バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

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第二十二問、一回戦終了後、二回戦前までです。今回『あの2人組』が登場します。


第二十二問

第二十二問

 

試験召喚大会の一回戦を無事に勝利した秀隆と秀吉。机の謝礼も兼ねてFクラスに戻る前にDクラスの模擬店に寄ろうと話し合っていた矢先に、

 

「あ、神崎、木下君! 大変なんです!」

 

ひどく慌てた様子のリリアが駆け寄って来た。

 

「どうしたのじゃ?」

「店に何かあったのか?」

 

2人の問いに、リリアは息を切らせながらも「はい」と答えた。

 

「実は、営業妨害を受けているんです!」

「「営業妨害だと(じゃと)?」」

「はい。詳しい話しは戻りながらします」

 

リリアは二人に戻るよう急かす。

リリアの説明に因ると、秀隆達大会参加組みが出払ってから暫くした後、上級生らしき2人組が入店したそうだ。だがその二人は、入店直後から『店が汚い』だの『注文を聞きに来るのが遅い』だの騒ぎ立てだした。注文の品がきても止めることなく大声で喚きちらしている。そんな二人を煩わしく思った客は早々に店を出て、新しく来た客も2人のせいで店に寄り付かなくなってしまった。これが今のFクラスの状況らしい。

 

「まさかたかだか学園祭の模擬点に営業妨害とはのう」

「よっぽどの暇人か、バカか……まあどっちにしろお帰り頂くだけだが」

「そうだな」

「「!!」」

 

 教室の前まで来ていた三人の背後から、雄二が話しかけてきた。雄二の後ろには明久と康太もいる。

 

「雄二か。結果は?」

「無論、俺達の勝ちだ」

「ちゃんと宣伝はしたか?」

「ああ。ま、あの客入りなら期待は薄いけどな」

「大事なのは観客の数じゃない。観客が『口コミしてくれる』かどうかだ」

 

口コミはマーケティングのツールとして大変有用である。特に文化祭の様な期間も短く、似たような店が多く立ち並ぶ場合は。

 

「分かってる。で、どの2人だ? 例の『お客様』は?」

「…………あれ」

「あの真ん中のテーブルの人達です」

 

康太とリリアが指し示す方を見ると、ソフトモヒカンと坊主頭という、何とも特徴的な髪型の2人組みが教室中央付近のテーブルにどっかりと座って喚き散らしていた。しかも坊主頭の方はテーブルに足をかけてかなり行儀が悪い。

 

「あれか。んじゃ雄二、行くか」

「そうだな。『色々と』聞きたいこともあるしな」

 

そういうと、雄二は拳をボキボキと鳴らしながら、秀隆は衣装の小道具である双剣(銀鍍金、刃なし)を構え、クレーマーの二人に向かって行く。

 

「しっかし、ここは本当にきったない店だよなあ!」

「全くだな! その上、店員は野郎ばっかで飯もマズイ! 最低だな!」

 

他のお客が迷惑そうな顔をしているのも構いなし。モヒカンと坊主の二人はFクラスを大声でけなし続ける。その背後に、2人の死に神が鎌を握っているとも知らずに。

 

「だいたくべらっ!」

「おい! どうし−−」

「双牙斬!」

「どへらっ!」

 

まだ何か喚こうとした坊主の横面に、雄二の右ストレートが突き刺さる。相方が突然吹き飛んだのに驚いて立ち上がったモヒカンにも、秀隆が繰り出した袈裟がけから斬り上げに繋ぐ二連撃が命中。坊主同様に吹き飛んだ。

 

「て、テメエら何しやがる!」

「何かご不満でも?」

「ふ、不満も何も! 今顔面パンチと斬撃喰らっただろうが!」

「それは我々の『パンチで始まる交渉術』と」

「『特技で始める交渉術』に対する冒涜でしょうか?」

 

攻撃を受けて怒鳴るモヒカンと坊主。それに対し、雄二と秀隆はにこやかに、涼やかに返す。今回はクレーマー側の意見が正しいのだが、周りも今までの2人の言動に嫌気がさしていたので、コレ幸いにと何も言わず見守っている。むしろ楽しんでいる節もある。

 

「何が交渉術だ!」

「覚悟しろやあ!」

 

キレて二人に襲い掛かるモヒカンと坊主。だが、相手が悪かった。

 

「フン!」

「くぴゃっ!」

「双月翔閃!」

「げひゃっ!」

 

モヒカンらの攻撃が当たる前に、秀隆の繰り出した弧月を描く様な二連続斬りと、雄二のハイキックが、またそれぞれ坊主とモヒカンにカウンターヒット。まさに『攻撃は最大の防御』を体現している。

 

「これが『秘技で繋ぐ交渉術』と」

「『キックで繋ぐ交渉術』でございます」

「「最後に『プロレス技(奥義)で締める』交渉術がございますが?」」

「ま、待て!こっちは交渉役に夏川を出す!だから俺には要らない」

「あ!常村テメエ!卑怯だぞ!テメエらも見てねえで何とか言えよ!」

 

腕力(暴力)では敵わないと判断したモヒカン、常村は相方の坊主、夏川を生け贄に差し出した。当然夏川はそれに抗議。さらには周りの客にまで当たり散らしだした。それに対し、救いの手を差し延べる者は当然いない。2人は孤立無援状態であった。

 

「それで、常夏コンビとやらーー」

「まだ交渉を続けるか?」

 

言いながら雄二と秀隆はズイッと一歩前へ。逆に常夏コンビ(雄二命名)は一歩後ずさった。

 

「い、いや……」

「もう結構だ。退散させて貰う」

「「そうか。なら……」」

 

首と手を振りながら拒絶の意を示す常夏コンビ。だが雄二は夏川の腰を抱え込み、秀隆は常村に向かって双剣を振りかざした。

 

「ち、ちょと待て!何でそんな大技をっ!」

「ぶ、武器なんてひきょっ!」

「おらぁ!」

「魔皇刃!」

「「ぎゃあああっ!!」」

 

そのまま雄二は夏川にバックドロップを喰らわせ、秀隆は全体重を乗せて双剣を常村のモヒカン頭に叩き付けた。攻撃を受けた常夏コンビは無様な悲鳴を上げると、泡を吹いて気絶した。

 

「どうした! 何事だ!?」

 

そこに、騒ぎを聞きつけたのだろう。西村教諭が怒鳴りながらFクラスに乱入してきた。

 

「このお二方が騒がしかったので少々大人しくして頂きました」

 

秀隆が気絶した常夏コンビを指しながら手短に説明。他生徒の証言もあり、西村教諭も頷いて状況を把握した。

 

「常村と夏川か。全く。Aクラスだというのに下級生の模擬店の営業妨害とは情けない」

「「Aクラスだと?」」

 

秀隆と雄二は二人がAクラスであったことに驚き、同時に疑問を感じた。

 

「しかし、いくら営業妨害の対処とはいえ気絶させるのは頂けないな」

「「すみませんでした」」

 

苦言を呈する西村先生に、雄二と秀隆は珍しく素直に頭を下げる。とは言っても、本当に反省しているという訳でもなく、ただ単にお客の手前、という面が大きかったが。

 

「……まあいい。今回は大目にみてやる」

「「ありがとうございます」」

「うむ。では俺はこの2人を一応保険室へ運んでこよう」

 

そういうと、西村先生は常夏コンビをそれぞれ両肩に俵のように抱えるとそのまま教室を出て行った。

 

「えー、ご来店の皆様。先ほどは大変失礼しました」

「お詫びの印しとして、今ご注文して頂いていますメニューの料金を無料とさせて頂きます」

 

客たちに向かって深々と頭を下げ、謝罪の言葉を述べる二人。そんな2人に対し、食事を堪能していた生徒たちは、

 

『気にしないで』

『あの2人が悪い』

『このお菓子すごく美味しいのに』

『舌がおかしかったんじゃない?』

 

秀隆と雄二に労い言葉をかけたり、常夏を非難する声をあげる。

 

「ありがとうございます」

「どうかごゆるりとお寛ぎ下さいませ」

 

2人は再び頭を下げその場を退場。明久たちのいる廊下に戻った。

 

「さて、こんなもんか」

「まだ暴れ足りないが、まあいいだろ」

 

物足りなさげに息を吐く雄二。あれだけ暴れてまだ暴れ足りないとは、余程不満なことがあったのだろう。

 

「二人ともお疲れ様」

「見ててヒヤヒヤしたぞい」

「…………いつも通り」

「けど、何だか先輩達が可哀相なような……」

 

リリアは常夏コンビが連れていかれた方を見て心配そうに言った。

 

「まあ指導室じゃないだけましだろ。それより――」

「アンタ達こんな所で何してるの?」

「何かあったんですか?」

 

そこに丁度一回戦を終えた瑞希と美波が戻ってきた。

 

「ううん。何でもないよ! それより、2人とも一回戦はどうだったの?」

 

二人にトラブルを気取られたくない明久は直ぐに話題を大会に向ける。そうとは知らない瑞希は「えへへ」と笑いながらVサインを作る。

 

「勝てました!」

「ま、楽勝よね」

 

一回戦は美波の得意な数学だったので楽に勝てたようだ。

 

「二人ともおめでとう(ニコッ」

「「……っ!///」」

 

2人に笑いながら労いの言葉をかける明久。その笑顔見た瑞希と美波は頬を真っ赤に染めて明久から眼を背けた。

 

「……僕、嫌われる様なことしたかな?」

「どんな勘違いしたらそうなるんだ?」

「寧ろ逆じゃろうに……」

「…………相変わらず」

 

全くの見当違いをしていれる明久に、秀隆達はいつもの如く溜め息を吐く。

 

「明久が相変わらずなのは放っておくとして。二人とも戻って早々悪いが接客に回って欲しい」

「そろそろ一般客も増えるころだしな」

 

時刻も10時を過ぎ、校庭にも近所に住んでいる人や生徒の保護者もチラホラと見えはじめていた。

 

「分かりました」

「OK。任しときなさい」

 

指示を受けた瑞希と美波は、試合を終えたばかりだというのに、元気よく教室に入り、仕事に取り掛かっていく。

 

「じゃあ、僕達も頑張ろうか」

「うむ」

「はい」

「…………(コクコク」

 

――1時間後――

 

「ん? もうこんな時間か。秀吉、そろそろ二回戦の時間だ」

「む。もうそんなになるかの?」

 

腕時計で時間を確認した秀隆が秀吉に告げる。因みに今の衣装は、秀隆が執事服で秀吉がピンクのセーラー服に紫髪のツインテール(ウィッグ)だ。秀吉は最初嫌がったが、店の売り上げの為と涙を呑んで承諾した。

 

「じゃあ、俺達もそろそろ行くか?」

「ん。了解」

「じゃあウチらも行こっか?」

「はい」

 

明久達も会場へと向かう準備を始める。当然明久達も着替えていて、明久が黒の長袖シャツの上に黄色いベストを羽織り、先端が大きな手の様な形をした赤いマフラーにブーツ。雄二が吸血鬼の様なスーツにマント姿。瑞希と美波は其々ウエディングドレスである。

 

「皆さん、頑張って下さい!」

「…………宣伝も忘れずに」

 

平安貴族風の赤い狩衣を来た康太と、緑色のチェック柄スカートに、首に赤いリボンを付けた白のブラウスを着たリリアが明久達を激励する(康太は違うが)。

 

「うん」

「頑張ります!」

「ま、次も楽勝よ」

「油断してると足元を掬われるぞ?」

「まあ、何とかなるじゃろ」

「んじゃ、後は頼んだぞ」

 

他のFクラスメンバーやお客さんたちの声援を背に、秀隆たちは二回戦の会場へと足を運んで行った。

 




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