バカと凶刃と召喚獣   作:赤辻康太郎

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霧島家での勉強会その1です。いつものメンバーでわちゃわちゃしてます。


第八十問

第八十問

 

土曜日。秀隆、秀吉、優子は郊外にある高級住宅地の一角、その中でも一際大きな屋敷、霧島邸の前にいた。

 

「でっけぇなぁ……」

 

絵本や漫画でしか見たことのないような豪奢な邸宅を前に、秀隆がそんな感想を零す。

 

「止めなさいよみっともない。口開いてるわよ」

「おっと」

 

無意識に半開きになった口を慌てて閉じる。

 

「しかし、正に豪邸といった風貌じゃな」

 

目の前にそびえるのは見るからに高級そうな材木で作られた門扉。その横の小窓ですらシックな高級感を漂わせている。壁も家根も窓ガラスも、秀吉たちの家はもちろん、他の高級住宅と比較しても一線を画しているように見える。翔子の両親は相当な資産家だとは聞いていたが、この豪邸を見る限り、その規模は想像以上なようだ。

 

「とりあえず、入りましょう」

 

優子が扉の横に設えられた呼び鈴を押すと、ブザーの様な音が響く。ほどなくして、内側から扉が開かれた。

 

「……いらっしゃい。優子、神崎、木下」

 

3人を出迎えたのは翔子本人だった。てっきり家政婦さんでも出てくるかと思っていたが、友人を前にそんな無粋な真似はしないとのこと。

 

「こんにちは、代表」

「お邪魔するのじゃ」

「今日はよろしくな」

 

各々挨拶を返すと、秀隆は手に持っていた紙製の手提げ箱を翔子に渡す。

 

「今日の礼だ。俺のお気に入りの店のザッハ・トルテ」

「……気を使わなくていいのに」

「そうか? 流石に場所を使わさせてもらって礼のひとつもないのはどうかと思ったんだが」

「アンタって、そういうとこは律儀よね」

 

受け取りながら翔子も気をつかなわないよう言うが、秀隆としては手ぶらで来るのも忍びなかった。

 

「ま、適当に食べてくれ」

「……ありがとう。後でお茶の時に皆で食べる」

「ん。そうしてくれ」

 

翔子はそのまま箱を提げると、3人を邸内に招き入れた。

 

「外から見ても思ったが、中も広いな」

 

おおよそ個人宅とは思えない長い廊下を歩きながら秀隆が呟く。入り口玄関もそうだったが、廊下だけでも内装がかなり凝られている。

そして廊下が長いということは、それだけ部屋数も多いと言うことだ。

 

「部屋数も多いのう」

「……用途別」

「マジかよ。流石に金持ってんな」

「ちょっと秀隆。不躾なこと言わないでよ。失礼でしょ」

「……構わない」

 

昔から言われ慣れているのか、翔子は秀隆の失礼な物言いにも顔色を変えなかった。

 

「霧島よ。あの本が沢山ある部屋はなんじゃ?」

「……書斎」

「んじゃあっちのスクリーンのある部屋は?」

「……シアタールーム」

「じゃぁ、あの鉄格子のはめられている部屋はペットの部屋?」

「……そこは雄二の部屋」

「「「…………」」」

 

3人は聞かなかった事にした。

 

「……そしてここが、勉強部屋」

 

しばらく歩いたところで、翔子がとある部屋の前で立ち止まり、そのドアを開ける。そこは図書館の一部を切り抜いた様な部屋で、大きな勉強机と、壁一面に辞書や百科事典、参考書が敷き詰められた本棚が並んでいる。

そんな勉強部屋の片隅で、言い争っている一組の男女がいた。

 

「アレは……康太と工藤か?」

「何を言い争っているのかしら?」

 

秀隆たちが少し近づいて耳を傾けると、

 

『だから言ってるじゃないか! 第二次性徴を実感したのは実体験として――』

『…………いいや。先ずは知識として性教育から入り、その後自分の経験に当てはめてから――』

 

どうやらいつもの『実戦派 VS 理論派』の論争だった。

 

「またアイツらは……」

「懲りないのね本当」

「あやつらにとっては、至極真っ当な議論なんじゃろうな」

 

3人が呆れていると、

 

「優子ちゃん! こっちです!」

 

優子を呼ぶ声がする。そちらを向くと、リリアが手招きしていた。横にはもちろんトレイズもいる。

 

「こんにちは、リリア、マクスウェル君」

「こんちわ」

「今日はよろしくお願いしますね」

 

優子もリリアたちの近くに腰を下ろす。

 

「ようトレイズ。相変わらずのナイトっぷりだな」

「どっかの誰かさんが連れ回すからな」

「堅いこと言うなよ。テスト前に友達と勉強するのは万国共通だろ?」

「だからって女の子たちをあんな遅い時間まで」

「マクスウェルよ。その女子の中にワシを含んではおるまいな?」

「ソンナコトナイデスヨ」

「マクスウェルよ。人と話す時は相手の目を見て離すのが礼儀じゃぞ」

 

秀隆たちも男子(+秀吉)で固まる。そのまま暫く雑談をしていると、

 

「こんにちは〜」

「やっほー」

 

そこに瑞希と美波も合流した。

 

「美波ちゃん、瑞希ちゃんこんにちは」

「道は大丈夫だった?」

「はい。少し迷っちゃいました」

「ウチは葉月にバレないように出たから」

 

瑞希たち2人も優子たちの側に座る。

 

「よう」

「姫路たちも問題なく来られたようじゃな」

「こんにちは」

「こんにちは、皆さん」

「他のメンバーは?」

「明久と雄二がまだ来てねぇな」

「ムッツリーニと工藤は、ソコにおる」

 

秀吉が指差す方向に目を向けると、康太と愛子はまだ討論を続けていた。

 

「2人とも白熱しているみたいですね?」

「何の話をしてるの?」

「第二次性徴期を実感した出来事は何か、だそうだ」

「……聞かなきゃよかったわ……」

 

と言いつつ、こっそりと耳を傾ける美波と瑞希。2人とも思春期というわけだ。

 

「あら? 瑞希髪型変えた?」

 

と、優子が瑞希の様子がいつもと違うことに気づいた。

 

「あ、実はポニーテールにしてみたんです」

 

瑞希は横を向くと、ポニーテールにしたお下げ髪をポンポンと手で揺らす。

 

「へぇ。似合ってるわよ」

「ありがとうございます」

「何だかお姉さんみたいですね」

「そ、そうですか?」

 

優子とリリアに褒められて、瑞希は少し恥ずかしいそうに照れ笑いを浮かべる。こうなっては、面白くないのは美波だ。

 

「まったく。いきなり髪型を変えてくるなんて卑怯よ」

 

憮然として不満を訴える。瑞希がなぜ髪型を変えたのかが分かっているから。そして、対抗しようにも自分ではどうしようもできないから。

 

「島田にしてみたら、してやられたといったところじゃな」

「ああ。姫路も強かになりやがって」

「髪型が何か勉強会と関係あるのか?」

 

唯一状況を理解できていないトレイズだけが疑問符を浮かべる。

 

「皆お待たせ!」

 

そこに三度部屋の扉が開かれ、件の人物が現れた。

 

「よう明久」

「やっと来おったか」

 

明久はトコトコと秀隆たちの側に寄る。

 

「ごめん。家を出る時に姉さんと少しもめちゃって」

「また減点されたのか」

「……うん、まぁ、そんなとこ。ところで、ムッツリーニたちは何の話をしてるの? 随分と盛り上がってるみたいだけど」

「聞いてみるといい。案外面白いかもしれねぇぞ」

「そう?」

 

明久は言われるがままに康太たちの方に耳を傾ける。

 

『ムッツリーニ君は頭でモノを考え好きだよ! 『百聞は一見にしかず』って諺を知らないのっ?』

『…………充分なシミュレーションも無しに実戦に挑むのは愚の骨頂』

『そうやって考えてばかりだから、すぐ血を噴いて倒れちゃうんだよ!』

『…………何を言われても、信念を曲げる気はない』

『またそんなことばかり言って……! このわからず屋っ! (チラッ)』

『…………卑怯なっ!!(ブシャアア)』

 

愛子が襟元を開き、ほんの少し谷間とブラ紐をチラつかせると、康太は鼻血の海に沈んだ。

 

「何アレ?」

「『第二次性徴期を実感した出来事は何か』を議論してるらしい」

「あのさ。その議題からして既に何かがおかしいと思うんだ」

 

流石の明久も呆れ果てていた。

 

「ま、2人にとっちゃ通常運転なんだろ」

「そう言われればそんな気もしなくもないけど」

「いや、そこはおかしいだろ」

 

流されそうになる明久にトレイズがツッコミを入れる。

 

「明久君、こんにちは」

「ん。ああ。こんにちは姫路さ――」

 

瑞希の姿を見て、明久が硬直する。瑞希が普段とは違う髪型、ポニーテールだったから。髪型ひとつで普段とはまったく違う印象を与えるものなんだと明久は感心しつつ、その普段とは違う魅力に、呆けたような顔をしている。

 

「明久君?」

「今日の姫路さんは死ぬ!」

「えぇぇっ!?」

 

正気に戻ったかと思えばまさかの死亡宣告。明久には瑞希の顔に死相でも見えていたのだろうか。

 

「姫路。今のは『姫路さんが可愛すぎて僕が死ぬ』って意味だからな」

「そ、そうなんですか? 良かったぁ。てっきり私の顔に悪い相でも出ているのかと……」

「……ご、ごめん姫路さん。気にしないで……。ちょっと不測の事態に対応しきれなかっただけなんだ……」

「は、はぁ……」

 

近くにいた秀隆が明久の台詞を解説し、瑞希も安堵した。明久の場合、不測の事態に弱いというか、不測の事態を想定できていないのと、咄嗟の判断力の無さが問題だろう。今回のは不意打ちに近かったが。

「アキ。朝から何を見てそんなにトチ狂っているのかしら?」

「あ、美波。やだなぁ。僕は狂ってなんかいな――」

 

いつものように美波の辛辣な言葉を否定しつつ、またしても明久が硬直した。今度は、美波がシャツの襟元を大胆に開いていたからだ。開いた襟元から、チラリと下着がチラ見えしている。

 

「それにしても、この部屋暑いわねぇ」

 

襟元を持って胸に向かってパタパタと手で風を送る。部屋は空調が効いてて丁度いい室温のはずなのだが。

 

「み、美波、あのさ……」

「な、何よ……?」

 

両者はしばし見つめ合い、

 

「もうすぐ夏とはいえ、そんな格好してたら風邪引くよ?」

「……ご忠告どうもっ!」

 

美波は明久に背を向けるとブツブツと言いながら襟元を閉める。その声が怨嗟の呪詛に聞こえてならない。

 

「まったく。アキもアキだし、瑞希も瑞希よ。急に髪型を変えてくるなんてずるいじゃない……。ウチはどうしようもないし、コレも効果なかったし……」

「な、何のことでしょうか?」

 

美波が瑞希を親の仇のように睨むが、明久はそれどころてまはない。

瑞希と美波がお揃いの髪型で2人とも凄く可愛くて、見ているだけでどうにかなってしまいそうだ。

 

「それはそうと姫路さん、今日は泊まりの許可が出て良かったね!」

 

これ以上は明久の身と頭がもたないので話題を変える。

 

「はい。良かったです」

 

瑞希も嬉しそうに微笑む。

美波の家での勉強会後、両親からこっぴどく叱られた瑞希は、それからは言いつけ通りに放課後は真っ直ぐに帰っていた。外出禁止は週末までとは言え、泊まりは反対されるかと心配したが、何とか説得できたようだ。

 

「ウチの方も今日はすんなり出てこれて良かったわ」

「美波の方も何かありそうだったの?」

「ウチじゃなくて、葉月がね」

「葉月ちゃん?」

「そう。泊まりで勉強会だなんて知ったら、絶対に『連れて行け』って駄々をこねるに決まってるわ」

「あはは。そうなんだ」

「両親が映画に連れて行ってくれたから助かったわ。出かけるところを見られたら大変だっただろうから」

 

小学5年生とはいえ、葉月はまだまだ甘えたがり。週末に大好き美波が泊まりで出掛ける上に更に大好きな明久までいると知ったら、聞き分けの良い葉月とは言え自分も参加したいとワガママを言ったであろう。

翔子は姉妹の一人や二人増えても気にしないだろうが、参加させてもらっている身の美波としてはやはり遠慮が勝ってしまう。

葉月を騙したことに美波としても多少の心苦しさはあるが、帰りにお土産でも買って帰れば大丈夫だろうと思っていた。

 

「それにしても、結構人数がいるね」

 

主催の翔子にFクラスのいつものメンバー。加えてAクラスからも3人。まだ姿は見えないが雄二も加わるとなると、総勢で12人。勉強会にしては結構な人数だが、それでもこの部屋は狭さを感じない。場所を提供してくれた翔子には感謝するばかりだ。

 

「あれ? そう言えば雄二がいないね?」

「んむ? ワシも見ておらんな。遅刻かの?」

「いや、この前の霧島の話だと先に来ているはずだが?」

「……雄二を連れてきた」

 

ドサっと翔子が絨毯の上に何かが入っているであろうズタ袋を投げ置く。翔子がズタ袋の封を解くと、中からロープでぐるぐる巻にされた雄二が出てきた。

 

「ん? 明久か? どうしてお前たちがここにいるんだ?」

「あ、うん。霧島さんの厚意でね……」

「俺は今のお前の状況を聞きてえよ」

「雄二よ。お主は今日の勉強会の話は霧島から聞かされておらんかったのか?」

「ああ。何も聞いてない。いつものように気を失って、目が覚めたらここにいた」

 

これで週末に雄二との連絡がつかない時があることの謎が解けた。

 

「それじゃ、勉強道具は?」

「……大丈夫。準備は万全」

 

翔子が掲げたのは雄二の鞄。着替えもあるということは手抜かりもないらしい。どうやって手に入れたのかはこの際置いておくとする。

 

「さてと、それじゃ皆揃ったみたいだし、そろそろ始めようか」

「そうじゃな。それがいいじゃろう」

「だな。早くしねぇと」

 

『それは違うよ! 世論調査では成人女性の約68%が――』

『…………違わない。世界保健機関の調査結果では成人男性の約72%が賛同している』

『……またそうやって屁理屈を……』

『…………屁理屈じゃなくて事実』

『くぅ……っ! こうなったら、今度の期末試験でムッツリーニ君を抜いて僕の方が正しいって証明してみせるからね!』

『…………学年1位の座は譲らない』

『そうやって憎たらしいこと言って……ムッツリーニなんてこうだよっ!(ピラッ)』

『…………卑劣な…………っ!(ブシャァァア)』

 

「あのバカどもが何かやらかしかねん」

 

その場にいた全員が静かに頷いた。

 

それからすぐに、明久たちはいくつかの組に分かれて勉強を開始した。

瑞希が明久に世界史を、雄二と翔子が美波と秀吉に国語を、トレイズがリリアに物理、そして優子が秀隆に地理をそれぞれ教える形となった。

 

「明久君。そこは東洋やインド洋を別々に考えずに、その時代でそれぞれの国で何が起きたかっていう覚え方をするといいですよ」

「それぞれの国で?」

「そうです。例えば、紀元前550年頃、中国で孔子という人物が誕生した時、インドでも有名な人が生まれているんです」

「孔子って名前、 どこかで聞いたような……?」

 

瑞希と明久は紀元前辺りの東洋史を勉強し、

 

「いいかリリア。物理ってのは一見小難しいこと言っているように感じるけど、ほんとんど数学と同じなんだ」

「数学と一緒?」

「ああ。例えば運動エネルギーと仕事の関係は、『変化後のエネルギー − 変化前のエネルギー = 仕事量』で表される。んで、仕事量をWとした時、エネルギーは(mv^2/2)で表されるから、それぞれ変化前後の速度をv0、v'とすると」

「(mv'^2/2) − (mv0^2/2) = W?」

「そう。あとは対応する数字を当てはめて計算すればいいだけ。他の法則も似たようなものなんだ。〇〇の法則 = 〇〇の公式と覚えればいい」

「全部等式で表されるんですね。相対性理論でしたっけ?」

「そうだ。物理の法則は絶対に釣り合うようになっている。というより、『変化したからには何からの力が働いている』って考えるのが物理だ。その変化させた力を求めるんだと覚えとくといい」

 

トレイズはリリアに物理学の方式について教えている。

この2組は順調に勉強が進んでいる上、瑞希と明久もかなり良い雰囲気なっている。が、一方で――

 

「おい島田。世界史の方ばかりみてないで集中しろ。お前の国語は明久レベルなんだからな。せめて二桁、できれば70点以上は安定して取れるようになってもらわないと、2学期の試召戦争の時に困るからな」

「う……。わ、分かってるわよ! でも、その……世界史もちょっと自信なくて……」

「大丈夫だ。お前の世界史は全体から見れば酷いがFクラスでは普通だ。それよりも弱点を強化しろ。お前は問題文が読めさえすれば即戦力なんだから、暗記ものの世界史よりもこっちの方が効率的なはずだ」

「うぅ……。ウチは別に畳とちゃぶ台も嫌いじゃないのに……」

「ワシも同感じゃ……。姫路が転校せずに済む程度の設備さえあれば十分なのじゃから、もう少し手を抜いても……」

「い〜や、ダメだ! 必ずAクラスに、翔子に勝つんだ! そうしないと、いつまで経っても俺の立場が変わらないからな!」

「勝っても変わらないでしょ」

「その通りじゃ。もう大人しく籍を入れるべきじゃ」

「くっ、てめえら……! まぁいい。次の問題だ。【『はべりの已然形』を使った例文】を書いてみろ」

「「『以前』食べたケーキ『はベリ』ーデリシャスでした」」

「お前らちょっとそこに正座しろ」

 

雄二は美波と秀吉に国語を教えるのに苦戦していた。2人とも国語、特に古典に関する理解力が低いことに加え、美波は世界史の方ばかり気にして集中力を欠いていた。さっきまで翔子もいたのだが今は席を外しているようだ。

そして、問題児がもう1人。

 

「次。【京都が日本一の生産量の農作物】を答えなさい」

「千枚漬け」

「確かに漬物は有名だけど、せめて原料の野菜をいいなさい。 答えは【唐辛子】よ」

「分かるかそんなもん!」

「万願寺唐辛子とか有名でしょ?」

「アレは京野菜だろ! 普通の唐辛子も日本一だなんて知るかよ!」

「いいから次。【鋸のようにギザギザした地形が特徴の海岸】をなんというか答えなさい」

「『リッ◯・ディアス』」

「真面目に答えなさい!」

「リ・◯ズィよりマシだ――ってぇっ!」

「次ふざけたら打つわよ?」

「打ってから言うなよこのまな板体罰教師――やめろその関節はそっちには曲がらなっ!?」

 

優子が秀隆に地理を勉強させようとするが、秀隆が途中でふざけたりおちょくったりするので一向に進まない。

そんな風に各々が勉強を進める中で、残された康太と愛子はというと、

 

『ムッツリーニ君。流石にこの問題は分からないでしょ?』

『…………中1で70%。中2で87%。中3で99%』

『どうしてこんなことまで知ってるの!?』

『…………一般常識』

『うぅ……。正攻法では勝てる気がしなくなってきたよ……』

『…………工藤はまだまだ甘い』

『こ、こうなったら……。あのね、ムッツリーニ君。実は僕――』

『――いつも、ノーブラなんだよね』

『…………っ!?(ボタボタボタボタ)』

『え? どうしてそれで形が崩れないのかだって? それはね……実は(ボソボソ)って感じのマッサージをいつも(ゴニョゴニョ)ってなるまで、毎晩毎晩――』

『…………殺す気か……っ!(ブシャァァア)』

『殺す気だなんて人聞き悪いなぁ。僕は別にムッツリーニ君が出血多量でテストで実力が出せなくなるといいのに、なんてことも考えてないし』

『…………この程度のハンデ、どうということはない』

『ふ〜ん。そんなこと言うんだ?』

『…………お前には、負けな』

『そこまで言うなら遠慮なく。――それで、さっきの続きだけど、(モニョモニョ)を身体が熱くなるまでやったら、最後には(ホニャホニャ)を使って(ヒソヒソ)を――』

『…………死んで……たまるか……っ!(ダバダバダバダバ)』

 

康太と愛子は勉強そっちのけでまだ謎の討論を続けていた。問題を出し合っているので勉強と言えなくもないが、失血量が多すぎて康太の顔が青くなっている。

 

「お前ら。人様の家なんだから家具とか絨毯を汚すなよ」

「注意するところはそこなのね……」

「は〜い。それでムッツリーニ君、お尻については――」

「…………まだ……負けない……っ!」

「アンタたちも普通に勉強しなさい!」

 

こんなことで一晩無事に過ごせるのだろうかと、優子は不安になった。




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