南斗孤鷲拳の伝承者   作:銀の鈴

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後半は三人称になります。


引き裂かれる絆

些細なトラブルはありましたが、私達は無事に修羅の国へと上陸しました。ですが、ここからは戦うことしか能のない修羅達が支配する世界です。

 

如何なる危険が待ち受けているか分かりません。私達も気を引き締めていくとしましょう。

 

「カーネル、貴方の意見が聞きたいわ。これからどのように動くべきかしら?」

 

「そうですね。まずは拠点を構えましょう。そして体勢を整えた上で周辺の情報収集を…」

 

「お待ち下され! カーネルのような若造に意見など求めずとも、ユリア様にはこの大軍師たる海のリハクが居りますぞ!」

 

核戦争前は軍に勤めていたカーネルに意見を求めていると、自称大軍師のリハクが割り込んできました。

 

残念ですが、今はリハクと遊んでいる余裕はありません。

 

「遊びなどではありませんぞ!! 某の完璧な侵攻作戦ならば、修羅の国など数日中に占領してみせましょうぞ!!」

 

大気を震わせんばかりの覇気を放ちながら海のリハクは豪語します。

 

その自信に満ち溢れた瞳に見つめられていると、彼の言葉を何となく信じてしまいそうになります。

 

「リハク、それ程までに自信があるのなら…」

 

「いえ、それは完全に不可能です。作戦がどうのこうの言う以前の問題として、修羅の国の国土面積的に我らの人員数で占領する事など夢物語ですね。そもそも今回の作戦目的は、ジュウザ殿の身柄の確保と拐かされた少女の保護です。それを侵攻作戦などと言い出されるとは……リハク殿。失礼ですが、お気は確かですか?」

 

「なぬ!? 修羅の国に侵攻はせぬのか!?」

 

おっと、危なかったです。

 

思わず、リハクの穴だらけの策略を採用してしまうところでした。

 

まったく、カーネルの言う通りです。私達の目的は決してこの国の占領などではありませんよ。

 

犯罪者(ロリコン)の拿捕と哀れな被害者の保護です。

 

そこを見誤るなんて、自称大軍師の名が泣きますよ。

 

「某は自称ではなくモノホンの大軍師ですぞ! 今回はちと勘違いしておっただけですじゃ」

 

はいはい。分かっていますよ。

 

それじゃあ、リハクお爺ちゃんには今夜の野営の準備でもお願いしますね。

 

「おおっ! それは重要任務ですな。この海のリハクの知恵を絞って難攻不落の野営拠点を築いてみせますぞ!」

 

張り切りだしたリハクは、彼の直属軍である“海の兵団”を集合させます。

 

困った顔をした“海の兵団”の人達に対して、リハクは塹壕を掘るように命じました。

 

一体、どんな野営をするつもりなのでしょうか?

 

まさか穴ぐらで一晩を越せなどとは言わないですよね?

 

一抹の不安を感じますが、いざとなったら航行してきた船に戻って泊まるとしましょう。

 

「それでは、カーネル。貴方には周辺状況の探索を命じます。その際、拠点に適した場所があれば確保をして下さい」

 

「はっ、我らゴッドアーミーの働きをご期待下さい」

 

カーネルは自らの配下であるゴッドアーミーを率いると音もなくその場から消え去りました。

 

いつも思いますが、瞬間移動したのかと思うほどのスピードで移動できる南斗の拳士の方々は変態なのでしょうか?

 

「ユリア様、それは少し言い過ぎです。それに南斗の拳士だけではなく、北斗や元斗の拳士も同じ真似が出来るので南斗のみを変態呼ばわりは可哀想ですわ」

 

侍女のトウに注意されました。確かにその通りですね。

 

ここは平等に全員が変態だと言うべきでした。反省です。

 

「いや、お袋。俺はこの巨体だからそんなに速くは動けないぞ」

 

「おほほほ、わたしも無理ですね。まあ、転がれば別ですけどね」

 

「誰がお袋よ。そうね、デビルリバースとおデブちゃん(ハート様)は無理よね。そうなると二人だけが変態じゃないのね」

 

この二人だけが変態じゃない。その言葉を口にした途端、配下達から一斉にクレームが出ました。

 

ビックリしました。一体どうしたのでしょうか?

 

「ユリア様、ここは少し冷静になるべきです。ほら、よくご覧になって下さい。20mはあろうかという本当に人間か? と疑う進撃の巨人も真っ青なデビルリバースと、棍棒で殴ってもビクともしないどころか殴った棍棒が脂肪に埋まって抜けなくなるという悪夢のような脂肪に包まれた豚野郎ですよ。この二人を変態呼ばわりせずに誰を変態呼ばわりすると言うのですか? 皆はこの二人を変態呼ばわりせぬ理不尽を嘆いているのです」

 

なるほど。トウの言う通りですね。

 

トウの言葉に従い、二人をマジマジと観察したところ、間違いなく二人は変態だと確信しました。

 

私は間違いを認められる聖女です。ですから言い直しましょう。

 

「貴方達は全員変態です!」

 

私の宣言にクレームを言っていた配下達も納得してくれました。

 

「はい、流石はユリア様ですね。配下の者の助言に素直に耳を傾けられるのは賞賛に値しますわ」

 

うんうん、間違いを認められる私って偉いわね。えっへん。

 

「いや、お前達。いくらなんでもふざけ過ぎじゃないか? それに妹をあまり調子づかせるのはやめてくれ。俺が後でシンに怒られるんだからな」

 

リュウガ兄さんの苦情に配下達は苦笑していますが、トウは知らん顔です。

 

女は強し、ですね。

 

 

***

 

 

「やめて下さい! 私は修羅の嫁などにはなりません!」

 

村を発見したカーネル達が侵入を試みようとしたところ、村外れからその声は聞こえてきた。

 

「何やら揉め事のようだな」

 

「大佐、如何なさいますか?」

 

部下の言葉にカーネルは苦悩する。本来ならば、情報収集中に揉め事に関わることなどあり得ないことだが、それは戦前に所属していた軍での話だ。

 

核戦争後、暴力が支配する世界と成り果ててしまったこの世界で、カーネル達が所属しているのは国の軍ではなく、KINGとQUEENを頂点とするサザンクロスだ。

 

サザンクロスは平和な街だった。この暴力が支配する世界でありながらも、サザンクロスでは秩序を維持して笑いの絶えない日々を人々は享受していた。

 

サザンクロスの頂点たるKINGとQUEENの二人は、そんな平和な世界を広げようと努力を続けている。

 

カーネル達ゴッドアーミーは、そんな二人に心酔しその命を捧げた男達だ。

 

故にカーネルが苦悩するのは、助けるのか? それとも見捨てるのか? ではなく、どんな見栄を切って助けに行くか? だった。

 

「ユリア様に無様な真似をしたと御報告するわけにはいかぬからな」

 

「当然ですよ、大佐! いかに格好良く助けたかをご報告して、ユリア様に歓声を上げて喜んで欲しいですからね!」

 

真面目なKINGではなく、破天荒で傍若無人なQUEENに好き好んで付き従っているカーネル達にとって、それは当然の悩みであった。

 

 

***

 

 

レイアは一世一代のピンチに陥っていた。

 

「ゲヘゲヘ、噂以上の美人じゃないか。これは強い修羅を産みそうだな」

 

肥え太った修羅が、レイアの噂を聞きつけて修羅の嫁にしようと村に現れたのだ。

 

「いや、離して! 私は修羅の嫁には絶対になりません!」

 

レイアは必至に抵抗するが、女の細腕では修羅には到底抗えなかった。

 

引き摺られながらレイアは、想い人のシャチに心の中で詫びた。

 

(ごめんなさい、シャチ。貴方を残して先に逝く私を許して)

 

愛を信じるレイアにとって、愛を信じぬ修羅の嫁になる事は死ぬことよりも耐えられない事だったのだ。

 

故にレイアは自決を覚悟した。

 

ただ、愛を交わしたシャチのことだけがレイアは気掛かりだった。

 

願わくば、自分が死した後も愛を見失わずに生きて欲しい。それだけがレイアの願いだった。

 

「さようなら、シャ…」

 

どごーん!

 

レイアが舌を噛み切ろうとした瞬間に凄まじい爆音が轟いた。

 

どごーん! どごーん! どごーん!

 

爆音は一度では終わらずに何度も続いて響いた。

 

レイアと修羅は、驚きながらも慌てて爆音の聞こえる方向へと顔を向ける。

 

「そこまでだ。嫌がる婦女子を強引にナンパとは、男の風上にも置けぬ不埒者め。このゴッドアーミーのカーネルが、南斗の聖女に代わって成敗する!」

 

どごごーん!!

 

修羅ですら気付かぬ間に現れた男は、レイアに気遣う視線を向けながらも爆煙を背景にして雄々しく格好いいポーズをとって立っていた。

 

「……なんだ、アレ?」

 

突然の状況に修羅は呆気にとられた。

 

「隙あり!!」

 

その一瞬の隙を突いて、修羅の背後に忍び寄っていたカーネルの副官が修羅を蹴り飛ばしてレイアを助け出す。

 

「ぐわっ!? 他にも仲間がいたのか!!」

 

蹴り飛ばされて地面を転がった修羅がようやく立ち上がった時には、周りを軍服の様な服装をした屈強な男達に囲まれていた。

 

同時に修羅は、最初に現れた男も同じような服装だということに気付く。

 

「……何者だ貴様らは? 只者では無さそうだが、修羅ではあるまい」

 

その修羅は、修羅の国に現存する全ての流派を詳細に知っているわけではないが、少なくとも軍服の様な装束を纏う流派は存在しないことは知っていた。

 

「人質を解放できれば問題はない。そいつを無力化せよ」

 

「はっ、了解しました!」

 

修羅の疑問にカーネルは答えるそぶりも見せず、自分の副官に捕らえるように命じる。

 

「ぬう!? 貴様ら本気で俺と戦うつもり…グワッ!? アギャ!? アジャパ!?」

 

この修羅とて歴戦の強者ではあったが、周囲を同等以上の実力を持つゴッドアーミーに囲まれては成す術はなかった。たちまちボコボコにされて地面に倒れた。

 

「ウググ、多勢に無勢とはこの卑怯者共め」

 

「別に私達は正義の味方を気取っている訳ではないのでね。貴様のような犯罪者相手に一対一などで立ち向かうわけがなかろう」

 

明らかな侮蔑を含んだカーネルの言葉に修羅は激高する。

 

「修羅であるこの俺様を犯罪者呼ばわりだとっ、貴様らは何様のつもりだ!!」

 

カーネルは、声を荒げる修羅を冷たい目で見下ろしながらもどこか誇らしげに答えた。

 

「我々は、ユリア様率いるサザンクロスの治安維持組織──警察だ!」

 

 

〜Fin〜




そうです。ユリア様は警察のトップだったのです。だからこそ身内であるジュウザの犯罪を許せなかったわけですね。ホントにユリア様って真面目な良い子ですよね。
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