ピンポンパンポ~ン♪
『佐藤先生、現国の佐藤潤先生。至急生徒会室までお越しください。繰り返します。現国の佐藤先生、至急生徒会室までお越しください』
ピンポンパンポ~ン♪
「……あ?」
昼休み。職員室で平塚先生の愚痴を聞きながら昼食をとっていると、そんな放送がかかった。おそらく声からして一色だろう。
「今の声、一色か?」
「多分……。え、教師が生徒に呼び出されるとかあるんですか? 普通、向こうから来るもんじゃないんですかね?」
「……まぁ、そこは一色だからな」
「なるほど」
納得してしまった。
「入るぞ」
生徒会室の扉を開けると、そこには一色と比企谷、あと副会長の藤沢が弁当を広げて話していた。
「おい。普通お前から来るもんじゃないのか?先生呼び出すなよ」
一色に言っておく。こいつなら他の先生にもやりそうだ。
「まあまあ。そこは生徒会長権限ってことで」
「職権濫用すぎんだろ……」
「それに佐藤先生、平塚先生とご飯食べてるでしょ?」
「……? ああ」
「だからですよぉ」
なるほど、意味がわからん。
「あ、あの、いきなり呼び出したりしてごめんなさい。私が呼びに行くって言ったんですが2人が聞かなくて」
「あー、藤沢は悪くない。悪いのは横暴な生徒会長とアホな書記だ」
「あはは! 横暴な生徒会長ですって、いろは先輩!」
「アホな書記ってところは全力スルーなんだね比企谷さん」
藤沢がアホな比企谷にツッコミを入れる。
「で? 何の用だ?」
「よくぞ聞いてくれました!」
「ホントにやるの!? え、えっと、我々は佐藤先生の味方ですっ」
「ここに集まってもらったのは他でもない!」
「「「題して、佐藤先生の背中を押そう会議~!」」」
一色、藤沢、比企谷が声を揃えてよくわからんことを言い出した。
「藤沢……、お前まで付き合わなくていいんだぞ?」
「ま、まぁ、いやでも、私も協力したいですっ」
「……そうか。で? 俺の背中を押せば満足なのか? どうぞ、あんまり力任せにやるなよ。腰とか痛めるから」
俺は背中が押しやすくなるように後ろを向く。
「では失礼して。って違ーう!」
比企谷が大声でノリツッコミをする。
「……何だよ。押したいんだろ? 背中」
「押したいけどそうじゃない! 物理的じゃなくて、精神的に!」
いつも以上にこいつの言っていることがわからない。
俺は助けを求めるように一色の方を向く。
「先生覚えてますか? この間わたしとここで話した時のこと」
確か今週の月曜日に一色と生徒会室で2人っきりになって何か話したような。
「ちなみに今日は金曜日ですが、あれから平塚先生と飲みに行きましたか?」
「……? 行ってないが?」
はぁ、と一色と比企谷が溜め息をつきながら頭を押さえる。藤沢は苦笑いだ。
「佐藤先生には悪いですが、この間の話をこの2人にさせていただきました。そして3人の意見は一致しました」
別に聞かれて困るような話はしてないと思うが。
「ズバリ! 佐藤先生は平塚先生に惚れています!」
「…………」
一色が俺に指差しそう言い切ると、きゃーっと比企谷が両手で自分の顔を覆い、藤沢は顔が若干赤くなる。
俺は一色に近づいていき、俺を指差している人差し指を掴むとそのまま上に曲げる。
「ギャアァァァァーー!! 指がぁぁぁー!!!」
「いろは先輩!!」
「ぐっ、わたしはもうダメみたい……。かはっ! ……小町、ちゃん、生徒会のことは君に、まかせ、る……」
「い、いろはせんぱーい!!」
その場に倒れる一色に比企谷が駆け寄り、アホなコントが始まる。
「おのれこの暴力教師め! いろは先輩の仇はこの小町がうってやr……ぷぎゃ!!」
まだアホなことを続ける比企谷の頭に平塚先生直伝の鉄拳を与える。
バタリとその場に崩れ落ちた比企谷がチラ、チラチラと藤沢に目配せをする。
よく見れば、一色も藤沢をチラチラと見ている。
「えぇ!? えっと、ひ、比企谷さーん!」
「……藤沢。お前までやらなくていい」
「…………はい」
藤沢は顔を真っ赤にしながら後ろへ下がる。
「んで? 俺がなんだって?」
すると一色が自分の指を擦りながら起き上がり、呆れたように言う。
「だからぁ、佐藤先生は自分が気づいてるかどうかわかんないですけどぉ、平塚先生に惚れてるんですってばぁ」
「……なんでそうなった?」
「だからぁ、先生といろは先輩との会話を聞く限り、誰が聞いてもそうなんですってばぁ」
比企谷も一色の真似をしながら続く。ていうか、こいつがこの喋り方すると腹立つな。
俺はこいつらじゃ話にならんと、藤沢を見る。
「わ、私も佐藤先生は平塚先生のことが好きなのかなぁってちょっと思いました。ちょっとだけですよ?」
お前もかブルータス。
「意味がわからん」
「だって先生、小町の兄に嫉妬してたんですよねぇ?」
比企谷がニヤニヤしながら俺に迫ってくる。
「あだだだだだだだぁ!!」
なので、とりあえずアイアンクローをかましておいた。
「まぁとにかく、佐藤先生は自分で気づいてないだけですって。今日はちょうど金曜日ですし、平塚先生を飲みにでも誘ってみてくださいよ。そこで自分の気持ちを確認すればいいじゃないですかぁ」
一色が俺に強引に提案してくる。
「………藤沢、どう思う」
「まぁ、私たちの意見を聞いたこの状態で1度誘ってみればいいと思います。好きかどうかは置いておいて、いろいろ気づけると思いますよ?」
「……はぁ、まあ藤沢が言うならそうしてみるか」
まぁ俺があの人に惚れてるとかありえんがな。
「「この扱いの差はいったい……」」
2人の呟きは、誰にも聞こえることはなかった。
平塚先生編あと2、3話かな~って感じです。
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