SAO:time   作:窓風

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EPISODE5 「ビーター」

 

 

 

 

俺は、この世界に来てから誰にも、何もしてあげれてない。キリトの世話になってばかりだ。俺だって誰かの為に何かをしたい。

 

このボス戦を無事終えたら俺はキリトの元を離れようと思っている。これ以上世話になるわけにいかないし、きっと邪魔な荷物になってしまうだろう。そして『自分』を探す。このゲームをクリアする。

 

俺の為に。

 

キリトの為に。

 

 

 

ディアベルの為に。

 

 

みんなの為に。

 

 

 

◇◇◇

 

「…………」

 

俺はすぐそばに落ちている剣を拾い、窓を操作して装備した。さっきまでディアベルが握っていた剣が腰に装備されているのを確認するとゆっくりとその剣を引き抜く。刀身を見ながら呟く。

 

「ディアベル。お前の意志、受け取った。しばらくの間、借りるぞ。」

 

 

キリトのもとに行き、剣を握り直す。

 

 

「俺も行くぞ。」

 

 

 

◇◇◇

 

 

ボスのタゲが俺たちに変わり、刀ソードスキル《辻風》を発動させる。

 

「うおぉぉ‼︎」

 

キリトも同じように片手剣ソードスキル《レイジスパイク》を発動させ、ボスの野太刀を跳ね上げた。すかさずそこに入るアスナと俺。

 

「‼︎」

 

ボスの立ち直りが早く、スイッチした俺たちを討とうとした。俺はそのことにいち早く気づいたが、このままじゃアスナが‼︎

 

「アスナ‼︎」

 

キリトの声があって、コートは斬られてなくなってしまったものの、アスナはボスの攻撃を間一髪避けれたようだ。

 

「「せあぁぁぁ‼︎」」

 

そして、ソードスキルを打ち込みボスにダメージを与えてボスを吹き飛ばす。

 

少し驚いたのが、アスナの容姿がとても美しかったことだ。俺の1つ年下くらいだろう。俺には表現できないくらい、とにかく美しかった。長く、横で編まれた栗色の髪がなびく。

 

「次、行くぞ‼︎」

 

キリトの声で我に返る。

いかん、つい見惚れてしまっていた。

 

スイッチを繰り返してボスに着実にダメージを与えていく。この調子ならいける、と思った瞬間、キリトがフェイントに引っかかり斬られて吹き飛ばされた。アスナはキリトの真後ろにいた為、キリトの体をもろに受けた。

 

「ぐあぁ‼︎」

「きゃぁ!」

「キリト、アスナ!」

 

ボスが2人の前に立ち、ソードスキルを発動させて追い打ちをかけようとする。ところをひとつの緑色の光、両手斧系ソードスキル《ワールウインド》がボスの剣を弾く。両手斧使いの正体は、黒色の肌とスキンヘッドが特徴のエギルだった。

 

「回復するまで、俺たちが支えるぜ!」

「あんた…」

 

戦意を取り戻した数人のプレイヤーがボスを囲み攻撃していくが、弾き返されてボスがジャンプし、ソードスキルを発動させる。

 

「危ない‼︎」

 

そう言うとキリトは肩に剣を担ぎ、片手剣スキル《ソニックリープ》を発動させ上方に飛ぶ。

 

「届けぇぇー‼︎」

 

キリトがボスの上に来た瞬間、ボスの体勢が崩れてソードスキルが中断され、重力に逆らわずに落ちた。キリトはというと、着地して体勢を立て直した。

 

(ギリギリヒットしたか……。スゲェな。)

「アスナ!ソーマ!最後の攻撃、一緒に頼む‼︎」

「「了解‼︎」」

 

キリトの言葉で気持ちを入れ替える。アスナも細剣を持ち直してボスに向かって走る。俺も行くか‼︎

 

「「「はあぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎」」」

 

ボスが攻撃をしてきたが、キリトにさばかれる。すかさずアスナがソードスキルを打ち込む。そこに俺が《ホリゾンタル》で追い込む。トドメはキリトの《バーチカル・アーク》。縦に放つ2連撃だ。

 

「うおぉぉぉぉぉぉ‼︎‼︎」

 

キリトが2連撃を打ち込み終えるとボスの体が宙に浮き、青白く光り出す。数秒後、ポリゴン片となりゆっくりと散っていった。

 

『……………や、やったぁぁーー‼︎』

 

その声とともにボスがいたところには『Congratulations‼︎』と大きく、ボス戦の終わりを告げていた。

 

 

フィニッシャーのキリトの方に行くと、ウインドウが出ていた。おそらく、さっき言っていたLAボーナスだろう。

 

「お疲れさん。」

「お疲れ様。」

「見事な剣技だった。Congratulation。この勝利は、あんたのモンだ。」

「いや……。」

 

「みんなの勝利だ」と言おうとしたキリトだが、後ろの方から何人ものプレイヤーがキリトのことを称賛していた。

 

 

ボスを倒し、みんなが歓喜の声が飛び交っている。それもそうだ。1ヶ月もこの第1層から抜け出せていなかったのだから、今だけは、素直に喜ぼう。

 

 

 

そんな中、聞こえてきたのはーーーー

 

 

◇◇◇

 

 

「なんでや‼︎‼︎」

 

その一言でボス部屋が静まり返る。声のした方を見やるとツンツン頭のキバオウと周りに4人程いた。

 

「なんで、なんでディアベルはんを見殺しにしたんや‼︎」

「見殺し…?」

「っ!そやろが‼︎ジブンはボスの使う技を知っとったやないか‼︎あの情報を伝えとったら、ディアベルはんは死なずに済んだんや‼︎」

 

さっきまでのお祝いムードから一変、なんかヤバイ雰囲気になってきた。

 

「きっとあいつ、元βテスターだ!知ってて隠してたんだ‼︎他にもいるんだろ、βテスターども、出てこいよ‼︎」

 

このままだとまずいな……。どうにかしてこの場を静めないと。

 

「なぁ、あんた。名前は……えっと、マキバオーだっけ?」

「あぁん⁈ジブン、ワイのことなめとんのか‼︎もっかい言うてみぃ‼︎」

「悪りぃ悪りぃ、冗談だ。それでだキバオウ。お前は昨日、『2000人ものプレイヤーが死んだのは、元βテスターたちのせい』と言ってたな。」

「そ、そや。β上がりどもはビギナーを見捨てて消えよったからな。」

「……もし、だ。仮に俺がその元βテスターなら、どうする?」

「そんなもん、決まっとるやないか!土下座させて、溜め込んだ金やアイテムを吐き出させたるわ‼︎」

「なら、聞くぞ。仮に、攻略会議を開き、俺たちをここまで導いてくれたディ」

「はははははは、はっははははははは‼︎」

 

突然の笑い声に驚き、声のした方、後方を向くと、キリトがゆっくりと立っていた。

 

「元βテスターだって?俺をあんな奴らと一緒にしないでもらいたいな。」

 

そう言うとキリトはこっちに歩いてきた。

 

「βテストに当選した1000人の内、ほとんどの奴らはレべリングのやり方も知らない初心者だった。今のお前たちの方がよっぽどマシさ。」

「な、なんやと!」

「だけど俺は違う。俺は、誰も到達できなかった層まで行った。ボスの刀スキルを知っていたのは、上の層で刀を使う敵と散々戦ったからだ。」

 

キリトは不気味に笑う。その顔は、俺にはどこか無理をしているように見えた。

 

「他にも色々知っているぜ。情報屋なんか、問題にならないくらいにな!」

「な、なんやそれ。もうチーターやチーターやろ‼︎」

「そうだそうだ‼︎」

「βのチーター、だからビーターだ‼︎」

 

遂に周りの奴らまで乗っかってきた。キリト、お前、まさか……

 

「ビーター、いい呼び名だな。」

「なっ⁈」

「そうだ、俺はビーターだ。これからは元テスターなんかと一緒にしないでくれ。」

 

そう言いながらキリトは窓を出して操作する。瞬間、バサッと黒いコートを羽織ったキリトがいた。そのコートはLAボーナスの『コート・オブ・ミッドナイト』。

 

キバオウは呆気に取られてその場に立ち尽くしていた。エギルは、俺と同じことを考えただろう。今のキリトの行動は、全て「演技」だってことを。

 

と思っている内にアスナがキリトを追いかける。俺もそれについていく。

 

「待って。」

 

その一言でキリトは立ち止まる。

 

「あなた、戦闘中に私の名前、読んだでしょ?」

「ごめん、呼び捨てにして。それとも、読み方違った?」

「……どこで知ったのよ?」

 

キリトは振り向くと視界の左上あたりを指差す。

 

「このあたりに、自分のと他にHPバーがあるだろ。そこに何か書いてないか?」

 

アスナは視界左上をジッと見る。

 

「キ、リ、ト…。キリト?これがあなたの名前?」

「ああ。」

「ふふっ!なぁんだ、こんなところにずっと書いてあったのね。」

 

アスナは出会って初めて、いい笑顔を見せた。キリトはこっちに背を向けると、

 

「ソーマ、アスナ。君達は強くなる。だからもし、誰か信頼できる人にギルドに誘われたら、断るんじゃないぞ。ソロプレイには、絶対的な限界があるから…。」

「なら、お前はどうすんだよ?」

「…………。」

「ま、いいわ。ただ、ひとつお前に言いたいことがある。」

「……何だ?」

「ソロプレイには絶対的な限界があるんだよな?……だったら、俺がその限界とやらを越えてやろうじゃねぇか!そして、いつかお前に追いついてやる!」

「……それは楽しみだな。じゃあな。」

 

キリトは窓を出し、パーティの解散をした。これで俺はソロプレイヤーだ。キリトが2層へと続く扉を押すと、金属の重い音がして、その暗闇の中に、後に『黒の剣士』と呼ばれる男は消えていった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

第1層のボスを倒したその日の内に俺はアニールブレードが貰えるクエストを2回やった。なぜ2回やったかって?それはな…………。

 

「…………ディアベル、あんたは良くやった。元βテスターなのに、みんなを見捨てないでこのデスゲームの攻略の一歩を踏み出した。この剣は俺の気持ちだ。ありがとな。後のことは俺たちに任せてくれ。だから、ゆっくり休んでくれよ………………。」

 

俺はそう言うと1本のアニールブレードをオブジェクト化し、第1層迷宮区の入り口のすぐ側のところに刺した。そしてトールバーナにたまたま見つけた花屋で買った花を添える。そして、合掌。

 

 

 

 

 

 

(もう、俺の目の前で誰も死なせやしない。みんなの為に。)

 

俺は心の中でそう誓った。

 

 

 

 




どうもSAO・東方中毒です。

気がついたらお気に入り2件いただきました!

ありがとうございます!
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