――私が思い出せるのは私が西洋の死神で多くの人の魂を狩ってきた事と死神として魂を導く事だけ。どうやら私は記憶喪失ってやつみたいで名前なんて物もましてや両親の存在さえも覚えていない。そんな私の事を受け入れてくれるのが私が今いる幻想郷っていう世界らしくて。
これは記憶喪失の私がこの世界で
「さっさと起きろっつーの! 」
その声と同時に突如腹部に走った激痛で目を覚ます。もうちょっと良い起こし方は無かったのかと文句を言いたくなるが腹部の激痛がそれを言わせようとしない。
腹部を抱えながら起き上がると眼鏡がないせいで視界がボヤけてはいるが紅白の衣装に身を包んだ少女がいるということは分かる。枕元に置いてある眼鏡をかけ、金色の瞳を何度か瞬きし紅白の少女の方を向く。
「もうちょっとマシな起こし方は無かったんですかね霊夢さん……」
「あんたが今日魔理沙との約束すっぽかしかけてたから家に来てやったら案の定寝てたからこうしてやったのよ」
「あ!? 魔理沙さんとの約束忘れてたっス! 」
布団から急いで飛び出し、ボサボサの金髪をポニーテールにし黒色のパーカーと変な柄が書いてある白いロングTシャツと赤のギンガムチェック柄のスカートを履く。朝食など食べている時間はない。そのまま茶色のレースアップブーツを履いて外へと駆け出していく。
少し家から離れたくらいで霊夢の声が聞こえてきた。
「あんた家の鍵閉めてないでしょうが! 」
「鍵忘れてた! ちょっと待ってください、閉めてきます! 」
なんでこういう日に限ってドジやらかすんスかねえ!? そんな事を自分に聞いても結局自分が悪いわけで。なんだかんだで30分かけて魔理沙が待っている香霖堂まで走っていった。途中で眼鏡を落としてしまいそうな程の全力疾走だったが道中で妖怪に会わなかったのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
肩で息をしながら香霖堂のドアを開ける。そこには不機嫌そうな霊夢と呆れたような苦笑いをする金髪の少女と無言で本を読む白髪の青年がいた。
「すいません魔理沙さん……遅れました……」
「いや、私はいいんだけどさ。霊夢がな」
「あー……そりゃそうですよね……」
魔理沙と呼ばれた少女は霊夢の方に親指を向け、お手上げと言ったふうに両手を上げる。霊夢のその反応は約束に遅れられたことを考えると当然のものだ。しかも迎えに来られてこれなのだ。霊夢の性格からして殴られてもおかしくない。むしろ殴られた方がマシかもしれない。
ああ……終わったな……記憶失ったまま私死ぬんスね……。涙で瞳をうるませながら悟ったような笑みを浮かべていると外の方から妙な音が聞こえてきた。このタイミングでですか……仕方ない。
「すいません霊夢さん、魔理沙さん。ちょっと外出てきます」
「私も聞こえた。また変な魂がこのあたりにいるんでしょ? 私が不機嫌だったのもそれが理由だし」
「なんですかそれ……覚悟無駄だったじゃないスか」
「いや、覚悟しといた方がいいわよ。終わったらボッコボコにしてあげるから楽しみに待ってなさいソワレ? 」
「うっ……覚悟しときます……」
涙目のまま外に出ると炎が人の形をとっているような化け物が目の前に立っていた。あれは主から離れた魂が暴走して具現化したもの。何の関係があるかは分からないが霊夢曰く、ソワレが幻想入りした時ぐらいから現れ始めたらしい。
ソワレは無から呼び出した黒い大鎌を逆手に持つとパーカーのフードを被り、臨戦態勢に入った。
「死神としての格好じゃないけどいいのかしら? 」
「格好なんか気にしてる余裕ないスよ。アレを野放しにしてたら幻想郷終わりますよ? 」
「知ってる。アレ集まると厄介だもん」
話し終えた後、ソワレの目が真剣なものになる。それに続く様に霊夢も幣を構え、相手の出方を伺う。暴走した魂は幽霊とは別物で人の魂を食らう。そしてそれを力にして再び襲いかかる。しかもその度に知性を得る為、厄介なのである。まだ今の相手はさほど魂を食らっていないようで知性の低さがところどころに現れている。
ソワレは逆手に構えた大鎌で魂をカチ上げ、ソワレも飛び上がるとそのまま順手に持ち替え振り下ろして真っ二つにしようとする。すると、魂がソワレの心臓近くに手を突き刺した。
だがソワレは突き刺された手を掴み返すと高笑いしながら魂を睨みつけた。
「野良の魂如きが死神の魂を奪おうなんて愚かですねえ……! あなたは狩られる側っスよ! 」
そのまま大鎌を振り下ろし、魂を真っ二つにする。魂の言葉にならない断末魔を聞いた後心臓近くに突き刺さった魂の手を抜き、投げ捨てる。血が大量に出てきたがソワレは気にする様子もなく少しズレた眼鏡を直すと、大鎌を消し香霖堂の中へと入っていった。
ソワレが香霖堂の中に入っていった後、霊夢が魂の方を向くと魂は既に消滅しており、そこには少しだけ燃えカスが残っていた。
「本当にアイツ記憶喪失なのかしらね……? 戦い方も忘れたとか言ってたけど絶対嘘でしょ……」
確かにソワレの戦い方は記憶喪失の者が使う物にしては奇妙だ。体で覚えてるという可能性もあるが彼女の細い体ではそんな事は考えられない。ましてや、あの大鎌だ。改めてソワレの違和感について考えていると香霖堂のドアが開き、ソワレの声が聞こえた。
「霊夢さーん! このままだと魔理沙さんにお菓子全部食べられちゃいますよー! 」
「今行く! 」
ま、気にしてもしょうがないわよね。あいつがどんな奴だろうと叩きのめすのは私の仕事だし。魔理沙に菓子を全部食べられてなるものかと急いで香霖堂の中へと入っていく。
場所は変わって、監獄のような見た目をした暗い部屋にフードを被り、似たような格好をした者が複数人いた。そのうちの一人が椅子に座りながらニヤリと笑うとこう呟いた。
「彼女……今はソワレ・シャリテと言ったかな? 彼女は実に愚かだ。このまま何もしなければ彼女は
次回予告(楽屋裏トーク)っスよー。
今回のキャラ ソワレ(以下ソ)霊夢(以下霊)
ソ「いやー、無事始まったっスね新作! 」
霊「そうね。でも本当にあんた記憶喪失なの? 」
ソ「本当に記憶喪失っスよ!? なんでわざわざ嘘つかなきゃならないんスか! 」
霊「ごめんごめん。とりあえず次回予告だけしときましょ? 」
ソ「気に食わないですけど仕方ないっスね……」
「「次回、第2話! 死神少女の記憶探し! 」」
霊「あんた本当に記憶探せるの? 」
ソ「探せますよ! いくら私がポンコツだからってバカにしないでください! 」