どうぞ
「戸塚。俺、城廻先輩のこと好きみたいだわ」
「はやっ!」
うん。俺もそう思う。
戸塚と仲直りした日の放課後。
俺はいつも通り部室に行くと、既に雪ノ下、由比ヶ浜、一色の3人がそろっていた。
「あ、せんぱい遅いですよー」
「いや、だから何でお前はさも当然かのようにいるんだよ」
「えー、別にいいじゃないですかー」
何がいいのかさっぱりわからん。それに今日は……
「俺は生徒会室に戻った方がいいと思うけどな」
「何でそんなこと言うんですかー」
一色がブーブーと文句を言っていると、扉がノックされる。
「どうぞ」
雪ノ下が入室を許可すると、ガラガラと扉が開く。
あーあ、知ーらね。あの人の怒ったりする姿はあまり想像できないが、一色は今生徒会の仕事をサボっていると思われても仕方がない状況だ。
「失礼しまーす……あれ?一色さん?」
「っ、城廻先輩?」
めぐり先輩に声をかけられ、ビクリと肩を震わせる一色。
「一色さんここにいたんだぁ。さっき生徒会室に寄ったんだけど、他のメンバーしかいなかったからサッカー部の方へ言ったんだと思ってたよ」
おぉ?めぐり先輩、笑顔のはずなのに目が笑ってないですよ。
「い、いや、今日は依頼に来てたんですよぉ」
え、そうだったの?
「あ、そうだったんだぁ。実はわたしもなんだよねぇ」
「依頼ですか?お聞きしますよ城廻先輩」
「え、でも今は一色さんの話を聞いてたんじゃ」
「あ、あー、城廻先輩先にいいですよ?」
「いやいや、待ってるよ」
めぐり先輩の笑顔に気圧される一色。
「う、えーと、……あっ、そうだ。実はわたし、卒業式の送辞を任されちゃいまして」
まさかの被り。ていうか、今思いついたよね。
「あっ、一緒だねっ。わたしも答辞のことで来たんだ」
「そ、そうだったんですかー、あ、それで先輩、手伝ってくれm」
「それで、今日から比企谷くんを借りるからよろしくねぇ」
「「「え」」」
3人の声が揃う。
「そういうことだ。よろしく」
俺はそう言い、席を立つと、めぐり先輩と一緒に外に向かう。
「ちょ、ちょっと先輩!わたしは!?」
「雪ノ下にでも頼め」
「」
「「じゃ、そういうことで」」
「「「」」」
めぐり先輩と一緒に廊下に出る。
あ、そうだ。忘れてた。
「由比ヶ浜」
俺はもう1度扉を開け、由比ヶ浜を呼ぶ。
「え、何?ヒッキー」
由比ヶ浜が寄ってくる。小町に余計なことを言った罰を与えねば。
ペチン!
「いったーーー!」
昨日やろうと誓ったデコピンをする。
由比ヶ浜がデコを抑えながらうずくまる。
「じゃ」
えぇ!?なんで!?なんで!?と騒いでいる由比ヶ浜の言葉を背中に聞きながら、めぐり先輩と図書室に向かった。
「何で由比ヶ浜さんにデコピンしたの?」
図書室の席に着くと、めぐり先輩が先程の俺の行動について聞いてくる。
「気にしないでください。こっちの都合です」
めぐり先輩はそっかぁといいながら、昨日と同じように原稿用紙を取り出す。
「さて、じゃあ始めよっか」
「そうですね」
「感動できそうな答辞、思い付く?」
「そうですね。どうしましょうか」
2人して悩む。
「やっぱり、最初はお決りの言葉を並べるべきだよね」
「まぁ、それはそうでしょうね」
「問題は中盤から後半にかけてだよねぇ」
「この学校を卒業できて嬉しいとかでいいんじゃないですか?」
「……普通だね」
「……まぁ、そうですね」
黙り込む2人。
「比企谷くんはさぁ、それで感動してくれる?」
軽く首を傾げながら上目使いで俺の顔を覗き込むようにして見てくるめぐり先輩とか可愛い過ぎんだろ」
「ふぇぇっ!?」
「へ?」
いきなり、めぐり先輩の顔が真っ赤になる。
「ひ、比企谷くん。突然何を言い出すの!?」
「??」
「そ、その、わたしが可愛いだとか……」
「」
あっれー?もしかして、声に出てた感じ?なにそれ、ラノベみたいな展開じゃん。マジウケる。いや、ウケねーから。
「あー、いや今のは無意識というか、声に出してるつもりはなかったというか。……なんか、気分を悪くしてしまったなら、すみませんでした」
「ううん!ぜ、全然、気分が悪くなんてなってないよっ。むしろ、嬉しいよっ」
「っ、そ、そうすか」
「うん……」
「……」
ちょっと待って、超恥ずかしいんですけど。めぐり先輩に嬉しいとか言われちゃったら、余計に恥ずかしいじゃん!
あ、真っ赤になってるめぐり先輩も可愛い。
「んっ、コホン……。気を取り直して、考えていこっか」
うん。守りたいこの笑顔。
「と、まぁ、こんなことがあったりなんかして、この後も一体何回城廻先輩を可愛いと思ったことか」
「そーなんだ」
戸塚とベストプレイスで一緒に昼飯を食いながら、昨日あったことを話していく。
「そこで、俺は気づいた。あれ?俺って城廻先輩のこと好きなんじゃね?とな」
「うん。だからそれぼく言ったよね?ねぇ、八幡ってバカなの?頭良いってずっと思ってたんだけど、実はバカだったの?昨日の『俺は誰かを好きになるのが怖いんだと思う』っていうのは何だったの!?」
「意外と何とかなりました」
「いや、何とかなりましたじゃないよ。はぁ、でもこれで終わりじゃないでしょ?」
「その通りだ。この後、戸塚と小町にも恋人になってもらわないと」
「違うでしょ!?まずは八幡が城廻先輩と恋人にならないと!」
「何だ戸塚、照れてるのか?」
「……帰るよ?」
「ああっ!まってまって!」
俺は本当に立ち上がった戸塚の裾を掴んで止める。
「そうなんだよ。城廻先輩に俺のこと好きになってもらわないといけないんだよ」
「そこが1番重要でしょ?」
「そこで、戸塚には城廻先輩に振り向いてもらう方法を一緒に考えてもらいたくてな」
「ほんとに八幡、キャラ変わりすぎだよ……」
何故か今日一の溜め息をつく戸塚であった。
前回言った通り、戸塚の言葉に遠慮がなくなりました。次回から八幡のアピールが始まります。よろしくっす。
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