南斗孤鷲拳の伝承者   作:銀の鈴

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南斗最後の将、旅立つ

199X年、世界は核の炎に包まれた。

 

海は枯れ、地は裂けあらゆる生命体は死滅したかのように見えた。

 

だけど、人類は死滅していなかった。

 

「生き残った人類は、南斗最後の将である私の下で管理運営されています」

 

核戦争前に、類い稀な危機管理能力を持つ私の活躍で、地元の政治家を脅して巨大核シェルターを公費で建造させました。

 

そのお陰で、我が忠実なる南斗一族はただの一人も欠けることなく核戦争を生き延びました。

 

そして、南斗の都――つまりは私の都であるサザンクロスが誕生したのです。

 

サザンクロスを頂点とした支配体制は関東一円に及びます。

 

私は、サザンクロスの中心部に築かれた居城から街を見下ろします。

 

「この街も富も名声も権力も……むなしいだけ。私が欲しいのは、世界の全てよ!」

 

こんな狭い地域を支配しただけでは満足は出来ません。

 

せっかく、力が支配する世界になったのだから目指すは“天”です。

 

「とは言っても、急いては事を仕損じる。と言いますからね。身近なところから頑張りましょう」

 

最近、耳にしたところでは、サザンクロスの縄張りの近くで、Z(ジード)と名乗る盗賊団が出没するそうです。

 

盗賊団などという迷惑な輩は、速やかに排除する必要があります。

 

特に今は、サザンクロスのKINGであるシンが遠征のため不在です。

 

その分、サザンクロスのQUEENである私が頑張らなくてはいけません。

 

「風のヒュー……いえ、雲のジュウザにZ(ジード)討伐を命じましょう」

 

なんとなくヒューイに一番手を命じるのは嫌な予感がしたので、QUEEN直轄部隊の南斗五車星最強と謳われたジュウザに変更です。

 

私は早速ジュウザを呼び出して討伐命令を下します。

 

「ジュウザ、私のために働きなさい」

 

「おいおい、いつの間にこの俺があんたの部下になったんだよ。めんどくさいことはゴメンだぜ。俺は食いたいときに食い、飲みたいときに飲む。働くなんぞお断りだ」

 

討伐命令を受けたジュウザは嫌そうな顔を隠そうともしません。

 

まったく、ジュウザは相変わらずの怠け者のようですね。

 

でも、このQUEENの命令に従わないなど許されませんよ。

 

「ジュウザ……いえ、兄さん。私の命令を拒否するのでしたら、兄さんを裸にひん剥いてユダの寝室に放り込むわよ」

 

「なっ!? それが兄にする仕打ちか!?」

 

うふふ、ユダの性癖を知っているのね。兄さんの顔色が面白いほど白くなりました。

 

「サウザー、それにレイ、ジュウザ兄さんを捕まえなさい!」

 

私は、警護のために控えていた南斗六聖拳の二人に命じます。

 

ちなみにシュウは、シンと共に遠征に行っています。ユダは生理的に苦手なので居城以外の警備を担当させています。

 

「……う、うむ、まあ、よかろう(ここで下手に庇ってユリアの毒牙がこちらに向いたら敵わんからな)」

 

「そ、そうだな。少し哀れだが、ここは仕方ないだろう(俺たちに被害がこないだけマシだと思おう)」

 

「うおっ!? マジか!? お前らマジかよ!!」

 

いくら兄さんが五車星最強といっても、南斗六聖拳の二人がかりだと為す術がないようです。

 

たちまち鎖で縛られて吊り下げられます。

 

「兄さん、最後にもう一度だけチャンスを上げます。素直に戦いに赴くか、それとも……新たな扉を開きますか? ああ、もしも開くことを選ぶ場合は女子達による見学会をコッソリと行いますからご容赦下さいね」

 

男同士というのは、女子達に根強い人気があるので参加希望者は多そうです。

 

娯楽が少ない時代なので、喜んでもらえるでしょう。

 

うふふ、ユダ×ジュウザ、それともジュウザ×ユダになるのかしら?

 

「わ、分かった!! 俺が悪かった!! 南斗の一員としてQUEENの命令に従うぜ!!」

 

あら、残念。

 

お楽しみは次回に持ち越しね。

 

「やめろ!! 持ち越さねえよ!!」

 

 

 

 

Z(ジード)殲滅の報告はすぐに届けられました。

 

そして、兄さんの失踪の報告も届きました。

 

なんでもZ(ジード)に襲われていた村の少女を連れて失踪したそうです。

 

まったく意味が分かりません。

 

私は詳しい状況を調査させました。

 

その結果、分かったことがあります。

 

その少女は昔、家族を目の前で殺されたショックで声が出せなくなっていましたが、今回の騒動がキッカケで再び声を取り戻したそうです。

 

そのキッカケに兄さんが大きく関わっていて、結果、なぜか少女に強く好かれました。

 

少女に好かれた兄さんは、「これだ!! これだぜ!! 俺はこの娘と添い遂げるために生まれてきたんだ!!」などと、年の離れた少女相手に気持ち悪いことを叫んだらしいです。

 

ところで、声が出せない少女というのは、まるで幼いときの私のようで親近感を感じます。

 

私のときはシンのお陰で……とは素直には言いたくない方法でしたが、まあ、結果的にはシンのお陰で声を取り戻しました。

 

そして、それがキッカケで私達は仲良しになったわけですから、兄さんとその少女が仲良しになったのも納得でき……出来ませんね。

 

私とシンは同い年だったから微笑ましい関係でしたが、兄さんと少女ではアウトです。

 

「ロリコン死すべし、です」

 

私は直ちに少女を救うべく救助隊を組織しました。

 

「サザンクロスのQUEENの名において、少女を救い出してみせます!」

 

身内から犯罪者を出すわけにはいきません。

 

少女――リンを必ず救出します!!

 

さあ、今回は私も行きます!! シンに身内の恥がバレる前に闇に葬るわよ!!

 

 

 

 

この世界にただ一つ残された海。

 

「兄さんは海を渡ったのですね」

 

リンを拐かした兄さんは、海の向こうにある修羅の国に逃げてしまった。

 

修羅の国――その国に住む男子は、12歳から15歳までの間に100回の死闘を行うそうです。そのため、男子の生存率は1%と言われています。この死闘を生き延びた男子が修羅と呼ばれる存在となります。

 

それなりに手強そうなので、こちらも出し惜しみは無しです。

 

サザンクロス防衛のため、南斗六聖拳はおいていきますが、それ以外の最大戦力を率います。

 

リン救助隊――南斗五車星(当然だけど、ジュウザ抜きよ)、泰山天狼拳(弟の責任は兄がとりなさい!)、南斗翔天拳(知る人ぞ知るジョーカーよ。もしかして有名人かしら?)南斗無音拳(軍人かぶれのオジさんね)、南斗比翼拳 (眼帯つけたオジさんだわ)、南斗双鷹拳(オジさん兄弟よ)、南斗爆殺拳(葉巻咥えたオジさん……こいつは弱そうだから置いていこうかしら?)、他にも南斗各流派から800名ほどね、元斗皇拳(金色とか紫光とか呼ばれてる奴ら含めて200名ほどよ)、北斗神拳(隠れ住んでたケンシロウを発見したわ。うふふ、私に似た女性と暮らしていたのよ。きっと、私のことが好きだったのね。でもゴメンね。その気持ちには応えられないから、ソックリさんで我慢してね)、ラオウ(ケンシロウと同じように行き倒れていたわ。サザンクロスで負けてからは落ち目だったみたいね。修羅の国に行くって言ったら強引についてきたわ。なにか用事があるみたい)、トキ(サザンクロスで開業してるお医者さま。修羅の国は危険だからついて行くって言って聞かないのよ。もしかして私に惚れてるのかしら? 私って罪な女よね)、デビルリバース(シンがどっかから拾ってきたおっきなオジさん。どうせなら可愛いワンちゃんを拾ってきてほしいわ)、ハート様(おデブちゃんね……ん? どうしてQUEENであるこの私が、こんなおデブちゃんを様付けしなきゃいけないのよ!!)

 

精鋭、約1000名。

 

率いるは南斗六聖拳、最後の将であるこの私よ。

 

「立ち塞がるものは全て粉砕しなさい!! さあ、出発よ!!」

 

私達は修羅の国へと旅立った。

 

 

 

 

「ねえ、リハク、ところで船の準備は大丈夫よね」

 

今回のジュウザ捕縛の作戦指揮を任せた自称大軍師のオジさんこと、海のリハクに移動手段を確認する。

 

「無論でございます。この海のリハクに抜かりはありませぬぞ。見てくだされ! この無数のボートを!」

 

リハクが示した先には、数百隻もの手漕ぎボート(定員2名)が波に揺れていた。

 

「……ねえ、リハク。あなた、手漕ぎボートで海を越えられると思っているのかしら?」

 

「フハハハハッ!! 愚問ですぞ!! 我ら南斗の益荒男ならば、たとえ外海の荒波だろうとひとっ漕ぎで越えてみせますぞ!!」

 

自信満々に高笑いをするリハク。

 

「デビルリバース、ボディプレス」

 

「わかった。お袋」

 

「誰がお袋よ!!」

 

「おりゃあ!!」

 

“ザッパーン”

 

「ぬおおおっ!? 全てのボートが海の藻屑と消えただと!? うぬぬ、荒波の威力がこれ程とは、この海のリハクの目をもってしても読めなかった!!」

 

数百隻の手漕ぎボートが海底に沈んでいくのを驚愕の表情で見送るリハク。

 

「とりあえず、リハクは三ヶ月間晩酌抜きよ」

 

「ウググ、む、無念!」

 

その場に崩れ落ちたリハクのことは放っておくとして、船の手配はどうしようかしら?

 

「ユリアよ、泳いでも十分たどり着けると思うぞ」

 

体力馬鹿のリュウガ兄さんが、アホな事を言っているわ。

 

「濡れるのが嫌なら、右足を海面に乗せ、その右足が沈む前に左足を海面に乗せ、その左足が沈む前に右足を前に進め、その右足が沈む前に左足を前に進め、その繰り返しを行なっていけばアッという間に修羅の国にたどり着くぞ」

 

脳筋で体力馬鹿のリュウガ兄さんが、アホな事を言っているわ。

 

「む? 海の彼方に見えるのは海賊船のようだな。けっこう大きな船のようだぞ」

 

リュウガ兄さんが指差す先には、ドクロマークの旗を掲げた一目で海賊船とわかる大きな船が航行していた。

 

「リュウガ兄さん何をしているの!! さっさと突撃して海賊から船を奪うのよ!! 船体を傷つけないように気をつけてね!!」

 

「う、うむ。任せるがいい」

 

リュウガ兄さんは数人の南斗の拳士を連れて、海面を走って海賊船へと向かった。

 

――海面って、ほんとに走れるんだ。

 

少し賢くなった私だった。

 

 

 

〜気が向いたら次回に続く〜

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