海軍特別犯罪捜査局   作:草浪

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NSCI#2 好奇心(2)

 

 

車外に出て、ビルの一階に入っていた喫茶店に入る。

 

「よく気がついたわね…知っていたの?」

 

先ほどの機械は盗聴機だった。以前、軍関係者の車が盗難から偶然を装って帰ってきた車に設置されていた物と同じである。その時は日向が担当していたはずだ。

 

「こういうの、青葉も時々やるんですよ!」

 

鼻高らかに青葉が言う

 

「褒められたことではありませんね…」

 

のわっちの意見に賛同するわね。しかし、こんなものを私たちの車に取り付けることが出来て、この機会のことを知っている人間を私も含めて三人しかいないはず。だとしたら…

 

「日向さんはこのことを知らないので関係ありませんよ。明石さんも日向さんの指示が無ければ動かないので関係ありません。」

 

青葉に考えを読まれる。この子、言動と違って以外と賢いわね。

 

「すごく失礼なことを思われた気がするのですが…」

いけない、顔に出たかしら。

 

「そんなことないわ。そろそろ話を聞かせて貰えるかしら?わざと私たちを巻き込んだ理由を」

 

「おや…足柄さん、以外と賢いですね!日向さんの教育の賜物ですか!」

 

こいつ…私は声には出してないのに…

 

「お酒が入ってない足柄さんはしっかりしてますよ。お酒が入ってなければ」

 

のわっち、何で二回言ったの?

 

 

青葉の話をまとめるとこうだ。

 

ことの発端は提督が大和さんたちを引き連れて政界に入ったのことだった。軍関係者から政治家が生まれることをよく思わなかった当時の政府に怪しい動きがあり、元帥の案で提督の護身のために艦娘を側近につけた。しかし、それの意味を勘違いした権力者達は、自らの保身のために艦娘を欲した。それは政界だけではなく、経済界にまで波及し、元艦娘が近くにいるというだけでステータスと言われるまでになった。実際に私の姉、妙高姉さんや那智姉さんにもそういう誘いが来ることに困っていた。何故か私のところには来ていないけど。しかし、多くの艦娘達は自分たち提督以外の下で強制的に働くことに拒絶反応を示し、銃後に回った艦娘の殆どは自分の好きなことをして生きている。

 

青葉達は、このことをネタに取り上げ、政治家や大手企業の重役に対して取材を行なっていた。拉致された日、衣笠はある海運会社の社長さんを相手にあのホテルのロビーで取材をするつもりだったらしい。しかし、相手が悪かった。そもそも多くの権力者は艦娘獲得に向け、裏で様々な活動を行なっており、それらが明るみになることを恐れた社長さんは彼女を拉致、監禁。青葉に対して彼女の身柄と今回のことを黙秘することと引き換えに、彼女の安全を保障すると言い、交渉の席を一週間後に設けてきたのであった。

 

「話はわかりましたけど…そこまでわかっていたのなら警察にそのことを話してその社長さんを捕まえれば、衣笠さんはすぐに解放されたじゃないですか。」

 

のわっちが疑問を投げかける。すると青葉から明るい表情が消えた。

 

「それで解決してしまえば衣笠だけじゃなくて、これから艦娘全員がこういった目にあうかもしれないということよ」

 

私がそう答えると、のわっちは説明を求めた。

 

「考えてもみなさい。もし仮にあなたに大金を渡すから自分の人形になってくれって言われたらあなたはそれを承諾する?」

 

「野分は…そんなのいやです…」

 

「あなただけじゃなくて、私も嫌よ。きっとみんなもね」

 

「それで…」

 

「それで断ってすんなり諦められる人間なら問題ないわ。けれど、どうして手に入れたいと考える人間がいるはずよ。どんな手段を使ってでもね」

 

「しかし、解体されたとはいえ、元艦娘を拘束できる人間はいないと先程日向さんも言ってましたし、青葉さんも衣笠さんは心配いらないって…」

 

「なんで私たちの車に盗聴機なんか仕掛けてあったと思う?それに、のわっち。私たちは半ば強引にあなたを引きれたけど、それは私達を以外にも出来ることなのよ。」

 

「それって…」

 

のわっちは今回のことの本質を理解した様ね。

 

「軍関係者が関わっているってことですか…だとしたらものすごく大事に…」

 

「今はそこまで断定できないわ。とりあえず日向にこのことを話してから動きましょう」

 

私たちの話を聞いて青葉の瞳からは涙が流れていた。

 

「もともとは艦娘を欲する人たちの考えを知りたかっただけなんです。ですが、調べていくうちに好奇心に負けて踏み込んではいけない内情まで知ってしまったのです。青葉達は艦娘を人としてではなく、道具として見られていることに腹が立って…それを暴いてやろうとして…今回の様なことに…」

 

「大丈夫よ。あなたの言いたいことも、私たちがここにいる理由もわかったわ。だから安心して。」

 

「すいません…ありがとうございます…」

 

青葉は涙が拭い、真面目な顔で私達を見つめ

 

「衣笠のことも…みんなのこともよろしくお願いします」

 

深々と頭を下げた青葉に私は笑いながら声をかける。

 

「あら。当然あなたにも尻拭いはしてもらうわよ。」

 

「はい!青葉にできることがあればおまかせください!」

 

 

青葉と別れ、オフィスに戻り、のわっちに日向への報告を任せ、すぐに青葉が強引に剥がしたインパネの修理を明石に頼んだ。その時、内密に修理する様に頼むと、彼女は察しがついたらしく、深々と頭を下げると

 

「すいません。私としたことが…チェックを怠っていました」

 

と言い悔しそうに唇を噛み締めた。これだけでおおよそのことがわかるとは日向の教育の賜物ね。

 

「気にしなくていいわ。私も気付かなかったし…それでお願いがあるのだけど…」

 

「すぐに手配します。今度は誰の手も入ってない民間品を」

 

「お願いするわね。出来れば…」

 

そう言いかけた時に、明石は不敵な笑みを浮かべると

 

「わかってます。二日ください。足柄さんの趣味にあうように…かつ日向さんにバレない様に…ですよね?」

 

「話が早くて助かるわぁ♪」

 

私はご機嫌で明石の工房から自分のデスクに向かった。

 

 

私がデスクに戻ると、のわっちは日向に報告を済ませ、人数分の飲み物を取りにデスクを離れていた。

 

「…野分は大丈夫だったか?」

 

私に意見を求める前に、日向は心配そうに私に尋ねた。

 

「そうね…まだ及第点といったところかしらね…でも私の目に狂いは無かったわ。勿論日向の目にもね」

 

そう言うと、日向も安心した様でいつもの顔に戻った。

 

「そうか…足柄、報告を」

 

「車に関してはもう明石に手配させたわ。三日あれば用意できるそうよ」

 

「わかった。今回は私の落ち度だ。好きにしろ。文句は言わん」

 

あらら、バレてましたか…

 

「それとあと二時間もすれば青葉がここにくるから、この話が終わり次第、のわっちと衣笠を救出に行く用意に取り掛かるわ。日向はなにかわかった?」

 

「衣笠の監禁場所はわかった。それと相手方の規模もな。既に警察が動いている。私も今回は同行させてもらう」

 

「私と野分じゃ不満?確かに今日来たばかりで心配なのはわかるけど、彼女も艦娘の時に実戦経験は積んでるし軍で訓練も受けてるのよ?」

 

「そうじゃない。警察に衣笠を確保されるとその後がやりづらくなる。彼女の仕事を横取りする形になって申し訳ないが、最後の最後に手柄だけかすめ取るよりはいいだろう。」

 

「彼女?…そのお巡りさんは知り合いなのかしら?」

 

「もしかしたら野分の義理の妹さんになる人かもな」

 

日向がいたずらな表情を浮かべる。堅物のイメージがある彼女だけれども、意外とお茶目な部分があるのはこの三ヶ月よくわかった。

 

「その妹さんは納得するかしらね。クールに見えて意外と負けず嫌いな部分があるけど…」

 

「ことがことだからな。万全を期したい。私たちの仕事がお眼鏡にかなえば彼女も納得するさ。」

 

「そうなるよう頑張るわ。それと…」

 

「今回の一件、軍関係者は関わっていない。だがいずれは起こるはずの事件だった。現に不透明な金が軍関係者に流れいる。」

 

「最初からわかっていたの…教えてくれてもよかったのに」

 

「憶測の域を出ていなかったからな。それに野分を怖がらせたくなかった」

 

「それもそうね…それで、私たちはどうすればいい?」

 

「軍が関わっていないなら上に気を使う必要もない。今回の一件を公にすることで私たちが抑止力になる。徹底的にやれ」

 

「抑止力…それが野分達がここにいる理由ですか…」

 

いつ間にか戻ってきたのわっちが三人分の珈琲を持って後ろに立っていた。

 

「そうだ。野分。私たちは私達を守るためにここにる」

 

「それといいこと教えてあげるわ」

 

私はのわっちに近づき耳打ちをする。

 

「日向、珈琲飲めないのよ…」

 

私とのわっちが日向の方に向き替えると、そこには渋い顔をして珈琲を眺める日向がいた。

 

 

青葉が来たのは、約束の時間よりも一時間も前だった。のわっちは日向からみっちりと突入の訓練を受けている。しかし覚えがいいのか、すぐに卒なくこなすのわっちに日向もご満悦の様子だ。私は装備の点検をしていると、個人様の携帯が鳴り、画面には青葉からの着信であることを告げていた。

 

「随分早いじゃない」

 

「出来る女は余裕をもったスケジュールを報告するものです」

 

電話越しに自信満々の声が聞こえる。よかった。もう大丈夫そうね。

 

「それとお願いがあるのですが…」

 

「銃はダメよ。民間人に持たせるわけにはいかないわ」

 

「それはわかってますよ。ライトを青葉に貸してください。できればすごく明るいやつがいいです」

 

「ライト…?ちょっと待って、日向に確認するわ」

 

日向にこのことを話すと、日向は感心し、私に電話を変わるように促した。

 

「青葉か。さすがに備品を貸し出すわけにはいかない。だが、今回の件に足柄が勝手に君を巻き込んだことに対して、私は責任を取らなくてはいけない。そこでお詫びとして君に渡したいものがあるのだが受け取ってくれるか?」

 

そう言うと、日向は私に不敵な笑みを向けてきた。

 

「心配するな、足柄の給料から引いておく」

 

ちょっと…冗談よね?…冗談に聞こえないのだけれども…

 

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