バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

89 / 137
今回は明久の家での勉強会の翌日、雄二の家に行くまでになります。


第七十七問

第七十七問

 

「――ってなことが昨日あったんだよ」

「とりあえず、アンタの地理が不安になるわ」

 

明久の家で勉強会をした翌日、秀隆は優子に昨日に起きたことを話した。

 

「何言ってんだ。地理は全て地球に帰結するだろ」

「横暴にもほどがあるわよ」

「雄二も同じようなリアクションじゃったな」

 

試験期間なため、今日は秀吉もいつもよりも遅く、優子たちと同じ時間に登校している。

 

「それにして、吉井君にお姉さんがいたなんてね」

「まったくだ。ま、『アレ』なら隠したい気持ちも分かるが」

「強烈なインパクトの御仁じゃったな」

 

ブラコンの姉は時々いるとは聞くが、あれほど極端な人もいないだろう。

 

「アンタたち今まで何も知らなかったの?」

「うむ。まさに青天の霹靂じゃった」

「去年ハーバードを卒業したってたから、少なくとも明久が中学の時には渡米してたはずだしな」

 

そこからそのまま海外で就職、明久曰く両親の仕事を手伝っているそうなので、ほとんど移住に近かったようだ。

 

「けど最初から居なかったみたいにしなくてもよくない?」

「お前は直接会ってないからそう思うかもしれんがな、俺が明久の立場でもあの姉貴は全力でひた隠しにするぞ」

「ワシも自ら存在を匂わせることはせんじゃろうな」

 

優子は姉弟なのにと疑問を持ち、秀隆と秀吉は姉弟だからだと明久側に立つ。

 

「ま、けど良かったじゃない、秀吉?」

「うむ? 何がじゃ?」

「アンタのお姉さんがこの私で」

「…………」

「私ほど賢くて、弟に『優しい』姉もそうそういないわよ?」

「…………そうじゃな」

 

胸を張る優子に対し、秀吉は顔を全力で背けた。

 

「アンタもそう思うでしょ?」

「そうだなぁ……」

 

秀隆に同意を求める(強要する)優子を、秀隆は頭から爪先、胸元をつぶさに見回す。

 

「何よ? 人のことジロジロと見て。厭らしいこと考えてるんじゃないでしょうね?」

「いや、どっちかって言えば姫路の方が姉っぽ――ぐへぇあっ!?」

 

顎に手を当て呟く秀隆の腹に、優子の脚が突き刺さる。

 

「今、どこ見てその台詞を言ったのかご教示願えるかしら?」

「テメェの、どこが、優しい、んだよ……」

「何よ? アンタが余計なこと言うからでしょ」

「だからっていきなりら蹴りつけるヤツがいるかよ……」

「お主が言えたことではなかろうに」

 

いつものプロレスに、秀吉は呆れ返っていた。

 

「ま、いいわ。例のバームクーヘンで手打にしてあげる」

「はぁ? あれは願掛けだって言っただろ?」

「いいじゃない別に。私にもその願掛けさせてよ」

「お前が願掛け必要なタマかよ」

 

Aクラスの優子は、間違いなく成績は上げてくるだろう。それに今更願掛けに頼るような性格でもない。

 

「つうか思ったんだけどよ」

「何よ?」

「甘いもんばっか食ってるから胸じゃなくて腹に脂肪がいくんじ――」

 

再び秀隆の腹に先ほどよりも強烈な浴びせ蹴りが突き刺さる。

笑っていない笑顔で凄む優子と、腹を押さえて呻く秀隆を見やって、

 

「雉も鳴かずば撃たれまいて……」

 

秀吉は呆れたようにため息を吐いた。

 

「ぬ? あれは明久かの?」

 

学園前の上り坂に差し掛かったところで、秀吉たちは明久と合流した。

 

「おはようなのじゃ。明久」

「あ、秀吉おはよう」

「おはよう吉井君」

「おは」

「木下さんに秀隆もおはよう」

 

明久も秀吉たちに気づいて挨拶を交わすが、肩が下がり気味でどこか気落ちしているようだ。

 

「また姉貴になにかされたか?」

「あ、うん。今朝ちょっとね……」

「また減点でもされたのかの」

「あー、まぁ、うん。そんなところ」

 

流石に化粧されそうになったとは死んでも言えない。

 

「何点減点食らったんだ?」

「今朝唐突に英語の問題だされて、昨日のお仕置きとかもろもろ含めて全部で250点くらい」

「250点も? 吉井君のお姉さんってかなり厳しいのね」

「いや、厳しいと言うか理不尽と言うか……」

 

その減点の約半分が明久の性的嗜好に起因しているとは優子も思うまい。

 

「て言うか、何で木下さんまで姉さんのこと知ってるの?」

「さっき昨日の話してたからな」

「……あんまり姉さんのことを言いふらさないでほしいんだけど」

 

明久からしたら、姉の存在が知れ渡ることは色々とよろしくない。

 

「けどよ、どうせいつかはバレるんだから今の内に知り合いくらいには話しといて損はないだろ」

「そりゃそうかもしれないけど――待って。もしかして姉さんが居座る方向で話してる?」

「こういう時だけは察しがいいな」

 

明久の危機察知能力には感心する。

 

「笑えない冗談はやめてよね。秀隆はあの姉さんが居座っても良いって言うの?」

「そうは言わねぇよ。けど現実問題お前の現状を考えてみろ」

「明久の総合科目は1000点弱点じゃったな」

「うん。調子がいい時で1000点ちょっとだよ」

「それを全部期末テストでカバーするとなると、余裕をみるなら1100点は必要ね」

 

総合1100点前後はEクラス中堅レベルの成績だ。多少成績が右肩上がりだとしても、今の明久には少し厳しい。

 

「ま、点数目標はあくまでも目標。これからまた減点されるかもしれねぇから点数は取れるだけ取るに越したことはねぇよ」

「ま、そうなんだけどさ」

「ねぇ、ちょっといいかしら?」

 

成績を上げる話をしていると、優子が手を上げた。

 

「さっきから期末テストの点数の話ばかりだけど、それ以外に点数を上げるか、そもそも減点されないようにすればいいんじゃないかしら」

 

優子の言っていることは当然の意見だ。勉強が苦手な明久が減点を回避するなら、生活態度を改める、家事を手伝ったり人助けをしたりと善行を積むなど方法はいくらでもありそうだ。

 

「そうだね。普通の姉ならね」

「そうだな。普通ならな」

「普通の家ならそうじゃろうな」

「?」

 

だが相手はあの玲だ。一般的な家庭の常識は通用しない。その上、明久の吉井家での地位は最下層。多少の家事手伝いは加点どころか現状維持にも繋がらない。

 

「ともかく、今は明久の点数を上げることに集中だ。結局それが一番手っ取り早い」

「そうじゃの」

「それしかないよねぇ」

 

結局勉強会するしかなくなり、明久は既に気疲れしたように肩を落とした。

 

「さぁと言うわけで雄二。今日も楽しく勉強会をしよう!」

 

そんなこんなで放課後。素早く帰り支度を終わらせた明久は雄二の席に駆け込んだ。

 

「……明久。似合わない台詞を吐くな。気持ち悪いぞ」

「なんとでも言ってよ。今の僕には体裁を気にしている余裕なんてないんだから」

 

何としてでも成績を上げなければいけない明久は雄二に協力を仰ぐ。恥や外聞なんて気にかけている暇はない。

 

「なんだ。また減点でも食らったのか?」

「うん……」

「朝から英語の問題を出されたらしい」

「起き抜けに英語とはな。ま、ご愁傷さまだな」

「そんな他人事だからって暢気にしてないで、早く勉強会を始めようよ」

 

急かす明久を、雄二が苦笑しながら宥めすかす。

 

「まぁ待て。まずは現状の確認だ。今の減点は何点なんだ?」

「250点。もうかなり厳しいんだ」

「250点か。確か昨日の時点で100点くらいだったろ。一晩で倍になるなんて、お前なにやらかしたんだ?」

「…………」

 

雄二の質問に、明久は目を逸らして黙りこくる。その様子に、雄二も何かを察した。

 

「まぁ、なんだ。あの姉貴だからな。気を強く持てよ。明久」

「……うん。頑張るよ」

 

雄二の憐れむような視線が少し痛い。

 

「しかし、250点となると、少なくとも1100点。Eクラス中堅以上の点は必要か」

「やっぱり雄二もそう思う?」

「『も』ってことはお前も気づいてたのか?」

「あ、いや。僕もそうだけど」

「俺と優子だよ」

 

そこに鞄を担いだ秀隆がやってきた。

 

「秀隆か。明久の減点を知っていたのか?」

「今朝にな。だが明久のことだ。更に減点されるだろうから、出来るならEクラス上位くらいは欲しいな」

「てことは1200点前後か」

「どうにかなるかな?」

 

明久は不安そうに雄二に尋ねる。1100点でも厳しいのに、更に点数を上げるとなると、今の明久には自信がない。

 

「まぁ、そのくらいならまだ何とかなるだろ」

「え? そうかな?」

「暗記科目を中心に今から死ぬ気で根性いれたら、それなりに上がるはずだからな。おまえの場合、伸び代が残っている世界史あたりが狙いめだな。確か今までは50〜60点くらいだったよな?」

「うん。よく覚えていたね」

「一応クラス代表だからな」

 

戦力の把握は試召戦争を仕掛ける上での最重要点項だ。

策略に長ける雄二がそこを疎かにするはずがない。

 

「振り分け試験の時とは違い、期末テストの問題を作るのは田中らしい。お前にはありがたい話だろ?」

「田中先生か……。それなら確かに点数を取りやすいかも」

 

世界史の田中教諭はおっとりとした初老の先生で、小テストの問題も解きやすいと制度の間では大評判だ。おまけに授業でもテストにだす問題はを予告してくれるので、試験対策もしやすい。

試召戦争の観点からすると、点数差が出にくいので戦力差を埋めることができずありがた味は薄い。しかし、今の明久にとっては渡りに船。明久が欲しいのは戦力ではなく点数そのものなのだから。

 

「下手に理数系に力を入れるよりは、暗記科目に集中したほうが点数に結びつきやすいはずだ」

 

文月学園のテストは他の学校と違い点数の上限がない。苦手科目を時間をかけて解くよりも、科目を絞って解答数を稼ぐ方が点数につながる。

 

「家庭科も狙い目か。明久も何だかんだ家事はやってきてるから、常識の範疇なら分かるだろ」

 

総合点数は主要5科目の他に保健体育や家庭科も含まれる。家庭科の場合、当然知識を問う問題もあるが、その多くは生活で役に立つもの。家事をしている内に自然と身につくものが多い。こちらもどちらかと言えば暗記系の科目なので明久にも解きやすいはずだ。

 

「そうだね。世界史や家庭科なら何とかなるかも。それに今更数学なんて勉強したって点数は上がらないだろうし」

 

むしろ脳がパンクして下がる可能性の方が高い。

 

「何じゃお主ら。また明久の家で勉強会かの?」

 

そこに鞄を抱えた秀吉もやってきた。テスト対策の話をしていたから、今日も勉強会をすると思ったのだろう。

 

「僕の家? う〜ん……。今日は姉さんが仕事でいないから、それでもいいんだけど……」

「けど?」

「今日は雄二の家にしようよ。たまには僕以外の家にも行ってみたいし、何より僕の部屋には参考書とかの勉強道具があまり揃ってないし」

 

明久は勉強会の会場に雄二の家を提案。建前は明久の言った通りだが、本音は雄二を巻き込むこと。雄二は興味の振り幅が極端で、関心のあることにはトコトン持てる知略を注ぎ込むが、それ以外は恐ろしい程に冷めた態度をとる。

今回は試召戦争に向けた戦力増強という目的があるから最低限の面倒は見てくれるだろうが、念には念を入れていて損はない。

 

「いいよね、雄二? 昨日は無理矢理僕の家に押しかけてきたんだから」

「まぁ、確かに昨日は無理矢理押し入ったようなもんだが……」

 

昨日は嫌がる明久を押し切って明久の家に上がり込んだのだから、雄二にも一応その負い目はある。

 

「それなら秀隆の家でもいいだろ」

 

雄二は代案として秀隆の家を提案した。

 

「秀隆の家なら最低限の参考書はあるし、お前と同じくマンションに一人暮らしだからな」

「それもそうだね」

 

雄二の提案に明久も納得した。もっとも、明久としては目的が果たせれば会場自体はどちらでも構わないのだが。

 

「あー……。悪い。俺の家は今はオススメしない」

「なんだ? お前の家にも理不尽な姉貴やハチャメチャな母親でもいるのか?」

「違ぇよ。今ウチの近所で道路舗装の工事やってんだよ」

「道路工事? 夜中もか?」

「いや、流石に夜9時には終わってるみたいだ。近所ってもそこそこ離れてるんだが、それでも結構騒音がある」

 

道路工事の騒音は思っている以上に大きく響く。人によっては睡眠障害になってしまうほどだ。

 

「じゃぁ、勉強は厳しそう?」

「だな。俺一人ならヘッドホンつければ何とかなるが、皆でやるとなると厳しいな」

 

耳栓をしながらの勉強会は流石に捗りそうにはない。

 

「工事はいつまで続くんだ?」

「週末には終わる予定らしい」

「となるとしばらくは無理、か……」

 

雄二は少し考え込んだ後、

 

「分かった。今日は俺の家でやるか。幸い、お袋も温泉旅行でいないしな」

 

と、思いの外すんなりとオーケーした。

 

「お前の母親が勉強会と何か関係あるのか?」

「…………聞くな」

「?」

「ま、僕は勉強会が出来ればなんでもいいけど」

「それならば、ワシも参加さてももらっても良いかの? 一人では勉強をする気が起きんのじゃ」

「もちろんオーケーだ。と言うか、どうせいつものメンツが来るんだろ? そらならさっさとしようぜ」

「だな」

「そうだね。おーい、ムッツリーニ、姫路さん、美波ー!」

 

明久の呼びかけに応じて、康太たちがやってくる。

 

「はい。何でしょうか明久君?」

「何か用?」

「…………どっかに行くとか?」

「うん。今日は雄二の家でテスト勉強しようと思ってるんだけど、良かったら――」

 

皆テストに向けて気合が入っているのか、二つ返事で勉強会に参加した。

 

「ねぇ。今日はリリアも呼ばない? 昨日は参加できてなかったし」

「そうだね。雄二、どうする?」

「うーん。あまり大人数は入れないんだが……ま、いいか。いざとなったら客間でも使えばいいさ」

 

リリアも即参加を表明し、皆で雄二の家に移動した。

 

「んじゃ、入ってくれ」

「「「「「お邪魔します」」」」」

 

学校から歩くこと約15分ほど。住宅街の一角にある雄二の家に一行は到着した。

雄二の家は明久と違い2階建ての一軒家。玄関もそれなりに広いし、当然居間も明久の家より広い。大きな机もあるので勉強はし易そうだ。

 

「ねぇ雄二。家には誰もいないの?」

 

前を歩いて居間に案内する雄二に明久が尋ねる。

 

「ああ。親父は仕事で、お袋は高校の同級生たちと温泉旅行らしい。だから何も気兼ねせずゆっくりしてくれ」

「そうなんだ」

「そう言えば、前に雄二の家に来た時も他の家族は留守だったな」

「ああ。その方が都合がいいからな。色々と」

 

含みのある言い方をする雄二。父親は仕事があるから仕方ないとして、専業主婦であるらしい雄二の母親もいない方が都合が良いとはどういう意味だろうか。

晴れやかな表情で雄二がリビングにつながるドアを開けると、

 

「……………………!!(ぷちぷちぷちぷち)」

 

居間には一心不乱に梱包材(プチプチ)を潰している女性がいた。

 

「…………」

 

パタン、と雄二は無言でドアを閉めた。

 

「ゆ、雄二……? 今の、山のようなプチプチを潰していた人って――」

「……赤の他人だ」

「家の中にいてんなわけねぇだろ」

「さ、坂本の母親なの……? なんだか、随分と凄い量を潰していたわよね……」

「う、うむ。あれ程の量。費やした時間は1時間や2時間ではきくまいて」

「…………凄い集中力」

「集中力もそうだが、いったいあの量のプチプチをどっから持ってきたんだ?」

「坂本君のお母さんはそういうお仕事をなされているのですか?」

「それとも、そういったご趣味があるの方なのでしょうか?」

 

様々な憶測が飛び交う。プチプチを潰すのが好きな人は多いが、それにしてもあの量は異常だ。

 

「おそらく、精神に疾患のある患者が何らかの手段でこの家に侵入したに違いない。なにせ、俺のお袋は今は温泉旅行に行っているはずだからな」

 

珍しく雄二が明らかに苦しい嘘をつく。秀隆ほどではないにしても、雄二も嘘をつく時は詐欺師のように平然と人を騙す。主に被害にあっている明久が意外そうな顔をしているのだから相当なことだ。

雄二がドアを閉め切ったので部屋に入れずにいると、中から雄二曰く赤の他人の声が聞こえてきた。

 

『あら……? もうこんな時間。さっき雄二を送り出したばかりなのに』

 

つまり約8時間近くプチプチを潰し続けていてらしい。恐ろしいほとの集中力だ。

 

『続きはお昼を食べてからにしましょう』

 

しかもまだ続けるらしい。もうお昼どころか夕飯の時間が近い。

 

「お袋っ! 何やってんだ!?」

 

耐え切れず、ついに雄二が部屋に踏み込んだ。やはり女性は雄二の母親だった。

 

「あら雄二。おかえりなさい」

「おかえりなさい、じゃねぇっ! なんで家にいるんだ!? 今日は泊まりで温泉旅行じゃなかったのか!?」

「それがね、雄二。お母さんどうも日付を間違えちゃったみたいなの」

「日付を間違えた!? 本当は明日か来週だったてのかっ!?」

「7月と10月って、パッと見数字が似てるから困るわね」

「どこが似てるんだ!? 数字の形どころか文字数すら合ってないだろ!?」

 

1月と7月ならまだしも、流石に普通7月と10月は間違う方が難しい。

 

「こら雄二。またそうやってお母さんを天然ボケ女子大生扱いして」

「サラッと図々しい台詞をぬかすな! アンタの黄金期は10年以上前に終わっているはずだ!」

「あら、雄二のお友達かしら?」

「だから人の話を聞けぇっ!」

 

怒涛の応酬に呆気に取られる明久たち。雄二がこうも手こずる相手が翔子以外にいるなんて想像もつかなかった。

 

「皆さんいらっしゃい。うちの雄二がお世話になってます。私はこの子の母親の雪乃と言います」

 

柔和な微笑みで明久たちに挨拶をする雪乃。その優しげな雰囲気は、雄二との血の繋がりをまったく感じさせない。

そして何より、正面から見たその姿で、皆が驚く事実がひとつ。

 

「さ、坂本の母親って……若過ぎない!?」

「むぅ……。とても子を産んどるとは思えん……」

「ああ……。確かに、女子大生――いや、下手したら女子高生って言われてもおかしくないな」

「…………美人」

「まるでお姉さんみたいですねぇ〜」

「お肌も綺麗で羨ましいくらいです」

 

皆の言う通り、とても一児の母親とは思えないほど若い。どちらかといえば、年の離れた姉のような印象を受ける。

 

「み、皆、とりあえずお袋は見なかったことにして、俺の部屋に来てくれ……」

「う、うん……。それじゃ、お邪魔します」

 

雪乃に一度頭を下げて、2階にある雄二の部屋へ向かう。

 

『皆さん。後でお茶を持っていきますね』

 

居間からはそんな声が聞こえた。少し変わっているようだが、基本的には美人で優しい母親なようで、明久は少しだけ羨ましく思った。




ご感想などお待ちしております。

1話分の長さは?

  • 5000字程度(約5分)が良い
  • 10000字程度(約20分)は欲しい
  • 区切りが良ければ何文字でも構わない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。