それでは、最新話。
どうぞ!
ツナの一撃が炸裂して、クロノスは数十メートル吹っ飛んだ。
「はぁ、はぁ、はぁ」
ツナは肩で息をしている。
どうやら今の一撃に全力をつぎ込み、これ以上は右もうまく動かせない状態である。
ツナはその場で、煙が舞っている場所を見据えていた。
「……く…そ……まじ……かよ……」
煙が晴れると、地面にうつ伏せになっているクロノスがいた。
「……ま…だ……だ……まだ……」
「やめておけ。もう決着は着いた」
「……ふざ……け……んな……お…れ……は………ま…け…て……ねえ……」
明らかに無理をしているのが分かる。
ダメージが大きく、戦うこと、ましてや立つことすらできない状態だ。
ツナはこれ以上危険はないと思い、超死ぬ気モードを解いた。
「……こ……の……」
「……どうして、そこまで勝ちにこだわるんですか」
クロノスをじっと見詰めたまま言った。
「クロノスさん、確かに貴方は強い、でもその強さからは何も感じられない、空っぽの力だ。自分の強さを見せつけているだけで、そんなの虚しいだけです」
「…なん……だと……」
「その力は一体何のためにあるんですか、なんの手に入れた力なんですか。今のあなたは見えてたものを見失っている。」
「…………」
「そんな、本当の覚悟がない貴方に俺は負けない」
揺ぎ無い瞳でツナはクロノスに言った。
「……お前の覚悟ってのは……何なんだ……」
「今の俺の覚悟は、アクアやユキカゼ、二人を守ることです」
「………俺は――――」
「そこまでですよ」
クロノスが何かを言いかけた時、突然辺りに響き渡る声が聞こえた。ツナは声の主が誰なのか辺りを見回した。
「こっちですよ」
探している方向とは全く逆の方から声が聞こえツナは振り返った。
そこに居たのは白髪と白耳が見られ、ツナより少し背が高く執事を連想させる服装の男がいた。
「……貴方は誰ですか」
ツナは警戒をした状態で言った。
「おや、これは失礼。私はアイゼン・ベールと申します」
「貴方もクロノスさんの仲間ですか」
「えぇ、そうですよ勇者様。ですが、私は貴方とは争いませんよ」
「どういう……!」
紳士的な口調で男がそう言うと、後ろから一人の少女が現れた。
「アクア!」
そう、現れたのはユキカゼと共に逃げたはずのアクアだった。
「どうして……ここに……」
状況をうまくつかめずツナは困惑していた。
何故ここにいるのが、ユキカゼはどうしたのか、その男と一緒にいるのは何故なのか。
「姫様は、私達と共に国に、アトラティカ王国に還られると決めたのですよ」
「!」
アクアの代わりに答えたアイゼンという男の言葉にツナは驚愕した。
「……貴方は、アクアの国を襲った人達ですよね」
「えぇ、そうですよ」
男は隠すつもりなんてなく、笑顔で返してきた。
その言葉を聞き、ツナはさらに訳が分からなくなりアクアの方を見た。
「アクア、一体どういう事だよ。そいつ等と一緒に還るって、それに、ユキカゼはどうしたんだよ」
「………」
「答えろよ!」
何も答えないアクアに、苛立った様子でツナは叫んだ。
「……説明なんて必要ない……私はこの人達と共に国に還る事にしたの。だから……もう私を守る必要なんてない……貴方はもう用済みなの……」
アクアは俯いた状態で、そう冷たく言った。
「なんだよそれ……」
ツナはうまく言葉が見つからず、そう言うのがやっとだった。
執事服の男は茫然と立っているツナを数秒見て戦意を失ったと思い、クロノスの方に歩み寄った。
「随分と派手にやられましたねクロノス」
「………」
「どうしました? 話す力も残っていませんか?」
「……そんなんじゃねーよ……そんなんじゃ……」
「そうですか、それではそろそろ帰りましょうか。あの国に……」
アイゼンはそう言うとクロノスを肩に担ぎアクアのいる方に戻った。
「それでは、姫様ま―――」
「アクア!」
アイゼンの声を遮りツナは叫び言葉を続けた。
「じゃ……君が俺を召喚したことや、ユキカゼと一緒に戦おうって………あれは一体何だったんだよ!」
「………」
「答えろよ!」
震えた声でツナはアクアに叫んだ。
だが、それ以上の言葉を続けさせないようにアイゼンがツナの前に立つ塞がった。
「もう満足したでしょう」
「まだだ、まだ言いたいことはたくさんある」
「そうですか……それでは仕方ありませんね」
アイゼンは先程までとは違う雰囲気を纏っていた。
ツナもその気迫に負けることなく死ぬ気丸を飲もうとしたが、
「やめて!」
アクアの突然の声に二人は動きを止めた。
「……そんな奴にかまっていたって時間の無駄、早く城に戻りましょう」
「ふぅ、そうですね。姫様がそうおっしゃるのなら」
アイゼンは殺気に満ちていた雰囲気を消し、アクアと共にツナに背を向けた。
「まて! ぐっ……」
二人を呼び止めようとしたが、身体が言うう事を聞かずツナは地面に倒れてしまった。
「やめておいた方がいいですよ。貴方の今の体じゃ何も出来はしない」
アイゼンの言う通りすでにツナは限界で、意識が少しずつ薄れて行っている。
「……アク……ア……」
力が入らなく、ただそれだけを呟いて目を閉じていった。
意識がなくなる寸前に一つの声が聞こえた。
―――ごめんね―――
それだけ聞こえ、ツナは意識を手放した。
「……ここは……」
目を覚ましたツナが最初に目に入れたのは、木の天井だった。
「あ、目を覚ましたでござるか」
ツナは声がした方に顔を動かした。
「ユキカゼ!」
目の前の人物に驚きツナは勢いよく体を起こした。
「うっ!」
しかし、勢い良く起きたのが悪かったのか、身体に激痛が走った。
「あっ、無理は駄目でござるよ!」
「う、うん。それより無事だったんだね」
痛みよりユキカゼが無事だった事に安堵した。
「……はい」
「よかった~」
ツナはユキカゼの無事に安堵した。
でも、すぐにもう一つの大事なことを思い出した。
「沢田殿……アクア姫は……」
「アクアは自分意思で……あいつ等の所に行ったんだ」
ツナは俯いて言った。
そう、結局自分は何も聞けず何もできず、アクアは去って行ってしまった。
「それは違うでござる!」
「えっ」
突然否定されツナは驚き顔を上げた。
「アクア姫は、拙者達を助けるために嘘をついたんです」
ユキカゼが続けて言ったことに耳を疑った。
嘘……嘘ってどういう意味、と混乱している様子であるが、ユキカゼはさらに続けた。
「沢田殿と別れた後、すぐにアイゼンという男が現れたでござる。拙者は力及ばず負けていまい、アクア姫だけでも逃がそうと思ったでござるが、奴は一つの提案をアクア姫にしたでござる」
「自ら城に戻るなら、拙者と沢田殿の無事を保障すると」
「!」
「そして、アクア姫はその場を収めるために、その提案を受けたのでござる」
しばらくの間二人の間に沈黙が流れた。だがその沈黙はすぐに破られるのであった。
「なんだよそれ………」
ツナのその一言によって。
「俺たちを守るために自分を犠牲にしたっていうのか。あんな嘘までついて、助けてほしいのに、それすら言葉にせず、ただ俺たちを守るために……そんなの間違っている! あいつが犠牲に助かったってそんなの何の意味もないだろ! 俺はアクアがついた嘘が許せない……でも、一番許せないのはその嘘に気がつけなかった……俺自身が許せない!」
ツナは自分の今の気持ちを言い終わると、拳を強く握りしめ、そして………
「ユキカゼ。俺はアクアを助けに行く、今度は俺が守る番だから」
「……そうでござるか」
「だからその為に、力を貸してくれ」
「……何を言ってるでござるか………そんなのあたりまでござる!」
「ありがとう」
「礼には及ばないでござる、拙者もアクア姫を助けたい気持ちは同じでござるから」
ユキカゼもツナと同じ、何かを決意したした目をしていた。
「それじゃ、さっそく―――」
「駄目でござるよ」
「え?」
ユキカゼは起き上がろうとしたツナの肩を掴み静止した。
「沢田殿の体は今とても動いていい状態ではないでござる。それに左腕も折れていたでござるよ」
「で、でも、それでも行かなくちゃ!」
「拙者が言ったのは、今は、でござるよ」
「? それってどういう意味」
「この地は、フロニャ力という力が満ちているから、たいていの怪我も治るでござる。でも、沢田殿は地球人でありそれに、怪我もそれ程軽くわなく、しばらくここで休んでもらうでござる」
「で、でも!」
「それに、その身体じゃ立ち上がることすらままならないでござる」
「うっ、おっしゃる通りです……」
ツナはそれ以上何も言い返せなかった。
決心した直後実は何もできなく、小さくうなだれていた。
「心配ないでござるよ。少しの間眠るだけでよいでござるから」
「う、うん」
ツナはまだ納得できないという様子で返事をした。
ユキカゼはそんなツナを見かね。
「アクア姫を助けたいのでござろう、だったら今は休むことだけを考えるでござる。それがアクア姫を助ける方法でござる」
「……分かった」
「それじゃ、早朝起こしに来るでござる」
そう言うとユキカゼは部屋から出て行った。
ユキカゼが居なくなるのを見てツナは視線を天井に向けた。
「必ず助けるから………アクア」
一人の少女の名前を呟きツナは眠りについた。
どうでしたか、心理描写がかなり不安ですが、楽しめていただいたら幸いです。
感想待っています。