なぜか最近アルトリアしか書いてないな。
新年を迎え、正月明けから特異点の調査に向かった藤丸立香一行。
そこで出会ったのは、若き日の姿と思われるアルトリア・ペンドラゴン・リリィ、SFチックな宇宙船と共に
生前のエミヤ並みに人の好いリリィはXの言葉を信用し、強さへの悩みを解消するという名目で、特異点に散らばった宇宙船の部品集めをすることになった。
斯くして始まる修行の旅。
セイバーの殲滅を目論むXとの修行の行方がどうなるのか。心中複雑なエミヤは静かに見守っていた。
Xの目的は、自身以外のセイバーの抹殺と、増えすぎたアルトリア顔の殲滅──個人的感想でリリィを除く──のみ。
実現不可能に思われるが、何もヒロインXは一人で戦っているわけではない。
日夜、『コスモギルガメス』、『キャプテン☆ニコラ』を相手にサーヴァント界の平穏を守る正義のヒーローには、多くの仲間が居るのだ。
「という訳で、サーヴァント界に戻るのです。ネームレス・レッド」
「何が『という訳』なんだ。レディ・X」
自室の扉を開けたエミヤを出迎えたのは、件のヒロインXだった。
無風のはずの室内でマフラーを靡かせ、ジャージ姿で仁王立ちしている少女に色々と思うところがないわけではないが、出て行きなさいと強く言えないところが赤い弓兵の悪いところだろう。
「あの口煩いネームレス・レッドがここまで大人しいなんて……、やはりここは夢の中では──」
「残念だが現実だ。そういえば以前にもそう言っていたな。ネームレス・レッドという名前に引っかかることはあるが、そこまで私に似ているのか?」
「ええ、それはそれは。昨今で社会問題となっている氾濫したアルトリア顔の如く。
……流石にネームレス・レッドの増殖は私の使命の範囲外ですが」
「そうか……、とりあえず適当なソファにかけたまえ。茶の一杯ぐらいはもてなそう」
目を閉じて腕を組み、何度か頷くXの姿から視線を外したエミヤは、いつものようにもてなす準備を始めていた。
「──なるほどな。つまり、ネームレス・レッドというのは教師の名前で、職場の同僚というわけか。……まったく私は、別の宇宙にも居るのか……」
Xから事情を聴いたエミヤはその全貌をようやく掴むことができた。
どうやら彼女は、別の宇宙にある正義の学び舎『コスモカルデア学園』からやってきたらしく、『新円卓の騎士』なるものを結成しているようだ。更に話を聞く限りでは、あちらにある英霊の座にも『英霊エミヤ』がいることに間違いはないらしい。
その中で『正義』の言葉を聞いた弓兵は、その学園から輩出されたサーヴァントが体の良い駒にされないでほしい、と願うしかなかった。
「さしもの私でも、一人でできることに限界はありますから仕方ありません。
だからこそ、私は仲間の力を借りることで忍法を使えるようになるのです」
「……やはり、セイバーを名乗っているのに忍法でよいものか」
「聞き捨てならない言葉が聞こえましたが、気のせいですか?」
小さく呟いたつもりだったが、Xの耳は地獄耳だった。咳払いして取り繕うと、すかさずエミヤはお茶を濁す。
「ああ、それはただの空耳だろう。
ここまでの君の話からすると、私とネームレス・レッドという人物は同一ではないな。座には一切記録されていない。尤も、宇宙が違うという時点でそうだとは思っていたがな」
「そうでしたか。まあ、あの口うるさい講義がないだけマシだから良しとしましょう。
しかし、来た時から思っていましたがこのカルデアにはセイバーやアルトリア顔がたくさん居すぎでは? ……もしや貴方の趣味ですか?」
死活問題なのか、苦汁を舐めるとはこういう顔だろうとすんなり納得できるほど苦々しい顔でXは呟く。だが、彼女が最後に付け加えた言葉はエミヤからすれば心外だった。
「それこそ馬鹿なことを言わないでくれ。召喚しているのはマスターなのだからな。触媒はおそらく、マスターが結んだ縁だろう。
──それに、よく分からないが君の言う条件に当てはまらないサーヴァントも居るんじゃないかな?」
「後半はいいとして、前半の言葉が嘘でないことを祈りますが……」
「どうかしたのかね?」
「いいえ、別に」
訝しむ表情のエミヤの視線から逃れるように、Xは視線を逸らす。
実のところ、「ほとんどのサーヴァントから熱い視線を向けられ、いまいち説得力に欠ける」と付け加えたいところだった。
「ああ、そういえば忘れていました。貴方のことは何と呼べばいいでしょうか? ネームレス・レッドでは被ってしまいますし」
「何でも構わんさ。アーチャーでも、エミヤシロウでも、好きに呼ぶといい」
本来なら真名を軽々しく名乗らないエミヤだが、もはや隠すまでもなく
この現状を
「そうですか、では…………、
──シロウ。そう、シロウが良いですね。この響きは何というか、何かしらティンときました……そんな顔をしてどうしたのですか?」
Xの突然の問いかけの意図が分からず反応が遅れてしまう。
「そんな顔とはなんだね?」
「そうですね。……懐かしいものを見るような顔でしたよ」
無意識の内に、エミヤは過去の記憶と目の前の光景を重ねていたようだが、そう言われてようやく自覚できた。
「……少しだけ、昔を思い出しただけだ」
「何か怪しいですね。実はその昔に、アルトリア顔と関わったのでは? 青か黒か黒槍か、はたまた三人まとめて……よもや、話に聞くスケコマシというものですか?」
「それこそ風評被害だ。第一、私程度が相手では彼女達に失礼だろう。それにな、仮に関わったとしても私には何もできなかったよ。
……そうさ、私には結局、彼女を本当の意味で救えなかった」
何を馬鹿なことを言っているのか、眉間に若干の皺を寄せて反論するエミヤだったが、Xはあまりの朴念仁さに宿敵のはずのアルトリアへ同情してしまった。
最後の言葉は聞き取れなかったものの、リリィに似た卑屈な言葉を並べるエミヤ何とかしなければと思い立つ。すると突然──、Xの頭脳に電流が走る。
「これは…………、ある意味チャンスでは? リリィのことは心苦しいですが」
朴念仁を憂いているアルトリアは、ここにも居るのだから。
「……そんなしょぼくれた顔をしている場合ですか、シロウ。
私が言うのもなんですが、もっと自信を持ったらどうです? 何もできていないなどある訳がないでしょう。貴方が考えているよりもずっと、何かを成しているのです……色々な意味で」
「最近よく言われるんだが、私としても当たり前のことをしているだけだから、どうにも実感が湧かないものでね」
「なら、いいでしょう、この私が導いてみせます。アルトリウムと共にあれ。
最後に貴方の隣に居るのは、他のアルトリア顔やセイバーではない……この私だっ!」
「なぜか嫌な予感しかしないのだが……」
この後、謎のヒロインXがどこかの特異点で頂上決戦を何度か勃発させるのは、また別の話である。
謎のヒロインZの攻撃から身を挺して庇われたあの時から、目で追っている私が居ました。
ネームレス・レッドは頼れる仲間ですけど、シロウは何というか……あれですよって、言わせないでください恥ずかしい。そうです、彼の人となりを知るうちに、彼の剣として戦うことを想像していました。
何という不覚、とんでもないものを盗まれてしまいました。これは責任をとってもらわなければなりません。
というか、一部のアルトリア顔もシロウって呼んでるんですか……、シロウに免じて使命は一端中断しますけど、貴方に相応しいセイバーが誰なのか教えてあげます。私にいい考えがありますからね。