SAO:time   作:窓風

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EPISOSE17 「骸骨の刈り手」

 

 

 

 

 

 

避けろ。

 

 

避けろ。

 

 

避けろ。

 

 

少しでも情報を得て、戻らなくては。

 

 

生きて、戻らなきゃいけない。

 

 

だからーーーー

 

 

 

 

 

ソーマ「あああああぁぁ‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

一瞬足りとも気を抜くことが許されない今、1人の青年は、迫り来る脅威から逃げていた。

 

誰1人いない、紅く塗られたフィールドで、青年は逃げていた。逃げるしかなかった。

 

 

もうこれ以上は、と思いかけたその時、前方から光が射した。

 

 

青年は咆哮しながら、光に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

2024年 11月7日 a.m.9:00

アインクラッド第55層 グランザム 血盟騎士団本部

 

 

 

扉を開けると、中にいるプレイヤーのほとんどが俺の方を見た。ヒースクリフの手招きで、先頭近くの空いてる席に座るように言われる。

 

ヒースクリフ「……これで全員かな。では、これから攻略組全体の緊急会議を始める。」

 

ヒースクリフの言葉で少しざわついていた面々が静まり、ピンと張り詰めた空気が漂う。

 

ヒースクリフ「こんな朝早くから集まってくれてありがとう。今回の会議は、現在の最前線75層のボスについてだ。一部には情報が入っているだろうが、今一度ここで報告しようと思う。」

 

血盟騎士団本部の中にある大会議室にて、緊急の会議が開かれた。大会議室には攻略組の5ギルドと少数ギルドのほとんどが集まった。休暇をもらってたキリトやアスナにも召集がかかり、事の重大さを感じさせる。

 

ヒースクリフ「昨日、我々血盟騎士団の団員がボスの部屋を発見した。過去の25層、50層のボス戦のことを考えると、クォーターポイントである75層のボスも苦戦を強いられるだろう。そこで、5ギルド合同の偵察隊20人を編成し送り込んだ。その偵察隊に、今回もソーマ君が有志で参加し、総勢21名で慎重を期して行われた。後衛の10名がボス部屋前で待機し、ソーマ君を含む前衛11名が部屋の中央に到達してボスが出現すると……入り口の扉が閉じてしまったそうだ。ここからは後衛10名の報告だが、扉はおよそ5分ほど何をしても開かなかったそうだ。そして再度扉が開いた時に……ソーマ君がボス部屋から飛び出して、すぐに扉から離れろと言った。そしてまたボス部屋の扉が閉められた。先にボス部屋に入った前衛は、ソーマ君以外全滅だったそうだ。」

 

会場にいる全員がどよめく。そして俺を見る視線がより痛くなってくる。本来ならそんな視線に嫌気がさすのだが、今回ばかりはそんなものは気にしてられない。

 

ヒースクリフ「……ここまでが現時点での報告だ。ここからは唯一の生還者であるソーマ君が、ボス部屋での出来事を話してくれるらしい。」

 

ヒースクリフの言葉と同時に立ち上がり、前にいるヒースクリフの隣に移動する。

 

ヒースクリフ「……本当にいいのだね?」

ソーマ「……あぁ。」

 

小声で問うてきたヒースクリフにこちらも小声で応答。ヒースクリフは座り、話を聞く姿勢になった。

 

これは俺からヒースクリフに頼んだことだ。少しでも犠牲を減らす為に。1人でも多く、生き残る為に。

 

ソーマ「……まず先に、これだけは言わせてもらう。俺は、あのボス部屋であった事を嘘や冗談は一切無しで報告する。心して聞いて欲しい。」

 

シン……と静まり、俺はあの部屋での出来事を話す。

 

ソーマ「ボス部屋の中央に着き、扉が閉められた後ーー」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

2024年 11月6日

アインクラッド第75層 迷宮区 ボス部屋

 

 

俺を含む前衛11人は、ボスが出現するのを待った。だが一向にボスは現れない。おかしい、と思った時、カサカサ

とわずかに虫が這いずるような音が聞こえた。

 

ソーマ(まさか…!)

 

そう思って上を見た。そしたら案の定、ボスがいた。名は『The Skull Reaper』。2本の前足の鎌が脅威の、骸骨ムカデだ。

 

 

 

そこからはもう、一瞬だった。

 

 

 

ボスの姿を見て2,3人足が竦み逃げ遅れ、降り立ったボスの鎌の横薙ぎで、たった一撃でポリゴン片となり爆散した。

 

そしてボスの速さに翻弄され、1人、また1人と鎌や鋭い尻尾の餌食になった。

 

俺だって助けに入ったさ。でも、鎌が重すぎた。受け止め切れず、受け流すのが精一杯だった。

 

その隙にまた1人とやられていって、気がつけば俺とボスだけになっていた。

 

あとはもう、ただ走り回って逃げるしかなかった。鎌を避けて、尻尾を避けて、鎌を避けて。

 

一方的な鬼ごっこだった。

 

一瞬でも気を抜けば俺も死ぬ。

 

時々攻撃が掠りダメージが蓄積されていく。

 

そして長く感じた鬼ごっこに、終わりが見えた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

ソーマ「…………後は先の報告通り、俺は部屋から脱出、後衛に部屋に入るなと言った。………これが、ボス部屋での出来事だ。最後に一つ。」

 

メニューから一つのアイテムを出す。

 

ソーマ「これは昨日撤退する前に、出口をボス部屋の前に設定した回廊結晶だ。これから取れるだけ取ったボスのデータを開示する。ボス戦に対する心構えとして、……酷い言い方をするかもしれないが、あえて言わせてもらう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今ここで、死ぬ覚悟がある奴だけボスに挑め。」

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

ヒースクリフ「……以上で緊急攻略会議を終了する。ボス攻略は、午後1時から行う。集合場所は75層の転移門広場。諸君らの健闘を祈る。」

 

会議が終わり、大会議室から大量のプレイヤーが吐き出される。

 

俺は血盟騎士団の休憩室を借りて、狂いそうな気持ちを落ち着かせていた。

 

ソーマ(……今はまだ大丈夫。だけどあと4,5……いや、2,3人目の前でやられたら……)

 

本当に狂ってしまうかもしれない。

 

…………いや、すでに俺は狂っているのかもしれない。

 

 

俯いた顔を上げ、白い天井を見る。

 

 

ソーマ(ボスのHPバーは5本。攻撃は前足の鎌2つと尻尾の薙ぎ払い。鎌の軌道は縦横に外側から内側へ。そして図体に合わず全力の俺と同じくらいの素早さ。ボスのHPが1本減るごとに何かしらのアクションはあるはず…………これだけの情報でどこまでいけるか…………)

 

誰もいない部屋で自嘲気味に嗤う。

 

 

ソーマ「弱気になってんな…………また、目の前で誰かを失うことを怖がってる。いや、」

 

少なくとも、今回のボス戦で6,7人死ぬだろう。

 

その言葉を飲み込み、座り直して目を閉じる。

 

 

『弱気になってもいいじゃん。結局最後は、その誰かを助けようとするんでしょ?』

 

 

ソーマ「……でも、それでも救えなかったら?」

 

 

『……その時は、そういう運命なんだって受け入れるしかないよ。』

 

 

ソーマ「運命……か。」

 

 

『そう。私にはそんな力はないけど、君ならできるよ。』

 

 

ソーマ「……本当に?」

 

 

『本当。だって、君のこと信じてるもん。』

 

 

ソーマ「……そうか。」

 

 

『だからもし、目の前で誰かを失ってしまったら、その人の分まで、君の目で、世界を見て、感じて。』

 

 

ソーマ「………………‼︎‼︎」

 

 

『大丈夫。君ならー』

 

 

ふと顔を上げる。周りには誰もいない。

 

先程の沈んだ気分も和らぎ、胸が暖かかった。『声』のおかげで、なんとか落ち着きを取り戻せた。

 

ソーマ「……ありがとう。」

 

今はもういない彼女へ感謝を込めて。

 

 

 

◇◇◇

 

同日 p.m.12:50

アインクラッド第75層 コリニア 転移門広場

 

 

青白い光が消え、目を開ける。

 

広場にはすでに、ボス戦に参加するプレイヤーのほとんどが集合していた。

 

視線を感じる中、前方に知り合いの4人を見つけ、声をかける。

 

ソーマ「おっす。」

キリト「おお。おっす。」

アスナ「……ソーマ君、大丈夫?」

クライン「おめぇ、会議の時見たことない顔してたぞ?」

エギル「無茶だけはすんなよ。」

 

どうやら会議の時の俺の様子に違和感を持ち、心配してくれてるらしい。……俺も、恵まれてるのかもしれないな。

 

ソーマ「……あぁ、もう大丈夫だ。心配してくれてありがとう。」

クライン「ならいいんだけどよぉ…」

ソーマ「そういえば、クラインはともかくエギルも参加するとはな。」

エギル「当たり前だ。今回の戦利品で儲けるつもりだからな。」

 

キリトとアスナを見ると、大丈夫、と言ったのにそれでも心配そうにしてる。

 

ソーマ「大丈夫だって。それより、お前達は休暇中だったんだろ?」

アスナ「うん……。でも今は、戦うしかないから。」

ソーマ「……そうだな。俺達は、戦うしかない。」

 

ちょうどそこに、ヒースクリフと血盟騎士団の幹部が到着し、ヒースクリフは俺の方に来た。

 

ヒースクリフ「ソーマ君、ボスの情報を集めてくれて、何より君が生還してくれて本当によかった。感謝する。」

 

ヒースクリフは俺が返答する前に行ってしまった。去り際の眼に違和感を感じたが、おそらく気のせいだろう。

 

人がいない広い所で、ヒースクリフは俺が渡した回廊結晶を取り出し宣言する。

 

ヒースクリフ「コリドー・オープン!」

 

ヒースクリフの目の前に青く歪んだ空間が出現した。そこをくぐれば、すぐにボス部屋の前に到着する。

 

ヒースクリフ「さぁ、行こうか!」

 

ヒースクリフを先頭に、攻略組計33人はその空間に入っていった。

 

 

重厚な扉の前で、プレイヤーは各々の装備やアイテムを確認している。俺も装備メニューから一つの眼鏡(もちろん度は入ってない)を選択する。耳と鼻にかかる若干の重みを感じていると、後ろからキリトに話しかけられた。

 

ソーマ「どした?」

キリト「いや、ボス戦の時は決まってその眼鏡かけてるから。何か特別なバフでも受けられるのか?」

ソーマ「いや、若干補正があるだけだ。これは…………大切な人の、形見なんだ。自分達の分まで、これからの世界を見てって言われたからな。」

キリト「……そうか。」

ソーマ「……さぁ、湿っぽいのはやめだ。行くぞ。」

 

キリトの肩を叩いてその場を離れる。

 

ーーーーー

 

キリト(ソーマ…………過去にお前も、大切な何かを失ったのか……?)

アスナ「キリト君?」

キリト「いや……ソーマは未だに記憶がないのに、誰かの為に頑張ってるんだなって。」

アスナ「……そうだね。当たり前になってたけど、ソーマ君はSAOが始まってからずっと記憶喪失なんだよね。ホントは不安なはずなのに……」

キリト「すごいよ、あいつは……」

 

ーーーーー

 

ヒースクリフ「準備はいいかな。基本的には血盟騎士団が前衛で攻撃を食い止めるので、可能な限り行動パターンを読んで欲しい。特に危険な2本の鎌は、私とキリト君、アスナ君で相手をする。尻尾の薙ぎ払いにも十分注意して側面から攻撃してくれ。また、部屋に入ってボスが見当たらなかったら上にいる可能性が高い。その場合は固まらずにすぐに距離をとってほしい。厳しい戦いになるだろうが、諸君らの力なら斬り抜けられると信じてる。解放の日の為に!」

 

「「「うおぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎」」」

 

ヒースクリフの激励によりやる気になるプレイヤー達。ヒースクリフの手が扉に手を触れようとした時にはすでに各々の武器を取り出し、構える。

 

ヒースクリフ「戦闘開始‼︎」

 

扉が完全に開ききった時に戦いの火蓋が切られた。雄叫びをあげながら部屋の中央に走り、武器を構えたまま静止する。

 

「…………………………」

 

扉が閉まり、静寂が訪れる。

 

部屋の中央にボスはいない。つまり…

 

ソーマ「…………やっぱそうか。」

 

ゆっくりと上を見上げると、天井に張り付くように奴がいた。

 

ソーマ「上にいるぞ‼︎」

 

他のプレイヤーもボスを視認すると、咆哮と共にボスが降りてきた。

 

ヒースクリフ「固まるな!距離をとれ!」

 

一斉にプレイヤーがフィールドの外側に退避するが、2人のプレイヤーがボスの姿を見て固まってしまっていた。

 

キリト「何やってる!早く来い!」

 

キリトの呼びかけでようやく我に返るも、降りて来たボスの鎌の横薙ぎによりこちら側に吹き飛ばされる。

 

降ってくるプレイヤーを受け止めようとアスナが手を伸ばすが、その前に2人は爆散した。それと同時にフィールドが紅く染まり、ボス戦の開始を知らせる。

 

あまりの脅威にほとんどのプレイヤーは怯え、迫るボスから逃げようとする。

 

また別のプレイヤーにボスの右鎌が振り上げた時には、俺の身体は既にボスの顔面左側に『刹那』を発動して接近していた。

 

愛剣を振り抜き、ボスを一瞬だがノックバックさせ、攻撃の発動を遅らせる。そのわずかな隙に振り下ろされた右鎌を受け止めるヒースクリフ。すぐにその場から退き、迫る左鎌を受け止めるキリトとアスナ。2人ならどうにか鎌を防げるようだ。

 

キリト「鎌は俺たちが防ぐ!みんな側面から叩いてくれ!」

 

それからは鎌を3人が防いでいる間に残りのプレイヤーが各々のソードスキルでボスを攻撃した。しかしボスの第2の武器である尖った尻尾などで爆散するプレイヤーも見られた。

 

あとはもう考えるのをやめて、本能と勘だけで攻防を繰り返した。

 

 

そして、約1時間に渡り遂にボスを撃破した。

 

 

 

fin

 

 

 

◇◇◇

 

 

次回

 

18話 「面白くて最悪なシナリオ」




どうも中毒野郎です。

よーやっとアインクラッド編が終われそう……長かった(全然手をつけない時期があったから)

文章力は0話の頃から比べたら……成長してんのかな?

感想はどうあれ、それでも読んでくれる方々に感謝です。

ではまた来月!
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