これからは春休みに入るので、早く投稿ができると思います。
前の話で予告した通り、日常です。新しいオリキャラでます。
ではどうぞ。
「は~、ひまだな~」
アトラティカ王国の危機を救い、宴があった日から、三日が過ぎたある日。
ツナは特にやることもなく、アトラティカ城をぶらぶらと散歩していた。
ツナがこうも暇を持て余せているのは仕方がない事だ。
ユキカゼ達は自国に帰っていき、アイゼンとクロノスは今回の騒ぎの罪滅ぼしとして、国民の様々な手伝いをしている。もちろんアクアも、国民に改めて認められた事により、領主としての仕事を張り切ってこなしている。
ツナも昨日まで傷が完治していなく、安静にしているように言われていたが、いざ自由の身になってもやることがなく、現在に至る。
ツナはふと自分の手に視線を落とす。
(そう言えば、この間の戦いの時から、何か違和感があるだよな………)
ツナは手を握っては開いて、握っては開いてを繰り返し、自分の調子を改めて確認する。
この世界に来た時には、あまり感じなかった事だ。それもそうだ、そんな事を考える余裕などなかったのだから。
(気のせいかな……)
まだ、その違和感をうまく拭いきれないでいると、
「勇者様!」
「……えっ」
前方から一人の騎士が甲冑をガシャガシャ鳴らしながら駆け寄ってくる。
まだ、勇者と呼ばれるのに慣れていなく、自分の事だと遅れて気付く。
「ちょうどいいところに。今から我らの訓練を始めるのでよろしければ見に来ませんか?」
「う~ん、じゃぁ……ちょっとだけ」
断る理由も特にないので誘いを受ける。
騎士の男に案内され、多くの騎士たちが剣を互いに交える場所につく。
「うわ~、すげぇ……」
ツナは感嘆の声を上げる。
互いに真剣の表情で剣を打ち込む様子は、実力以上の気迫が伝わってくるものがある。
「ここでは、騎士たちの剣の稽古に実戦訓練などを行っているんです。他にも、弓兵や砲術師も少し離れた場所で訓練をしています。アクア姫の危機には次こそお役に立てるように皆張り切って取り組んでいます」
「そっか、みんな頑張ってるんですね」
「もちろんです! そうだ、勇者様も一緒にどうですか?」
「えっ! あ……お、俺はいいや」
「そう遠慮なさらず、私たちも勇者様の戦い方を見てみたいのです」
どうしてもとお願いされ、ツナは困った表情を浮かべていると、
「俺にも見せろ!」
上空から声が聞こえ何だと思いその場の全員が上を見上げる。
すると、一人の男が両手両足を広げ、大の字の形で落ちてくる。
「アトラティカ王国の勇者よ! 貴様の勇者っぷりを俺に見せ―――」
通るような声で叫びながら地面に着地―――しなく激突した。綺麗に大の字という跡が地面に残る。
「えっ……と……生きてる?」
「無論だ!」
「うわっ!」
ツナが恐る恐る尋ねると、落下男はすぐさま身体を起こす。
「この鍛え抜かれた身体がこの程度で、砕けるわけがない! そこらの貧弱な兵士と一緒にしてもらっては困る!」
その言葉に、その場にいた兵士はムッとなる。
こうも目の前で自分たちの事を侮辱されたら怒りもするだろう。
「貴様は誰だ? 侵入者ならすぐさま捕えるぞ」
ツナの横にいる騎士が落下男を睨み、目的を聞く。
しかし、落下男は騎士の男を鼻で笑い、挑戦的な口調で言う。
「貴様らごとき、ただの兵士がこの俺を捕えるとな笑わせるな!」
「このっ!………アトラティカ王国騎士団! 侵入者をひっ捕らえるぞ!」
「来るとな。おもしろい、遊んでやる!」
落下男は拳を構えた。
―――五分後―――
「ずびまぜんでした…………」
……落下男はぼろぼろの状態で縄で縛られていた。
「…………」
ツナや騎士たちは何も言えなかった。いや、何も言葉が見つからなかった。
この男のあまりの――――――――――弱さに。
戦いはまさに一瞬だった。
落下男が騎士たちに駆けだそうとしたら、転がっていた小石につまずき転倒。
騎士たちは勢いあまって、止まる事は出来ず、そのまま体重+甲冑の重さをくらいノックダウン。
男の態度も先程とはもはや別人といっていいだろう。
「この人……弱すぎる……」
「ち、違う! 俺は元々素手で戦うファイターではない! 剣を、武器を扱ってこそ俺の真の力は発揮されるのだ! だからもう一度、俺に武器を与えて再戦を申し込む!」
「自分の立場が分かっているのか貴様は……」
騎士の男は話しているだけで疲れてくる、それは全員が思った事だ。
「それで、改めて聞くぞ。お前は誰で何の目的があってこの城に来た」
「………ふっ、俺が簡単に口を開くと思うのか、否! 断じて否! 俺の口を割りたければ食料を持ってこい!」
「………一応聞くが何故だ……」
「決まっているだろう。腹がすいたのだ!」
何も恥じる様子もなく、決め顔で言う。
「勇者殿……何故こいつはこんな状態で、我々に食料を要求してるのでしょうか…」
「えっと……肝が据わっているから……とか」
騎士は落下男の言葉を聞くたびに頭が痛くなっていく様子で、ついにツナに助け舟を出した。
ツナも苦笑いで答えるしかできない。ツナ自身もどう対応したらいいかわからないのだ。
「はぁ………答えないならしかるべき処置をする事になるぞ」
「処置だと?」
「そうだ、不法侵入に我らへの攻撃。これは立派なアトラティカ王国へ敵対攻撃だ」
「敵対だと? それは違うぞ! 俺ムラサメ・キキはこの国の騎士になるため参上したのだ!」
自らの正体と目的をこうもあっさりと話してしまうのこの男がバカであるからだ。
「どうした。俺が騎士団に入るのが嬉しすぎて、声も出ないか」
ムラサメは得意げな表情を浮かべる。繰り返すこの男はバカである。
「おや、みなさん? どうしましたか?」
「あっ、アイゼン。それにクロノスも」
二人がいつの間にか、近くまで来ていて、何事か尋ねてくる。
「二人とも、街の方はもういいの?」
「あぁ、今日の分が終わったからな。訓練でもしようと思ってここに来たわけだが……取り込み中か?」
「うん。ちょとね」
クロノスはふとツナ達の後ろ居るムラサメに目をやる。
「問題ってのはそいつの事か?」
ツナはその質問に頷き、先程のことを二人に説明する。
「――――なるほど。入団希望者ですか」
「なんだよ、面白そうじゃねーか」
クロノスはムラサメの大胆な行動を気にいったようだ。
「まぁ私たちも敵対する意思がなく、単なる入団希望者であるなら特に問題もない。だが、そうなると、最低限の実力を示してもらうために入団テストを行う必要がある。受けるかテスト」
「愚問だな!」
騎士の男の問いを鼻で笑い答える。
「そういうことなら、俺がそのテスト相手になってやるぜ」
「え、いいのクロノス?」
「あぁ、こいつの実力とやらも見てみたいしな」
「……あんまり期待しない方がいいと思うよ」
クロノスは真に受けているようだけど、ツナや周りの騎士たちは完全な強がりと思っている。
「ふん、俺の本気を出すのに相手にとって不足ありだな。そこの勇者と戦わせろ」
クロノスの申し出を悪態をつけ拒否する。
「ほう……言うじゃねーか。小石につまずいて捕まった間抜けのマヌケが」
クロノスの表情はにこやかのままだが、明らかに頬は引きつって、怒りのオーラを纏っている。
「貴様人の話を聞いていなかったのか、俺は武器を扱ってこそ強いんだ」
「だったら、沢田とやる前に俺とやってその実力ってもんをみせてみろよマヌケ」
「貴様二度もマヌケと言ったな。いいだろう! 貴様をコテンパンにしてその言葉を訂正させてやるぞ!」
既に、テスト関係なく二人のいざこざになっている。
ツナ達はもはやかやの外である。
「そこの騎士! 剣を借せ!」
指名された騎士は少し不服そうにしながら剣を投げる。
ムラサメはそれを掴むと同時にクロノスに駆けだす。
クロノスも臨戦態勢に入り、ムラサメの剣を見きるため集中してみる。
「くらえ!」
ムラサメは剣を振り下ろす。しかし、その姿はあまりにも不格好で素人の動きにしか見えなかった。
クロノスはなんなく避ける。
まだだ、と言いながら、子供のように剣を振りまわす。
「くっ、当たれ!当たれ!当たれ!!」
「お前……マジか」
振りまわされる剣を全て避けながら、クロノスは若干顔が引きつっていた。
それもそうだろうあれだけの大口を叩いて、本当は戦いの素人なのだから。
クロノスは隙だらけの腹部めがけて一発いいのを放った。
「ぐほっ!!」
膝をつき悶絶。さしずめ呼吸困難だ。
先程は体が頑丈と言っていたが、どうやら腹部は別らしい。
―――十分後―――
「最後に何か言い残すことはありますか?」
元通りに呼吸ができるまで、ツナ達は少し待っていた。結果はもちろん不合格。
騎士団の人達に、城の外まで運んでくれないかと頼まれた。たぶん、これ以上一緒にいるとストレスが爆発してしまうからだろう。
ツナとクロノス、アイゼンは城の入口までムラサメを連れて行き、別れの前の一言を聞く。
「俺がこの程度で諦めると思うなよ! 俺は何度だって挑戦し続ける!」
「そうかよ。だったらそんときも、また相手になってやるよ」
クロノスが握手を求めるため手を出す。
ムラサメは出された手を握る。
「その言葉忘れるなよ。次会う時こそ、貴様を地面にひれ伏させ―――」
「あっ! いたいた! おーい!」
ムラサメの言葉を遮り一人のアクアが急ぎ走しで駆け寄ってくる。
「そんなに急いでどうしたのアクア?」
「いやちょっとね……あっ! やっぱりムラサメさんだ!帰ってきたんですね!」
「そう言う貴方はアクア姫ではないか」
「えっ!二人って知り合いなの」
二人は一緒に頷く。ツナにはとてもじゃないが二人が知り合いには思えなかった。
「二人はどういう間柄なんですか?」
「間柄も何もムラサメさんはこの国の医療部隊だよ。今までは自分の腕を磨くため修行の旅に出てたの」
それを聞き三には驚いた表情でムラサメを見る。
「医者! そんな人が何で、騎士団に殴りこみなんて仕掛けたの!」
「ふん。決まっているだろ。殴りこみは男のロマンだからだ!」
当然のことく言い放つが、この人は普通じゃない。それはもうびっくりするくらい普通じゃない。
「そ、そうなんだ……」
「そうだ。ようやく分かっ……勇者ちょっといいか」
「えっ、ちょ、いきなりな―――」
突然真剣な表情になり、ツナの意見を聞かず両腕を触り始めた。いや、触り始めたというより調べ始めたというのが適切だろう。
本人や他の者は何が何だか分から上、ムラサメの真剣さに何も言えなかった
何度かもみほぐした後、今度は肩、太もも足と次から次へと何かを確認している。
調べ終え、数秒拳を口元に当て、考える動作をしてようやく口を開いた。
「勇者お前は自分の体に異常を感じた事はないか?」
「えっ、異常?」
「そうだ。何でもいいここ最近感じたことであれば何でもだ」
「何でもって、う~ん……あっ、そういえば」
朝自分が考えていた事をツナは思い出した。この世界に来てからの自分の力の違和感。
そのことをムラサメに話すと、
「やはりそうか。しかし珍しいな、いや勇者自体が特殊なのか」
ムラサメは一人ぶつぶつと呟いている。その事に煮えを切らしたのか、クロノスは少し乱暴に尋ねる。
「だぁぁぁ!!何一人で分かってんだよ。俺たちにもわかるように説明しろ!何だ沢田は病気にでもかかってんのか!」
「ちょクロノス!嫌な事言わないでよ!」
「少しは落ち着けそこのサル。そして、心配するな勇者お前は病気などにはかかっておらん。それに大したことじゃない」
その言葉にツナはほっと胸をなで下ろす。後ろの方では、誰がサルだてめぇ!と、アイゼンに押さえられているクロノスが叫んでる。
ムラサメはさして気にした様子もなく説明を始める。
「お前が感じる違和感を一言で言い表すのなら、この世界に慣れていないだけだ」
「慣れていないって……俺もう随分慣れたと思うんだけだ」
「気持ちの方はそうなんだろうが、問題は体の方だ」
「体の方?」
ムラサメは頷く。
「お前の体には、本来お前自身が持っている力があるはずだ。しかし、それがいけない。このフロニャルドでは大地から分け与えられる、フロニャ力がある。この世界の人間はそのフロニャ力を使い、自身の中にある輝力を力とする。だが、お前の力はどういうわけかこの世界、フロニャルドとは合わないようだ」
「合わないとどうなるの?」
ムラサメの説明に聞き入っているツナは質問する。自分にとって大事な話しかもしれないと思ったのだ。
「そうだな……おそらくお前本来の力が引き出せないはずだ」
「えっ!」
返ってきた言葉にツナ自身驚いた。今の今まで自分は全力じゃなかったのかと分かったからだ。
そしてふと、家庭教師の赤ん坊が脳裏をよぎった。しばらく戦いがなかったとはいえ、自分の体の状態をちゃんと把握できていなかった事がばれたら………背筋に冷や汗が流れる。
「それでツナさん本来の力を取り戻すことはできないんですか?」
「いや、それ自体はさほど問題はない、最初に言った通りこれは慣れだ。フロニャルドに居るだけで、勇者の力が馴染んでいくはずだ」
嫌な想像をしていたツナにとって、嬉しいはずの解決策もあまり素直に喜べなかった。
「やっぱりムラサメさんは凄いなぁ~。でもなんでそんなぼろぼろの格好でこんなとこにいるんですか?それにさっきの殴り込みって?」
「ふん、なに大したことはことではないから気にしないでくれ姫よ。少し新参者と戯れていただけだ」
「けっ!よく言うぜ」
ムラサメに聞こえる大きさで悪態をつく。
その発言にもちろんムラサメも黙ってはいなかった。
「なんだサル」
「サルじゃねーよマヌケ」
二人は額をぶつけながら睨みあう。二人から変なオーラすら見える。
「これからもっと賑やかになるねツナ」
「ははっ……ほんと賑やかになりそうだね」
新しい仲間が加わり、沢田綱吉の異世界での生活はまた一段と賑やかになりそうだ。
今回でてきた、アトラティカ城はティラミス城とは別のものです。
次回も小話になります。