ちゃんとキャラが掴めていたら幸いです。
四つ目の特異点は、人類の転換期である産業革命の黎明期にありながら、虚実が交錯する魔霧都市──
悪魔、正体不明の殺人鬼、三人の黒幕、雷電、騎士王を乗り越えた立香は、遂に真の黒幕と対峙した。
カルデアにある食堂の料理長──エミヤは昼食営業を終えると、ブーディカやマルタを筆頭とした料理が得意な同僚に、翌日の献立の相談を行っている。
毎日同じ料理を出してしまうと、いかに美味でも飽きが来てしまうだろう、と危惧したエミヤの料理人としての気配りが感じられる。
最近では料理のできるサーヴァントが増え、それに比例して意見が飛び交う回数も増えた。詰まる所、相談に時間がかかるようになった。しかし、その分濃密な話ができるため、今の所はデメリットを感じない。
「────おい、
不意にエミヤの後ろから、食堂から自室に帰る途中の彼を呼び止める声がする。
呼ばれたエミヤが声の方向を向けば、通路の影からロンドンで共闘した騎士が姿を見せる。
モードレッド──
特異点で
「……私に何の用かな? モードレッド卿」
「心にもない呼び方はよせよ。なに、オレの質問に答えるだけでいい」
エミヤがモードレッドと顔を合わせたことは、特異点を除けば全くない、と言っていいだろう。
モードレッドからは顔見知りの関係だが、エミヤは伝承を介して
だからこそ、エミヤが特異点でモードレッドと鉢合わせ、騎士王に似た顔立ちから発せられる名乗りを聞いた瞬間の驚愕は、筆舌に尽くしがたい。
その一方で、モードレッドの聞きたいことについて、エミヤは全くもって見当がつかない。
「────父上との関係は何だ?」
「……ただの同僚だが?」
初歩的な質問であった。
以前にもエミヤは、信長から同じような質問をされたが、まさかモードレッドからも聞かれるとは思っていなかった。
別に隠すようなことではないかもしれないが、アルトリアと完全に和解していないモードレッドには、まだ言わない方が賢明だ。
「それは嘘だな。言ったろ? こういう時のオレの勘は当たるんだ」
このまましらを切ることも一つの手だが、モードレッドは簡単に引き下がるような性格ではない。つくづく直感系統のスキルに弱いエミヤは、早々に降参するしかない。
しかし、このまま素直に言うのも釈然としないので、エミヤは多少の意地を張る。
「誤魔化そうとしていたことは謝罪しよう。
────だが、君の父上に聞けばいいのではないかな?」
「────ッ!? テメエ……オレが父上に避けられているのを知った上で言ってんのか?
そりゃあ、黒い父上とかもいるけどさ……」
モードレッドにとって、エミヤの指摘は図星だったらしい。アルトリア自身も顔を合わせにくいようだ。
エミヤは、内心で若干の反省をしながらも話を続ける。
「癪に触ってしまったかな? それはすまない。だが、私が話すことにメリットは無さそうでね。黙秘させてもらおう」
「ハッ! だと思ったぜ。なら、こいつでどうだ?」
返答を予測していたのか、そう言って気を取り直したモードレッドが虚空から顕現させたのは、彼女の得物である魔剣『
カルデア内での私闘は基本的に禁じられているが、一部の例外はある。エミヤの予想通りであれば、彼女の言いたいこととは──
「シミュレータで模擬戦をする、という事かね?」
「話が早いな。ま、そういうことだ。オレが勝ったら、洗いざらい吐いてもらうぜ」
「……やれやれ、私はしがない弓兵なのだがね。マスターたちへの優しさを分けてもらいたいものだ」
エミヤは、特異点での戦いぶりから意図を推測していたが、やはりモードレッドは血の気が多い方らしい。
ジャンケンでもどうにもならない事態には、シミュレータで決着をつけるのが、最近改定された習わしだ。
尤も、そんな事態が頻繁に起きるわけもないため、模擬戦の名前通りにサーヴァント同士が切磋琢磨するために使用されている。
エミヤも空いた時間には模擬戦に誘われることが多く、ほとんどのサーヴァントと五分五分の戦いをするものの、最近では鬼気迫った表情の清姫に黒星を付けられることが多い。ある意味、清姫と似通ったモードレッドの執念に、色々な意味で感心したエミヤは観念する。
「冗談はやめとけ。お前が強い奴だってのは、ハッキリと分かる」
エミヤの謙遜した自己評価に思うところがあったのか、モードレッドの反応は早い。
「確かに、才能といったものは感じないが、おまえの強さは戦場で磨いたものだろう? オレと同じようにな」
確信を得るかのように話すモードレッドの双眸は、エミヤを捉えて離さない。
「ロンディニウムでおまえの戦いを見た時から、手合わせしたいと心待ちにしていた。
────守り特化の二刀使いなら、相手にとって不足はない」
口角をあげ、鋭い目つきと自信に満ちた笑みで宣戦布告する叛逆の騎士の姿。
大方、エミヤを戦いに駆り出させるための挑発だろう。
エミヤは別にジャンケンでも構わないが、直感持ちでは相手が悪すぎる。必然的に、絶対に話したくない秘密だからこそ、彼には承諾する道しか残されていない。
幸いにも、エミヤには夕食までの時間が残されている。自室での休憩時間を充てれば、挑発に乗っても問題はない。
────とんだじゃじゃ馬娘だな。
内心ではそう思いながらも、エミヤが口にする事は無い。
あくまで冷静に佇まいを正すと、エミヤもモードレッドに宣言する。
「いいだろう。私も全力を以ってお相手しよう」
モードレッドの返答を待つことなく、彼女に背を向けてシミュレータを目指すエミヤ。
「ふ、そうでなくちゃな」
闘志あふれる答えと共に、モードレッドも歩み出した。
その後、二人の死闘の末に決着はついた。
────満身創痍のエミヤは、なんとか秘密を死守した。
そして、夕食の時間に間に合ったことに、エミヤは一番安堵するのだった。
父上が認めた男、お気に入りか。
なら、蹂躙するのはオレの役目だ。必ず……オレが倒す。
だが、実際に父上の幸せそうな顔を見せられると……オレはどうすればいいか迷ってしまう。なによりも。
────父上の