まだまだ未熟者なせいで書くスピードも鈍足ですし。
一話書くたびにオールナイトっていうのもなんだかなぁ。
……どうしよう。
あれからアイリスが身動き一つしていない……。
顔を真っ赤にしてうつむいたままだ。
こういうときってなんて声をかけてやればいいんだ?
経験の少ない俺では正解なんて出せるはずがないだろう。
「……なあ、めぐみん……」
「なんですかカズマ?」
「最後のお別れだと思って告白して去って行った後に、実は勘違いでお別れではありませんでしたって状況の時。お前なら相手になんて言ってほしい?」
「なんですかいきなり。しかもやけに具体的な質問ですね。何かあったんですか?」
さすがに設定を細かくしすぎたか?
「何にもねえよ。お前だって乙女の端くれならこういうのも考えたことがあるだろ」
「今、さらっとひどいことを言いましたね。私だって純粋な乙女ですよ。……それで、そんなときにどうしてほしいかってことですか?」
「そうだよ」
「そうですね。私だったら……[なんだ、勘違いだったのか……よかった。君の爆裂魔法がもう見られないなんて耐えられないからね。さあ、今すぐ今日の爆裂魔法を放ちに行こう]……と言ってもらえたら幸せですね」
「……却下」
うん、やっぱりコイツはただの爆裂娘でそれ以上でもそれ以下でもないな。
「なっ、何がいけなかったんですか? こう言われたら十人中、十人全員が堕ちますよ」
お前みたいのがこの世に十人もいたら世界が滅ぶわ!
「なるわけねえだろ。それもうお前じゃなくて爆裂魔法と結婚しろよ」
「爆裂魔法は私と同義なんです。だから私は爆裂魔法を愛してくれる人じゃないと愛せません。そういうわけで、カズマは今すぐに爆裂魔法を愛すべきです」
「最初から最後まで何一つ理解できないんだけど……」
人選をミスったか……。
そもそも俺の仲間で適任な奴なんて初めからいないんじゃないか?
「おい、さっきから後ろで何をヒソヒソと話しているんだ」
長話をしていたので、さすがにダクネスが怪しんできた。
「ん、何でもないんだ。ちょっとめぐみんがトイレに行きたいらしくて」
「む、そうなのか。めぐみん、あと少しだから我慢してくれ」
「ちっ、違いますよ。カズマ! 変な嘘は言わないでください」
「わ、分かったから。服を引っ張るなよ」
「プッ、アハハハハハハハハッ!」
突然、アイリスが満面の笑顔で笑い始めた。
「やっぱり、お兄様達はいつも通りですね」
「はぁ、アイリス様の仰る通り貴様は相変わらずのようだな。サトウカズマ」
「なんで俺だけなんだよ? 問題を起こしてるのはこいつらも一緒だろ……」
固まっていた空気が今のでだいぶ和んだみたいだ。
アイリスも俺もすっかり調子を取り戻した。
「ま、そういうわけで今回、姫様の護衛をさせていただく、冒険者の佐藤和真です。どうぞよろしくおねがいします」
「お兄様、今更白々しいですよ」
「そうだな。でも、アイリスに護衛なんて必要なのかすら疑問なんだけど……」
「もうお兄様ったら、私だって年頃のか弱い女性なのですからもっと気を使ってください」
言うようになったじゃないか。
か弱いと女性を強調していたのは気のせいだろうか。
「はぁ、アイリス様がますますあの男に毒されている……」
「……うちのカズマがすまない、クレア殿」
「気に病むことはない、ダスティネス卿。あの男のおかげでアイリス様が明るくなったのも確かなことだ」
「そうか、そういってもらえると助かる。それで、今回はどのような編成であちらの国まで移動するんだ?」
「此度も貴殿ら護衛のみでアイリス様を護送してもらいたい」
「なんだと!? 前回とは違い、お忍びではないはずだろう?」
「そうだ。無論、私も含め本隊は別のルートからあちらに先に到着している。だからこれは、私のおせっかいのようなものだ」
「…………そうか! だから今回はアイリス様のご指名ではなく国の勅命だったのか。つまりあの手紙を指示したのはあなたか!」
「……そうだ」
「……どうやら、私たち二人はともに苦労人らしい……」
「……ふっ、そうかもしれないな」
「しかし、なぜお兄様は昨日私に嘘をついたのですか?」
「うそ?」
「王都には観光に来ていたとおっしゃっていたではないですか」
「……ああ、あれか。実はダクネスに口止めをされてたんだよ」
「もう……あの嘘さえなければ……あんなことは……////」
「昨日の事は……まあ、アイリスも意外と大胆だなぁ……と思ったぞ」
思い返すとなんだか急にアイリスの顔を直視できなくなった。
「もっ、もうお止めになってください! 恥ずかしいです////」
そんな感じで俺たちが青春の甘酸っぱい一ページのようなやり取りをしていると……。
「……なんですか?屋敷ではダクネスとイチャイチャして、今度は私の左腕にまで手を出そうとしてるんですか?」
「「イチャイチャなんかしてません(ねえよ)!!」」
「そろそろいい加減にしてくださいよカズマ。あなたにはここに正統派ヒロインの私がいるんですよ」
なに勝手にメインヒロイン確定してんだよ。
「正統派ヒロインは清楚って相場が決まってんだ。お前はおとなしくロリ枠に収まっとけ」
「お兄様! 私はろりわく?……というものではないですよね?」
「安心しろ。アイリスは正統派だから」
俺の中での正統派はアイリスとエリス様だけだ。
「なっ、なんで私と左腕の枠が違うのですか? 年はたいして変わらないじゃないですか」
「めぐみん……枠は性格と…………外見で決まるものなんだよ」
同い年のゆんゆんはああなのに……。
「おい、今私の体を……特に胸を残念そうな目で見たことについて説明してもらおうじゃないか」
「カズマとめぐみん、お前たちはいい加減におとなしくしていろ!!!!」
「失礼しました、アイリス様」
「いいんですよララティーナ。……それと、昨日気を使ってくれたことには一応……感謝します」
「礼には及びません。それよりも、出立のお時間が迫っておりますのでお急ぎください」
「分かりました。お兄様、もうすぐ出発のようですよ」
「わかった、今行く」
「おい、サトウカズマ少しこっちに来い!」
「なんだ白スーツ」
今度は一体何を企んでるのやら。
前回は危うく暗殺者に仕立て上げられそうだったからな。
「白スーツいうな。それでだな、今回はこのペンダントをお前にやる。大事に持っておけ」
これは……たしかコイツの家の力をかなり使える奴だったか?
「どういう風の吹き回しだ? 貸すんじゃなくてくれるのか?」
「万が一があるかもしれないしな。護身用だと思っておけ。貴様の事は気に食わんが……アイリス様を……護ってくれ」
まるで遺言のように重く、そして想いが詰まっているように聞こえた……。
「……よくわからないけど、アイリスは守るよ。それが依頼だしな」
「……頼む」
「ではアイリス様、しばしの別れですがどうかお気をつけて」
「ありがとうクレア、あなたは先に行っているんですよね?」
「はい、お待ちしております」
「……あなたの気遣い……感謝します。流石、私の一番の忠臣ですね」
「ありがたきお言葉。……どうぞお楽しみください」
「はい……行ってきます」
「よし、準備はできたか?」
「そういえば、アクアはどこに行ったんだ?」
「アクアなら前回の竜車のトラウマのせいでここに来た時からいち早く後部座席に座っていましたよ」
……御者台での恐怖はあいつの心に深い傷跡を残したようだ。
「今回こそお兄様は私と御者台の後ろに座りましょう」
「もちろん構わないぞ。むしろお兄ちゃんとしては大歓迎だ」
ここまでは前回とほぼ同じ流れ、ということはこの次はめぐみんが……。
「……まあ、今回は特別に許しましょう」
「意外だな……てっきりまた争うと思ってたんだが……」
「下っ端に懐の深さを見せるのもリーダーの役目です」
「ありがとうございます」
……こいつはこいつなりに素直じゃないが気を利かせてるのかもな。
「出発するぞ!」
今回もリザードランナーの手綱を握るのはダクネスになった。
ちなみに竜車の外装や中の構造は前のよりも豪勢で立派なものになっていた。
前部と後部で仕切りがあり丁度個室が二つ付いているようなものだ。
よって今、俺とアイリスは二人っきりということになる。
「それではお兄様、ゲームをしましょう」
「おっ! いいぞ、ここ最近はアイリスに会ってなかったからお前は久々かもしれないが、俺はこの日のためだけに日々トレーニングをしていたんだ。簡単には勝てると思うなよ」
「望むところです。よろしくお願いします」
それから、夜の野営地に着くまで俺とアイリスの壮絶な戦いは続いた。
「よし、皆、予定していた野営地に着いたぞ」
「待て!あと一戦でケリがつくんだ!」
「お兄様、今の時点で私のほうが一勝多く勝っているので今回は私の勝ちです」
「だー、ちくしょー。全然衰えてないな。それどころか前よりも強くなってないか?」
「私だって日夜腕を磨いてきたんですよ。お兄様との再戦のために」
「まいった。アイリスは可愛い妹でありながらよきライバルだな」
「はい。お兄様とはらいばるです」
「あの……いい雰囲気のところ悪いのだが夕食の準備をしてくれカズマ」
「わかった。すぐに準備するよ……手伝ってくれるかアイリス?」
そういうとアイリスはキラキラした目で……。
「は、はい! もちろんです!」
「お兄様、実はお願いがあるのですが……」
「ん、なにかやりたいのか?」
「はい……その……今回は私がお料理をしてもよろしいでしょうか?」
「アイリスが調理をするのか?」
「やりたいです! 皆には内緒でコッソリ練習しましたから。他にも掃除や洗濯もたくさん練習したんですよ」
「うん、いい心がけだ。すごいじゃないか。アイリスはきっといいお嫁さんになるよ」
「お、お嫁さんだなんて////」
「それで、何を作るんだ?」
「お兄様が前に教えてくださったちゃーはんを私なりに改良したもの作ろうと思います」
まだあの時の事を覚えててくれたのか。
「わかった。じゃあ、俺は野菜を切るのを手伝うよ」
「お兄様は私の隣で見守っててください。疲れた夫に料理を作ってあげるのもお嫁さんの仕事ですから……なんて////」
……たまに本気でドキッとすることを言うんだよな。
「あー、その、なんだ。俺もアイリスみたいな奥さんがほしいなー……なんて言ってみたりして……」
「「…………………////」」
「やばっ、アイリス、焦げ始めてるぞ!」
「きゃあっ! 何とかしないと」
「とりあえずこれを入れれば焦げは防げるぞ!」
「ありがとうございますお兄様」
チャーハンのせいでうやむやになってしまったがここ最近で一気にアイリスとの雰囲気が甘くなっている気がするんだよなぁ。
「はい、アイリス特製、王族ちゃーはんです。どうぞ」
「こ、これをすべてアイリス様が!? ララティーナは感激です。こんなにご立派になられて……」
ダクネスは泣いていて食べるどころではなさそうだ。
「隠し味はこのロブスターの殻を粉末状にして加えてるんです」
いや、ザリガニなんだけどね。
「さすが私の左腕です。この私の技術まで応用するとは……」
「味に変化をつけたいときはこの特製ふりかけを使ってください」
「私の調理法まで盗むなんて……すごいわアイリス」
そもそも調理法ですらないだろ。
「それじゃあ、いただきまーす。あむっ……ん!……うまっ!……なにこれ超うまい!」
「喜んで頂けて良かったです。お代わりもありますからね」
「「「「お代わり!!」」」」
そんなわけでアイリスの料理は大絶賛だった。
夕食が終わってからほどなくして……
「お兄様……」
「どうかしのかアイリス……」
「あっ、あの、皆さんが寝静まったら、あの湖のほとりに来てくださいませんか?」
今回は前半はめぐみんの要素が若干強かったかもしれませんね。
後半はカズマとアイリスののシーンが多めでしたね。
三話にコメントと評価をつけてくださった方々、ありがとうございます。
次回はとても重大イベント発生の予感!!??
こうご期待ください。