど気持ちよく負けたんだ。むしろ清々しいくらいだ」
大友の当初望んだ形とは別物になったが、『強い秀隆』と戦えた。勝敗に関わらず、その点だけでも大友は満足していた。
「それに、思わぬ収穫もあったしな」
大友の視線の先には優子。大友は最初、秀隆が弱体化したのは優子や明久が原因だと言った。だが優子は見事大友――過去の呪縛から解き放たれ、最後は秀隆と一緒に見事な逆転劇を演じてみせた。新たな強者を得たことは、大友にとっては嬉しい誤算だった。
「だとよ」
「……あんまり嬉しくないですね」
対して、認められた優子は微妙な表情。同じAクラスの先輩に実力を認められたのは嬉しいが、変な風に目をつけられるのは勘弁願いたい。
「ウハハハッ。それもまた良し!」
「いや、良いのかそれで?」
戦闘中とは変わって何も考えていないかのように笑う大友に島津がツッコミを入れる。
「いい気持ちを持たれていないということは、少なくとも無関心ではないからな」
「お前のその無駄にポジティブな考え方は見習いたいわ」
「ウハハハッ! 褒めてもプロレス技しかでんぞ?」
「褒めてねえしいらねぇよ!」
唐突に始まった漫才に、秀隆も優子も思わず吹き出した。
「して、神崎よ」
「あん?」
「お前、どこまで
「……」
大友が少し意地悪そうな顔をして秀隆に問う。優子も島津も、布施教諭さえも秀隆の回答を興味深そうに待っている。
「……アンタが
「俺が木下に惚れていて、いつも隣にいるお前に嫉妬していたという可能性は考えなかったのか?」
「ないない。アンタみたいなタイプは俺が居ようが居まいがお構いなしに猪突猛進するだろ」
「分からんぞ? 俺は奥手だからな」
「微妙に嘘か本当か分かんねぇ事言うんじゃねぇよ。それに」
「「「それに?」」」
一呼吸置いて、秀隆が口を開く。
「恋は盲目と言っても、コイツ相手だと千年の恋も冷める」
「アンタにだけは言われたくないわよ!」
顔面を狙ったハイキックを右手でキャッチ。
秀隆は「な?」という表情をするが、3人から「自業自得では?」と視線で返された。
「そもそも部活、いや闘争一筋のアンタが恋愛にかまけてる暇なんてなさそうだし」
「ウハハハッ。それはそうだな」
「だから恋愛方面は速攻で除外した」
「それはわかるけどよ。何でわざわざ木下を落ち込ませるような言動したんだ? 危うくお前ら負けてたんだぞ?」
島津の指摘通り、中盤の優子は全く機能していなかった。瑞希の叫びで再起したものの、もしそれがなかったら秀隆は実質2対1で戦うことになっていたのだ。わざわざ自ら不利な状況を作るのは、普段の秀隆からは考えにくい。
「それは、まぁ……。諸般の事情ってやつなんで」
「「?」」
秀隆は曖昧に笑って言葉を濁す。島津たちに説明したところで理解されるかも分からないし、詳しく説明するのもこそばゆい。何より、下手なことを言えば、また隣から蹴りが飛んでくる。
「まぁそんなものはどうでも良いだろう。俺たちは楽しい戦いができたんだ。それ以外は
「いやそれはお前だけだろ」
どこまで言っても、大友は戦闘脳なのだった。
「なんにせよ、俺たちは負けた。それだけだ」
「ま、そうだな」
過程はどうあれ、勝ったのは秀隆と優子。島津もその事実をねじ曲げようとは思わない。
「けど、可愛くて賢くて強い女子……か。中々いい感じじゃん。ねぇ、君さえ良ければこの後おち」
「遠慮します」
「即答かよ!」
「島津よ、お前の悪い癖だぞ。お前も馬に蹴られたくはあるまい?」
「分かってるよ。ただの社交辞令みたいなもんさ」
「社交辞令でナンパされても困るんですけど」
「島津センパイ、女の趣味悪いっすね」
「秀隆。それはどういう意味かしら?」
降り注ぐパンチの雨を秀隆はひょいひょいと躱す。島津は「本当にコイツらに負けたのか?」と釈然としないものを感じ、大友は心底面白そうに笑った。
「ま、何はどうあれ、お前たちの勝ちだ。先に進むといい」
「うっす」
「ちょっと待って」
先に進もうとする秀隆を、優子が制する。
「ん?」
「勝負の決着。確認してないでしょ」
「あー。そういやそうか」
と、今度は布施教諭に視線が集まる。
「先輩たちも時間あるならこの後どうっすか? 今なら優子が奢ってくれるみたいっすよ?」
「何で私なのよ」
「そりゃ俺が勝ったからな」
「勝ったのは私よ」
「俺だ」
「私よ」
「俺!」
「私!」
「「布施先生! どっちですかっ!?」」
2人に迫られて、布施教諭は引き攣った笑みを浮かべながら半歩引いた。
「あ、え、えーと……。その……」
「「その?」」
「…………引き分けで」
「「ええ〜!?」」
2人の視線から目を逸らしつつ、布施教諭がおずおずと告げる。
「いや、アレで止めをさしたのはどっちか判断するのは無理だろ」
呆れながら島津が布施教諭を擁護する。大友には2人同時に最上級魔法で止めをさした。あの激しい攻撃の中で、どちらが決め手になったのかなど、素人目でなくとも分かるわけがない。
「んだよそれ」
「決着はお預けってことね」
渋々と落胆しながらも仕方ないと納得する2人。勝敗は次回に持ち越しとなった。
「ウハハハッ! どうせお前らはまた試召戦争をするのだろう? 決着はそこでつければよかろう」
「それもそうか」
今回の勝負はあくまでもおまけ。2人の本番は、次の試召戦争だ。
「その頃までに更に強く、賢くなっておけ。でないと、思わぬ所で寝首をかかれるぞ」
「わーってるよ」
大友の忠言を面倒くさそうに受け流す秀隆。負けたというのにどこまでも清々しい大友に、少し苛立ちすら覚える。
「んじゃ、センパイ方ごきげんよう。もう二度と会うこともねぇだろうけど」
「同じ学校なんだからそんなわけないでしょ」
「次は体育祭で戦うかもしれんな」
「俺たち受験だろ? そんな暇あるか?」
2学期には体育祭があり、そこではまた2年生と3年生が対決する可能性がある。もっとも、今度はクラス別だし、3年生は受験に向けて追い込み中なので、当たる可能性は低いが。
「たまの息抜きくらい問題ないだろ」
「学校行事を息抜きにしないでください」
「今回の肝試しも似たようなもんだろ」
「2人とも、そろそろ……」
このままでは中々先に進みそうにないので、布施教諭が先を促す。
「そうですね。では、失礼します」
「良き闘争だった。また戦おう」
「お断りだ」
秀隆は大友にアカンベーをすると、優子に引っ張られてAクラスの出口に向かう。
「……本当に、強かったなアイツら」
「ああ」
疲れたように呟く島津。大友は遠ざかる2人の背中を、少し羨ましそうに、遠くを見るように見送った。
「あ、秀隆。木下さん」
「明久か。そっちはどうだった?」
大友たちと戦った広間を少し過ぎた辺りで、秀隆たちは明久たちと合流した。
「何とか勝てたよ」
「そっか。ま、そうじゃねぇと男が
勝利報告をする明久を、秀隆は少し厭らしい目を向けて見る。
「……何さ?」
「いんや。
「ちょっと! からかわないでよ!」
やいのやいのと騒ぐ秀隆と明久に、優子は小さくため息を吐く。
「まったく。下手に騒いで失格になったらどうするのよ」
「まぁ大丈夫だろ。連中もそこまで野暮じゃないだろうしな」
優子と横並びで2人を眺めていた雄二が答える。
「坂本君もお疲れ様」
「おう。そっちもな」
雄二が珍しく優子を労う。優子たちが瑞希の叫びを聞いていたようき、雄二も優子の叫びを聞いていたのだろうか。
「残念だったわね」
「何がだ?」
「代表と回れなくて」
「笑えない冗談は止めてくれ」
「そうかしら?」
「ったく、どいつもこいつも……」
心底嫌そうにため息を吐く雄二。だがすぐに思い立って優子に問いかける。
「んで、そっちはどうなんだ?」
「何が?」
「とぼけても無駄だ。秀隆と何かあったんだろ?」
「別に? 何もないけど?」
「ほぅ……そうか」
白を切る優子を、雄二はニヤニヤと笑った。
「……何よ? 代表に言いつけるわよ」
「お願いだからそれだけは勘弁してください」
翔子の名前を出されては手も足も出ない。
「よろしい」
「……秀隆以上にたち悪いな。くそっ」
「何か言ったかしら?」
「何でもねぇよ。――ま、俺が追及するまでもねぇか」
「? それってどういう」
「おーい! 2人とも!」
雄二を問いただそうとしたところで、明久が2人に呼びかける。
「出口だよ!」
明久が指し示す方向には、薄暗さに慣れた目には眩しい、もうだいぶ西に傾いた夏の日差しが輝いていた。
「優子ーーーっ!!!」
Fクラスに戻るや否や、愛子が優子に向かって飛びついてきた。
「ちょっと愛子!? 危ないじゃない!」
「優子ー! 良かったよー!」
「愛子?」
「……愛子、優子のこと心配してたから」
優子のお腹にグリグリと顔を押し付ける愛子。その後ろから翔子や美波もやって来た。
「代表。もう大丈夫?」
「……うん。私よりも瑞希の方が」
「……そうね。それで、瑞希は?」
「少し頭を冷やして来るって屋上に行ったわ」
「そう。ならもう少しそっとしといてあげましょうか」
「そうですね」
常夏コンビの謂れない言葉を一身に受けたのは瑞希だ。心の整理がつくまでは、そっとしておいた方が良いだろう。
「うぅ……。優子……。本当に良かったねぇ……」
「何よ、それ」
「ウチらも心配したのよ?」
「優子ちゃん。あのままだったらどうしようって」
「皆……」
いつの間にか、優子の周りには愛子たちだけでなく、他のクラスの女子も集まっていた。皆優子を心配していたようで、しきりに「良かった」と呟いていた。
「ごめんなさい。心配かけたみたいで」
「……気にしないで。優子があの程度で塞ぎ込むわけがないから」
「……それ、褒めてるの?」
「……もちろん」
翔子の表情からな本気とも冗談とも取れないので、とりあえずは言葉通りに受け取ることにした。
「私はもう大丈夫よ」
「けど、神崎とは」
「それも大丈夫。アレは――私の覚悟が足りなかっただけ」
「覚悟?」
「そう。たぶんアイツは分かっていたのよ。いずれこういう事が起きるって。その時に、私が立ち上がれるか試してみたみたい」
「何よそれ!」
「神崎君、酷くないですか?」
周囲からも秀隆を非難する声が上がるが、優子はそれを「良いのよ」と制した。
「これは、私が言い出したことだから」
「優子が?」
「ええ。私の認識が甘かっただけ。だから、良いのよ」
「でも……」
「それに思いっきり殴ってやったしね!」
それを聞いて、皆納得したように頷いた。
「だから、私はもう大丈夫。もう迷わないから」
「……優子。……良かった」
「うぅ……ぐすっ……優子ぉ……」
「ほら愛子。いつまで抱きついているつもり? そろそろ離れてよ」
優子は愛子を引き剥がそうと愛子の肩を押すが、愛子は一向に離れる気配がない。むしろ抱きつく力を強めてきた。
「愛子?」
「……本当に良かった。優子が立ち直ったってことは――」
「へ?」
優子のお腹に顔を埋めていた愛子が顔を上げる。
「神崎君と進展があったってことだよね?」
ニタリと厭らしい笑みを貼り付けて。
「なっ!? べ、別に何もないわよ!」
「嘘だね。良く聞こえなかったけど、神崎君と何か話してたでしょ?」
「そ、そうだったかしら?」
「アレって告白だったんでしょ?」
「そんなわけないでしょっ!!」
顔を真っ赤にして否定する優子。だが、それが愛子たちに火を着けた。
「ますます怪しい」
「べ、別に怪しくなんか」
「だって優子、神崎君に耳打ちされてから明らかに活き活きしてたもん」
「そそそ、そんなわけ、ないわよ?」
「……やっぱり怪しい」
「普段の優子なら、違う時ははっきりと違うって言うわよね」
「はい。目が泳いでるのも怪しいです」
「う……」
好奇の目が優子に向けられる。優子は身を捩って拘束から抜け出そうと試みるが、運動部である愛子の筋力が見かけ以上に強く抜け出せない。
「さぁ優子。覚悟はいい?」
「いいわけないでしょ! ――止めなさい皆! プライバシーの侵害よ!」
「人の事を散々弄っておいて、その理屈は通らないよ!」
愛子にそう言われてはぐぅの音も出ない。
「さあ優子。年貢の納め時だよ!」
「冗談じゃないわ! 代表! 美波! リリア! 助けて!」
「……ごめんなさい、優子」
「ウチらもやっぱり」
「優子ちゃんたちの関係が気になります!」
「なっ!?」
まさかの(?)裏切りにあい、優子の逃げ場は完全になくなった。
「さあ優子! 答えてくれるまで離さないからね!」
「い、いやーーーーっ!!!」
今日一番の悲鳴が、文月学園に響き渡った。
一方、秀隆の方は――
『死ねぇ! 神崎ぃ!!』
『お前の罪を数えろ!!』
『今死ね! すぐ死ね! 骨まで砕けろ!』
「どわぁあっ!?」
男子生徒による制裁を受けていた。
「テメェら! いきなり何しやがる!」
『黙れ裏切り者! 女の敵!!』
『何もない風を装いやがって!』
『今まで俺たちを騙していやがったな!』
「だから何のことだよ!?」
いつの間にか覆面を被り得物を持った集団、FFF団に取り囲まれる秀隆。その周りには、他クラスの男子生徒も何人か混じっていた。
『まだしらばっくれる気か!』
『一学期の頃に、『木下優子とは顔見知り程度』とか言っておきながらっ!』
『あんなもん見せつけやがって!』
「だからアレはお前らが想像するようなもんじゃ」
『『『あれだけやっておいてそんな言い訳が通用するわけないだろうが!!!』』』
男子生徒から発せられる魂の雄叫びに、流石の秀隆もたじろいた。
「お、おい! お前ら、早く助けろ!」
秀隆は雄二たちに助けを求めるが、
「「「やなこった」」」
「はぁ!?」
速攻で拒否された。
「テメェら! 友だちがどうなってもいいってのか!」
「お主が言えた立場ではなかろう」
「木下さんの気持ちを考えるとな」
「秀隆は一度痛い目にあったほうがいいと思うよ」
秀吉、トレイズ、誠は秀隆の自業自得だと冷酷に告げる。
「俺はそもそもお前のことを友だちだと思ってねぇしな」
「だと思ったよクソ野郎が!」
降り注ぐカッターナイフの雨をかい潜りながら秀隆が悪態をつく。
因みに明久や康太は当然の権利のようにFFF団側についているので最初からアテにしていない。
『諸君、ここはどこだ?』
『『『最後の審判を下す法廷だ!』』』
『異端者には?』
『『『死の鉄槌を!』』』
『男とは?』
『『『愛を捨て、哀に生きる者!』』』
『よろしい。これより……2-F、いや文月学園2年生異端審問会を始める』
「秀隆、観念してよ!」
「…………裏切り者には死をっ!」
「苦しむのは一瞬で済むからな!」
「冗談じゃねぇ!」
秀隆はFFF団による無駄に連携の取れた波状攻撃を紙一重で躱しながら包囲網を突破。そのまま女子に囲まれた優子に近づく。
「悪いな工藤!」
「え? うわっ!」
秀隆は愛子に足払いを仕掛ける。バランスを崩した愛子は、踏ん張ろうとして優子を抱きかかえる手を緩めてしまう。愛子を床に寝転ばせると、秀隆は優子の手を取った。
「優子!」
「秀隆!?」
秀隆は優子をぐっと自分の方に引き寄せる。
「逃げるぞ!」
「分かった!」
そのまま2人してFクラスから飛び出していく。
『『『待てーーー!!!』』』
そして、その後を追うFFF団と愛子を筆頭とする女子生徒たち。残された雄二たちはそれを苦笑いしながら見送った。
「何だかんだ、アイツらもお似合いだな」
「そうじゃの」
「……私と雄二も負けてない」
「そうですね」
「違うからな!」
翔子の言葉を自然な流れで肯定したリリアを雄二が全力で否定する。
「でも、結局神崎は優子に何を言ったのかしら?」
「私も気になります」
やはり気になるのは秀隆が優子に耳打ちした言葉。アレが優子復活の要因に違いないが、美波とリリアは想像がつかないのか首を傾げる。
「……私は何となく分かる」
「「え!?」」
だが翔子は、秀隆が何を言ったのか予想できると言う。
「何て言ったと思うの?」
「やっぱり、優子ちゃんに告白したんでしょうか?」
「……秘密」
「「ええーっ!?」」
翔子は人差し指を口に当てると、悪戯っ子ぽく微笑んだ。
「ちょっと! ここにきてそれはないでしょ!」
「そうですよ! せめてヒントだけでも」
「……ダメ」
「「そんなー……」」
「……でも」
翔子は雄二の方を見て微笑んだ。
「……神崎は、雄二と似てるから」
「……けっ」
似てると言われたのが気に食わないのか、全て見透かされているようで気に入らないのか、雄二が露骨に舌打ちをする。
「本当に、素直ではないの。お主も」
「なんとでも言え」
完全にへそを曲げた雄二がそっぽを向くのを、皆して笑った。
「……はぁ……はぁ……」
「……ぜぇ……ぜぇ……」
FFF団と女子生徒たちから逃げ出した秀隆と優子は、空き教室に隠れてやり過ごしていた。
「ったく。お前といると碌な目にあわねぇな」
「それはこっちの台詞よ」
肩で息をしながら、互いに責任をなすりつけ合う2人。だがその口元は心なしか緩んでいた。
「……なぁ優子」
「なに?」
「夏休みなんだが」
「うん」
「明久たちと海に行こうって話してるんだ」
「それで?」
「お前も来るか?」
「あら? 珍しいわね。アンタから誘うだなんて」
「仲間外れにして拗ねられても面倒だからな」
「人を子ども扱いしないでよ」
「子ども体型だろうが」
優子の無言のパンチを受け取る。
「んで、どうする?」
「行くわよ。代表たちも行くんでしょ?」
「まあな」
「じゃあ尚更ね。代表を見とかないと」
すっかり翔子のお目付け役が板についてきている。
「というか、それならどうせ秀吉から話が出るでしょ? 何でわざわざアンタが誘うのよ?」
「何でって……」
秀隆は気不味そうに顔を逸らせる。
「ふーん。ま、いいわ。聞かないでいてあげるわ」
「なんか腹立つな」
「アンタが普段やってることよ」
苦虫を噛み潰したような顔の秀隆に、優子がふふんと鼻を鳴らして返す。
「――秀隆」
「何だよ?」
不機嫌そうに聞き返す秀隆に、優子が静かに呟いた。
「――待ってるから」
「……おぅ」
冷房の効いていない空き教室の暑さが、2人の鼓動を速めていく。
優子はこの日の事をずっと覚えているだろう。大人になっても、お婆ちゃんになっても、ずっと。
『いつか迎えに行くからよ。地獄の先で待っていてくれよ』
それは、彼女がずっと待ち望んでいた未来だった。
ご感想などお待ちしております。
次回は番外編を挟んでからの夏休み(海)回になると思います(季節感?知らんなぁ)。
※キャラ設定の一部を更新したので合わせてご覧いただけたらと思います。
予告通り次回から投稿が遅れる可能性があるのでご了承ください
m(_ _)m
1話分の長さは?
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5000字程度(約5分)が良い
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10000字程度(約20分)は欲しい
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区切りが良ければ何文字でも構わない