バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

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バカとテストと召喚獣の二次創作小説です。木下姉弟と幼馴染の少年『神崎秀隆』が吉井明久を始めとするFクラスのメンバーと打倒Aクラスを目指して奮闘するドタバタ学園コメディです。オリジナルキャラクターが登場、オリジナル設定を含みます。それらが嫌だという方は閲覧をお控え下さい。それ以外の方はゆっくりとお楽しみ下さい。

今回はいよいよ試験召喚大会決勝戦開始です。


第三十四問

第三十四問

 

「来たの」

「悪い。待たせた」

 

控え室のドアを開けた秀隆は、既に室内で待機していた秀吉に謝った。

 

「大丈夫じゃ。まだ時間はある」

 

秀吉は壁にかかった時計を指差した。確かに時間はまだ時間は10分はあった。

 

「どうせ姉上の所に行っとったんじゃろ?」

「……コーヒー飲みにAクラスに行っただけだ」

 

ひねくれた言い方をする秀隆に、秀吉はヤレヤレと首をふる。

 

「まあ良いわい。それで、姉上は何と?」

「霧島曰く体調不良だと。まあ、昨日の今日だ。仕方ないさ」

 

優子と話したことは頑なに出さない。

 

「というか、お前も気づかなかったのか?」

「昨日は帰ってからすぐ寝てしまったからの。朝も珍しくワシより早く起きて登校したようじゃし」

 

つまり、誰にも知られたくなかったと言うことだ。優子らしいと言えば優子らしかった。

 

「して、作戦はどうするのじゃ?」

「作戦? んなもんねぇよ」

 

作戦を確認しようとした秀吉に、秀隆はないときっぱり答えた。

 

「ないじゃと? 相手は明久と雄二じゃぞ?」

「だからだよ。アイツら相手に策を練ったところで弄するだけだ」

 

秀隆はそういうと控え室に置いてあったペットボトルの水を飲んだ。

 

「確かに、雄二相手に生兵法は愚策かの」

 

雄二は頭の回転が速い。下手に怪しい動きをしたら作戦を看過されるどころか逆に利用されなかねない。秀吉はそれを危惧した。

 

「それだけじゃねえよ」

 

ペットボトルの蓋を閉めると、秀隆は指を2本立てた。

 

「理由は2つ。いや、秀吉のを入れたら3つか」

「あと2つあると言うのか?」

「ああ。まず1つ目ーーというかこれが主な理由だな。アイツらに策は効かねえ」

「雄二がおるからの」

 

しかしそれでは秀吉の言ったことの繰り返しである。

 

「そうじゃねえ。明久だ。多分アイツはどんな作戦を立てようとただ突っ込んで来るだけだ」

 

秀隆は明久が作戦の如何関係なく突貫してくると断じた。

 

「明久が? そりゃあ明久は単純じゃが、そう易々と来るかの?」

「雄二がそうさせる。てか俺でもそうする」

 

秀吉はまだ要領が掴めていないようだ。

 

「こういった局面だとな、下手に小細工かますより素直に突撃した方が強いんだよ。相手が慎重になるよりガンガンに攻めてくる方が厄介だ」

 

戦国時代の戦でも、敵の策を破ったのは兵による突撃であることがしばしば見受けられる。兵は拙速を尊ぶという言葉もある通り、速攻は何よりも効果的だ。

 

「となると、いかに策を練ろうが後手に回る。だったらこっちも受けてカウンターを狙った方がいい」

「なるほどの」

 

これには秀吉も納得した。召喚獣の操作性では明久に、テストの点数では雄二に軍配が上がる。その強みを活かして速攻を仕掛けてくる可能性は十分にあった。

 

「それて、もう1つはなんじゃ?」

 

1つ目が主な理由なら、もう1つはなんだろうか。

 

「まあもう1つはオマケみたいなもんだが、もう俺たちの目的は果たしたんだよ」

「目的?」

 

秀吉は首を傾げた。

 

「おいおい忘れたのか? 腕輪の回収だよ」

「おお。そうじゃった」

「しっかりしてくれよ……」

 

ここ数日色んなことがありすぎて、すっかり頭から抜け落ちてしまっていた。

 

「すまね。じゃが、確かに決勝戦がFクラス同士になった今目的は達成されたの」

「だろ? それにココまでくればFクラスの実力アピールも十分だ」

 

明久の召喚大会参加の理由に瑞希の転校阻止がある。Fクラスが決勝戦に上がった今、優勝の如何に関わらず実力は示せたと言えよう。

 

「だからもう実質消化試合なんだよ。策を練ろうが結果は変わらねえんだ」

「なるほどの。確かにもはや作戦を立てる意義はないの」

 

どう転んでも目的が果たせている状態の今、無駄に作戦を練る意味はない。

 

「まあけど、どうせなら派手に盛り上げた方が楽しいか」

 

いつもなら面倒事は全力で避けるのに、ここぞとばかりにやる気をみせる秀隆を、秀吉は訝しんだ。

 

「……お主、何か企んでおるな?」

「人聞きが悪いな。間違っちゃないけどな」

 

そこで秀隆は秀吉にある指示を出した。

 

「ワシはそれで構わんが、大丈夫なのか?」

「大丈夫だ。『最初』さえどうにかなれば後はその場の雰囲気でどうにでもなるさ」

 

ヒラヒラと手を振ってみせる秀隆に、秀吉は少し不安を覚えた。

 

「まあ良いわい。ここまで来たんじゃ。最後までお主の指示に従うまでじゃ」

「んじゃそういう事で。頼んだぜ相棒」

「任された」

 

コツンと2つの拳が合わさった。

 

『只今より、試験召喚大会の決勝戦を執り行います! 選手の入場です!』

 

放送部のアナウンスの後、会場から割れんばかりの歓声が沸き上がった。その歓声を浴びながらステージに上がって来たのはお馴染みFクラスの4人。前代未聞も光景に、審判を勤める西村教諭も苦笑いを隠せない。

 

「まさかお前たちが戦うことになるとはな」

「酷いなあ。自分のクラスの生徒を信じていなかったんですか?」

 

皮肉まじりの言葉に、西村先生は「馬鹿者」と嗜めた。

 

「他の生徒ならいざ知らず、お前たちだと何かを企んでいるようにしか思えん」

 

これもある意味では信頼なのだろうか。しかし西村教諭の指摘は事実でもあるため、全員が目を逸らした。

 

「まあいい。位置に着きなさい」

 

西村教諭の号令で、明久と雄二、秀吉と秀隆はステージを挟んで向かい合いに対峙する。

 

「よう。秀隆。今日はどんな作戦で来たんだ?」

「テメエに教えるかよバーカ」

「明久、良き試合にしようぞ」

「もちろん!」

 

バチバチと火花を散らす雄二と秀隆。互いの健闘を祈り合う明久と秀吉。嘆息しながらも、西村教諭は4人に静かにするように言う。

 

『それでは! 試験召喚大会決勝戦ーー開始です!』

「試合開始!」

「「「「試獣召喚っ!」」」」

 

西村教諭がフィールドを展開し、4人の言霊に応じて魔方陣が浮かび上がる。魔方陣から現れた4人の召喚獣は空中を飛び上がり、スタッと着地してみせた。

これまでの試合とは違う演出に、観客のボルテージも鰻のぼりだ。

 

吉井明久 日本史 166点 & 坂本雄二 日本史 215 点

VS

木下秀吉 日本史 183点 & 神崎秀隆 日本史 208点

 

召喚獣の頭上に表示された点数を見て、会場の熱気はさらに上がる。Fクラスとは思えないほどの高得点。明久たちが、この試合のためにどれだけ頑張ってきたが如実に表れている。西村教諭も、これ程の点数を取るとは思ってもいなかったのか、開いた口が塞がらないでいた。

「へえ。頑張ったじゃないか明久」

「まあね!」

「流石は雄二、じゃの」

「秀吉も悪くないみたいじゃねえか」

 

軽口を叩く面々。それもそのはずだ。4人はこの決勝戦に示しあわせて勉強してきたのだ。お互いにこのくらいだろうという予想はできていた。

 

「さあってーーじゃあ」

 

秀隆が召喚獣に武器を構えさせる。

 

「始めますかあっ!」

 

開幕からダッシュ。秀隆は召喚獣を明久と雄二の元に走らせる。

 

「お前がそう来るのは分かってんだよ!」

 

雄二は明久に合図を送り、自分の召喚獣を横に飛ばせた。右と左、秀隆の召喚獣を挟み込むように位置取らせる。

 

「だよな!」

 

挟まれたと判断した瞬間、秀隆は召喚獣の両腕を広げ、2丁拳銃にした武器を撃った。狙いは当然頭部の一撃KO。

 

「ふんっ!」

「おらぁっ!」

 

だがその目論見は外れた。明久は寸前で躱し、雄二は弾丸を『拳』で打ち返した。予想外の対処に、秀隆も呆気に取られる。

 

「……マジ?」

 

明久は兎も角、雄二の回避方法は予想がついていなかった。

 

「狙いが見え見えなんだよ!」

 

雄二はその一瞬の隙を逃さず、拳を叩き込もうと召喚獣を躍らせる。明久もそれに合わせて木刀で斬りつける。

 

「そう来ると思っとったわい!」

 

そこに割り込むように、秀吉は召喚獣を滑り込ませた。薙刀の柄で雄二の拳を受け、その反動で弾き返す。

 

「秀吉テメエ」

「秀隆の下には行かせんぞ?」

 

雄二と一定の間合いを保ちつつ、秀吉は薙刀を構えさせる。

 

「テメエーーいや、テメエらハナっからコレを狙ってやがったな?」

「何の事やら?」

 

犬歯を剥き出しにして笑う雄二に、秀吉も不敵に笑う。

 

「流石は演劇部。役者が過ぎるな」

「褒め言葉として受け取っておくぞい」

 

雄二もジリジリと間合いを詰めようとするが、その度に秀吉は刃を振るう。

 

「どっからが作戦だ?」

「作戦? そんなものありはせんよ」

「なに?」

 

雄二は訝しんだ。あの秀隆が明久じゃあるまあいし、無策で突っ込んでくる訳がない。必ず何か見落としがあるはずだ。

 

「じゃが強いて言えばの」

 

考えを巡らせる雄二に、秀吉はニヤリと嗤ってみせる。

 

「この試合『そのもの』が作戦じゃ」

 

言うや否や、秀吉が一気に間合いを詰める。その行動に、雄二も判断が一瞬遅れた。

 

「ぐっ……!」

「どうした? お主らしくないの?」

 

普段の大人しさは鳴りを潜め、今は雄二を挑発するほど大胆になっている。

 

「この試合が作戦? どういう意味だ?」

「自分で考えるんじゃな。いつもの様に」

 

ギリギリと薙刀とメリケンサックがつばぜり合う。点数で勝手いるものの、武器の差か戦況は雄二がやや不利だった。加えて雄二は秀吉の言動に翻弄されつつある。

作戦とは。秀吉の意図は。秀隆は何を狙っているのか。思考と操作。マルチタスクを強いられた雄二の額に汗が滲む。

 

「ワシは刺し違えてもお主を落とすぞ!」

 

秀吉の気迫に、雄二は無意識に半身を引いた。

 

「向こうもおっ始めた」

「そうだね」

 

一方、明久と秀隆も間合いの取り合いをしていた。明久が詰めれば銃が火を吹き、秀隆が攻めいれば明久が飛び退く。一進一退の攻防戦。見ている側もハラハラと手に汗握る。

 

「どうした? いつもの勢いがないな?」

「そっちこそ。最初みたいに銃なんて捨ててかかって来たら?」

「お前なんて怖くねえってか?」

 

銃で牽制しつつ、間合いとタイミングを測る。

 

「悪いがお前の怖さは良くしってるからな。暫く大人しくしてもらうぞ」

 

遠近両採用と近接オンリー。戦力さは一目瞭然。だがそれで明久が諦めるかと言えば、そんなはずはない。

 

「秀隆。君も忘れてるみたいだから言っとくけど」

「あん?」

「僕にだってーー『遠距離』はある!」

「……やってみな!」

 

待ってましたとばかりに、秀隆も牙を剥く。

明久は右足を半歩引き、腰を捻り体の右奥に木刀を隠すように構える。

木刀ーー脇構えーーそこから導かれる『遠距離技』はひとつ。

「「魔神剣!」」

明久はそのまま地面を擦る様に、秀隆は右手の銃を剣に変え振るう。振った先から衝撃波がステージを走り、2人の真ん中で爆ぜ土埃が舞う。

 

「「瞬迅剣!」」

 

土煙の晴れぬ中、両者の剣先がギィンと音を立てぶつかる。その衝撃で煙が一気に霧散し鍔迫り合う召喚獣が現れる。

 

「そらっ!」

「わわっ!」

 

膠着を破ったのは秀隆の方からだった。秀隆は剣を引くことで体重を前に乗らせた明久をつんのめさせた。

そのまま引き金を引き頭部を狙うが、明久も召喚獣を転がらせて何とか回避した。

両者の距離が開いたところで、観客席からまた『わあああっ!』と歓声が上がる。文字通りテレビ画面の中でしか見れないような技の応酬。格闘技を見てるかのような臨場感と興奮。客席の熱気がますます上がっていく。

 

「ちっ! 仕留め損ねたか」

「あっぶなかったあ」

秀隆は右手をヒラヒラと振り、明久は腕を擦る。観察処分者の召喚獣がおったダメージは召喚者にも還元される。お互いに長期戦は避けたい場面である。

 

「まだまだこんなもんじゃねえよなあ!」

「望むところだ!」

 

だが2人とも、そんなのお構い無しとばかりに召喚獣を走らせ戦わせる。

2人は同じ観察処分者として教師陣からの雑務をこなしていた。その内練習と称して模擬戦はやってきたが、本気で勝ちを争ったことは1度もない。2人してFクラス入りした今、この決勝戦は2人が全力で戦える数少ない戦場だった。

剣で斬りあい、弾丸が爆ぜ、召喚獣が舞う。試験召喚戦争とは違う、1対1の全力勝負。観客の歓声が届かないほど、2人は集中していた。

 

「おらぁっ!」

「ぐぅっ!」

 

明久たちが観客の熱線を浴びている一方で、こちらも激しい攻防が繰り広げられてい。いや、攻防というにはあまりにも一方的だった。

雄二と秀吉の戦闘は、雄二が攻め秀吉が防ぐという攻守のハッキリ別れた様相だ。しかし、攻めているにも関わらず、焦っているのは雄二の方だ。

 

「(あっちはどうなってやがる?)」

 

歓声から盛り上がりを見せているのは感じとれる。横目でチラ見しても、明久と秀隆が激しい攻防をしているのも分かる。

だが点数的に不利なのは明久。雄二も加勢したいが、秀吉がそれを許さない。かといって早々に倒そうとしても、亀の様に防御に徹していて致命傷を与えれない。雄二は焦りと苛立ちで奥歯を噛んだ。

 

「くそっ! 何が狙いだ?! 秀吉!」

「言うたじゃろう。刺し違えてでもお主を止めると」

 

秀吉の言うとおり、今雄二は秀吉に釘付けにされている。秀吉、あるいは秀隆の手の平の上で踊っていると分かってはいるが、現状を打破できないでいる。

 

「(考えろ。必ずチャンスはある!)」

 

どうすれば相手の隙をつけるか、現状を打開できるか、雄二は考えを巡らす。そんな雄二の心中を見透かしたかのように、秀吉は嗤う。

 

「考えている暇があるのかの?」

「ああ?」

「中途半端に賢い奴ほど御しやすい、と秀隆が言っとったぞい?」

「何が言いたい?」

「独り言じゃよ」

 

挑発するような秀吉の笑みに、雄二はまた苛立ちをつのらせる。

確かに、自分を賢しいと思っているバカほど、己を過信する。失敗を想定せず、善後策も講じず、半端な作戦で勝った気になる。

Bクラスの根元が良い例だ。小細工を弄じて明久の逆鱗に触れ、結果敗北した上にクラスでの地位も失った。元々の人望のなさは自業自得とは言え、油断と傲慢が招いた結果だった。

そこまで考えついて、雄二はハタと気づいた。今の自分も根元と同じではないだろうかと。

 

「(俺の作戦では、最初に『秀吉』を倒して2人がかりで秀隆を倒すはずだった)」

 

仮に分断されても、秀隆相手に粘って、その内に秀吉を撃破する想定だった。召喚獣の操作では明久が、点数では自分が勝っているから、秀吉『程度』なら何とでもなる。そう思っていた。

 

「(それが間違いだったってのか?)」

 

そもそも、秀吉を襲っている内に秀隆に背後から撃たれたらアウト。分断しても、明久は秀吉相手に本気はだせない。となれば、この構図になるのは必然だった。

 

「(秀隆はそれを見越して突っ込んできた。どうなっても1対1になるから!)」

 

想定を上回ったのではない。想定してなかった自分のミス。完璧だと思った作戦に胡座をかいて対応策を怠った実質のノープラン。それで秀隆の良いようにされている自分は、正にあの時の根元そのものだ。

 

「(どうする? どうする?!)」

 

今更作戦を考えても、それを明久に伝えたとして現状回復は困難。よしんば秀吉を倒せたとして、果たしてそのまま秀隆の相手が出来るのか。

雄二の思考が絶望に飲まれそうになった。その時ーー

 

『雄二! 頑張れ!』

 

声が聞こえた。普段は無口で必要以上に喋らないのに。その華奢な身体のどこからそんな声が出せるのだろう。実際は観客の声援にかき消されていたのかもしれない。それでも雄二にはしっかりと届いた。

 

「どらぁっ!」

「があっ!」

 

気合い一閃。雄叫びと共に放った拳は、防御ごと秀吉の召喚獣を吹き飛ばした。

 

「……もう考えるのは止めだ」

 

どうせ考えても無駄なのだ。だったら!

 

「悪いが本気でぶん殴らせてもらうぞ、秀吉ぃ!」

「望むところじゃ!」

 

何度目かの拳と薙刀のぶつかり合い。雄二と秀吉の戦闘も佳境に入った。

 

 




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