バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

122 / 137
今回から夏休み海編になります。
今回はプロローグなので短めです。

原作と違いオリキャラを多数登場させる予定です。

…………書き切れるかなぁ……


第6.5章―夏休み海編―
夏休み海編①


夏休み海編①

 

トラブルも起きつつ肝試しを制した明久たちは、そのまま明久の家に集合した。前々から話していた海に行く計画を練るためだ。

今日明久の家に集まったのはいつものFメンバーと翔子、優子、愛子のAクラスメンバーにリリアとトレイズ。今回はそれ以外にも一応聡たちにも声をかけており、都合が合えば参加することになっている。

 

「それで明久。海に行くと言っても、どこの海に行くんだ?」

「たしか、僕が小さい頃に行ったことのある場所だったと思うんだけど……」

「なんか曖昧だな。ま、玲さんが知ってるなら別にいいか」

「海、ねぇ……ウチはできれば山の方が嬉しかったんだけどね……」

「わ、私もです……」

「僕は海とかプール大好きだけどなー」

「……私も嫌いじゃない」

「私もどちらかと言えば海かしらね。山は虫が多いし」

「私はどっちも好きです」

 

女性陣は海派寄りなようだ。といっても、美波と瑞希が遠慮しがちなのは、海そのものよりも体型的な問題だが。

 

「んで、その海までどうやって行くんだ? この人数だと車は厳しそうだが」

「それが……。僕の記憶だと近くに駅はなかったはずなんだよね。バス停もあったとは思うんだけど……」

「車で行く距離ってことは、場所によっちゃバスは乗り継ぎが必要になるだろうな」

「ならば、移動手段は車一択じゃな」

「…………どうする?」

 

普通運転免許証で乗れるのは運転手を入れても10人以下なので、今いるメンバーだけでも全員は1台に乗り切れない。

 

「うん。その事を含めて相談したいんだけど」

「とは言ってもな」

「ウチの両親もまだ仕事の時期だし」

 

明久たちは夏休みだが、玲の時期がずれているだけで、世間一般の企業はまだ長期休暇の時期ではない。車を出せる大人が確保できないければ計画自体が頓挫してしまう。

 

「秀隆、運転できない?」

「バカ言うんじゃねぇよ。バイクじゃないんだぞ。まだ免許持てる歳じゃねぇよ」

 

普通自動車運転免許証の習得は満18歳から。今からでも教習所に入学することはできるが、まだ仮免試験すら受験できない。

 

「しゃぁない。少しアテをあたってみる」

「アテがあるの?」

「ダメ元でな」

 

秀隆は携帯電話を持って廊下に出る。秀隆の言うアテに連絡を取るためだろう。

 

「大丈夫かな?」

「秀隆のことだ。アテなりコネなりがあるんだろ」

「かもしれませんね」

「それよりも、海に行ったら何をして遊ぼうかしら」

「近くで祭りなんかがあると良いのじゃが……」

「あ。それいいね。どこかにないかなぁ……?」

「花火も観れたらいいですね」

「日本の祭りに花火かぁ。楽しみだな」

「…………水着に浴衣……生きて帰って来られるか……」

 

明久が当日の康太の出血具合を心配していると、

 

「あ、ごめん電話だ。ちょっと外すね」

「おう。行ってこい」

 

明久の携帯電話に着信が入り、電話に出るためにリビングを出る。

廊下では、入れ替わりに秀隆が携帯電話を切っていた。

 

「ん? 明久、電話か?」

「うん。誰からだ――なんだ、姉さんか」

「玲さん? 緊急の用事か?」

「たぶん違うと思うけど、どうしたんだろう?」

 

明久は玲からの着信に出る。秀隆も何となくそばに寄って聞き耳を立てた。

 

『もしもし、アキくんですか?』

「うん。どうしたの姉さん?」

『前に言っていた海に行く件ですが』

「あ、丁度良かった。そのことでこっちもちょっと相談があるんだ」

『相談、ですか? まさかアキくん。姉さんにエッチな水着を着てほしいんと言うんじゃないでしょうね?』

「そんなわけないだろ!」

『しかたないですね。向こうの友人から頂いたほぼ紐の水着があるのでそれを用意しておきましょう!』

「止めてよ! そんな変態の横を歩く弟の事を少しは考えてよ!」

『……少し、興奮しますね』

「違う! 弟のことをどう思っているかじゃなくて弟の気持ちを考えて!」

『ですから、それを着たらアキくんも少しは興奮するかと』

「何で僕が着る前提なのさこの変態!」

 

明久が叫んだところで秀隆が明久の肩をつつき、本題に戻れと目で訴えた。

 

「そうじゃなくて、前に海に行くって言った時、友だちを誘っても良いかって聞いたでしょ?」

『そうでしたね。それで、お友だちは誘えたんですか?』

「うん」

『でしたら人数を教えてください。そろそろレンタカーの予約をしようと思っていたので』

「それが……ちょっと多く誘い過ぎちゃって」

『多く、ですか。まぁ姉さんとアキくんを入れても10人くらいまでならワンボックスカーでギリギリ』

「それが、その……10人を超えちゃったんだ」

『え?』

 

流石の玲も驚きを隠せないのか電話の向こうで声を漏らした。

 

『アキくん』

「……はい」

『物事には何事も限度というものがあります』

「はい」

『アナタが親しいお友だちを皆誘いたいという気持ちもわからなくはないです。しかし無計画に誘うのはお人好しを通り越して無責任です。誘っておいてこちらからお断りするのは不測の事態ですら先方に不快な気持ちを抱かせてしまう場合もあります。それはアキくんの信用問題にも関わるんですよ?』

「それは」

 

明久が玲の正論に困窮していると、また秀隆が肩を叩き、今度は自分に向けて指をチョイチョイっと動かした。替われ、ということか。

 

「ごめん姉さん。ちょっと秀隆が話があるたいなんだ」

『神崎君ですか? 分かりました』

 

玲の了解を得たので、明久は通話状態の携帯電話を秀隆に差し出す。

 

「お電話替わりました。神崎です。お久しぶりです。玲さん」

『お久しぶりです。その節はうちの愚弟がお世話に』

「その話はまた今度で。実は明久が皆を誘ったのには理由がありまして」

『理由ですか?』

「はい。実は――」

 

秀隆は玲がアメリカに帰ってからの特別補習中に起きた事、肝試しについてかい摘んで説明した。

 

『なるほど。その3年生たちをアキくんたちは打倒した、と』

「はい。これに関しては明久もよく頑張ったと思います。なんせ3年生の最上位クラスのコンビを1人で討ち取ったんですから」

『たしかに。アキくんにしては珍しく頑張ったようですね』

「はい。そして、その際の吊り橋効果というか、肝試しや補習からの解放感というか。ともかく皆テンションが上がってしまって」

『可能な限り友だちを誘い、それを受けてしまったと』

「そういうわけです。これは俺のせいでもあるんですが、俺の友人で明久たちも顔見知りのヤツらにも少し声をかけてしまって」

『そうでしたか。その方たちもアキくんとはお友だちなの

ですか?』

「一応そうなります」

『でしたら責任の主格はやはりアキくんですね。その場合は神崎君に言って誘わないようにしてもらえば、もしくは断りを入れてもらえばよかっただけですから。それに、そのお友だちを除いても10人は超えるようですし』

「仰る通りで」

 

玲の正論には、秀隆もただただ平伏するしかなかった。

何事にも限度はある。家で遊ぶにしろ、外に遊びに行くにしろ、何らかの理由で制限がかかることは常識の範疇だ。今回も明久が車での移動と知りながら免許の範囲外の人数を誘ってしまった。これは明久の落ち度だ。

 

『アキくん。どうせ横で聞いているのでしょう?』

「あ、うん」

『理解しましたか? アキくんの軽率な行動が、こうやって姉さんだけでなく神崎君にも及んでいます。アキくんに誘われて予定を変更している人もいるかもしれません。友だちを選べ、と言うわけではありませんが、きちんと誘える人を選んでから誘うようにしてください』

「うん。ごめんなさい」

 

明久も素直に謝る。

 

『ですがまぁ、夏休みになって友だちと遊びたいというアキくんの気持ちも分からなくはないです』

「え?」

 

あの暇さえあれば勉強をしていた玲が、友だちと遊ぶことに理解があることが意外だった。

 

『アキくん。姉さんもロボットじゃないんですよ? 姉さんだって友だちと遊んで息抜きをすることくらいあります』

「ごめんごめん。ちょっと意外だったから」

『……まぁ、いいでしょう。それに今回はアキくんが成果をだした結果、と言うわけで特別に不問とします』

「え? 本当? お仕置きとかしない?」

『何ですか? アキくんはお仕置きをして欲しいんですか?』

「あ、ごめん。別にそう言うわけじゃ」

『それらなアキくんには当日紐水着を着て姉さんに抱きついて『玲お姉ちゃん大好き!』と言ってもらいましょうか』

「さては姉さん全然許してないでしょ!? 弟を虐めて楽しまないでよ!?」

「虐めのレベルか?」

 

どう考えても公開処刑である。

 

『冗談は置いとくとして』

「冗談に聞こえないんだけど……」

『困りましたね。その人数ですと、どの道マイクロバスをチャーターしないといけません』

「そんなことできるの?」

『行き先が旅館ならあるいは可能だっかもしれませんが』

「行き先? 旅館? 日帰りじゃないの?」

『ああ。まだ言ってませんでしたね。実は前に泊まったことのあるペンションを借りようと思いまして』

「え……? ペンション……?」

「てことは、泊まりですか?」

『ええ。ちょっと遠出でになるので、どうせなら泊まりの旅行にしようかと』

 

たしかに、車で遠出するなら、ペンションや旅館で1泊する方が楽しめる。

 

「ペンションの人数は大丈夫ですか?」

『そちらは2棟部屋を借りれそうなので大丈夫です』

「ということは、やっぱり移動手段か……」

『ええ。あいにくペンションの送迎は最寄り駅との往復しかないようで……。それにペンションの最寄り駅に行くのも乗り継ぎなどで時間がかかりますし』

「合宿の時みたいに、移動だけで1日潰れちゃうかもしれないね」

『なのでどうしたものかと』

「それなんですが」

 

玲が頭を悩ませていると、秀隆が割り込んできた。

 

「一応俺の知り合いが車を出してもらえるかもしれなくて、予定日と場所を教えてもらえばこちから連絡します」

『よろしいのですか?』

「はい。さっきも言いましたが、人数が増えたのは俺の責任でもありますし。なので明久たちは玲さんの、俺たちは別の車に分乗して行くのがいいかと」

『そうして頂けたらありがたいですが、そのお知り合いの方にご迷惑ではないのですか?』

「実はさっき話自体はしていて、あとは本当に日時と場所が確定すれば大丈夫です」

『そうでしたか。――でしたら、お言葉に甘えてもよろしいですか?』

「もちろんです」

『ありがとうございます。では、ペンションの予約が取れたらまた改めてアキくんから連絡させます』

「分かりました」

『はい。それと、アキくんに替わってもらえますか?』

「あ、はい。分かりました」

 

秀隆は明久に携帯電話を返す。

 

『アキくん』

「はい」

『これで分かったでしょう。浅慮な言動が、いかに自分の身を滅ぼすかを。今回は神崎君とそのお知り合いの方のご厚意でなんとかなりましたが、次もどうにかなるとは限りません。もしこれが仕事となれば、アキくんだけでなく、会社や組織の信用問題にもなります』

「……はい」

『反省したのなら、今後は自分でできる範囲というものをキチンと把握することです。何度も言いますが、それを考えなしに超えた言動は傲慢、無責任と言われても仕方がありません』

「うん。ごめんなさい」

『分かればいいのです。ではまた追って連絡します』

「うん。お願いするよ」

『それではまた』

 

そう言うと、玲は通話を切った。

 

「……参ったな。またお小言を言われちゃったよ」

「今回は仕方ないな。俺の責任でもあるが、玲さんの言う通りだからな」

「うん。今回ばかりは秀隆や姉さんに申し訳ないよ」

 

玲は友だちを誘うこと自体を非難しているわけではない。度を超えた行動は、自らの信用を損なう可能性があると説いた。遊びに誘う友だちを選べ、は高校生からしたら少し酷な話ではあるが、玲の言う通り、片っ端から誘うのは無責任だ。今回は明久も反省の意を表した。

 

「でも、秀隆の方は大丈夫なの?」

「うん?」

「いや、アテがあるって言ったけど、その知り合いの人の予定とか」

「ああ。それなら大丈夫。一応話はつけたからな。ま、どうせ暇してるだろうし、こうでもしなきゃ貯まった有給を消化する機会もないだろうし」

「そうなの?」

「ああ。それに」

「それに?」

「あの2人もたまには1泊とは言え旅行くらいは行ってもバチは当たらんだろ」

「僕らもいるのに?」

「それはそれ、これはこれ、さ」

 

自分の蒔いた種とはいえ、明久は秀隆に呼び出された2人が少し気の毒に思えた。

 

「というかお前も大丈夫なのか?」

「何が?」

「皆に泊まりだって伝えなきゃいけなだろ」

 

言っているそばから、リビングからは華やかな声が聞こえてくる。

 

『海ですか〜。準備は大変ですけど、楽しみでもありますね』

『ウチも今度こそきちんと水着を用意しておかないとね』

『ボクも新しいの買ってきちゃおうかな〜』

『……楽しみ』

『私もそろそろ水着を新調しないと。胸の辺りがキツくなってきたし』

『うむ? 姉上は去年と体型があまり変わらぬようじゃ待つのじゃ姉上。その関節はそっちには曲らなっ!』

『海で泳いだりお祭りで遊んだり。楽しみですね』

『ああ。日本の夏休みって感じだな』

 

「そうだね。皆泊まりってなると色々準備も大変だろうし」

「姫路はまた親を説得しなきゃいけないだろうしな」

「そうかもね」

 

泊まりということで、玲の言ったように予定を変更する人もいるかもしれない。そうなると誘った明久からすると、やはり申し訳ない気持ちにもなる。

 

「てかよ」

「ん?」

「さっき人数が超えるとは言ったが、具体的な人数やその中に姫路たちがいるのを玲さんはちゃんと把握してるのか?」

「それは……」

 

玲のことだかは、伝えていなくても何となく察しているとは思う。しかし玲のことだ、察しているいないに関わらず――

明久は携帯電話のダイアルをプッシュする。

 

「あの、もしもし? 救急病院ですか?」

 

女子が来ると知った玲が何らかの体罰をしてるに違いない。明久は輸血パックを多めに用意しておくことにした。




ご感想などお待ちしております。

1話分の長さは?

  • 5000字程度(約5分)が良い
  • 10000字程度(約20分)は欲しい
  • 区切りが良ければ何文字でも構わない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。