DOG DAYS 大空の勇者   作:ポーカー

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早くと言っておきながらまた、遅れてしまいました。
今回は会話ばかりです。楽しんでいただけるかは分かりませんが、どうぞ。


談笑と月

「へぇそういうことがあったんだ」

「なんか凄い話だね」

「うん。」

 

シンク、ナナミ、レベッカはツナと向き合い感嘆の声を上げる。

 

「い、いや………そんなんじゃ……」

 

戦が終わった後、ツナはアクアやそこにいた姫様、勇者達と一緒にここビスコッティに訪れた。

ビスコッティに着くまで召喚された他の勇者との挨拶を軽く交わした。

そして、勇者三人がツナのアトラティカ王国での活躍を聞きたいと言いだし、それなら、ゆっくりできる場所でと、ミルヒの計らいで広く綺麗に装飾されたこの部屋で話すことになった。どうやら、この部屋は日本で言う居間みたいなものらしい。

約束通りツナはこれまでの事を控え目に話すが、何故かアクアが煮えを切らして、真実をギリギリ超えない程度に盛り上げた。ツナ本人は自分の事をあまりにも美化され、顔から火が出るほど恥ずかしかった。

 

「そうなの!それで極め付けがこれ!『俺は君のためなら死ねる!』」

「ちょっ!何勝手に話し作ってんの!」

「ツナカッコいい!」

「シンク違うから!そんなこと言っていないから!」

 

慌てて否定するがシンク達の耳には入っていなく、シンクはツナを尊敬のまなざしを向ける。

この場には勇者と領主達しか居ないから、ユキカゼはエクレールに助け船はもちろん出ない。

ツナ自身が弁解するしかない。

 

「確かに守るみたいな事は言ったけど、そんなにカッコいい事言ってないよ!」

「ツナったら照れちゃってぇ~」

「アクアは俺を茶化したいだけだよね!」

「うん」

「認めちゃった!」

 

ツナとアクアのやり取りを見ていた勇者三人は思う。

 

「どっちにしたって二人とも仲いいね」

「だね」

 

出会って1週間程しか経っていなのに、こんな風にふざけあえるのが何よりの証拠である。

二人のやり取りを見てるだけでも不意に笑ってしまいそうである。

領主陣も紅茶を呑みながらその様子を微笑ましく見る。

 

「アクアのとこの勇者も大変だな」

「そうですか?私にはとっても仲が良いと思いますよ」

「うむ~。うちもあんな風にレベッカときゃっきゃっ、うふふ、したいのじゃ~」

 

この場は随分と豪華な顔触れになっている。それぞれの国の勇者や領主、それがこれだけ集まっているのだから。

それでも何に気兼ねなく笑いあえるのもこの世界の、いやここにいる者達がそれだけ誰に対しても分け隔てなく優しい心を持っているからであろう。

たくさん談笑をし終えると、区切りがいいと思いミルヒが言った。

 

「それじゃ皆さん。そろそろお風呂に入りましょうか」

「お!いいね、いいね!フロニャルドでの初風呂だぁ!」

「うちたちも入るのじゃ!のうレベッカ!」

「はい、クー様!」

 

女性陣は風呂という単語を聞くと、途端に目の色を変えた。

やはり、異世界だろうと何だろうと、女の子は風呂が好きなのだろう。

とても、うきうきした様子である。

 

「それじゃ僕たちも入ろうかツナ」

「そうだね」

 

二人で残っていても時間を持て余すだけだと、思って、二人も女性陣に続くように部屋を出る。

 

「ツナ覗いたら駄目だよ?」

「そんなことしないよ!」

「本当に?」

「俺ってそんなに怪しく見えるの!」

「いや、その慌てようが何だか逆に怪しく……」

「そうさせたのはアクアでしょ!」

 

アクアは「冗談、冗談」と笑いながら答える。

さっきから随分と遊ばれているが、どうもアクアには敵わない。

初めて会った時とは大違いである。あの時は演技で作っていた部分があったけど、砕けたらこんなにも小悪魔的性格だったのかと、ツナは思い知った。

まぁ、他人行儀や敬語を使われるのはむず痒く感じてしまう。しかし、これはこれでまた激しく疲れそうである。

ツナ達は、廊下を進んでいくと『男』『女』とそれぞれ別の色で塗られたのれんが目に入る。

 

「あれ?異世界なのに何で銭湯みたいになってんの?」

「これはシンクが提案してくれたんです」

 

名前を呼ばれ、シンクは照れくさく笑う。

 

「へぇ~、でも何で?」

「そ、それはその~……そう!こっちの世界にも僕たちの世界の事を知ってもらいたくて、まずは風呂からってことで教えたんだ!」

 

何だか少し、後付け臭い感じだ。妙に焦ったように大きな声で言うから尚更何かあるのかと考えてしまう。

シンクはシンクで、この場を凌ぎたかった。以前フロニャルドに来た時、間違ってミルヒと風呂に入る事になった事を教訓に、こののれんを設置するように薦めたのだ。

ちなみにミルヒには敢えて、その事を伏せて話した。

何とかばれない様にと心の中で願っていると、

 

「へぇ~そうなんだ」

「ほう、これがあちらの世界では普通なのか」

 

のれんに興味が行くもののすぐに、『女』と書かれたそれを潜る。

それだけ風呂に入る事を心待ちにしていたという事なのだろう。

シンクもほっと胸を撫で下ろした。

 

「それじゃ僕らも入ろうか」

 

安堵の表情のままツナにも入るよう促した。

 

 

 

――――女湯――――

 

「わぁ!ひろ―――い!」

「私こんなに広いお風呂初めて!銭湯より広いんじゃない!」

 

レベッカとナナミは浴場を見て感嘆の声を上げる。

ここまで大きく豪華な風呂に入る事などまずないだろう。

 

「喜んでもらえて嬉しいです」

「レベッカ!うちと流しっこするのじゃ!」

 

続けてミルヒとクーベルが出てくる。

クーベルは浴場よりレベッカの方に飛びつく。

 

「それでは、ワシはナナミに流してもらおうか」

「なら私はミルヒを」

 

それぞれが洗いあう相手を決め、それぞれがいろんな話に花を咲かせる。勇者二人は今日初めて知り合ったとは思えないくらい、仲良く領主達とじゃれあっていたり、アクアは久しく会うミルヒとふざけあったりする。

全員体を流し終え、待ってましたと言わんばかりに湯に浸かると、ほっこりとした顔を浮かべる。

 

「今さらじゃけど、レオ姉のそれは大きするんじゃ!」

「そうか?自分ではよく分からんが……」

 

ナナミがレオの胸を指差しジトメで見る。

クーベルは自分の無い胸を虚しくも見る。……これからの成長に期待。

レオは自分が持つそれの意味をあまり理解していないらしいが、ナナミ、アクア、クーベルは恨めしそうに見る。

 

「そういえば、レオ様って昔から発育が良かったですね」

「レオ姉はずるいのじゃ!反則なのじゃ!」

「そんな危ない爆弾は今すぐ撤去しないといけないよね!」

 

ナナミ、アクア、クーベルが何かに取りつかれたかのようにゆらりと立ち上がる。

レオもそれに何か危険を察知したのか、少し後ずさる。

 

「な、なんじゃ一体、何か怖―――」

「さわっちゃえ―――!」

 

ナナミの合図とレベッカとクーベル、アクアが飛びかかる。

手当たり次第にレオの体を触りつくし、なんとも嬉し恥ずかしの構図ができあがる。

触ってる本人達は完全に悪ふざけでやっている。

 

「や、止めぬか!こ、これっ!そこは……っ!」

「す、すごいっ!これが大人の魅力!」

「レオ様は私達とそんなに変わらないんですが……」

 

ミルヒが訂正するが、そんなのは関係なく、ナナミ達の猛攻は一向に休まない。

というか、なんだか楽しんでるようにも見える。

しかし、さすがにやり過ぎである。堪忍袋の緒的な何かが切れる音が聞こえた。

 

「……いい加減にせんかぁぁぁあああ!!」

 

 

―――男湯―――

 

「なんだか向こうは騒がしいね」

「うん。レオさんが怒っているのは声で分かる」

 

二人は湯に浸かりながら、今日一日の疲れを取る。

 

「シンクってフロニャルドに来るのって、二回目なんだよね?」

「そうだよ。前に来たのは春休みだから……三か月前ってとこかな」

 

シンク達についても先程、大まかであるが教えてもらったとこだ。

 

「それよりさツナ。僕達風月案で合宿をやる予定なんだけど、ツナも来ない?」

「えっ?行っていいの?」

「もちろん!僕もツナと仲良くなりたいし!」

 

恥ずかしい台詞をこうも堂々と当たり前に言えるシンクに、ツナは自分の心に真っ直ぐなんだな、と素直に凄いと思った。

 

「そ、それじゃ。よろしく」

 

照れながらもシンクの申し出はツナ自身嬉しく感じていた。

 

「うん!よろしく!」

 

シンクから出された手をツナはしっかりと握る。

 

「こんのたわけがぁぁぁぁぁああああ!!!」

 

その後隣では大きな水しぶきと共に目を回している三人の娘達が宙を舞っていた。

 

 

 

 

 

 

夜であろうとも城の中では様々な光が零れるように溢れて、まだ大分昼間の賑やかさが残っている。

ツナ達は風呂を上がった後も、様々な話に花を咲かせていたが、時間も時間と言う事で、お開きと言う形になった。

ツナも使用人から部屋の鍵をもらい、場所も教えてもらい向かっているのだが、

 

「ま、迷った~」

 

今にも泣き出しそう声が廊下に小さくだが響く。

城の人達にも、何故だか会う事がない。

だからツナは途方に暮れて、城の中をただたださ迷う事しかできない。

 

「ん?あれって……」

 

歩いているといつの間にか庭の方に出ていて、その庭には見覚えのある少女がいた。

 

「アクア……?何してんだろ?」

 

庭の椅子に一人アクアは空を見上げながら座っていた。

エメラルド色の髪が月の光に照らされ、不思議な色を放っていた。

ツナの眼には凄く幻想的に見えているだろう。まるで、絵本の一ページのようである。

いつの間にか目を奪われていたツナは、ふと振り返ったアクアと目が合う。

 

「ツナ……」

「あっ、ごめん!別に盗み見てたわけじゃ……」

「?どうしたのそんなに慌てて?」

 

どうやらツナが偶然通りかかったと思ってるらし。事実そうだが、何故か悪い事をしたかのような気持ちになってしまう。

 

「……少し話ししない」

 

アクアの誘いに少し戸惑うが、素直に頷く。

庭先まで足を運び、アクアの向かいの椅子に座る。

 

「………」

「………」

 

沈黙が流れる。

 

(な、何を話せばいいんだ……)

 

ツナは何を話すか頭の中であれこれ悩んでいると、

 

「ツナ知ってた」

「?」

 

アクアが神妙な面持ちでツナをじっと見つめる。

 

「ここはね、昔ある騎士が練習場所に使っていたの。でも、ある日練習が終わって返ろうとした時、ふとどこからともなく声が聞こえてきたの。《おいていけ》って、騎士は空耳だと思ったけど、何度も何度も聞こえ――――」

「ちょ、ちょっと待って!」

「む~、今からいいとこなのに」

 

アクアは不服そうに唸る。

 

「じゃなくて、それってもしかして怖い話なんじゃ………?」

「もしかしなくても、そうだよ。聞いててわかんなかった?」

「いや何となくは……じゃなくて!何で怖い話なの!」

「いやここは場を温めようと」

「逆に冷えかえるよ!」

「だったらツナが何か話してよ。面白い事」

 

アクアは悪戯っぽく笑う。自分の話題を途中で斬られて仕返しのつもりなのだろう。

しかし、面白い事と言われてもすぐさま話題は浮かばない。ツナは空中で指をなぞり、え~と、と焦りながら考え、そうだ!と手を叩く。

 

「俺の居た世界はしゃべる赤ん坊がいるんだ」

「………」

 

無言の威圧感。憐みの目。

今のアクアはとても可哀そうな人を見る目である。

 

「ツナ…さすがにそれは……」

 

アクアは心配した表情と控えめな声で言う。

 

「いや本当なんだってば! てかその目やめて! 結構きついから!」

 

ツナはげんなりとなった。ここまで、ダメージを負うとは自分でも思っていなかったのだろう。

 

「ふふふっ」

 

すると、アクアが小さく笑う。

 

「……初めてだね」

「えっ……」

「ツナと二人でこうしてゆっくり話すの」

「あ、確かに……」

 

言葉を交わした事はあっても、こうして落ち着いて話すのは確かにこれが初めてだった。

気付くとツナの方もさっきまでの緊張感はなくなっていた。

 

「前々からツナとはこうして話す機会がほしかったんだ」

「しょうがないよ。アクアは色々と忙しかったんだから」

「そう言ってもらえると助かるな」

 

ツナの気遣いにアクアは笑顔で返す。

 

「そう言えば、一人でなにしてたの?ぼぉ~としてたみたいだったけど」

「ん?そう見えた、やっぱり」

 

ツナは頷く。

逆にそれ以外どうみえるのか。

 

「……私さ、この月や空が好きなんだ。綺麗に輝いて………今の私の眼に映ってるのが夢なんじゃないかって思うくらい。幻想的で、いつまでも見ていたいと思わせるの。………って、変だよね私?」

 

アクアは苦笑いしながらツナに尋ねる。

 

「変じゃないよ。そんな風に景色を楽しむ事が出来るのは大事な事だと俺は思うよ」

 

ツナは元の世界で、ただ皆と騒ぎ会うだけじゃなく、そこには花火や桜。様々な背景があったからこそ、楽しめた。だからこそ、景色を楽しむことの大切さも知っている。

アクアはその言葉に意外な言葉だったのか面をくらっている。

 

「だから、変なんかじゃないと俺は思うよ」

「………そんなことってくれたのは、ツナで二人目だよ」

 

ふいに零れるその穏やかな笑顔にツナはドキッとする。

 

「?何赤くなってんの?」

「な、何でもない何でも!」

 

ツナは激しく両手を左右に振る。

気付かないうちに、顔が赤くなっていた。

そう?、と言いアクアは椅子から立ち上がる。

 

「それじゃ、そろそろ寝ようか」

「う、うん」

 

ツナも立ち上がり伸びをする。

ふいに目を上にやると、今もまだ輝き続ける月がそこにある。

 

「綺麗な月だよね」

 

ツナは素直な感想を言う。

 

「本当だね」

 

いつの間にかアクアも月を見上げていた。

二人はしばしの間。暗闇の中でも決して光を失う事がない大きな月を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

既に戦も終り誰もいない戦場に一人の男が倒れている。

 

「はっ!こ、ここはどこだ!」

 

男は意識を取り戻すと、勢いよく立ち上がり周囲を見渡す。

しかし、周りには人っ子一人おらず、まるで世界に一人取り残されたかのようである。

 

「だ、誰かいないのか!勇者!アクア姫!誰でもいい、誰でもいいからから返事をしろぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」

 

存在を忘れられ、一人取り残されたムラサメは一人虚しく空に吠えた。




どうだったでしょうか?
先程プロットを再確認しましたけど、この小説の終りはまだ長いです。
それまで、なんとか頑張っていきますので、読者の皆さんも付き合ってくれれば幸いです。
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