バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

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第二十一問です。今回は試験召喚大会の第一回戦です。大会は秀隆・秀吉ペアのシーンをメインでいきます。明久と雄二の試合は原作参照でお願いします。

また、アンケートで募集した模擬店名が決定したので作中にて発表代わりとさせて頂きます。


第二十一問

第二十一問

 

 

「えー。それでは試験召喚大会の第一回戦を始めます。三回戦までは一般公開もありませんので、リラックスして臨んでください」

 

 数学教諭の長谷川先生がのんびりとした声色で一回戦の開戦を宣言した。長谷川先生の言った通り、一回戦は一般公開されてないため、観客席も学園の生徒が疎らに入っているだけであまり盛り上がりもない。

 

「と、その前に。神崎君と木下君。その格好は?」

「模擬店の制服の一つです」

 

 秀隆達は召喚獣の服装に着替えてそのまま大会会場まで来ていたので、かなり浮いた格好になっていた。観客の中からも『可愛い』とか『格好いい』などの声が聞こえてくる。

 

「そうですか。確か君たちのクラスは『コスプレ喫茶』でしたね。ならその格好も納得です」

「ついでに宣伝してもいいですか?」

「そうですね。試合終了後に少しくらいなら構わないでしょう」

「ありがとうございます」

 

 長谷川先生もその辺りは理解しているのか、試合後に宣伝する時間を設けてくれた。

 

「何だか寂しいのう」

「まあ一般公開してなかったらこんなもんだろ」

 

 少ないギャラリーの数に、秀吉は少しがっかりしたようだったが、秀隆はそうでもないようだ。

 

「……神崎が相手とは、ついてないなあ」

 

 と、秀隆達の対戦相手、Dクラス代表の平賀がどんよりとした溜息を吐く。

 

「大丈夫だよ。相手は二人ともFクラスなんだから余裕だよ」

「三上さん……うん。頑張ろう!」

 

 パートナーであるEクラスの女子生徒、三上美子が平賀を励ますが、平賀はFクラスとの試召戦争で秀隆の実力を知っていたので効果は薄かった。しかしパートナー、特に女子の眼の前と言う事もあってやる気はあるようだ。

 

「相手は平賀とEクラス女子、か。これならいけるかな……」

 

 秀隆は対戦相手を見てそう呟いた。

 

「ん? 何をする気じゃ?」

「始まってから説明するさ」

「それでは、召喚して下さい」

 

 長谷川先生の宣言の下、四人の召喚獣が戦場に召喚される。男子三人はいつもの姿、唯一の女子である三上の召喚獣は文月学園の制服の上から黒のローブを羽織り、同じく黒のとんがり帽子を被り、手には杖と本を持った、魔女っ娘スタイルだった。

 

「それじゃ、『練習』を始めますか」

「練習じゃと?」

 

 秀隆は秀吉の問いに「そ」と軽く答えた。

 

「お前にはこの試合である程度召喚獣の操作練習をしてもらう」

「じゃがわしは試召戦争にも参加したし、必要ないと思うがの?」

「けどそれはまだ皆慣れてなくて尚且つ点数も大差なかったから通じただけの話だ。これからは皆点数が上がって来るからな。その差を埋めるためにも操作性の向上は必須だ」

「そこまで言うのなら、頑張ってみるかのう」

 

 今後、Aクラスとの戦いに勝つためには、成績の向上による地力の強化の他に、『戦闘の操作』に慣れていく事が不可欠となってくる。秀隆はそう予測し、この大会の場を秀吉の練習の場として利用することにしていた。

 

「話は終わったかい?」

 

 秀隆と秀吉が改めて前を向くと、平賀と三上の召喚獣は未だ召喚された位置から動いていなかった。

 

「待っててくれるとは随分とお優しいんだな」

「別に、そっちが話している間にこっちも作戦を立てただけだよ」

 

 秀隆の皮肉を平賀は笑って返す。こういった『流されない』点では流石代表といったところだろう。

 

「んじゃ、待たせた分速攻で決めるかな!」

「おう、じゃ!」

「三上さん。手筈通りに!」

「うん!」

 

 秀隆と秀吉が召喚獣を走らせる。平賀も三上を護る為、召喚獣を前へ動かし、三上の召喚獣はその場で詠唱を開始する。

 

「秀吉! お前は三上と戦え! 平賀は俺が殺る!」

「承知!」

 

 秀隆の指示に従い、秀吉は平賀の召喚獣を迂回させる様に自分の召喚獣を動かすが、

 

「させないよ!」

 

 当然、平賀はそれを妨害しようとする。

 

「ま、そうくるよな!」

「っく!」

 

 それを予測していた秀隆は平賀の召喚獣、正確にはその足元に向けて一発発砲。平賀の召喚獣の動きを一瞬だが止めた。

 

「揺らめく焔……猛追! 『ファイアボール』!」

「ぬう!」

 

 少しで三上の召喚獣に届こうというところで、三上の召喚獣の詠唱が終わり、3つの火の玉が秀吉の召喚獣に向かって飛んできた。秀吉は召喚獣を操作して何とかそれを躱すが、その隙に三上に距離を取られてしまった。

 

「三上って言ったか。あいつやるな……」

「む? そうなのかの? わしにはそうは見えんが?」

 

 実際三上の点数は103点と、Eクラスでは中堅と言った点である。秀吉は兎も角、秀隆や平賀と比べるとやはり見劣りする。因みに秀隆は186点、平賀は139点、秀吉は72点である。

 

「ああ。数ある魔法詠唱の中からアレを選ぶとは……」

「そこなのかの!?」

 

 珍しく、秀隆に秀吉の渾身のツッコミが炸裂した。確かに、この状況で点数や操作性ではなく詠唱のチョイスに注目する方がどうかしている。

 

「まあそれは置いといて、如何やら三上の召喚獣は俺の銃と同じで、点数を消費して魔法を繰り出すようだな」

「むう。だとしたらかなり厄介じゃのう……」

 

 魔法ということは先程のファイアボール以外にも無数のバリエーションがあってもおかしくはない。攻撃パターンが多いと言うのはそれだけで武器になる。

 

「ん~。そうでもないかな」

「そうなのかの?」

「ああ。三上の点はそれほど高くはないからな。あんまりデカい範囲魔法は出来ないだろう。さっきのファイアボールで5点位消費してたし」

 

 秀隆は先程の三上の攻撃から大体の規模を予想していた。

 

「しかし遠距離と言うのはかなり厄介じゃぞ?」

「だから練習になるんだよ」

 

 苦言を呈する秀吉に、秀隆は当然の様に返す。

 

「ふむ。なるほどの。しかし、お主……」

「ん?」

「よくそんな状況で喋っていられるのう」

「くそっ! 何で当たらないんだ!?」

 

 秀吉が呆れたように言い、平賀が悪態を吐く。その言葉通り、秀隆は秀吉と喋りながら平賀の召喚獣を相手していた。しかも、ここまで一切攻撃を受けていない。全て紙一重で躱している。

 

「秀吉にも、二学期の半ばまでにはここまで出来る様になってもらうぞ?」

「結構無茶を言うの!?」

「取り敢えず、Step1は、『相手の視線をよく見る』だ」

 

 秀隆は秀吉の抗議をスルーし、手解きを始めた。

 

「視線? 召喚獣のかの?」

「それもあるが。注目すべきは召喚者の方だな。いくら戦うのは召喚獣とはいえ、実際に狙いを定めたりするのは召喚者自身だからな。召喚獣の視線はあくまでそれをトレースしているだけだ。なら召喚獣よりも見やすい召喚者の視線に注目した方がいい」

 

 そう説明しながらも、いや先程から秀吉と会話している時も、秀隆の目線は平賀の視線に集中していた。

 

「特に遠距離武器は狙いを定めるのにかなりの集中力がいるからな。自然と的に目が行く」

「じゃから、その視線を辿れば避けやすい。と言うわけかの?」

「そう言う事だ。ま、当然それだけじゃないがな」

 

 そこで会話を切り、秀隆は改めて平賀に顔を向けた。

 

「つう訳で、まだ少し付き合ってもらうぜ?」

「その油断が命取りだぞ!」

 

 平賀はそう叫び、秀隆の召喚獣に攻撃を加えるが、先程と同じく一向にダメージを与えることが出来ない。

 

「細やかなる騒めき……『ストーンブラスト』!」

 

 三上も、自分の召喚獣に向かって来る秀吉の召喚獣に向けて、対称の足元から無数の礫を湧き上がらせる魔法『ストーンブラスト』を放つが、

 

「なんの!」

 

 秀隆のアドバイスにより相手の狙いを予測しやすくなった秀吉は、起点魔法であるストーンブラストの礫を躱していく。流石に完璧に躱すことは出来なかったが、それでも薙刀を盾代わりにしてダメージを最小限に抑えることができた。

 

「うそっ!?」

「これでどうじゃ!」

 

 ストーンブラストを潜り抜け、一気に三上の召喚獣に接近した秀吉の召喚獣は、その勢いのまま三上の召喚獣を斬り裂いた。

 

「そ、そんな……」

「三上さん!」

 

 下位クラス(Fクラス)に負けたのがショックで茫然と立ち尽くす三上。平賀は三上が秀吉にやられたことに驚きそちらを向いた。

 

「余所見とは余裕だな?」

「ぐっ!」

 

 注意がそれた隙に、秀隆の召喚獣が平賀の召喚獣を斬りつける。しかし平賀もギリギリのタイミングで召喚獣を操作、屈ませてその斬撃を回避した。

 

「くそっ! まさか三上さんが木下にやられるなんて!」

「油断したのはそっちだったな」

 

 形勢は2対1。秀隆達の圧倒的有利である。

 

「まあ、秀吉の練習に付き合ってくれた礼だ」

「くっ! うおおおおおお!」

 

 一か八かを賭け、平賀の召喚獣が剣を振り上げ、上段から唐竹割りに裂こうとする。

 

「貰っとけ! 『散三華・追蓮』!」

 

その平賀の召喚獣を、三連続の突き(拳)が襲い、追撃の突き(剣)が鎧に突き刺さった。秀隆の召喚獣の攻撃により、平賀の召喚獣は戦死こそしなかったが、態勢が大きく崩れる。

 

「止めだ! 『爪竜連牙斬』!」

 

 円を描くような動きから交互に斬撃と蹴撃の流れる様な連続攻撃が平賀の召喚獣に多段ヒットし、平賀の点数は0となった。

 

「勝者! 神崎・木下ペア!」

 

 長谷川先生の宣言により、秀隆達の勝利が決定した。

 

「んじゃ、先生。マイク借りますよ」

「あ、はい。どうぞ」

 

 長谷川先生が持っていたマイクを秀隆に差し出す。秀隆は軽くマイクテストをすると宣伝をし始めた。

 

「えー。お集まりの皆さん! 試験召喚大会に足を運んで頂きありがとうございます! ここで私達Fクラスの勝利を記念して、只今よりタイムサービスがございます。今から30分の間、2年Fクラスのコスプレ喫茶『幻想郷』にお越しくださいましたお客様には、お菓子かお食事を注文した方に限り、ドリンク一杯を無料とさせて頂きます。ご来店時に受付レジにて『召喚大会を見た』と係りの者にご申しつけ下さい。その後用紙をお渡ししますので、そこに『勝利した2年Fクラスのペア名』をご記入の上、ご注文時に店員にお渡し下さい。なお先程も申しましたが、このサービスは『召喚大会を観戦した、かつお菓子かお食事を注文した方』のみ対象とさせて頂きます。また、このサービスは今大会に参加中の2年Fクラスのペアが勝利する度実施させて頂きますので、今後もよろしくお願いします!」

「お願いしますのじゃ!」

 

 最後に二人そろって観客に向かってお辞儀をする。観客は少ないが、それでも口伝で伝わるだろう。尤も、本格的な宣伝は一般公開が始まる三回戦からではあるが。

 秀隆は最後に「長々と失礼しました」と観客に謝り、長谷川先生にマイクを返した。

 

「てなわけで、お前達もよかったら寄ってくれ。30分しか時間がないけどな」

「流石に自分達が負けた相手を言うのも癪だから、また後で寄らせてもらうよ。その代わり、君達もこっち(Dクラス)に寄ってくれよ」

「おう。聡とも約束したしな」

 

 こうして、試験召喚大会の第一回戦が幕を閉じた。大会も文化祭も、まだまだ始まったばかりである。

 




ご意見・ご指摘・ご感想お待ちしております。

また、活動報告にてもう一つの連載作品『TOWRM3~ThePlaine'sWalker~』のアンケートも実施しているのでそちらの方もお願い致します。

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