では、どうぞ
「いやっほぉ~~~!! 盛り上がってるかいみんな~~!!」
「「「「おおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」
「今宵は宴だ~~~!!! もっともっとも~~~~~っと!! 派手に騒ごうぜ~~~~!!」
「「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」
モニターに映る二人の司会者が、派手に騒ぎ、国民たちを力一杯煽る。
街は行き交う人々で大いに賑わっていて、どんちゃん騒ぎ状態だ。
「何か凄いね。まるで祭り見たい」
目の前に広がる光景に圧倒され、ツナは自分の感想を言う。
「確かに凄いでござるな。拙者達がいるビスコッティでもここまで大いに賑わっているのを見た事がないでござる」
隣にいるユキカゼも、ツナと同じ感想を漏らすが、そこまで驚いている様子ではない。
ビスコッティでも似た事を何度も見た事があるからだ。
ツナ達が魔物との戦いを終え、数時間が過ぎ今は空も夜に染まっている。
「でもいいのかな? あんな事があったあとで、こんなに騒いで?」
「大丈夫でござるよ。あんな事があったからこそ、騒ぐんでござるよ。それに、暗い気持ちでいたっていい事はないでござる。沢田殿も一緒に騒ぐでござるよ」
ツナの顔をのぞきこみニッコリと笑う。
「そうだね。うん騒ごう!」
ユキカゼの笑顔につられツナも笑顔で返す。
しかし、ツナはまだ先程のレインの事が頭に引っ掛かっていた。
――数時間前――
「はぁはぁはぁ……」
「ツナ大丈夫!」
力を使い切り超死ぬ気モードが解ける。
ツナは少しふらついているが、倒れてしまうほどではない。
「うん……何とか………」
アクアの心配を少しでも和らげるため笑って答える。
「もう無茶するんだから」
アクアはほっと安心する。
「あ!」
「どうしたの?」
ツナの問いかけを無視してアクアは、今まで魔物がいた場所に駆けよる。
何かをゆっくり大事そうに拾い上げ、戻ってくる。
そこには、かわいらしい寝顔のお猿がいた。
「アクア、それって……」
「土地神様だよ」
土地神と呼ばれるお猿はアクアの腕の中ですやすやと気持ちよさそうに寝息をたてている。
「さっきツナが倒した魔物はね、元々土地神様なの。でも、何かの拍子に魔物になるような事が起こったんだと思う。どうやって魔物になるかは私にもわからないけど、なんだか悲しいよね。そういうの……」
土地神の事を考え、泣き出しそうな表情を浮かべる。
「……その子は大丈夫なの?」
「うん。魔物になっても、元に戻れば命に別条はないから」
「そっか」
それを聞きツナは一安心した。
土地神やそうではないものでも、命は奪いたくないからである。
「どうやら、終わったようだな」
ふいに声が聞こえる。
声がした方には、傷だらけのレインが、ふらふらしながら立ち上がろうとしている。
「レイン! 大丈夫!」
「ふん。敵の心配などするな。甘い奴め」
ツナは苦笑いする。今まで戦って来た者たちやリボーンに散々言われてきた事が、異世界でも言われるとは思わなかった。
レインはしばしの間ツナを見る。
ツナ自身はそこまで気にはならないが、少し首を傾げる。
「……勇者。名を聞いていなかったな」
「えっ、あ、うん。沢田綱吉……」
少しおどおどして名乗る。
「沢田綱吉………。沢田綱吉勝負はお預けだ」
「えっ!」
「なんだ、まだ戦い足りないのか?」
「いっ! そ、そんなわけないだろ! こっちもぼろぼろでへとへとなんだから!」
ツナは必死に弁解する。事実もう立っているだけで一杯一杯のだから。
「フッ、冗談だ」
小さな笑みを浮かべ、ツナとアクアに背を向ける。
「沢田綱吉アクア姫をお前は守りきれるか? どんなことがあっても守り切れるか?」
レインが声は今までで、一番の重みがある言葉だった。
「守るよ」
ツナは揺ぎ無く答える。
自分の守りたいものを守る強さ。それが沢田綱吉が求めた強さだ。
そして、その力は今、一人の女の子のために。
「そうか。その言葉忘れるな。…………俺と同じにだけはなるな」
「え、今なんて……」
最後の言葉はツナの耳に届いていなく、聞き返す。
だが、レインは何も答えず歩き去って行った。
――現在――
「そういえば、アクアはどこに居るの?」
「そう言えば、そうでござるな」
二人はアクアやガウル達は宴の開始と同時に姿が見えなかった。
「まぁ、そのうち戻ってくるでござろう。それより、沢田殿この果物おいしいでござるよ」
アクア達の事は気になるが、祭りごともしっかりと楽しんでいる。
ツナもこんな国全体で盛り上がる祭りごとは、初めてで思わず笑顔になる。
「ユキカゼさっきから、目に入る物全部食べてるけど、大丈夫なの……」
「このくらい、食べなくては祭りごとを楽しんでいるとは言えないでござるよ。さ、沢田殿もお一つ」
うさぎ型にカットされた、リンゴに似た果物をツナの口元に近づける。
「お、俺は別にいいよ!」
ユキカゼはあまり気にしてないが、これは完全にア~ンという形になっている。
女の子からこんな事をされたら当然恥ずかしく、ツナは顔が熱くなっていく。
「おやおや、若いですね~お二人とも」
前方からアイゼンとクロノス、ダルキアンが歩いてくる。
ユキカゼとのやりとりを見て、アイゼンは微笑んでいる。
「アイゼン!クロノス!」
「お館様!」
「二人とも楽しんでいるようでござるな」
「もちろんでござる! 楽しまなきゃ損でござるから。アイゼン殿も祭りを楽しんでいるようでござるな」
アイゼンは持てているのが不思議なほどの量の食べ物を両手で持っていた。
「こいつ、呆れるほど食うは食うはで、見てるだけでこっちは腹いっぱいだっつーの」
レインが去った後、二人は行くあてもなく、アクアがアトラティカ王国の戦士として迎え入れる事を提案したのだ。
元々国民や建物、実質的な被害を二人は出していないとのことで、さほど問題はなかった。
アイゼンは快く誘いを受けたが、クロノスは自分達がこの国に迷惑をかけた事に変わりはない、と断ろうとした。結局アイゼンが説得という形に収まった。
「クロノスはどう?」
「あ~、ま、楽しんでるよ」
少し照れながら答える。
「あ、そういえばガウル達見なかった?」
「それでしたら、もうそろそろだと思いますけど」
アイゼンの発言にツナとユキカゼは首を傾げる。
すると、突然国全域にコミカルな音楽が流れ出す。
「紳士淑女の皆さん注も~~~く!」
モニターに映っていた司会者が何かを始めるようと弾んだ声で言う。国民も何だ何だとモニターに目をやる。
「今宵は我々にとっては忘れがたい歴史が生まれました! 私たちの国、アトラティカ王国への突然の襲撃ア~ンド魔物の出現! ピンチはピンチ、大ピンチ!」
「しか~し、そんな窮地を救ってくださったのが、我らの勇者様だ~~~!」
上空に浮かぶ無数のモニターには二人の司会者が熱弁をふるっている。
人々はモニターを見て盛り上がる。
「なっ!」
「とっ、いうことで、ツナさん行きましょうか」
アイゼンはニッコリと笑い、ダルキアンとクロノスはツナの腕を片方ずつ肩を持ち上げる。
「えっ! ちょ、待って! そ、そうだ! 今からじゃどうせ間に合わないから!」
ツナは必死に訴える。
このままでは大勢の人前にでてしまう。ツナ自身国民全員の前にでて、勇者とまつりあげられたら、もう死にたいと嘆くほど、恥ずかしい思いをするだろう。
「大丈夫でござるよ。それまでエクレール達が繋いでくれるでござるよ」
「えっ!」
「勇者様自身は、ここにはいませんが、勇者様と共に闘ってくださったビスコッティ、ガレットの戦士が、いらっしゃってくださいました!」
司会者の紹介で、エクレール、リコ、ガウル、ノワール、ジョーヌ、ベールがモニターに一人一人映る。
モニターを見ている人々は、戦士達の登場に割れんばかりの歓声を送る。
エクレール達はそれぞれ、照れ笑いを見せる。
「さ、これで時間ができたでござるよ。勇者殿」
ダルキアンはニッコリと笑う。ツナにとって今その笑顔は悪魔の微笑みに見えたとか何とか。
「頑張るでござるよ~」
「まー、そのなんだ。同情はする」
ユキカゼは笑顔で見送り、クロノスはどんまいとい目で言っていた。ていうかクロノス同情するなら手を離してよ! ツナは心の中で全力でツッコム。
かくしてツナはあえなく、ずるずると引きずられていった。
「皆さん今回は本当にありがとうございます! 他国の為に危険を冒してまで、助けてくださって!」
司会者の一人が感謝の意を込め言う。
それは国民皆の気持ちである。
「いや……そんなに改まらなくても……」
「そうだぜ、困ってるときはお互いさまだ」
「うぅ~、なんて寛大なんでしょう~、私たちは感謝感激雨あられです」
二人の司会者は、涙を滝のように流す。
「それでは、続いて。我らのアクア姫に登場してもらいます」
司会者の二人は、すぐに元のはつらつとした雰囲気に戻り、エクレール達が来た逆の方に手を大きく広げアクアを迎い入れた。
モニターが一人の女の子を捉える。
そこには、ドレス姿で司会者たちに近づくアクアがいた。
アクアが司会者達の元まで来ると、大きく頭を下げた。
「皆さん。今回はたくさん心配かけて、ごめんなさい!」
アクアの突然の行動にエクレール達はもちろん、民衆も驚きの表情をしていた。
「私は今回の件で何もできなかった。守るはずの国民を不安にばっかりして。本当こんなんじゃ駄目だよね」
アクアは笑ってみせるが、悲しみが強くみられ、うまく笑えていない。
自分は一国の姫で、守らなくてはいけない存在なのに、結局何にもできなかった。
アクアにとっては耐えがたいほどのものがあるのだろう。
「そんなことはないであります!」
「えっ……」
しかし、アクアの言葉は否定される。
「リコの言う通りです。私はアクア姫の事はあまり知りませんが、それでも国民の誰一人として、そんなことを思っている人はいないはずです」
「……でも、私は………」
アクアには自信がない。
本当に国民は自分を今まで通り受け入れてくれるのだろうか、不安で不安でたまらない。
無理もない、一国の姫とはいえまだ少女なのだから。
「二人の言う通りだよアクア!」
その声に俯いた状態のアクアはゆっくりと顔を上げる。
「アクアは自分が思ってる以上に頑張った! それは俺が知っている! 国の皆だった知ってる!」
「ツナ………」
今までいなかったツナが、アクアの近くまで来ていた。
そして、アクアの言葉を否定する。
アクアはその言葉を聞き、辺りを見渡す。
たくさんの国民がいて、全員がしっかりとアクアを見据えている。
「姫様は悪くない!」
「そうだ、姫様を守ることができなかった俺たちの方が駄目なんだ!」
「姫様笑って!」
「姫様の悲しい顔なんてみたくないよ!」
モニター越しに見ている人々も、聞こえないと分かっていても口々に叫ぶ。
これが国民の本心。
アクアは本当に愛されていた。それは誰が見ようと疑いようもない事だ。
こんなに慕ってくれる人たちがいる。そう思っただけで、アクアの瞳から涙を流す。
「みんな、アクアの事が好きなんだ」
アクアは涙をぼろぼろと零しながら、涙声で全力で叫ぶ。
「………私も……この国が……みんなが……大好きだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「「「「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!」
アクアの心にもう不安なんてものはない。あるのはこの国をみんなを自分は大好きだと思う気持ちだけ。
そして、国民のみんなもそれに全力で答える。
今日この日の宴は、大いに盛大に最高に賑わった日となった。
今回でティラミス城編終了です。
次回からは小話を入れていきます。