DOG DAYS 大空の勇者   作:ポーカー

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今日でこの作品を書き始めてちょうど一年です。
なんとも早いです。でも私の投稿は遅いです……。
まぁ、そんなことは置いといて、最新話です。どうぞ。


捜索と違和感

日が沈んできて、森も昼間のような明るさが無くなり始めている。先程から足場の悪い場所を歩き続けてる。子供には厳しいだろう。案の定ココは大分息が上がっている。

 

「もうすぐでござるよ。ココ」

「はぁ……はぁ……う、うん」

 

歩き続ける事1時間。ココには疲労の色が見えてきている。

先程までは積極的に話題を出していたが、今ではそんな体力もうないようだ。ユキカゼはそんなココを見かねたのか、ココの意思に関係なく半場強制的に背中に担ぎあげる。

 

「お、お姉ちゃん!?」

「ほら、これなら楽でござろう」

「いいよおんぶなんて!恥ずかしいよ!」

「子供は子供の時にしかおんぶなんてしてもらえないでござるよ。甘えられるときに甘えるのは大事なことでござるよ」

 

恥ずかしそうに顔を赤らめているココにユキカゼは安心させるように微笑む。この光景は端から見たら親子にも見てとれるだろう。

ココも恥ずかしそうにしていたが、満更でもないようで頷く。

 

「ココはどうしてこの森に来たのでござるか?」

「え、だからさっき言った通り、散歩で……」

「嘘でござるな。ただの散歩であんな森深くまで、来るなんておかしすぎでござるよ」

「…………」

 

初めから変だなと感じていたが、嘘をついてまでのことだ、それなりのことがあるのだろうと思い聞くか迷っていた。しかし、やはり聞いておくべきかもしれないとユキカゼは思い問うた。

ココは気まずそうにも言いずらそうにもどちらとも取れる表情する。

 

「……別に話したくなかったらいいでござるよ」

「うんん。ここまでしてもらったんだし話すよ。………お母さんお医者さんからあんまり体調がよくないって言われたんだ。その時この森に生えてる薬草は体に効くって聞いて。それで………」

 

ココはそこで言葉を切らす。その声色から察するに薬草は見つからなかったんだろう。子供ながらここまで来て迷子にまでなって結局収穫なし。残念なんて言葉では言い表せない気持ちだろう。

 

「ココ………」

 

少年の名を呟く。ユキカゼには今のココを満足のいく言葉が言えるのか迷う。それでもと、ユキカゼは少年へと口を開く。

 

「病はつらいでござろうな………つらくて、苦しくて、逃げ出したりもできない。誰も代わりになんかなることはできない。だからこそ母上に今必要なのはココでござるよ」

「えっ…」

「母上はきっと寂しんでおられる。息子の帰りを心配しながら。ココは母上の為と思い薬草う探しに来たのでござろうが、母上にとってはそんなことよりもただ傍にいてほしかったでござるよ。人のぬくもりこそ何よりの特効薬でござるから」

 

大切に思っているからこそ、その人の為に自分のできる限りのこをしてやりたい。その考えはとても難しい。それを行動に移すのはもっと難しい。ココはやったことは決して間違った事ではない。

でも、病で弱っているからこそ人肌の暖かさを感じたいと思う時もある。ココの母もきっとそう思っているんだとユキカゼは思った。

 

「………そっか……傍にいるだけでよかったんだ……」

 

ココはユキカゼの言葉を噛み締めるように何度も小さく頷く。

振り向かずとも、今ココがどんな表情をしてるのか、ユキカゼはつい顔がほころんでしまう。

ココの優しさいい気持ちは、ユキカゼ自身にも伝わってくるほど、切実である。

 

「あっ!出口だ!」

 

ココが指を指す方に目線をやる。森を抜け通常の道なりに戻ると、ユキカゼはココをゆっくりと下ろす。

 

「お姉ちゃん案内してくれてありがとう!」

「なんのなんのこれくらいお安いご用でござるよ」

「それに、お母さんの事も教えてくれて本当に。本当にありがとう!」

 

感謝の言葉。ココの心からの言葉である。森の中での小さな出会いだけど、ココにとっては大事な事を気づかせてくれた大きな出会い。だからこそ、ユキカゼもこの感謝に心からの返事を返す。

 

「……母上を大事にするでござるよ」

「うん!」

 

少年は駆け足で段々と姿が見えなくなっていく、よほど早く母に会いたのだろう。

少々離れた場所で少年は何か思い出したかのように、手を振りながら叫ぶ。

 

「お姉ちゃんもお母さんを大切にするんだよ!」

 

その言葉にユキカゼは一瞬体が硬直する。

大切にすると言ってもユキカゼの家族は既に……。

そして、その言葉はまるで脳の深くに眠っていた、いや眠らされていたものを無理やりに起こした。そんな感覚をユキカゼは無意識ながら感じていた。頭では何がそんなにも、息苦しいのか分からない。しかし体はしっかりと理解をしていた。

手を振るココにユキカゼは呆然と小さく手を振る事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユッキーどこ行ったんだろう?」

 

薪を拾いに行くと言ってから、かれこれ一時間はかかっている。いくらなんでもかかり過ぎである。

 

「変態二人に裸を見られ、どこかで泣いているんだろう」

「そんなキャラじゃないと思うけど………」

 

エクレールはまだ先程の事に腹を立てている様子だ。ツナに関しては巻き込まれたと本人があまりにも必死に弁解するものだから、一応納得?はしてくれて、何とか解放してくてた。しかし、首謀者のムラサメは今だ木につるされたままだ。

 

「でも確かに遅いよね、もしかして道に迷ったとか?」

「それはないだろう。このあたり一帯はあいつの庭みたいなものだから。だが、確かに遅いな………よし手分けして探してみるぞ」

 

さすがにエクレールも心配に思い、ユキカゼ捜索となった。

日も大分落ちてきているので捜索はなるべく固まってするようだ。

シンク、エクレール、ノワール、この三人と何故か一人だけ余ったツナの二班に分かれて行われる。

 

「……って、何で俺だけ一人なの!」

 

さも当然のように分けられて、危なく流れに流されてしまうところであった。

 

「何か文句でもあるのか」

 

直感で分かる。エクレールはまだツナの事を全て許したわけではないと。

有無を言わせないエクレールの迫力にツナはこれ以上何も言えなかった。

 

「いえ何も………」

 

しぶしぶと言った感じでユキカゼを探すため、一人森の中に入っていくツナだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ユキカゼ~!ユキカゼ~!いたら返事して!」

 

ツナは声を出しながら辺りを探索するが、なかなか見つからない。

森の奥に奥にと進むがそれらしい影も形も見当たらない。

既にシンク達が見つけているかもしれないし、そろそろ戻ろうかと踵を返すと

 

「おや?沢田殿ではござらんか」

 

キョトンとした顔のユキカゼがいた。

 

「ユキカゼ!良かった~皆心配してたよ」

「探しに来てくれたのでござるか?」

「うん。皆で手分けして」

「それは悪い事をしたでござるな」

 

ユキカゼは手を頭の後ろに当て、照れたように笑う。

何故かその笑いには力が、いつもの元気が感じられなかった。

 

「………何かあったの?」

 

つい何気なくツナは聞いた。本当に何気なく。

いつもと何か、様子が違う。問いただす理由としては十分である。

ツナの問いかけにユキカゼは少し驚くが、すぐに何事も無かったかのように笑う。

 

「なんでござるか突然?戻るのが遅くなったのは迷子の子供を案内していたからでござるよ」

「迷子?」

「そうでござる。なんでも病気の母親の為にわざわざこんな森にまで、薬草を取りに来たのでござるよ。親を思う子供心。関心関心」

「そんなことがあったんだ」

「そうでござるよ」

 

ユキカゼは笑顔で答える。でもその笑顔はやはりどこか無理をしているように思えた。再びツナがその事について口を開こうとするが、ユキカゼに台詞を先回りされる。

 

「そういえば、沢田殿はどうしてここにいるんでござるか?エクレのことだから覗きの事をまだ許していないと思ってたござるが」

「ちょっ!だから俺は覗きなんてしようとも思ってなくて、あれはムラサメさんが無理やり……それにまだ覗いてなかったし」

「おや?その言い分だと、もう少し時間があれば覗いていたということでござるか?これは帰ってエクレに報告でござるな」

「ち、違うってっ!これは言葉の綾と言うか何というか………。とにかく、もしそんな事をいったら、また逆さ吊りに逆戻りだよ!」

 

もう二度と体験したくない。ツナの必死の表情からそう読み取れる。

確かに逆さまで吊るし上げられるのなんて、頭に血が上りっぱなしで酔ってしまいそうだ。あれ、だとしたら、今ムラサメさん大丈夫なのか?と内心本気でムラサメの心配をツナはする。

 

「分かったでござるよ。では皆の所に戻るとするでござる」

 

ツナは安堵の息を吐く。今日一日分のため息と一緒に。

ユキカゼは既に帰路を歩き出していて、ツナもその後に遅れながら続く。

 

(結局さっきのって…………)

 

先程の様子の事を考えるが、考えた所で答えはでない。結局は本人に聞くのが一番なのだが、ツナの痴態の話を持ち出したと言う事は、つまりそういうことなのだろう。

どうも聞き出しにくくなり、仕方なくツナはその事について触れるのをやめた。

今のユキカゼが何を思い何を感じているのか、それは本人にしか決して分かり得ない事なのだろう。

 

 

 




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