「どうやら、私の想定以上にこの国の治安は悪いようですね」
カーネル達が保護した女性――レイアさんはこの国の実情を語られました。
なんと恐ろしいことにこの国では、修羅達による少女誘拐が日常的に行われているというのです。
「まだ10代の少女達が修羅達の○奴隷にされるだなんて……なんて酷いことを」
「せいドッ!? い、いえ、確かに無理矢理に花嫁にされてはいますが、性○隷というのとは少しばかりニュアンスが違うかと……えっと、大半の修羅は女性慣れしていないせいか、結婚後はカカア天下になる家庭が多いみたいですし。あっ、もちろん、私は修羅の花嫁なんかになる気はありませんが――わ、私にはシャチという格好いい彼氏がいますからね。きゃっ、言っちゃった! えへへ、彼氏といってもまだプロポーズされたわけじゃないんですけどね。彼ったら肝心な時には頼りないんだから嫌になっちゃうわ。でもでもっ、そんなところも可愛いっていうか、私がいないとダメなんだなぁって思っちゃうんですよね。もしかしたらそう女に思わせる彼のテクニックなのかしら? うふふ、なんちゃって、彼にそんな気の利いたところがあるんならとっくの昔に私と最後の一線を越えているわよね。いやん♪ こんな事を言わされて恥ずかしいわ♡」
修羅の国の少女達のあまりに酷い状況に私は涙が溢れそうな気持ちになりました。
あぁ、レイアさんが何やら呟きながら気持ち悪い感じに悶えています。
おそらく、修羅という名の淫獣共に怯えているのでしょう。
今こそ南斗の聖女と謳われた私が……いいえ、違いますね。聖女云々など関係ありません。
虐げられた女性達を救うことは、シンという素敵な婚約者をもつ幸せな私が行うべき義務でしょう。
私は地獄のようなこの国。正に世紀末の世界と成り果てた修羅の国に住う全ての女性を救いましょう。――そう、“世紀末救世主” となります!!
「カーネル!! これより、我がサザンクロス警察は超法規的措置をとります。他国である修羅の国に対して女性権利の奪還の為、あらゆる手段を行使することを許可します。忌むべき淫獣である修羅達はサーチアンドデストロイです!! 淫獣である修羅達はサーチアンドデストロイです!! 大事な事なので二度言いましたが、敢えて三度目を言いましょう。サザンクロスのQUEENの名において、修羅の国に住う全ての淫獣はサーチアンドデストロイです!!」
「承知致しました。我らが尊き “QUEEN ” よ。御身の前に立ち塞がりし愚かなる者共は悉く滅してみせましょうぞ」
「お待ち下されぇい!! 捕獲ではなく殲滅ならばそれは最早警察ではなく軍の仕事でありますぞ!! 軍の仕事ならばカーネル如き若造ではなくこの大軍師であるリハクこそが大本命ですぞ!!」
私がせっかく気分良くカーネル達に命令を発していたのに、自称大軍師のリハクお爺ちゃんがしゃしゃり出てきました。
もう、本当に仕方のないお爺ちゃんですわ。
まあ、最近は失策が目立ちますが、リハクお爺ちゃんは軍(QUEENの私設軍隊ですわ)である南斗五車星を統率する実力者です。
元軍人とはいえ、現在は警察勤務のカーネルに畑違いの仕事をさせるよりかはマシかもしれませんね。
うんうん、リハクお爺ちゃんの気迫に満ちた眼差しは自称大軍師の自信を感じさせます。
「リハク、それ程までに自信があるのなら――」
「待ってくれ、ユリア。修羅の国と争うのなら俺に任せてくれ。このラオウ、かつては拳王とまで呼ばれた身だ。軍同士の戦闘には慣れておる。この命に代えても不覚は取らぬと誓おう。少なくともそこの愚連隊もどきの大軍師とやらより役に立つはずだ」
おっと、ここでラオウの登場ですね。
たしかにラオウの言葉には一理ありますね。サザンクロスに軍を率いて攻めてきた事すらあったのですからラオウの方がリハクお爺ちゃんよりも軍を率いることには長けているかもです。
ふむ、どうしようかしら。
ん?
ちょっと待って。
こいつ、今なんて言った?
愚連隊もどき?
このQUEENに絶対の忠誠を誓っている南斗五車星に向かって愚連隊
ふざけんじゃないわよっ!!
たとえ、ボケ気味のリハクお爺ちゃんだとしても!!
たとえ、熱血バカで熱苦しいシュレンだとしても!!
たとえ、いまいち頼りないヒューイだとしても!!
たとえ、昔はヒャッハー!だったフドウだったとしても!!
たとえ、ロリコンが発覚した変態兄貴だったとして……こいつは省いておきましょう。
コホン……つまり南斗五車星(変態兄貴抜き)は、私の大切で便利な配下なのよ!!
それを愚連隊
「ラオウ、貴方の熱意は分かりました。ですが、ここに連れてきた
「うぬゥ、それは……」
「その通りですぞ、流石はユリア様はよく分かっておられる。兵の心を掌握しておらぬ将に率いられた軍など烏合の衆と変わりませぬ。ラオウのような余所者が南斗、そして元斗の者達を率いようなど笑止千万と言うほかありませんな。そもそも我らの街であるサザンクロスを襲った事のあるラオウの命令に従う人間がいると本気で思っておるのか? お主、気は確かか?」
「ウググッ……」
私の問いに対して返答に詰まるラオウ。ここぞとばかりにリハクお爺ちゃんが生き生きとラオウを責めています。
ラオウも以前に自分が仕出かした事を持ち出されては何も言えないのでしょう。リハクお爺ちゃんの容赦ない責めに耐えるのみです。
南斗同士の諍いなら、そろそろ止める者が現れる頃合いですが、相手が敵対した事のあるラオウのため誰も止めようとしませんね。
穏健派のリュウガ兄さんですら見て見ぬ振りをしています。
あら?
お医者さまのトキが心配そうな顔をラオウに向けているわ。……そういえば、トキとラオウは兄弟だったわね。似てない兄弟よね。
それに対して同じ北斗のケンシロウは全く興味がないみたい。我関せずの態度で私のソックリさんとイチャついているわ。……いつの間に連れて来たの!?
ま、まあいいわ。私のソックリさんが幸せそうな笑顔を見せているもの。邪魔をしたら私の運気も下がりそうだから大目に見てあげましょう。
「父さん、そろそろラオウを許して上げてくれませんか?」
「トウか、うーむ、物足りないがお前に止められては仕方ないのう。ラオウよ、お主に軍は任せられんが従軍する事はユリア様が許されておる。一兵卒として戦い、己の信用は己で勝ち取れい」
「うむ、承知した。……トウよ、すまぬ。助かったぞ」
「こ、このぐらい構わないわよ、ラオウ」
少し目を離した隙に侍女のトウがラオウに助け舟を出してしまいました。へえ、意外と優しいですね。
侍女のトウはリハクお爺ちゃんが歳がいってからの子供です。トウに甘いリハクお爺ちゃんでは彼女に止められたらもうラオウを責められないでしょう。これは仕方ないです。
お医者さまのトキもホッとしているようですし、この場でラオウをいじめるのは諦めましょう。お医者さまの心証を悪くしてはいざというときに不安がありますからね。
とはいっても私はまだラオウを許していません。これからせいぜいこき使って上げましょう。
ところで、ラオウと喋っているトウの顔が赤い気がします。風邪でしょうか? 心配です。
〜Fin〜
皆さん、最近は寒くなってきたので風邪には気をつけましょうね。