バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

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バカとテストと召喚獣の二次創作小説です。木下姉弟と幼馴染の少年『神崎秀隆』が吉井明久を始めとするFクラスのメンバーと打倒Aクラスを目指して奮闘するドタバタ学園コメディです。オリジナルキャラクターが登場、オリジナル設定を含みます。それらが嫌だという方は閲覧をお控え下さい。それ以外の方はゆっくりとお楽しみ下さい。

束の間の休息回(?)です。



第四十三問

第四十三問

 

何者かによる盗撮騒ぎと、明久たちによる女風呂突撃事件から一夜が明けた翌朝。元々宴会場だった2つの大広間で、A~Fクラスが2組に分かれて朝食を摂っていた。

 

「……雄二、あーん」

「止めろ翔子。周りの奴らが箸を持って俺を刺し殺すチャンスをうかがっている」

 

翔子が朝食のおかずの焼き鮭を橋で一つまみして雄二の口へ持っていくが雄二はそれを自分の箸で掴んで拒否している。

それを見ていた周りも当然のように敵意と嫉妬を剥き出しにして雄二を攻撃しようと箸を構える。もちろんその中には明久と康太もいる。

 

「翔子ちゃん。朝から大胆です!」

「ウチも見習わないと」

 

そう言うと瑞希と美波の2人は自分のおかずを一品箸で掴む。

 

「「明久君(アキ)あーん!」」

「え?」

 

標的に明久が追加された。当の明久は、突然振って湧いた状況に、幸福を噛みしめるどころかフリーズしてしまう。

 

「お主ら、朝飯くらい静かに食えんのか?」

「…………朝から騒々しい」

 

秀吉が味噌汁を啜りながら窘める。康太も攻撃側だったのに一転して秀吉側についた。

 

「そもそも翔子! お前はAクラスだから別の部屋だろうが!」

 

雄二の言う通り、食事も入浴と同様にA~C 、D~Fクラスに分かれている。しかし翔子はそんなものは関係ないとばかりに雄二の横を陣取った。因みに雄二の前に明久が向かい合って座り、その両脇を瑞希と美波が固めている。

 

「まあいいじゃない雄二。せっかく霧島さんが来てくれたんだから」

「冗談じゃねえ。こんな状況じゃあおちおち飯なんか食ってられるか!」

 

ガツガツと食事を掻き込む雄二。翔子に「あーん」をさせる暇を与えないつもりらしい。

 

「雄二。飯はゆっくりよく噛んで食え」

「そうよ坂本君。喉を詰まらせるわよ」

「んぐっ!?」

 

優子に言われたそばから喉に詰まらせ苦しそうに胸を叩く。翔子が麦茶の入ったコップを差し出すと、引ったくるように取ってからガブガブと飲み干した。

 

「言わんこっちゃない」

「……んで、何でお前もいるんだよ?」

 

そう。翔子と同じく優子もFクラスの中にいるのである。

 

「代表のお守り」

 

素知らぬ顔で白米を口に運ぶ優子。そのもっともらしい理由に、秀隆も苦虫を噛み潰したような顔になった。

 

「だったらこいつを何とかしてくれ!」

 

一息ついた雄二が涙目で優子に訴えかける。目に涙を溜めているのは喉に詰まらせたせいか、はたまた本当に翔子が嫌なのか。

 

「無理よ。坂本君が関わると代表は歯止めが効かないもの」

「ちくしょうおおおっ!」

 

平然と言ってのける優子に、雄二は慟哭するほかなかった。

 

「意味ねえじゃねえか」

「だって本当なんだもの」

 

じゃあ何のためのお守りなのか。それが口実でしかない事を知る秀吉は、静かに沢庵を齧った。

 

「まあいい。ちょうど俺もお前に聞きたいことがある」

 

食事の手は止めず、声のトーンだけ落として秀隆が優子に訊ねる。

 

「なにを?」

「昨日の小型カメラ。いつ誰が見つけたか分かるか?」

 

優子も顔色を変えずほうれん草のおひたしに箸をつける。

 

「ごめんなさい。私がお風呂から出たらもう小山さんたちがそっちに向かってたの」

「そうか。なら分からないか」

「ええ。……誰か居合わせた人がAクラス (ウチ)にもいるかもしれないから、それとなく聞いてみるわ」

「頼む」

 

秀隆の質問の意図を察した優子は自ら聞き込みを約束し、秀吉もその恩に着ることしにた。

 

「ところで優子」

「なに? まだなにかあるの?」

 

声の調子を戻した秀隆が改めて優子に聞いた。

 

「それ、食わねえの?」

「え?」

 

秀隆が箸で示す先は、すっかり身を食べつくされて骨と皮だけが残った平皿だった。

 

「このお皿、もう骨と皮しかないわよ?」

「だからその皮だよ、皮」

 

秀隆が所望したのは、焼き鮭の皮だった。

 

「皮? なんで皮なんか?」

「焼き鮭は皮が一番旨いんだよ。いらないなら貰うぞ」

「あ、ちょっと!」

 

優子の承諾を待たず、秀隆は鮭の皮をひょいと摘まむとそのまま自分の口に放り込んだ。

 

「うん。旨い」

「アンタねえ……」

 

鮭の皮を美味しそうに咀嚼する秀隆に、優子はホトホトに呆れてしまった。

 

「いいじゃんか。食わねえんだろ?」

「だからって勝手に取っていかなくてもいいでしょうが」

「しょうがねえなあ」

 

鮭の皮云々ではなく身勝手な振るまいに腹を立てる優子に対し、なにを思ったのか秀隆はだし巻き玉子を一切れ摘まむと、

 

「ほれ」

「え?」

 

優子の顔の前に持っていった。

 

「やるよ。だし巻き」

「いや、そうじゃなくて……」

 

しどろもどろになり狼狽える優子をよそに、秀隆は「ん」と箸を更に突き出した。

 

「……あーん」

 

根負けした優子は、大人しく差し出されただし巻き玉子を口にする。

 

「旨いよな。ここの飯」

「……そうね……」

 

すでに同じものを食べたはずなのに、まったく違う味がした気がする。むしろ味が分からないくらいだ。

 

「ねえ雄二」

「なんだ?」

「どうしよう。すごく自然すぎて殺意すら湧かなかったよ」

「奇遇だな。俺もだ。あと翔子、いくら口を開けても米粒ひとつお前にはやらんからな」

「……雄二の意地悪」

 

翔子の作戦はことごとく失敗に終わった。

 

「……雄二、一緒に勉強できて、嬉しい」

「だから待て翔子。当然のように俺の膝に座ろうとするな。クラスの連中が靴を持って俺を狙っている」

 

朝食後は合宿の本領、お勉強の時間だ。

今回はAクラスとFクラスが合同で学習を行う。勉強科目は基本的に自由。席も決まっていない。苦手教科を克服するもよし。得意科目を伸ばすもよし。みな(一部のFクラス以外)が各々課題を持って勉強に勤しんでいる。

分からないところがあれば、周りに聞いたり、監督役の教師に聞くのも可能で、机も生徒同士が向かい合うように置かれている。

 

「霧島さんも熱心だなあ」

「ほらアキなにを暢気にしてるの。ここの計算間違ってるわよ」

「え? 本当?」

 

雄二と翔子の光景を微笑ましく(怨みがましく)眺めていた明久の思考は、横からかかった美波の声で現実に引き戻された。指摘された箇所に目を落とすが、どこを間違えたのかちっとも分からない。

 

「おっかしいなあ」

「見せてください。--ああ、たぶんここの式に代入する時に数字を間違えたんだと思います」

 

明久のノートを確認した瑞希が赤ペンで添削していく。かなり最初の方から間違えていたようだ。

 

「--ああそっか、なるほどなあ」

「なるほどなあって、アキったら本当に分かってるの?」

「全然」

 

決して胸を張って言う台詞ではない。

 

「まったくもう」

「あははは。けど姫路さんの教え方、すっごく分かりやすかったよ」

「え、あ、ありがとうございます!」

 

明久に褒められた瑞希の頬が染まる。対称的に美波の頬は膨れ上がった。

 

「島田、むくれるな。まだ挽回のチャンスはある」

「そ、そうよね!」

 

後ろからかかった秀隆のアドバイスに、俄然やる気を漲らせる。明久に良いとこを見せようと猛烈にペンを走らせていった。

 

「案外優しいじゃない」

「そうでもないさ。島田みたいなタイプは焚き付けた方が御しやすいだけだ」

 

秀隆にとっては、優しさではなく、後の面倒事を考慮しただけ。降りかかりそうな火の粉の火元を先に消したまでだ。

 

「それより、問題はコッチだ」

「そうね」

 

2人の視線の先には、涙目を浮かべながらノートにペンを走らせる秀吉の姿があった。

 

「うう……。昨日も散々英文を書かされたというに、何故また英語をやらねばならぬのじゃ……」

「その英語が散々だったからでしょうが」

 

昨日の反省文で、秀吉の英語力の酷さが露見した。これに眉を曇らせた優子は、今日の自習では必ず秀吉に英語をさせると決めていた。秀隆はその付き添いだ。

 

「そう悲観するな秀吉。役者を目指すなら最低限の語学力は必要だ。公用語としての英語は覚えておいて損はない」

「しかしのぅ……」

 

それでも渋る秀吉に、どうしたものかと腕を組む。やる気がないのに勉強を強要するのも酷なものというもの。

 

「秀吉はどんな役者になりたいんだ?」

 

そこで秀隆はアプローチを変えることにした。

 

「なんじゃ、藪から棒に」

「いいから。あるだろ? 舞台で活躍したいとか、ハリウッドに出たいとか」

 

一口に役者と言っても、その活動は舞台、ドラマ、映画と多岐に渡る。演劇一本で活動する役者もいれば、モデルやタレント業を平行して行う人もいる。

 

「やはり舞台俳優かのう。一度はブロードウェイに立ってみたいものじゃ」

 

ブロードウェイの舞台で演じることは、多くの役者の夢である。

 

「ならやっぱり英語はいるな。台詞も当然英語だし、舞台挨拶とかでも英語で話せる方がウケが良い」

「そうかのう」

 

秀吉が少し興味を見せたので、ここぞとばかりに畳み掛けた。

 

「そうさ。考えてもみろ。ハリウッド俳優が日本でプロモーションするとき、舞台に立って日本語で『コンニチハ』って言うだけで沸き立つんだ。向こうでも同じことが言える」

「そう言われればそうじゃの」

「それに、例えばシェイクスピアなんかの、海外原作の舞台を演るとなったら、翻訳を読んでもいいが原作を読めた方が理解が進むし、自分なりの解釈で舞台を盛り上げることができるかもしれない」

「それは……」

「そうなったら役者冥利に尽きるってなもんじゃないか?」

 

小さな劇団では座長が俳優だけでなく脚本や演出を兼ねる時もある。秀吉が将来そうなるかは分からないが、いざというときにも、出来る選択肢を増やしておくに越したことはない。

 

「……分かった。少し頑張ってみるのじゃ」

 

秀吉もやる気を出し、黙々とノートに向かう。やれやれ、と秀隆も一息ついた。

 

「相変わらず口が上手いわね。詐欺師になれるわよ」

「褒め言葉として受け取っとく」

 

そんなやり取りをしていると--

 

『僕にお尻を見せてくると嬉しいっ!』

 

明久の欲望にまみれた声と、明久の情けない悲鳴が聞こえた。

 

「なによ、いったい?」

「明久め。ついにとち狂ったか?」

 

周囲の視線が明久に注目する。そこには涙を浮かべて悶える明久と、手に何かを持った愛子がいた。

 

「愛子、いつ来たのよ?」

「やっほー優子。なんだか面白そうな事してたから来ちゃった」

 

朗らかに微笑む愛子の足に、明久は縋りながら「お願いだから消して!」と懇願していた。

 

「工藤それ……ボイスレコーダーか?」

「そうそう。結構面白いんだよ、コレ」

 

愛子がレコーダーのスイッチを押す。

 

『工藤さんお願い!』『僕にお尻を見せて』

 

内蔵されたスピーカーから出てきたのは、電子的な明久の声。ただし台詞の繋ぎめに違和感がある。

 

「今のは……録音した明久の声を編集したのか」

「そうだよ」

「凄いわね。一瞬で出来るのね」

「ねえ。楽しいよね」

 

カラカラと軽快に愛子は笑う。その後ろでは瑞希と美波が氷の微笑をしていた。

 

「…………工藤愛子。おふざけがすぎる」

 

瑞希と美波に必死に弁明する明久。彼に助け船を出したのは、意外にも康太だった。

 

「ムッツリーニ! 助けてくれるの!?」

「…………上手くやってみせる」

 

自信ありげに親指を上げる康太。その姿に頼もしさを感じた明久は、彼を頼りに2人の説得を試みた。

 

「落ち着いて2人とも。さっきのは誤解なんだ。僕はただ純『お尻が好きっ』て言いたかったんだ。『特に雄二』『の』『が好き』ってムッツリイーニイイーっ! 後半のは貴様の仕業だなっ!? 上手くやるって工藤さんより上手に僕を追い込むってことかよ!?」

「…………工藤愛子。お前はまだあまい」

「くっ! やるね、ムッツリーニ君」

 

宿敵に相対したかのように笑う康太と愛子。標的にされた明久はたまったものではない。

 

「愛子。やり過ぎよ」

「康太もだぞ」

 

見かねた優子が愛子を窘める。秀隆も珍しく康太を諫めた。

 

「はーい」

「…………仕方ない」

「仕方なくないからね! 工藤さんも残念そうにしない!」

 

注意された2人は渋々机に座り直し、ノートと教科書を開く。多少の遺恨は残ったが、取りあえずこの場は収まった。

 

「まったくもう」

「ねえ、アキ……」

「なに? 美波?」

 

美波がもじもじしながら明久に話しかける。

 

「……そんなに坂本のお尻が良いの……? ウチじゃダメなの……?」

「君は何を言ってるんだい?」

「前から分かっていたことですげど、そうハッキリと言われるとショックです……」

「待って2人とも。僕は同性愛者なんかじゃないよ!? 僕にそんな趣味は--」

 

明久が瑞希と美波の誤解を解こうとして口を開いた時--

 

「同性愛を! バカにしないで下さい!」

 

乱入者が現れた。その姿を認めた秀隆がげんなりとした顔になる。

 

「み、美春? なんでココに?」

「お姉さま! お姉さまに逢いたくて、美春はDクラスをこっそり抜け出して来てしまいましたっ!」

 

清水が自慢の縦ロールを揺らしながら美波の元に駆け寄る。

 

「須川バリアー!」

「け、汚らわしいですっ! 腐った豚にも劣る抱き心地ですっ!」

 

勝手に盾にされたあげく口汚く罵倒された須川は泣いていいと思う。

 

「お姉さまは酷いです……。美春はこんなにもお姉さまを愛しているのというのに、こんな豚野郎を掴ませるなんてあんまりです……」

 

同情を誘っているのだろう。よよよと泣き崩れる清水に、美波は狼狽えた。

 

「ちょっと美春! こんなところで愛してるなんて言わないでよ! アキに勘違いされちゃうでしょっ!」

 

勘違いするのは明久だけではないとは思うが、美波にとってはそこが重要だった。

 

「清水。大人しく自分のクラスに帰れ。今なら見逃してやる」

 

秀隆がいつもより少しドスのきいた声で清水に退室を促す。しかし、それで大人しく引き下がる清水ではない。

 

「お黙りなさい豚野郎! お姉さまとの逢瀬を邪魔する輩は誰であろうと許しませんっ!」

「なら鉄人に引き渡すまでだ」

 

秀隆も容赦なく西村教諭を呼ぼうと立ち上がる。

 

「君たち、少し静かにしてくれないか?」

 

一発触発の中、凛とした声が響く。眼鏡を押し上げ、クールな声を発した主は、学年次席の久保利通だ。

久保は明久たちの方に歩み寄ると、騒ぎ立てる一同を一瞥した。

 

「ごめん、久保君」

 

一同を代表して明久が頭を下げた。その時に一瞬だけ久保の表情が変わったかのように見えたが、直ぐにいつもの冷静な顔つきに戻った。

 

「吉井君たちか。まったく。普段と違う環境で浮かれるのは分からないでもないけど、もう少し節度を持ってほしい」

「はい……」

 

久保の正論に返す言葉もなく、ただただ平謝りするほかなかった。

 

「それに、同性愛者をバカにするような発言はどうかと思う。彼らは異常者ではなく、個人的嗜好が世間一般と少し食い違っているだけの普通の人たちなのだから」

「あ、うん。そうだね」

 

久保のやけに実感の伴った言葉に、明久は困惑しながらも一応同意した。

 

「ほら美春。くだらないこと言ってないで自分のクラスに戻りなさい。いい加減にしないと本当に西村先生を呼ぶわよ」

「くだらないことなんてありません! 美春はお姉さまを愛しているのです! 性別なんて関係ありません! お姉さま、美春はお姉さまのことが本当に--」

「はいはい、ウチにそんな趣味はないからね」

 

依然として収まりきらない清水を、美波が教室の外に追いやった。

 

「……性別なんて関係ない、か……」

「……性別なんて関係ない、ですか……」

「……性別なんて関係ない、ね……」

「取りあえずお前らはソコから離れろ」

 

久保、瑞希、優子が三者三様に清水の言葉を反芻する。録でもないと感じ取った秀隆がツッコミを入れた。

 

「それに久保。別に同性愛者をバカにしたつもりはない。同性愛だろうと結局は恋愛だ。しょせんは惚れた腫れたの問題。好きになった相手が異性か同性か。とどのつまりそこの差でしかない」

「……意外だね。君がそんなことを言うのは」

 

明久たちも意外そうに秀隆の言葉に耳を傾ける。

 

「別に同性愛者に理解を示しているわけじゃないし、偏見がないわけでもない。明久が俺に告白してきたら全力でぶちのめす自信はあるし、明久と雄二が付き合おうものなら距離を置こうと思う」

「僕を引き合いに出す意味ないよね!?」

「気色悪いことを言うんじゃねえ!」

 

明久と雄二の抗議を無視して秀隆は話を続ける。

 

「俺が気に入らないのは清水だ」

「美春?」

「アイツは島田の気持ちを無視して自分の感情を一方的に押しつけているだけだ。それは同性愛云々以前の問題だ」

 

秀隆は清水のやり方が恋愛として根本的に間違っていると指摘した。

 

「アイツは自分が島田に愛されないのを明久と、『同性愛者』というカテゴリーのせいにしてるだけで、自分の態度を鑑みることを一切していない。だから気に入らねえ」

 

苦い経験でもあるのか、吐き捨てるように言いきった秀隆に、明久たちは不安そうな顔をする。

 

「だから久保、お前が誰を好きになろうが構いはしないが、自分の気持ちを相手に一方的に押しつけるのだけは止めろよ」

「……肝に銘じておくよ」

 

久保の神妙な面持ちに、明久は何故か背筋が氷る思いがした。

 

「やっぱり明久君は坂本君が好きなんですね……」

 

どこをどう解釈したらその結論に至るのだろうか。

 

「あのね、姫路さん。誤解しているようだけど僕は普通に『秀吉が』『好き』なんだってちょっと!」

 

明久が愛子と康太の方に目をやると、2人してほくそ笑んでいた。

 

「あ、明久……。ワシはいったいどんな返事をしたらいいのじゃ……?」

「ち、違うんだ秀吉! いや違わないけど、僕は秀吉の『お尻が』『好き』なん2人とも今すぐその機械を渡しなさい!」

 

さすがの明久も怒りを顕にして康太と愛子に詰め寄る。当然ながら2人は既に退散していた。

 

「あっ! こら待てっ!」

 

明久もすぐさま2人を追いかける。縦横無尽に室内を駆け回る3人に、教室中がにわかに騒がしくなった。

 

「貴様ら! 自習中とは言え何を騒いどるか!」

 

西村教諭が怒鳴り込んできて、ようやく騒ぎが終息した。

 

「ねえ秀隆」

「……嫌な予感がするが一応聞いておく。なんだ?」

「秀吉と吉井君が結婚したら--吉井君は私の義弟になるのかしら?」

「……知らねえよ……」

 

もはやツッコむ気力も起きなかった。

 

 

 

 

 




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