「アントネスク殿!!ヘス殿!!小官なりに分析した防衛計画書です!!」
「石原ァ!!すみません!!すみません!!」
もうギャグのようにしか見えないが、アンチョビから特機密以外は見せても良いというのと、意見交換を積極的にしろという2つの命令により石原と東條は参謀本部で自由に書物を書いたり、今回みたいにレポートを手渡しに来たりする。
石原が出したレポートの中にはアンチョビも考えさせられる技術や思考がある。
例が遺伝子組み換え(緑の革命)、絶対零度の人の活動停止(コールドスリープ)、地下のウラン物質に含まれる原子力によるエネルギー抽出(核、原子力発電)、地下熱(地熱発電)、最終兵器による報復攻撃(報復核攻撃)と、未来を知っているアンチョビだから恐怖するし、理解もできる。
そんなものも有れば、今回のような
【防空計画立案書】
と書かれた非常にまともな物もあった。
戦争勃発から数週間。
アンチョビは連邦と合衆国、連合王国との一時的な共闘・・・世界連合軍創設をしようと企んでいた。
しかし、この世界では第一時大戦がなかったことにより、連合軍の利点がほとんどの将校がわかってないのが創設を難しくしていた。
国内のダキア軍は連邦との戦争により、数の制約を理解していたため、連合軍創設には意欲的な意見が多く、残念ながら大国の1軍と互角の戦力しかないことが、この意見が浸透する土壌となったのは悲しんだ方が良いかもしれないがな。
この利点を理解している海外の軍が共和国の連絡将校1人と連合王国の元首相の爺くらいしかいない。
「・・・はぁ、合衆国は選挙で動かしづらい。大統領がインフルエンザで既に亡くなっていたから政府がパニックになっていたからな。連邦は何度目の粛清だ?トップと対話するしか信用性が無いからなぁ・・・。」
ヨセフの疑心暗鬼ぶりに呆れながら淡々と次なる一手の準備を始める。
帝国の南方方面軍では対ダキア戦略に向けた会議が始まっていた。
第二戦線のため、常備軍は3師団と少なく、使える予算も少なかった。
それでも急速に帝国に影響力を増していくダキアを警戒するため、無い無いと言いながらも知恵を出しあっていた。
「そもそもダキアがこれ程まで力を付けるとは10年前は考えられなかったな。」
「アンチョビによる革命か。王族の一部をこちらが抑え、可能なら介入しようとも思ったが、予想以上の馬鹿どもだったな。」
「仕方ないだろう。連邦も含め、周辺の大国全てに不可侵条約を結ぶのはやつしかできんし、介入できそうだった対外戦争も1年以内に全て終わってしまったからな。」
「それよりも政権の権力が強大で有りながら不正が少ないことだ。」
「実に歯痒いな。」